和倉温泉「加賀屋」が“日本一”と言われる理由を泊まって実感!

2018.11.27 更新

北陸を代表する温泉地、石川県・和倉温泉にある「加賀屋」は、全国の旅行会社が投票する「プロが選ぶ日本のホテル・旅館100選」で36年連続「日本一」に選ばれた老舗温泉旅館。なぜそこまで支持されるのか。その魅力を探ってきました。皇室や数々の著名人をもてなしてきた「加賀屋」の歴史と、そのおもてなしの真髄とは……。

110年以上の歴史を誇る老舗旅館「加賀屋」

石川県・能登半島に位置する「和倉温泉」は、国内では珍しい海から湧き出る温泉で、北陸でも人気の温泉地です。空路では東京・羽田空港から石川・のと里山空港までわずか1時間程度。北陸新幹線の開通により、電車でのアクセスも便利になりました。

「加賀屋」は和倉温泉の中心部に位置する老舗旅館。温泉街のなかでもひときわ存在感のある建物で、和倉温泉のシンボル的な存在にもなっています。

「旅行業のプロが選ぶ日本のホテル・旅館100選」で1980(昭和55)~2015年まで36年連続、また2017年も再び総合とおもてなし部門で一位に輝き、名実ともに日本一の温泉旅館として、全国から多くの宿泊客が訪れています。
その創業はさかのぼること今から110年以上前のこと。石川県津幡(つばた)町の農家だった小田與吉郎(よきちろう)さんが湯治で和倉温泉に訪れていたところ、廃業の旅館と出合ったそう。そこで田畑を売って和倉温泉に移り住み、旅館を開業することになったのが加賀屋のはじまりでした。

創業当時は30名程が宿泊できる木造の建物で、旅館というよりも旅籠に近かったそう。それが今では和倉温泉街に「加賀屋」「あえの風」「松乃碧」「虹と海」、金沢駅前に料理旅館「金沢茶屋」と5つの旅館を構える、国内トップクラスの旅館グループとして成長を遂げました。
▲温泉街のどの場所から見ても、加賀屋は目立ちます!

入口からすでに感じるおもてなしの心

多くの観光客から絶大な支持を得ている「加賀屋」は一体どんな旅館なのでしょうか。早速なかに入ってみたいと思います!
入口には加賀屋の文字が。なんだか緊張しますが、エントランスに近づくと、早速スタッフの方に出迎えていただきました。まずは1階左手のフロントでチェックインの手続き。スタッフの凛とした姿勢に、こちらも思わず背筋が伸びます。
チェックインは15時から。スタッフの笑顔と淀みない対応で、次第に緊張がほぐれていきます。宿泊者の名前を伝えただけで、すべて把握している安心感。旅の疲れがどこかへ行ってしまいそうなあたたかい雰囲気から、すでに加賀屋のおもてなしの心を感じます。
▲さりげなく掲げられているのは、創業間もない頃から使われている加賀屋の木造看板

天皇陛下が御宿泊された迎賓室も

チェックインの手続きが終わり、客室係の案内のもとお部屋へ。加賀屋は、雄大な風景を存分に味わえる「雪月花(せつげつか)」、温泉露天風呂付きの「能登渚亭(なぎさてい)」、七尾湾が一望できる「能登客殿」、そしてリーズナブルな価格ながら、ゆったりと温泉情緒を満喫できる「能登本陣」の4つの棟にわかれています。

「雪月花」の18~20階にある特別階「浜離宮」には、皇室の方々がご宿泊された迎賓室も。
▲雪月花20階に位置する加賀屋最上の客室「天游(てんゆう)」

今回は、人気が高い客室の一つ「雪月花」の和室(1泊2食4名1室利用時の大人1名39,960円~税・サービス料込、入湯税別)に宿泊することにしました。
▲広々とした和室12.5畳に和倉の景色が一望できる広縁(ひろえん)つきの純和風客室。床の間には四季の花が生けられていて、風情を感じます

