北インドの家庭カレーが食べられる「DOON食堂 印度山」。本格チキンターリーは毎日でも食べたい一皿!

2018.09.01 更新

長野県松本市にある「日本一小さなインド家庭料理 DOON(ドゥーン)食堂 印度山」は、北インドの家庭料理であるカレーを提供する店。店主はインド人で、代々受け継がれてきたレシピでカレーを作る。辛さ控えめでこってりしていないやさしい味わいのカレーは、消化がよくて毎日でも食べたい一皿だ!(by カレー調査隊隊長・井上岳久)

どうも、こんにちは!
カレーの第一人者である井上岳久先生と、一番弟子りかです。私たち2人は「カレー調査隊」として、ぐるたび編集部に届いた耳寄りカレー情報をもとに全国津々浦々を旅しています。

今回は、長野県松本市で北インドの家庭料理であるカレーを提供するお店のうわさを調査してきました。

日本一小さなインド家庭料理のカレー店!?「DOON食堂 印度山」

▲国宝の「松本城」前にて

りか「ぐるたび編集部宛てに、こんな調査依頼のメールが届きました」

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長野県松本市に「日本一小さなインド家庭料理 DOON食堂 印度山」というカレー店があり、店主は北インド出身の方だそうです。本当に日本一小さなお店なのでしょうか?また、北インドの家庭で食べられるカレーとはどんなカレーなのでしょうか?なかなか長野県まで行けないので、代わりに調査してきてもらえないでしょうか?
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井上先生「ほぉ、どれだけ小さいお店なんだろうね。ところで一番弟子のりかさんなら、北インドのカレーの特徴はわかるよね?」

りか「もちろんです!北インドは小麦が採れる地域なので、ナンなどのパンに合わせ、バターチキンのような乳製品を使ったカレーが多いです。また、どろっとした汁気の少ないカレーを食べるのが贅沢とされています!」

井上先生「その通りっ!だんだん一番弟子らしくなってきたね」
ということで、やってきたのはJR松本駅から徒歩約15分、「はしご横丁」という飲み屋街の一角にある「日本一小さなインド家庭料理 DOON食堂 印度山」(以下、DOON食堂 印度山)。古民家風の建物です。
▲店内は3人がけのテーブルが2卓。たしかにこじんまりした、小さなお店ですが…
「いらっしゃいませ!」
出迎えてくれたのは、店主のアシシュ・シルプカーさん。北インドのデラドゥーン出身です。アシシュさんは来日してから13年以上経っていることもあり、日本語が堪能!

井上先生「日本語がお上手ですね!」

アシシュさん「皆さんのおかげです。今は夢の中でも日本語ですよ(笑)」

お店に着いて早々、アシシュさんの陽気な雰囲気に引き込まれる私たち。アシシュさんの作るカレーとは、一体どんなカレーなのでしょうか?

毎日食べられる!やさしい味わいの「チキンターリー」

「DOON食堂 印度山」では、「キーマカレー」や「ヴィーガン豆カレー」、3種類のカレーを味わえる「コンボセット」など数種類のメニューを用意しています。今回は、インドの定食スタイルである「チキンターリー」をオーダー。このお店ではハラルチキンを使用しているので、イスラム教の人でも食べられるそうです。
▲「チキンターリー」1,100円(税込)

「チキンターリー」は、左下から時計回りでチキンカレー、チャナダール(ひよこ豆)のカレー、ライタ(野菜などが入ったヨーグルト)、ガジャック(ゴマの焼き菓子)、パパド(豆のおせんべい)、ごはんがセットになっています。
井上先生&りか「いっただきまーす!」
▲まずは「チキンカレー」から。パクチーが上にのっています
井上先生「…なるほど。スパイスがガツンと来るのかと思ったら、玉ねぎの甘みも効いた穏やかでやさしい味わいだね。辛味もそんなにないし、こってりもしていないよ」

