これが「今治焼き鳥」だ!串に刺さずに鉄板で焼く、話題のソウルフード

2018.10.02 更新

焼き鳥が名物という地は全国にたくさんあります。愛媛県今治市もその一つ。日本の「三大焼き鳥」「七大焼き鳥」などと言われる中に必ずその名が登場します。「今治焼き鳥」の特徴は、串に刺さっていないこと。そして鉄板で焼き上げること。このスタイルは、どうやら今治という土地柄や人の気質に由来するようです。その背景とともに、ご当地グルメ「今治焼き鳥」の魅力に迫ってみましょう。

▲お皿に盛られた鶏皮を箸でいただくのが今治流

誰が呼んだか、今治焼き鳥「四天王」

今治焼き鳥の始まりは昭和36(1961)年。鉄板で串に刺さない鶏肉を焼く「五味鳥(ごみどり)」という店が、今治市に誕生しました。素早く焼き上がる「五味鳥」の焼き鳥は、“せっかち”と言われる今治人の気質にマッチし、瞬く間に大人気に。
もともと養鶏が盛んな地域だったこともあり、その後もこのスタイルの焼き鳥屋が続々登場。今治市は様々な個性ある名店が軒を連ねる焼き鳥の街になったのです。

中でも特に人気の高い4店が、「四天王」と称される「五味鳥」「無味(むみ)」「八味鳥(はちみどり)」「鳥林(とりばやし)」。「無味」は今はもうありませんが、その味は「世渡(せと)」という店に引き継がれています。
▲最初に無料のキャベツが出てくるのも今治スタイル

老舗から新店まで、2018年現在は今治市内に約70店の焼き鳥屋があるそうです(今治市商工観光課ホームページより)。総数にするとそれほどの数ではなさそうですが、人口比率からみるととても多いのだそう。そのため平成11(1999)年には、今治市は「焼き鳥日本一宣言」をしたこともありました。

店によって味や雰囲気などは様々。もちろん串に刺して炭火でじっくりという店もありますが、せっかく今治で食べるならぜひ、昔ながらの串に刺さずに鉄板で焼くスタイルの店に行ってみましょう。

現在二代目が継ぐ、四天王の一つ「鳥林」へ!

▲「鳥」の文字が鳥を描いたような看板と暖簾が印象的な「鳥林」

今回訪れたのは、四天王の一つでもある「鳥林」。JR今治駅から正面の大通りを今治港へ向かってまっすぐ歩いて約5分、今治港からも徒歩約15分という好立地にあり、地元の人にも観光客にも人気の店です。出張で今治に来ると必ず来店するというファンも!
▲カウンター席と小上がりと、2階に座敷席。こぢんまりとした店です

こちらの大将は現在二代目で、2002年に店を継ぎました。聞き上手で話し上手、気さくで爽やかな大将です。
▲背中に「鳥林」を背負った大将
▲昭和レトロな酒燗器は現在はもう造っているメーカーが無く、大切に使っているそう
▲メニューは至ってシンプル。奇をてらわず真っ向勝負な心意気を感じます

メニューにある値段は、串一本ではなく一人前。例えば、後に紹介する串に刺さった「とりねぎ」なら3本が一人前です。ちなみに「もつ焼」とは、「ずり」(「砂ずり」とも。東日本では「砂肝」)のことです。
▲客自身が注文を書き込む「御勘定書」もあります

通常は店員が注文数を書き込むシートですが、客が自分で注文したい品に注文数(何人前か)を書いて、お店の人に渡すことができます。
今治の焼き鳥屋では割とよく出合うシステム。これも、せっかちな今治気質だからでしょうか。注文を聞きに来てくれるのを待つのももどかしいのかも。あるいは商売人が多くて合理的とも言われる、今治人ならではの知恵かもしれませんね。

まず皮を食べて、鉄板で焼く理由を知る

ではまず、「皮焼」から焼いてもらうことに。
「最初に皮?」と思われるかもしれません。でも、「皮から始めるのが今治流」などとまことしやかに囁かれるほど、今治焼き鳥では外せない部位なのです。
▲皮といっても、結構肉もついています。この店では、引き締まってしっかりとした旨みのある親鳥を使っているそう
▲店内にある焼き場はこの鉄板1枚だけ
▲小さく切られた串に刺さっていない皮を、そのまま鉄板へ

鉄板の上で皮をササッと軽く焼くとすぐ、その上に取っ手のついた小さな板状の重しがポンと乗せられました。
▲重しの下で皮がジュウジュウ焼けています

少し斜めになった鉄板を、重しにプレスされた皮から落ちた脂が、香ばしい匂いをさせながら滴り落ちてきます。これはたまらない!