加賀屋に宿泊するならぜひ参加したい「館内は美術館ツアー」

能登渚亭では女性の方にも心地よく滞在していただけるような佇まいにしたいと、館内のいたるところに石川県の伝統工芸品を展示しています。

それらの作品を毎日2回各回約45分(16:00~/17:00~。各回定員20名)、加賀屋のスタッフの案内のもと、館内をめぐって鑑賞する「館内は美術館ツアー」が大人気なのです。事前予約制なので、チェックイン時に申し込むのがおすすめ。
▲天井まで続いている「四季の花」梶山伸(かじやましん)作

例えば、能登渚亭の1階から12階までの吹き抜け一面にわたる加賀友禅は、金沢の作家、梶山伸氏によるもの。ガラス張りのエレベーターから眺めることができ、豪華絢爛な加賀友禅に思わず心を奪われます。
一階のラウンジ、「飛天」の窓に掲げられているには、輪島塗でつくられた天女の絵。
▲角偉三郎(かどいさぶろう)作、輪島塗の「天女の舞」

こちらは俳人・高浜虚子氏によって書かれたもの。「古壺新酒(ここしんしゅ)」すなわち、伝統的な建物を大事にし、常に新しいサービスに挑戦するという加賀屋の精神を表しています。
▲能登渚亭の一階「飛天」で見ることができます

人間国宝や文化勲章、文化功労者など、日本を代表する作家による作品が館内に散りばめられていて、まさに美術館のよう。
▲石川県の焼物、九谷焼や大樋焼(おおひやき)もさりげなく飾られています

まだまだたくさんの見どころがありますが、あとはツアーに参加した方だけのお楽しみです。加賀屋に宿泊するならぜひ参加してみてはいかがでしょうか。

七尾湾を一望できる温泉

食事の前に、温泉も楽しみましょう。
加賀屋がある和倉温泉は、開湯1200年の歴史を誇る石川県を代表する温泉。もともと海から湧き出した温泉のため、塩分濃度が高いナトリウム・カルシウム-塩化物泉です。
源泉100%の飲み湯コーナーでは実際に温泉を飲むことも可能。2倍に薄めて飲用すれば胃腸病や貧血病などに良いとされています。

3階にわたって広がる男湯の「恵比寿の湯」はサウナや水風呂をはじめ、天井がガラス張りの野天風呂や空中露天風呂が充実。七尾湾が一望できる景色は格別です。
▲恵比寿の湯の空中露天風呂

女湯は「辨天(べんてん)の湯」と「花神(かしん)の湯」の二つ。特にイタリア製タイルで彩られた花神の湯はまるで竜宮城のような美しさで、お姫様気分を味わえます。
▲女性専用の「花神の湯」

毎月26日は「風呂の日」として、宿泊者は和倉温泉街にある加賀屋グループの4つの旅館を湯めぐりすることができます。タイプの違う温泉を楽しむことができるのも嬉しいですね。

ここでしか食べられない、にこだわった海の幸

さて、いよいよ待ちに待った食事の時間。早速食事処に向かいます。

加賀屋では料理にも細部までこだわり、「ここでしか味わうことのできないもの」を取り入れています。
▲料理の一例

春は山菜やアワビ、夏はサザエや七尾湾特有の貴重なアカニシガイ。秋はきのこなどの山の幸、冬は甘エビやカニ、ブリなど季節の食材が登場。さらに名物の料理として、鯛のかぶと煮やノドグロ、地元の魚醤「いしる」を使った海鮮焼きも人気です。
▲ノドグロは塩焼きにすることで旨みがギュッと凝縮
▲新鮮な海の幸にお酒も進みそう

加賀屋では毎晩800食近い会席料理をつくっていますが、長期滞在されている方にはお客様に希望の料理を伺うこともあるそう。滞在中は同じメニューを出さない、そんなこだわりも加賀屋ならではのおもてなしです。

食後も楽しめる仕掛けがたくさん!

