「三鷹の森ジブリ美術館」はものづくりへの情熱にあふれた遊び場だった!
「三鷹の森ジブリ美術館」は、『となりのトトロ』や『魔女の宅急便』、『もののけ姫』、『崖の上のポニョ』など、多くのアニメーション映画を生み出してきたスタジオジブリの美術館。2001年の開館以来、名作の世界を味わえると人気ですが、たとえ映画を見ていなくても、ものづくりへの情熱に感動するはずです。今回はそんなジブリ美術館をレポート!※本記事の情報は取材時点のものです。最新情報は直接施設にお問い合わせください。

入口でトトロがお出迎え!
「この空間を自分の目で見て、体で感じてください。そして、思い出は心の中に大切にしまって持ち帰ってほしい」という館主の宮崎駿(みやざきはやお)監督の願いから、通常は館内での撮影は不可ですが、今回は特別に撮影をさせていただきました。

ジブリ美術館は、JR中央線の三鷹駅南口から歩いて15分ほど。玉川上水沿いの緑が多い道を歩いていくと、駅の喧騒から少しずつ離れて、ジブリの世界へと近づいていくようで胸が高まります。
三鷹駅南口から有料コミュニティバスで行くことも可能です。バスを利用すると約5分で到着します。

▲スタジオジブリがデザインしたコミュニティバス(大人片道210円、往復320円。子ども片道110円、往復160円。往復割引券は三鷹駅南口バス停前の券売機およびバス案内所で販売)
ジブリ美術館の看板を発見して門の中に入ると、受付にはなんとトトロ!?じつはこれ、ニセの受付なんです。

さらに奥に進むと、茶色い扉の入口があり、その向こうにほんものの受付があります。

扉を開くと、そこはドーム型の玄関ホール!扉や窓にはめ込まれたステンドグラスにはトトロやジジなどのジブリのキャラクターや映画のシーンが描かれており、思わず興奮してしまいます。これらはすべて一点もの。きらきらと光が差し込み、鮮やかな色彩が空間を包み込んでいます。

ここにあるほんものの受付でチケットをきっぷと交換します。きっぷには実際に映画の上映に使用できる35mmフィルムが付いていて、うれしい!大切な記念になります。

玄関ホールから階段を降りると、地下1階の中央ホールにでます。地下1階から地上2階までの吹き抜けになっており、外からの光がたっぷりと差し込みます。縦や横へと連なる階段と渡り廊下は、どこか『千と千尋の神隠し』の湯屋、「油屋」のシーンを彷彿させます。

迷路のような建物内には順路がないので、入ってすぐに螺旋階段を駆け上がる子どもの姿も見られます。私も真似して好きなようにあちこち歩き回ってみたいと思います!
アニメーションのおもしろさがわかる「動きはじめの部屋」

アニメーションの原型「ゾートロープ」の仕組みも紹介しています。ゾートロープとは少しずつポーズの違う複数の絵を素早く動かすことによって、絵が動いて見える装置のこと。

「トトロぴょんぴょん」は、ゾートロープを立体にした装置で、盤の上にトトロやサツキ、メイなどの人形がそれぞれ18体ずつ並んでいます。発光ダイオードの光が1秒間に18回という超高速で明滅しながら盤が回転すると、並んでいた人形がアニメーションのように動きだしました。まるで生きているかのようにトトロがジャンプしたり、サツキとメイが縄跳びをするのがかわいい!
ほかの展示にも、扉を開いたり中を覗き込んだりと、遊べる仕掛けがたくさんあり、子どもも大人も楽しみながらアニメーションの原理を体感できます。
オリジナルアニメを見られる「土星座」
子どもが怖がらないように窓があり、上映までは外からの光が明るく差し込みます。椅子が小さいのも子どもが座りやすくするためだそう。

訪れた日に上映していたのは、ねずみたちが相撲をとる「ちゅうずもう」(約13分)。あまりのおもしろさに思わず声をあげて笑っちゃいました。上映作品は定期的に入れ替わるので、行くたびに違う作品を楽しめますよ。
一本の映画が完成するまでの道すじを辿る「映画の生まれる場所」
その最初の小部屋〈世界のはじまる所〉は宮崎駿監督の仕事部屋のような部屋。壁にたくさんのスケッチが貼られており、奥の机には描きかけの絵、机の周辺には本や飛行機の模型やだるまなどさまざまなものが置かれています。スケッチやものから監督のものづくりへの熱意や愛情が伝わってきて、見ているだけでワクワク。

さらに美術スタッフの仕事も紹介されています。壁一面に名作の背景画などが貼られていて興味深い!写真かと思ってしまうくらいリアルで美しい絵の一枚一枚に思わず見とれてしまいます。
作業机には絵の具、筆、ドライヤーなどの画材や作業道具のほかに、おもちゃらしきもの(絵の題材かも?)やお菓子が置かれており、思わず笑みがこぼれます。

