香川県・こんぴら参道近くに発見!懐石コースで楽しむさぬきうどんの店

2018.10.06 更新

約620軒ものさぬきうどん店がある香川県(2018年9月現在)。一般的なフルサービスのお店に、最近主流になってきているセルフ店、そして製麺所の片隅で食べさせてくれるお店まで、そのスタイルは千差万別。近年ではカフェ風の店やニュースタイルの店も。そんな中、長い石段で有名な「金刀比羅宮」の参道近くに、さぬきうどんを懐石料理で楽しめる話題のお店があると聞き、さっそく行ってきました。

賑やかなこんぴら参道を離れて、隠れ家のようなお店へ

今回のお目当てのお店があるのは、香川県の少し西よりにある琴平町。長い石段で有名な「金刀比羅宮」をはじめ、その麓にある「こんぴら温泉郷」や、うどん作りが体験できる「中野うどん学校」がある、県内屈指の観光地です。

「金刀比羅宮」御本宮へ続く参道の785段の石段の途中、105段目で大きな備前焼の狛犬と出合ったら、斜め左の脇道に入ります。
▲石段105段目、備前焼の狛犬(中央)が目印。左の道を入ります

そして約150m進むと、「宿」のロゴが入ったオレンジ色ののぼりが立ったお店が姿を現します。
▲こちらが2018年6月にオープンしたうどん懐石料理専門店「宿月(しゅくげつ)」

山際にある古民家を改装したこぢんまりとした店舗は、参道の喧噪から離れた隠れ家という雰囲気です。少し歪んだ古い窓ガラスがそのまま使われているなど、レトロなパーツが今風のデザインにうまく取り入れられています。
▲古民家を改装した店舗。古いガラスをそのまま使ったノスタルジックな窓がいい感じ

メニューはうどん懐石のみ。元和食料理人が生み出した、新たなスタイルのさぬきうどん

こちらは、さぬきうどんを懐石コースで楽しむことができる、新しいスタイルのうどん店。非日常体験ができると、香川県内のうどん通から注目を集めています。
▲和紙に書かれたメニュー。料理の内容は毎日変わります

席に着くと、手書きのメニューで料理の内容を説明してくれます。実はこちらのメニューは「本日のうどんコース」(2,800円・税込)のみ(前日までに要予約)。元々和食の料理人だった店主が腕によりを掛けた、うどんが主菜の懐石料理コースで、先付、前菜、御食事(うどん)、甘味が楽しめます。

うどんは2~3種類の中から選べるので、好みのものをチョイスしましょう。この日は「おりーぶ牛焼しゃぶ饂飩」と「牛筋饂飩」、「鶏冷饂飩」がありました。イチオシは「おりーぶ牛焼しゃぶ饂飩」です。
▲料理を盛り付ける店主の高雄(たかお)祐介さん。その丁寧な仕事ぶりに期待が高まります

まず先付のじゃがいも餅揚出汁、続いて前菜が運ばれて来ました。涼しげな器に盛り付けられた色とりどりの料理は、食べるのがもったいないような美しさです。
▲取材に訪れたのは夏。この日の前菜は「青菜卯の花和へ」「秋葵胡麻豆腐くずし」「茄子みぞれ煮」「海老翡翠寄せ」「帆立黄味酢掛」「白瓜味噌漬」の6品

6品それぞれ、店主が地元の産直市場で仕入れた旬の素材の持ち味を存分に引き出した仕上がりで、季節を感じさせる和食の技を堪能させてくれます。

メインはもちろんさぬきうどん。その内容も唯一無二!