お腹いっぱいになった後は夜の加賀屋を散策してみましょう。館内はいたるところで催しが開催されているので、昼とはまた違った表情を楽しむことができます。
▲お土産処が軒を連ねる1階「錦小路」
▲全長80m、広さ1,000坪にわたり銘店がずらりと集結した1階「錦大路」

錦大路の一角にある「祭り小屋」では、毎晩20:15~から歌謡ショーや和太鼓演奏、子どもも楽しめるマジックショーなどを開催。
▲祭り小屋前では能登の産品を揃えた朝市「能登あすなろ市」も開催しています

さらに、加賀屋ではなんと専属の歌劇団「雪月花歌劇団」も人気。ラインダンスをはじめ、日舞やタップダンスなど、躍動感あふれるショーを鑑賞することができます。
▲2003年に結成した「雪月花歌劇団」。きらびやかなショーにファンも多いそう
▲シアタークラブ「花吹雪」で開催しています

どの時間帯に訪れても楽しめる仕掛けが盛りだくさん!夜も素敵な思い出ができそうですね。

加賀屋が“日本一”と言われる理由

加賀屋が“日本一”と言われるようになるまでには、長い道のりがありました。

1941(昭和16)年のこと、とある大きな企業がお得意様とともに和倉温泉の複数の旅館に宿泊。加賀屋も宿泊箇所のうちの一つでしたが、準備に追われた当時の女将はつい、うたた寝をしてしまい、お客様の出迎えに遅れてしまったそう。お客様からひどいお叱りを受け、すっかり気を落とした女将でしたが、同時に「加賀屋を日本一の旅館にしてみせる」と決心し、さまざまなサービスに取り組んできました。
その一つが、女将による各お部屋への挨拶回り。
今では多くの旅館でも見られる光景ですが、加賀屋では、いち早く女将自ら客室に挨拶に訪れるようになりました。

お客様にNOを言わない姿勢を徹底しているのも加賀屋ならでは。
宴席で「富山のお酒が飲みたい」と言われたお客様のために、ハイヤーを飛ばして富山まで買いに行ったこともあったそうです。
加賀屋では、客室係への教えに「笑顔で気働き」という言葉があります。
気を働かせる、つまりお客様がなぜ加賀屋にお越しになられたのかをお客様の動きや言葉の端々から読み取り、どうすれば喜んでいただけるのかを考え、実践していくそう。

例えば、記念日を迎えたお客様に記念品をお渡しするサプライズなども、加賀屋の“気働き”の精神から生まれたものでした。
ほかにも加賀屋のおもてなしにまつわる話は数多くありますが、女将をはじめすべての客室係にその心意気が浸透しているのは驚きです。

最近では、「日本一のサービスを実際に働いて学びたい」と県外から就職を希望する人も増えているそう。

子どもがいる人も安心して働けるよう企業内保育園「カンガルーハウス」を運営したり、力仕事の多い客室係をサポートするためにITの技術を導入したりなど、安心して働ける環境づくりにもいち早く取り組んできました。
このような取り組みがあるからこそ、加賀屋のスタッフはお客様へのおもてなしに集中できるのかもしれません。
日本一と言われるおもてなしを体験しに、ふらりと加賀屋を訪れてみてはいかがでしょうか。チェックインからチェックアウトまで、きっと皆さんも心ゆくまでくつろぐことができるはずですよ。

画像提供:加賀屋
石原藍

石原藍

ローカルライター。 大阪、東京、名古屋と都市部での暮らしを経て、現在は縁もゆかりもない「福井」での生活を満喫中。「興味のあることは何でもやり、面白そうな人にはどこにでも会いに行く」をモットーに、自然にやさしく、心地よい生き方、働き方を模索しています。趣味はキャンプと切り絵と古民家観察。

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