高山祭屋台会館で、飛騨高山「秋の高山祭」の魅力に迫る

2018.09.22 更新

日本三大美祭であり、日本三大曳山祭にも選ばれている岐阜県高山市の「高山祭」。祭りは春と秋に開催されていますが、今回は秋の高山祭(八幡祭)の舞台「櫻山八幡宮」を訪れ、高山祭の魅力を事前調査することに。高山祭の見どころとともにご紹介します。

匠の伝統と誇りを守り続ける「高山祭」

日枝神社にて毎年4月14・15日に行われる「山王祭」と、櫻山八幡宮にて毎年10月9・10日に開催される「八幡祭」。これらふたつの例祭を総称して「高山祭」と呼びます。起源は天正13(1585)年~元禄5(1692)年ごろまでさかのぼるとされており、非常に歴史のある飛騨高山の伝統行事です。
▲(写真提供:高山市)

春・秋ともに最大の見どころといってもいいのが「屋台」。「屋台」とは、祭りの際に人力で曳いて動かす出し物のこと。(「曳山(ひきやま)」や「山車(だし)」「だんじり」「山鉾」など、祭りや地域によってさまざまな呼び方がありますが、大きくはどれも同じもののことを指します)
▲高山祭で注目したい、国指定重要有形文化財の「屋台」(写真提供:高山市)

高山祭は、日本の祭りの中でも特に美しい祭りとして、日本三大美祭(京都の祇園祭、秩父夜祭、高山祭)や、曳山(ひきやま)が用いられる祭りの中でも日本三大曳山祭のひとつとしてその名を全国に知られています。
▲夜には、各屋台に100個程も取り付けられた提灯が怪しげに灯り、艶やかな美しさを演出

高山祭の屋台は、豪華絢爛な仕掛けが施された車の造りや、屋台上に施されたからくり人形など、まさに匠(たくみ)の技の結晶。これらの屋台は国指定重要有形文化財に登録されていて、その美しさから「動く陽明門(日光東照宮の門)」と例えられているんだとか。
▲豪華な装飾や人形などが配された屋台

祭り当日は、これらの豪華な屋台が総勢数百名の祭行列とともに、お囃子や雅楽に彩られながら地域を曳き廻されます。
▲(写真提供:高山市)

高山祭の魅力については、記事後半でくわしくご紹介するとして、この屋台を、お祭り前にじっくりと見学できる場所があるんです!
それが、「高山祭屋台会館」!
秋の高山祭の舞台、櫻山八幡宮内にあるこちらの施設では、祭りに登場する屋台の実物が常設展示されているんです。多くの人びとで賑わう高山祭。当日は、なかなか屋台に近づいて細部までじっくり見ることはできません。事前にじっくりと見て屋台の予習をしておけば、よりいっそうお祭りを楽しむことができるはず。

というわけで今回は、高山祭の予習にもってこいの櫻山八幡宮の旅。さっそくスタートです。

秋の高山祭の舞台、櫻山八幡宮を訪れる

櫻山八幡宮までは、JR高山駅から歩いて20分ほど。のどかで趣きある町なみを散策しながら進むと、まずは参道の入り口にある巨大な鳥居にたどり着きました。
見上げるほどの鳥居の大きさに、心が引き締まります。
鳥居の手前には、宮川から分岐した川の水が、のどかに流れています。橋も伝統的なつくりのもので、どことなく京都を思わせるような雰囲気。
櫻山八幡宮の参道の前には、町家のような店舗が立ち並んでいて、風流な風景が広がっています。秋の高山祭では、この参道に立派な屋台が曳き揃えられます。
▲外国人観光客の姿もたくさん

参道の奥に、明神型の立派な鳥居が見えてきました。「一の鳥居」です。桧製で、柔らかな木の質感が印象的です。
▲「一の鳥居」

お散歩をするように、ひとりで訪れる観光客の姿も。このように、のんびりゆったりとお参りするのも、景観ゆたかな櫻山八幡宮の楽しみ方のひとつです。
▲「一の鳥居」をくぐった先にある「二の鳥居」