▲メインの「おりーぶ牛焼しゃぶ饂飩」。具材は香川のブランド牛「オリーブ牛」

メインのうどんは、前菜の進み具合を確認しながら、絶妙なタイミングで茹で立てを出してくれます。

まずはうどんを一口いただきます。のど越しの良さとしっかりした弾力が絶妙なバランスで、勝手に胃の中へ滑り込むよう。遅れてふわっと香ってくる小麦の風味が、食欲を駆り立てます。
この麺は、香りが強く少し黄色がかった香川県産小麦「さぬきの夢2009」を、機械を使わず打ち上げたもの。生地がキュッと締まった昔風の味わいです。

茹でて一度水で締めた麺をダシ(香川でうどんのつゆのこと)の中で一煮立ちさせるという特殊な調理法で、麺にダシの味をほんのりまとわせることで、調味料を極力減らして素材の風味を活かしています。しっかり締まった麺なので、二度煮てもコシが失われません。

そしてダシにもこだわりが。さぬきうどんの出し汁の素材といえば、イリコやカツオ、昆布が定番ですが、こちらでは具材のオリーブ牛に合わせて、牛骨からとったスープと魚介の出汁をブレンドしています。それにより生まれるダシは、複雑な旨みと香りが絶妙なバランスを保った唯一無二のものになっています。
▲オリーブ牛は、裏表を軽くバーナーで炙るだけ。香ばしさが肉の味わいに華を添えます

そして、メイン具材の「おりーぶ牛焼しゃぶ」。「オリーブ牛」とは、オリーブオイル搾油後の果実を与えて育てた香川のブランド牛。旨みが強くあっさり食べられるその肉に軽く塩をし、バーナーで炙ってしゃぶしゃぶ風に仕立てています。

さらに、添えられている紫色の花はシソの花。食べる前に器の中へ散らすことでシソの爽やかな香りが広がるという、心憎い演出も。また、うどんの量は2玉にすることも少な目にすることもOKです。

せっかくなので、今回選ばなかったうどん2品もご紹介します。
▲箸でスッと切れるほど柔らかく煮込まれた牛筋がたまらない「牛筋饂飩」

5時間もかけてトロトロに煮込まれた牛筋にハマる人も多い一杯。店主が高松でお店をされていた時からの人気メニューです。

もう一品の「鶏冷饂飩」は、冷たいかけダシのかかった「冷かけ」スタイル。
▲のど越しの良さがより際立つ細麺と、ピリ辛の鶏肉が相性抜群の「鶏冷饂飩」

少しピリ辛の鶏肉は、低温調理のため非常に柔らかでジューシー。うどんは、冷たいメニュー専用の細麺です。

「おりーぶ牛焼しゃぶ饂飩」はレギュラーメニューですが、他のうどんは季節毎に内容が変わるので、それを楽しみに訪れるのもいいかも知れません。
▲この日のデザートは「豆乳ぷりん」と「煎茶アイス」

うどんでお腹はいっぱいになりましたが、デザートは別腹です。定番メニューの「豆乳ぷりん」は、豆乳のあっさり感と生クリームの濃厚な味が溶け合っていて、軽い食感なのに満足感もたっぷり。このプリン目当てのリピーターも多いそう。日替りメニューの「煎茶アイス」は、苦味が少なくて香り高く、抹茶とはまた違う風味で格別でした。
▲一度は和食の道へ進みながら「どうしてもうどん屋がやりたい」と、うどんの道を選んだ店主の高雄さん

高雄さんは数年前まで、高松でセルフスタイルのうどん店を経営し、和食の技を活かしたオリジナルメニューを提供していました。しかしセルフという制限のあるスタイルでは、本当に食べていただきたいうどんを提供できないという思いが募り、装いも新たにうどん懐石コースという形で和食の技を込めたうどんを提供する店として、「宿月」をオープンしました。

「お客様には、ご自宅では味わえない非日常を楽しんでいただきたい」という高雄さん。時間をかけてじっくり丁寧に作られた料理はもちろん、参道の喧噪から隔離されて静かにくつろげる空間を含む全てが、まさに非日常の場所でした。

こんぴらさんのお参りの際には、石段の疲れを癒してくれる場所として、また上る前の鋭気を養うためにも、ぜひ訪れてみてください。
篠原楠雄

篠原楠雄

香川県のタウン誌・TJかがわ編集部で14年間在籍した後独立し、フリーライターに。5年間に渡り香川県内に新しくできるうどん店を取材し続けたおかげで、すっかりメタボ体質に。さぬきうどんブームを仕掛けた「麺通団」の初期メンバー・S原でもある。

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