ほかにも絵コンテを描く〈もの語る所〉、アニメーターが絵を描く〈作画室〉、色をつける〈トレース&彩色〉などの仕事机があり、それぞれでどのような作業が行なわれているかがわかります。また〈絵コンテ室〉ではジブリ作品の絵コンテのコピーを見ることができるので、「あのシーンはどんな演出の意図があったのだろう」と、一日中見ていたくなってしまいました。

ところどころに宮崎駿監督の直筆のコメントや絵もあり、時間が過ぎるのを忘れるくらい熱中してしまいました。発想からはじまって一本の映画が完成するまでには、多くの人による緻密な作業が蓄積されているんですね。監督やスタッフのアニメーション映画への深い愛情や情熱に感動しました。
ジブリ作品の色使いを特集した「映画を塗る仕事」展

▲期間は2018年11月17日(土)~2019年11月
こちらの展示では、故・高畑勲(たかはたいさお)監督や宮崎駿監督がアニメーション制作でこだわった色使いを、両監督を支えた彩色設計スタッフの故・保田道世(やすだみちよ)さんによるセル画や色指定など、当時の制作資料を用いて紹介しています。
昨今はデジタルによる着彩やCGによる画面づくりが主流となりましたが、セル画専用の絵の具による限られた色数のなかで、監督からの要求に応える努力を惜しまなかったスタッフたちの知恵と工夫を間近に感じられます。セル画も数多く展示される、とても貴重な機会です。
ネコバスとロボット兵にも会える!

ネコバスルームの横からテラスへ出て螺旋階段を上がると、屋上庭園に辿り着きました。かわいらしく咲き誇る草花のなかにいたのは、『天空の城ラピュタ』に登場していたロボット兵です。高さはなんと約5m!

ぼーっと見つめていると、いまにも、のそっのそっと動きだしそうな気がしてきました。
ここでしか出会えない本やグッズ

同じく2階にあるミュージアムショップ「マンマユート」では、ジブリ美術館だけのオリジナルグッズやジブリのグッズを購入できます。オリジナルの絵の具セットやお菓子やTシャツ、文房具、キーホルダーなどさまざまな商品が揃っています。


*時期によっては、グッズが品切れとなる場合もあります。予めご了承ください。
最後に1階にあるカフェ「麦わらぼうし」(11:00~18:00L.O.)にも立ち寄ってみました。料理はあたたかい家庭料理が基本。
定番の「ふぞろいイチゴのショートケーキ」(800円)は、たくさん並んだふぞろいのイチゴがかわいい。生クリームもたっぷりのっていて、見た目以上にボリューミーです。

広報部の机ちひろさんにジブリ美術館への思いを聞いてみました。
「こどもの頃に来てくれた方が大人になってお子さんを連れて来てくれています。来るたびに楽しんでいただけるよう、企画展示を中心に次々と新しいことを行なっています。ずっと作り続ける、魅力あふれる美術館をめざしています」
1日中めいっぱい堪能して美術館の外へ出ると、気持ちのよい風が吹いていました。「ジブリ映画の世界を味わえる」と思っていましたが、訪れてみるとそれだけではなく、アニメーション映画がどのように作られているかだったり、ものづくりのおもしろさや大変さ、そして深い情熱を感じました。みなさんもぜひ一度、訪れてみてください。
三鷹の森ジブリ美術館
東京都三鷹市下連雀1-1-83
[開館時間]10:00~18:00(日時指定の予約制。入場時間は10:00/12:00/14:00/16:00 ※指定時間から30分以内に入場。※入れ替え制ではございません)
[休館日]火曜
[料金]大人・大学生:1,000円、高校・中学生:700円、小学生:400円、幼児(4歳以上):100円 ※4歳未満は無料
[購入方法]毎月10日に翌月入場分のチケットをローソン店舗等で発売。購入方法はローソンのジブリ美術館専用ホームページ(http://ldj.jp/gmt/)にてご確認ください。※購入後の日時変更および払い戻しはできません。
チケットに関するお問い合わせ(ローソンチケット):0570-000-777(10:00~20:00)
0570-055777(9:00~18:00 休館日は休み)
撮影:舛元清香

桑沢香里
編集者、ライター。出版・編集プロダクションのデコに所属。雑誌、書籍、小冊子、ウェブ媒体の編集・執筆などを手がける。編集を担当した本に『わたしらしさのメイク』『おとなのヘアケア読本』(ともに技術評論社)、『劇団四季ミュージカルCATSのすべて』(光文社)、『大相撲手帳』(東京書籍)、『大相撲語辞典』(誠文堂新光社)などがある。
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