それでは「大石段」と呼ばれる階段を登って、本殿にまいりましょう。
▲「大石段」

ちなみに19段あるこちらの階段。各段がひとつの大きな石からつくられているという貴重なものなんだとか。
こちらが櫻山八幡宮の本殿。日本の伝統的な神社建築様式のひとつとされる流造(ながれづくり)・総檜(そうひのき)造りの本殿は、檜のあたたかみを感じる立派な造形美です。
▲奉納された絵馬を見学することができる「絵馬殿」の天井

櫻山八幡宮の境内には、本殿やこの後ご紹介する今回のお目当て「高山祭屋台会館」のほかにも、写真映えするスポットがたくさん。櫻山八幡宮を訪れた際は、ぜひいろいろ散策してみてください。

「高山祭屋台会館」で大迫力の屋台を見学!

▲「高山祭屋台会館」

いよいよ、本日のお目当て「高山祭屋台会館」へ。本殿へ向かう参道の「一の鳥居」と「二の鳥居」のちょうど真ん中あたりに位置する大きな建物です。
▲入館券売場で、入館券を購入。大人900円、高校生550円、小・中学生450円(すべて税込)
▲館内入り口では、高山祭を賑わす獅子舞がお出迎え

キリッとした表情がなんともかっこいい獅子舞が展示されている入り口を通り、館内へと進むと、さっそく神輿と屋台の姿が!
「お~!すごい迫力!!」
館内は、中心に吹き抜けの広々としたスペースが設けられ、祭りに登場する神輿や屋台の実物が展示されています。

昔は高山祭で使用される屋台は、年に一度の祭礼日以外には見ることができませんでした。そこで、通年で屋台の素晴らしさを多くの人に知ってもらいたいという飛騨の人びとの念願から、昭和43(1968)年に高山祭屋台会館が開館。
▲上から神輿や屋台を一望することも

ガラス張りの展示スペースの周りをぐるりと一周するようにスロープが設けられ、来訪者はそのスロープを進みながら見学できる造りになっているので、あらゆる角度から屋台をじっくりと見ることができます。
屋台にはさまざまな、精巧な装飾が施されています。どれも匠の技によって、隅々まで「望み得る最高のかたち」をめざし、作り出されたものばかり。

屋台づくりに関わった人たちの粋な美意識。そして、それらを大切に保存し、後世まで守り伝えようとする人たちの想い。これらが通じ合い、今もこのような美しい造形を見ることができていると思うと、とても感慨深いものがあります。
▲年3回の入れ替えを行いながら展示される4基の屋台と1基の神輿

それでは、神輿と屋台を順にご紹介していきましょう。こちらの屋台会館では、3月下旬、7月下旬、11月中旬の年間3回、屋台の入れ替えを行いながら、常時4基ずつ交代で屋台を公開しています。(※神輿1基は固定で展示)
まずは、精巧さにおいて日本一とも言われている神輿です。
高山祭の神輿は、重さ2.5トンもあり、80人の担ぎ手がいなければ運ぶことができないとされているほど大型なもの。
まさに贅の限りを尽くした、豪華絢爛な装飾が施されています。たとえばこちら。八角形の形をした神輿の中心部には、細かい装飾が、これでもかと言わんばかりに。
一つひとつ、職人の手仕事で仕上げられているというこの装飾。見ていると思わずため息が漏れてしまいます。
その奥に並ぶ4基の屋台。高山祭に登場する計23基の屋台は、どれもそれぞれに個性的な装飾が施されています。この日展示されていたのは、巨大な大太鼓が勇ましい「神楽台(かぐらたい)」、行者の人形が特徴的な「行神台(ぎょうじんたい)」、屋台の内部まで見られる「大八台(だいはちたい)」、鳳凰の装飾が美しい「金鳳台(きんぽうたい)」の4基。
こちらは大きな太鼓が配された「神楽台」。
祭りの際は、屋台行列の先頭を担う屋台で、大太鼓2名、締太鼓1名、笛2名の乗り手がこの屋台に乗り込み、祭囃子を演奏するんだとか。
よく見ると、太鼓の打面が黒くはげているのがわかります。大太鼓を叩く者は、太鼓の台から仰け反って落ちてしまいそうになるくらい、豪快に身体を使って、太鼓を叩くのだそうです。その躍動が、打ち付けられた跡が残る打面から直に感じられます。
▲行者の人形が特徴的な「行神台」
こちらは、直径1.56mと、かなり大きな車輪が特徴の「大八台」。
▲屋台の中でも珍しい平安朝風の御殿造り