りか「おいしいですね!インド人が作るカレーだから、てっきり刺激的だったり、味が濃かったりするのかと思っていました」
アシシュさん「インドでは自分の体と向き合って、消化のいい食べ物を食べます。だから家庭料理のカレーは辛さ控えめに作り、スパイスを必要以上には使いません。それに、日本で人気のバターチキンもインド人はそんなには食べないんです。辛味が欲しい場合は、テーブルの上にある『アシシュマサラ』をお好みでかけてくださいね」
▲アシシュさん特製の辛味ミックススパイス「アシシュマサラ」

りか「インドの家庭料理は、そんなに辛くないんですね。実は私、辛い食べ物を食べ過ぎて腸を悪くしたばかりなので、やさしい味わいのほうがちょうどいいです!」

井上先生「そうなの?大丈夫?でも、このカレーなら毎日食べられるよね」
アシシュさん「でしょう?インドの家庭のカレーは消化をよくする力があるんですよ。だから、食事の時間になると自然とお腹が空くんですよ」

「チキンターリー」のチキンカレーを味わったところで、そのほかのメニューもいただきましょう!
▲汁気が少ない「チャナダールのカレー」は、バターのようなひよこ豆のコクがある
▲甘みのないヨーグルトに、キュウリやひよこ豆の揚げ玉が入った「ライタ」。具材の食感がアクセントになる
▲豆を原料にしたおせんべい「パパド」。潰して、ごはんの上に振りかけて食べる

アシシュさん「一通りひと口ずつ食べたら、ごはんの上にかけて混ぜながら食べてくださいね。そうすることで、また新しい味に変化しますから」
井上先生「混ぜることで、複雑な味わいになってカレーに深みがでてくるよ。…あれ?よく考えたら、ごはんは日本米なんですね」

アシシュさん「はい。安曇野産のコシヒカリを使っています。インドのお米よりも、日本のお米のほうが好きだから(笑)。それにナンはレストランの料理だから、インドでも毎日は食べないんですよ」
▲カレーを食べたあとは、セサミやクコの実を使った甘い焼き菓子でお口直しを

お母さんから教わった!代々受け継がれてきた「チキンカレー」の作り方

毎日でも食べられるインドの家庭料理のカレーは、どのように作っているのでしょうか?アシシュさんに聞いてみました!
アシシュさん「チキンカレーは、まずクローブ、カルダモン、アジョワン(※)のホールスパイスで油に香りをつけてから、玉ねぎを入れて、あめ色になるまでしっかり炒めます。そこにショウガ、ニンニクを入れてさらに炒めてから、鶏肉を投入。火が通ったらターメリック、コリアンダー、トマト缶を入れてひと煮立ちさせ、最後にガラムマサラとチキンマサラ、塩を入れて味を調えます」

※アジョワンとは…ハーブのタイムに似た芳香があるスパイス。胃腸薬の原料に使われることもある

「DOON食堂 印度山」で提供するメニューは、すべてアシシュさんの家庭に代々受け継がれてきたレシピで、お母さまから教わったとのこと。そして一番のポイントは、アジョワンを使っていることだと言います。インドでもアジョワンはさほど使わないそうですが、消化を促進する役割を持つスパイスなので、毎日食べる家庭料理にぴったりなのだとか。
アシシュさん「チャナダールのカレーは、ひよこ豆と刻んだショウガ、ちぎったホウレンソウ、ターメリックとコリアンダー、ガラムマサラを圧力鍋に入れて加熱します。最後に、コリアンダーやクミン、ニンニクの香りを移した油をかけて完成です」

このカレーには玉ねぎやニンニクなどの五葷(ごくん)を使用していないため、厳格な仏教徒の人でも食べられます。ほかにも「DOON食堂 印度山」は、ヴィーガンやベジタリアンにも対応したメニューを提供しています。また全メニューがグルテンフリー、ナッツフリーになっています。それもあって、外国人観光客がよく食べに来るそうです。
アシシュさん「パパドは焼き立てのときは柔らかいので、くるくるっとまるめてお花のようにアレンジしています。これは私のオリジナルで、インドでは普通やりません(笑)」

運命の出会いがきっかけで、長野県松本市にカレー店を出店することに!

