日本最古のクラシックホテル!憧れの日光金谷ホテルで時間旅行を

2018.08.30 更新

「日光金谷ホテル」は、2018年6月で創業145周年。現存するクラシックホテルでは日本最古、世界の著名人も数多く宿泊した格式と伝統のある元祖リゾートホテルです。「日光東照宮」など世界遺産「日光の社寺」とともに一度は訪れたい憧れのホテルへ、時間旅行に出かけてきました!

▲白壁の美しい3階建の本館はクラシカルな佇まい

創業145周年!ヘボン博士との出会いから始まったホテル

東武日光線・東武日光駅で降りて路線バスに乗り換え約5分。「神橋」停留所で下車し3分ほど歩くと、緑豊かな静かな高台に「日光金谷ホテル」はあります。
世界遺産に登録されている「日光東照宮」からも歩いて5分ほどという、日光観光には絶好のロケーションです。

中へ一歩足を踏み入れると、まるでタイムスリップしたかのよう。
▲雰囲気満点のフロント。まさにクラシック!

やや低めの天井に、赤絨毯。柔らかな光が木の温もりを照らし出しています。西洋風でありながら、天井には神社を思わせる細工が施されていて、東照宮を彷彿とさせます。
▲本館入口の回転扉(内側)の上部にも、精巧な彫刻が

それもそのはず、「日光金谷ホテル」の創業者・金谷善一郎氏はもともと東照宮の雅楽奏者。1871(明治4)年頃、宿がなくて困っていた一人のアメリカ人を自宅に招き入れたことが、そもそもの始まりなのだとか。

そのアメリカ人とは、ヘボン式ローマ字の考案者・ヘボン博士。博士に「これから日光には外国人観光客が大勢やってくる。その人たちのための宿屋をやってはどうか」と勧められ、夏の間、外国人に自宅を提供するようになったのです。
▲フロントの壁にはヘボン博士(左)と金谷善一郎氏(右)の肖像が

現在の地に純洋風の「金谷ホテル」を開業したのは、1893(明治26)年のこと。明治末期には、日光を代表する外国人向け避暑リゾートホテルとして知られるようになりました。
ホテルに残る宿帳には、アルベルト・アインシュタイン、ヘレン・ケラー、レオナール・フジタ(藤田嗣治)、夏目漱石、新渡戸稲造、吉田茂など錚々たる著名人のサインが残っています。
▲著名人のサインは、本館1階ロビー裏のパネルで見ることができる

戦後は外国人が中心だった客層も、高度経済成長を経てほとんどが日本人に。

「今では決して便利なホテルとは言えませんが、『金谷ホテルらしい』サービスをご提供することで、お客様にゆったりと非日常を味わっていただけるよう心がけています」と、広報・ホテル史担当の関根崇人(たかと)さんは話します。

たしかにここでは時間がゆっくり流れているような気がします。「自分の大切な人をおもてなしする気持ちで接客をしなさい」との金谷家の教えが生きているのですね。

まるで東照宮?ホテルで見られる霊獣たち

東照宮にご縁の深い「日光金谷ホテル」。東照宮を手がけた宮大工の一人がホテルの内装を担当したといわれており、館内のあちこちに、東照宮とそっくりな彫刻を見ることができます。例えば、ロビーの柱についているこの象。狩野探幽の描いた想像上の象を下絵にしているといわれるものです。
さらに、ロビーの奥で後ろを振り返ると、ね、「眠り猫」……!?
とぼけた寝顔が愛らしい。東照宮の本物と見比べてみるのも楽しいですよ。

和洋折衷の建物は、国の登録有形文化財!

どこをとっても絵になる館内。それもそのはず、本館・新館・別館・第二新館と4館あるすべてが国の登録有形文化財に指定されているんです。そこで見どころのいくつかを、関根さんに案内していただきました。

こちらは本館2階、メインダイニング前の階段です。洋風の白い階段と、和風の赤い欄干が独特な和洋折衷の雰囲気を醸し出しています。
階段の手すりには、不思議な赤いランプがついています。
よく見ると、徳川家の葵の御紋らしきマークが!こんなところにも東照宮の影響が見られるからおもしろいですね。

必要に応じて増改築を繰り返している日光金谷ホテル本館。現在は3階建ですが、実は創業当初は2階建でした。
「しかも、建て増しは上ではなく下に行われたんです」(関根さん)
下というと……地下ですか?
「はい。フロント・ロビーのある現在の1階は、のちに地面を削って造られました」
フロントの天井が低かったのはそういうわけなんですね!
▲2階メインダイニング隣のくつろぎスペース。この奥にも部屋があったが、1階の天井を高くするため部屋を廃して吹き抜けに

メインダイニングに入ると、広々とした空間が広がっています。
▲丸い柱には東照宮にも多く見られる牡丹の彫刻が

こちらは朝食と夕食の会場になります。一見、純洋風のメインダイニングですが、よく見るとあちこちに金谷ホテルらしい意匠が。
▲メインダイニングの暖炉上に飾られているのは、会津の彫刻家・吉田仙十良(せんじゅうろう)氏によるレリーフ「迦陵頻伽(かりょうびんが)」。暖炉は大谷石でできている
▲食器やカトラリーは全て、ササリンドウをかたどった金谷ホテルのロゴマーク付き

本館1階の奥には、こ~んな大きな広間も。明治時代、ダンス会場にも使われたという「バンケットホール」です。
よく見るとこのホール、柱が1本もありません!巨大な空間を支えるのはつり天井です。そのため上階部分の客室には重い浴槽を入れることができず、当時はシャワーしかなかったのだとか。ホールは現在でも結婚式など大人数での宴に使われています。

