旬まっさかり!夏の浅草観光に、飯田屋のどじょう料理はいかが?

2018.08.13 更新

浅草の国際通りからかっぱ橋本通りを西に少し入ると、「どぜう」という印象的な看板が目に入る。どじょう料理の名店「飯田屋」である。梅雨明けの暑い昼下がり、夏を元気に乗り切りたくて、のれんをくぐった。

引き戸を開けると、「いらっしゃいまし」の威勢のよい声が響く。広い土間では下足番の青年がテキパキとお客さんの靴を預かっている。浅草の老舗らしい活気がみなぎっている。
▲「どぜう」の看板が目をひく飯田屋の店がまえ

骨抜きにされそうなくらいうまい「ほねぬき鍋」

2階の個室に案内していただき、さっそく「ほねぬき鍋」を注文した。
この「ほねぬき鍋」は、頭を落とし、開きにして骨を抜いたどじょうが入っている。丸ごとのどじょうが入っている「どぜう鍋」にくらべて、どじょう料理の初心者向きといえる。略して「ヌキ」と呼ばれる。
▲「ほねぬき鍋」(1人前1,850円・税込、写真は2人前)

5代目にあたる若旦那の飯田唯之(ただゆき)さんが食べ方を説明してくれた。
鉄鍋に入ったどじょうを煮て、食べる前にネギをたっぷりのせる。味つけに山椒か「七色」(七味とうがらし)をかけて食べる。
煮詰まってきたら、しょうゆベースの割り下(濃いめと薄め)を足してもよい。

鍋の真ん中には見慣れない食材がのっている。
「どじょうの卵です。どじょうは夏に産卵をするので、卵を食べられるのはだいたい7月から8月いっぱいまで。いまの時期だけの楽しみです」(飯田さん)
▲中央にすりごまのように見えるのがどじょうの卵

産卵期だから体に栄養がのっていて、骨もやわらかくなっている。ゆえにどじょうは夏が旬なのである。
▲ネギは無料でおかわりもできる

お皿によそおうとして、どじょうの下にたっぷりとゴボウが敷きつめられていることに気がついた。
「ゴボウはどじょうのアクを吸って泥くささを消してくれます。どちらも泥の中で育つから相性がいいんでしょうね。どじょう料理の名脇役です」と飯田さん。
一口食べてみると、たしかに泥くささがない。身はやわらかく小骨も気にならない。身にもごぼうにもしっかり割り下の味がしみこんでいる。卵は粒が小さいのでプツプツというよりムチムチとした食感。取材中ではあるものの、つい日本酒が飲みたくなった。まさに骨抜きにされそうなうまさなのである。

ふわっとした玉子とともにサッと食べたい「柳川鍋」

続いて「柳川鍋」を頼んだ。
ドジョウとゴボウを煮て、玉子でとじる有名な料理である。その由来には諸説があり、福岡県の柳川産の土鍋が使われたからとも、日本橋横山町の柳川という料理屋から広まったからともいわれている。

調理場で生玉子を入れて、ちょうど食べごろのタイミングで運んできてくれる。鉄鍋ではなく土鍋にしているのは、火をとめたあとに煮立ちすぎないようにするためである。
▲卓上の丸い木枠に置いてくれる

口に含むと、玉子がふわっととろけて、そのなかから濃厚などじょうの香りがただよう。玉子のせいか、甘くソフトな味わいである。
作家の永井荷風は飯田屋の柳川鍋が好きで、いつもお銚子を1本つけて食べていたそうだ。
▲「柳川鍋」(1人前1,850円・税込)。どじょうは頭を落として開いてある
▲思わず笑みがもれるおいしさ

「どじょう汁」は江戸の田んぼの味がする

ごはんと汁ものも食べたくて、「どぜう丼」と「どぜう汁」も注文した。
「どぜう丼」はどんぶり飯の上に開いたどじょうの蒲焼きがのっている。見た目はうな丼に見えるが、味はうなぎよりさっぱりしている。どじょうがけっこう上品な味であることに気づかされる。
▲「どぜう丼」(2,000円・税込)

「どぜう汁」は、飯田さんいわく「いちばんシンプルで、どじょう料理の“原点”」といえる料理だという。頭もはらわたも骨もとらない、丸のままのどじょうが入っている。
昔、どこにでも田んぼがあったころ、夏になるとどじょうをつかまえて、とりあえずみそ汁に入れたのではないか。飯田さんはそう話す。
▲「どぜう汁」(300円・税込)

頭からひと口で食べてみると、骨はやわらかく、口のなかにどじょうのうまみが広がる。くさみや苦みはない。頭と骨からカルシウムがたっぷり取りこまれて、力がみなぎる感じがした。汁はさっぱりとした白みそである。
▲丸のままのどじょうが入っている

生きたどじょうを井戸水で泥抜きする

飯田屋のどじょうにくさみがないのには理由がある。
生きたどじょうを仕入れて井戸水で2、3日泥抜き(内臓の内容物を排泄させる)しているのだ。
井戸水があるというのが、飯田屋の大きなアドバンテージといえる。
▲元気に泳ぐどじょうたち

どじょうはおもに秋田県から仕入れている。
「地元の方たちが養殖をしてくれています。県の方も熱心で、秋田の特産品にしようとかんばっています。秋田は伏流水がいいのでおいしいどじょうが育つんですよ。養殖といっても実際の田んぼのような環境で育てています」
▲厨房の料理長。「あがったどじょう(死んでしまったどじょう)は使いません」

カルシウムはうなぎより豊富。夏が旬の栄養食

どじょうは滋養強壮にいい食材として昔から知られてきた。実際に栄養価も高い。
「リンなどのミネラルやカルシウムがバランスよく含まれています。カルシウムはうなぎより多い。葉酸も含まれているから妊婦さんにもおすすめです」と飯田さん。
▲「どぜう鍋」(1人前1,750円・税込)用の丸のままのどじょう

暑いときに熱い鍋を食べることで、汗をかいて代謝も活発になる。
栄養価が高くて、夏が旬だからこそ、どじょうは夏バテ防止の食材として昔から重宝されてきたのである。

杉並区から食べに来たというご夫婦が撮影をのぞきにきた。
「ヌキと丸(どぜう鍋)を両方食べました。日本酒も飲んでもうお腹いっぱい。この時期は卵があるからいいね」とご満悦である。さすが常連さん、卵のことまでよくご存じでいらっしゃる。
▲1階の広間席。堀りごたつになっている

人気の飯田屋だが、いつも順風満帆だったわけではない。
明治36(1903)年頃に創業したのち、関東大震災と第二次世界大戦の2度、店が焼けている。そのたび再建して今にいたった。
▲「どじょうを食べてくれる人がもっと増えてくれるとうれしいですね」と、飯田さん

どじょうは泥抜きが必要なので、鮮魚店やスーパーにはあまり並ばない。食べるなら専門料理店へ行くしかない。浅草に遊びにきた際にはぜひ立ち寄ってほしい。浅草の中心地「六区」から国際通りをはさんで反対側。「浅草寺」からも近く、場所も便利である。
(撮影:冨田寿一郎)
大塚真

大塚真

編集者・ライター。出版社兼編集プロダクションの株式会社デコに所属。近年編集した本は、服部文祥著『アーバンサバイバル入門』、『加藤嶺夫写真全集 昭和の東京』シリーズの「4江東区」「5中央区」(ともにデコ)ほか。ライターとしては『BE-PAL』(小学館)などで執筆。

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