カレーの作り方がわかったところで、気になるのは店主・アシシュさんの経歴。なぜ、インド人のアシシュさんが長野県松本市でカレー店をひらいているのでしょうか?
アシシュさん「2005年に愛知県で開かれた万博のインド館スタッフとして来日し、半年間日本に住んでいました。もう早くインドに帰りたいと思っていたけど、運命の出会いがあって…」

アシシュさんによれば帰国する1カ月前に、たまたま「愛・地球博(2005年日本国際博覧会)」に遊びに来ていた奥さまの真由美さんと知り合ったのだとか。任務を終え、一度はインドに帰国したアシシュさん。ただインドでは結婚相手は親が決めるそうで、その時はご両親に結婚したい相手がいると言えなかったそう…。そして真由美さんに会うために再び来日、ご両親に内緒で結婚することに!

アシシュさん「結婚してから親に報告した(笑)。今では両親も喜んでくれていますよ!」
▲アシシュさんのご実家などインドの様子を見せてもらった

入籍後は、真由美さんの地元である長野県松本市で生活を始めます。そして2006年から松本市の公民館を借りてインド料理教室などを開くように。次第に、キャンセル待ちが続出するほどの人気料理教室になっていきました。そして料理教室を始めた10周年記念として、2016年に「DOON食堂 印度山」をオープンします。
店名の「DOON食堂 印度山」とは、アシシュさんの出身地であるデラドゥーンの略称と、アシシュさんの身長が191cmもあって山のようだから、印度山としたそうです。

ちなみに店名には「日本一小さなインド家庭料理」とありますが、現在は向かいの店舗も「DOON食堂 印度山」として使われています。というのも、寒い季節でも外に行列ができるようになってしまったために、当初は待合室用として借りたのだとか。ですが今では、向かいの店舗も飲食スペースとして活用されています。
▲向かいの店舗では、スパイスや豆などインドの食材も販売している

ということは、人気過ぎてもはや「日本一小さなインド家庭料理」店ではなくなってしまった!?

では井上先生、カレーの評価をお願いします。
井上先生「『DOON食堂 印度山』のカレーチャートはこちら!」
井上先生「消化を促進するアジョワンを使うのがポイントなど、インドの家庭料理のカレーらしいスパイスの使い方をしていたので、スパイステクニックは5。それに、カレーソースは本場インドの家庭料理の味だけど、ごはんは日本米にするなど日本人の口に合わせていたからオリジナリティは4。毎日食べられるおいしいカレーだったね」

りか「はい!カレーもおいしかったですが、アシシュさんの陽気な人柄が魅力的で、すっかりファンになっちゃいました」
▲最後はアシシュさん&まな息子・歩志(あゆし)くんとパシャリ!

長野県松本市で北インドカレーを食べるなら、「DOON食堂 印度山」がおすすめ。
ご協力ありがとうございました!

井上岳久(カレー大學学長/株式会社カレー総合研究所代表)

カレー業界を牽引する、業界の第一人者。横濱カレーミュージアム責任者を経て現職に至る。カレーの文化や歴史、栄養学、地域的特色、レトルトカレーなど、カレー全般に精通。レトルトカレーは全国から2,000種類を収集し試食している。著書に『一億人の大好物 カレーの作り方』『国民食カレーに学ぶもっともわかりやすいマーケティング入門』など多数。

名久井梨香

名久井梨香

フリーライター。毎日カレーを食べるカレー愛好家で、現在はカレーパンも研究している。カレー大學、カレー大学院卒。趣味はカレーとJリーグ。

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