「大八台」は、中段部分の簾が半分ほど開いていて、屋台の中が見られるのがポイント。高山祭の当日は、この御殿の中で、烏帽子(えぼし)と直衣(のうし)の装束に身を包んだ童子(どうじ)が、囃子を演奏します。
▲「金鳳台」の屋根には、黄金に輝く鳳凰が。欄干には、彫刻の名手である谷口与鹿(よろく)が描いた四季の花が見られます

精巧なつくりの屋台には始終圧倒されっぱなしです。

ここで、館内をより楽しく巡る方法をご紹介しましょう。高山祭屋台会館では、入り口でポーダブル「音声ガイド」を無料で貸し出してくれます。
▲ポータブルの「音声ガイド」

日本語と英語に対応しているこの「音声ガイド」。言語を選んで、展示物の近くに掲載されているガイド番号を選ぶと、その展示物にまつわる解説が聞けるという優れもの。
屋台に関するくわしい説明やさまざまなトリビアが聞けるので、ぜひ気軽に利用してみてください。
屋台だけでなく、高山祭についての紹介映像や、高山祭に関連の深い資料なども展示されています。
たとえば、こちらは「大車」と呼ばれる屋台の車輪部分。
「屋台を進めたときに、提灯がゆらゆらと揺れる演出を実現するため、あえて完全な円形にはせず、わざと少しいびつに作られているんですよ」
お話を伺ったスタッフの方が教えてくれました。

「すごい!そこまで考えられているんですね」
屋台に施されているさまざまな工夫など、知れば知るほど屋台を見るのが一層楽しくなってきます。

ほかにも、会館内の展示では、高山祭の屋台に関するさまざまな制作秘話などがたくさん紹介されています。興味のある方は屋台会館の展示や音声ガイドによる解説で、屋台博士をめざしましょう。

屋台会館のスタッフに聞いた秋の高山祭の見どころ

匠の技がつまった屋台。屋台会館でまじまじと堪能するのもいいけれど、こうなるとやはり祭りで実際に動く屋台をぜひとも見学したいところ。そこで、あらためて秋の高山祭の見どころを屋台会館の方に聞いてみました。
【ポイントその1】 11基の屋台が一堂に会す「屋台曳き揃え」!!
▲(写真提供:高山市)

最初の見どころは何といっても「屋台曳き揃え」。
毎年10月9・10日に開催される秋の高山祭。9日は午前9時ごろから午後6時ごろまで、10日は午前9時ごろから正午ごろまで、11基の屋台が桜山八幡宮の表参道から境内にかけてずらりと並びます。屋台会館内でじっくりと鑑賞するのもいいですが、やはり屋外で11基が一堂に会す大迫力の光景は要チェックです。
【ポイントその2】 人形が生きているかのように舞う「からくり奉納」!!
▲布袋台での「からくり奉納」の様子(写真提供:高山市)

次なる見どころは、櫻山八幡宮の境内に配置された屋台で繰り広げられる、からくり奉納と呼ばれる人形の舞です。屋台の上で、からくり人形がまるで生きているかのように、繊細かつ大胆な舞を披露します。こちらも、10月9・10日の両日で見られます。(9日は正午ごろと午後2時ごろ、10日は午前11時ごろと午後1時ごろから)
【ポイントその3】 圧巻の祭行列「御神幸(ごしんこう)」!!
▲「御神幸」で大行列をつくる裃(かみしも)姿の警固(けいご)