アインシュタイン博士も泊まった!個性豊かな客室たち

さて、そろそろお部屋に向かいましょうか。
「日光金谷ホテルには、個性的なお部屋が多く、隣り合うお部屋でつくりが違うことも珍しくありません。各お部屋の個性も含めてお楽しみいただけたらと思います」(関根さん)
▲新館の客室へ向かう廊下もムードたっぷり

まず案内いただいたのは、一番部屋数が多く、日光金谷ホテルらしい「デラックスタイプ」のお部屋。
▲デラックスタイプ(41,580円~・2名利用時の1室)

天井が高く広々!大きな窓からは美しい庭も一望できます。窓際には、寒さの厳しい日光の冬を柔らかくあたためるスチーム暖房を備えています。タイムスリップしたまま、ゆったりと非日常を味わえそうなお部屋です。
▲お部屋の鍵にも金谷ホテルのロゴマークが

もう一つ、ご紹介したいのが第二新館に1部屋だけつくられた「Orange Suite(オレンジ・スイート)」。2003(平成15)年より顧問を務める放送作家の小山薫堂氏プロデュースのスイートルームです。
▲Orange Suite(47,600円~・2名利用時の1室)

こちらは「泊まるだけで元気になれるビタミンホテル」をコンセプトに、和のテイストを取り入れたモダンなつくり。一歩入るとまるで別のホテルに来たようです。金谷ホテルの雰囲気を味わいつつ、部屋ではより快適に過ごしたいという方にオススメしたいお部屋です。
▲寝室は天蓋式で、まるで繭に包まれているよう

歴代の著名人にも愛された日光金谷ホテル。あのアインシュタイン博士が泊まったお部屋が残されていると聞き、案内していただきました。
こちらの「15番」がアインシュタイン博士宿泊のお部屋。現在では改装されて、当時とは変わってしまったそうですが、歴史上の人物も利用したと聞くと、なんだかワクワクします。

なお、不定期ではありますが、館内の歴史や見どころをベテランホテルマンが案内してくれる宿泊者向けの無料ツアー(17~18時)も開催されています。興味のある方は、フロントにてご確認くださいね。
▲ラッキーなら、案内ツアーに参加できるかも!?

ここでしか味わえない伝統の味

お部屋をチェックしたら、次に気になるのはやっぱりお料理!日本のリゾートホテルの草分けであり、外国の要人を数多くもてなしてきたホテルならではの西洋料理を堪能することができますよ。

中でもオススメが、「メインダイニングルーム」で提供されている看板料理「日光虹鱒のソテー 金谷風」です。
▲「日光虹鱒のソテー 金谷風」(3,564円)

こちらは、明治時代に初代料理長・渡部朝太郎氏が考案し、歴代の料理長が受け継いできた伝統のメニュー。日本酒でフランベすることで川魚特有のにおいを消しています。

パリパリ香ばしい皮の中にはふっくらした身がぎっしり。バターと醤油、砂糖で仕上げた少し懐かしい甘辛いソースは、ご飯にもパンにもよく合います。付け合わせのにんじんも、ほんのりオレンジ風味でうっとりするおいしさ!
あの池波正太郎もお気に入りだったという逸品。ランチやディナーのコースにも入っているので、ぜひお試しいただきたいです。
▲「百年ライスカレー(ビーフ)」(2,100円)

本館1階の「クラフトラウンジ」で提供されている「百年ライスカレー」も、金谷ホテル伝統の一品。大正時代のレシピをもとに復刻されたこのカレーは、辛さ控えめ。野菜をベースにココナッツミルクやピクルスの漬け汁を使っていて、なんとも優しい味わいです。ルーに合わせる具は、ビーフ、チキン、カモ、ニジマスのフライの4種類から選べますよ。
▲「百年カレーパイ」(1個324円)

お土産として外せないのが、「百年カレーパイ」です。「百年ライスカレー」のルーをベースに、冷めてもおいしく食べられるようレーズンを入れるなどアレンジを加えたカレーフィリングが、バターの薫るパイに包まれています。外はパリパリ、中はしっとり。これはおいしい!

ホテル内のギフトショップと東武日光駅構内の「ザ・金谷テラス」でしか手に入らないオリジナル商品(数量限定)なので、お見逃しなく!
▲ホテル内のギフトショップでの焼き上がり時間は、10時と14時の1日2回

とっておきの一夜を

暮れなずむ日光の山々を眺めながら夕食をいただいたら、本館1階、ギフトショップの奥にあるバー「デイサイト」へぜひどうぞ。
▲シングルモルトウィスキーを常時200種類以上取り揃えている

真空管アンプからジャズが流れ、冬にはフランク・ロイド・ライト設計とも伝えられる大谷石の暖炉に炎が揺らめく、ここはまさに大人の隠れ家。夜がふけるまで、時間旅行を楽しむことができますよ。
明治から大正、昭和、平成と4つの時代のお客様を変わらぬ佇まいで迎えてきた「日光金谷ホテル」。そこには単なる宿泊先とは違う、とっておきの体験が待っていました。「日光東照宮」など世界遺産巡りと合わせ、ドラマチックな時間旅行に出かけてみてはいかがでしょうか?
※記事内の料金・価格はすべて税込です
髙松夕佳

髙松夕佳

編集者、ライター。茨城県つくば市のひとり出版社「夕(せき)書房」代表。『家をせおって歩いた』(村上慧著)、『山熊田 YAMAKUMATA』(亀山亮著)、『宮澤賢治 愛のうた』(澤口たまみ著)、『失われたモノを求めて 不確かさの時代と芸術』(池田剛介著)が好評発売中。ふるさと、茨城の魅力を再発見する日々。

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