獅子舞(ししまい)や、闘鶏楽(とうけいらく)と呼ばれる飛騨の伝統衣装に身を包んだ一行、裃姿の警固の一行などが数百名の大行列をつくり、囃子や雅楽などを披露しながら、2時間ほどかけて町を巡ります。(10月9・10日の両日で見られます。9日は午後1時ごろに八幡宮表参道から出発、10日は午前8時30ごろに八幡宮表参道を出発)
【ポイントその4】 夜の幻想的な風景を堪能「宵祭(よいまつり)」
▲「宵祭」で提灯に火を灯した屋台

9日午後6時ごろから9時ごろまで行われる「宵祭」。それぞれ100個もの提灯を灯した屋台が町を巡り各屋台蔵へと帰っていきます。灯を揺らしながら進む屋台の幻想的な姿は、まさに秋の高山祭のシンボルそのものであると言えます。

ほかにも秋の高山祭でしかみることができない「屋台曳き廻し」など、見どころいっぱいの秋の高山祭。暑さもやわらぐ秋の旅行に最適ですよ。

春の高山祭も見逃せない!

最後に、春の高山祭の見どころについても、あわせてご紹介しましょう。
▲日枝神社

春の高山祭は、櫻山八幡宮から南へ徒歩約30分の日枝神社にて、毎年4月14・15日に開催されます。
日枝神社付近は、こちらも櫻山八幡宮同様、古き良き町なみがのこる地域。祭りの開催日以外でも、日頃から観光客に人気の散策スポットとなっています。

秋の高山祭が、「櫻山八幡宮に石清水八幡宮から応神天皇が鎮座された祝い」として開催されるのに対し、春の高山祭は「日枝神社に近江から大山咋神(おおやまくいのかみ)が鎮座された祝い」として開催される祭り。豪華絢爛な屋台が登場し、祭行列が町を練り歩くなど、似ているところはありますが、そもそもは全く違う祭りなんです。
▲「屋台曳き揃え」と「御巡幸(ごじゅんこう)」(写真提供:高山市)

そのため、春と秋の高山祭は、開催時期や地域が違うということだけでなく、「登場する屋台が違う」など、それぞれにまた違った見どころがあります。

たとえば、秋の高山祭では、計11基の屋台のうち、からくり人形を載せた屋台は1基のみですが、春の高山祭では、計12基の屋台のうち、3基ものからくり屋台があります。
▲「からくり奉納」の様子

お旅所前にて、三番叟・龍神台・石橋台の屋台の上で人形が優雅に舞う「からくり奉納」は、綱方(つなかた)と呼ばれる屋台内の人が、たくさんの綱を操って人形を操作するという大変高度な技術を要するものなんだとか。生きているかのような人形の繊細かつ大胆な演技は必見です。
▲「夜祭(よまつり)」で艶やかに灯る屋台(写真提供:高山市)

そして、4月14日の午後6時半ごろから始まる「夜祭」は、春の高山祭最大の見どころ。たくさんの提灯で彩られた屋台と町に咲き乱れる夜桜とのコントラストは、この世のものとは思えない美しさだと定評があります。
秋には秋の、春には春の、それぞれに見どころいっぱいの高山祭。そして伝統の屋台を通年で見学することのできる櫻山八幡宮の「高山祭屋台会館」。飛騨高山の櫻山八幡宮は、時期を変えて何度も楽しめるステキなスポットでした。
James

James

イギリス人と日本人とのクォーター。大学では工学部、情報システムを専攻したかと思えば、ミュージシャンとしてギタリスト、MC、DJとして活動。TVやラジオなどでも活躍。その後(株)アドビジョンにて、デザインやコピーライティングなどマルチに活躍。バックグラウンドを活かした独自の視点が人気のライター。

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