焼き上がり待つ間に、大将に鉄板を使う由来について聞いてみました。
「やっぱり、今治の人はせっかちやけん。はよ焼ける方がええんよ」。
今治はタオル生産や造船が盛んな商人の街。物事を合理的にパッパッとさばいていく、きっぷのいい気質が根付いていると言われ、食文化も「早い、旨い、安い」が好まれるようです。
カウンター越しに「もう焼けとるやろ」とせっついてくるお客さんもいると、大将は笑います。
▲使い込まれ年季の入った鉄板と重し

そしてもう一つ、「造船の街だから、鉄板が手に入りやすかった」という説も。今治には造船所、通称「ドック」が何社もあります。「この鉄板もドックで作ってもらったらしいよ」と大将。真実味がある説ですね。
▲一旦重しをとって、サッと塩コショウ
▲お好み焼きのようなヘラを使って焼いて…
▲また重しを乗せてしばし待ちます
▲皿に盛って、タレを添えれば出来上がり。「皮焼」250円(税込)

コロコロと小さな皮は、口に入れるとまず表面のカリッと香ばしい歯ごたえ。そして親鳥ならではのコリコリとした食感。噛むほどに皮と肉の旨みが一緒になって、ジューシーな旨みが広がります。
鉄板と重しの間に挟んで焼く方法は、肉が早く焼けるのと同時に、全体を蒸しあげる効果と、染み出した脂でカリッと揚げたようになる効果もあるのです。
▲鳥の皮は苦手、という人にも、この香ばしさはぜひ味わってみてほしい!

そして添えられた甘辛いタレ。醤油ベースでみりんなどの甘みを加えていますが、甘ったるくなく、スッキリとしていながら深い味わいです。いくらでも食べられそう!最初に無料で出てくるキャベツも、このタレによく合います。

今治焼き鳥の代表格「皮」は、各店だいたいこのようなスタイルですが、皮に付いた肉の量や食感、タレの味などは店によって様々。各店の個性が光るのです。

人気の「れんこん」、今治での発祥地は「鳥林」

続いて、これも今治焼き鳥の定番の一つ、「れんこん」。鶏ひき肉を肉詰めにしたものです。今治で最初にこのれんこんを始めた焼き鳥屋はここ、「鳥林」なのだそうですよ。
▲秋から冬へ、季節が深まっていくにつれてどんどん美味しくなるレンコン
▲たっぷり鶏ひき肉が詰まったレンコンを、これも串にささず鉄板へ
▲塩コショウをして、ひっくり返したら、もちろんこれにも重しを乗せてプレス
▲両面にこんがりと焼き色がついて、美味しそう!
▲「れんこん」250円(税込)。こちらもタレを添えて

カリッと焼けた表面と、レンコンのシャキッとした歯ざわりが、最高のコンビネーションです。そして噛むほどにもっちりとしてくるレンコンは、鶏肉の甘みとともにレンコン本来の甘みも染み出してきます。タレがインパクトを加えて広がる美味しさ。もう止められません!

野菜の肉詰めはこの他にピーマンもあり、こちらも人気だそうです。

串に刺さった「とりねぎ」も、焼くのは鉄板

串に刺さったものもあります。「とりねぎ」もその中の一つ。
▲鶏肉とネギが交互に串に刺さった王道の「とりねぎ」。 全国的には「ねぎま」と呼ばれることが多いようですね
▲鉄板に乗せて、もちろん重しも乗せて、綺麗に焼きあがりました。「とりねぎ」250円(税込)

しっとりとした食感で、鶏肉の旨みとジューシーさの両方が、ダイレクトに味わえます。シンプルな素材と味付けだからこそ、その美味しさを実感。
とりねぎにもタレが添えられますが、注文時に伝えれば塩にも変えられます。もちろんとりねぎ以外でも、塩への変更可能。でもこの店のタレは、普段は塩派という人も気に入るのでは?

他には「きも焼き」「牛バラ」などが串に刺さっています。
ちなみに、どんな材料を串に刺す、刺さないというのも、お店によって色々です。ここにも店ごとの個性が見えますよ。

今治で必食のもう一品、「せんざんき」って何のこと?

最後にもう一品、ぜひ食べておきたい今治名物をご紹介。
お店の看板に「やき鳥」と並んで大きく書かれている「せんざんき」。何のことだかわかりますか?
▲「やき鳥」の字を挟んで両側に、赤い背景に白字で大きく「せんざんき」

正解は、下味をつけた鶏肉を揚げたもの。つまり、鶏の唐揚げです。今治では、鶏の唐揚げを「せんざんき」と呼ぶのです。
筆者も今治出身。かなり大きくなるまで「せんざんき」は全国共通の名前だと思っていました。
▲ビールが進む!ごはんも進む!せんざんき

「せんざんき」という名前の由来は諸説あります。
千さんという人が考案した雉(きじ)肉料理「千さん雉」だという説。
鶏肉を小さく切るので「千斬切」という説。
中国の鳥料理「軟炸鶏(えんざーち)」がルーツだという説など…。

由来も様々なら、各家庭、各店によって味付けも様々。鶏肉も骨付を使ったりもも肉、胸肉、手羽先など、これも色々。お気に召すまま、すべて「せんざんき」です!
ここ「鳥林」では、骨付肉を使います。ちなみに名前の由来については「“千斬切”説を支持かな」と大将。
▲下味をつけた骨付のぶつ切り鶏肉に、軽く小麦粉の衣をつけて油の中へ
▲ああ、この香り!早く食べたい!
▲カリッと揚がったアツアツの「せんざんき」380円(税込)

塩コショウがしっかりきいて、カリカリの歯ごたえ。そして中からあふれる肉汁。骨から出る旨みもプラスされるのでしょうか、夢中でかぶりつき、笑顔になる味です。

ところで、「今治の焼き鳥は皮から」とご紹介しましたが、これには実は続きがあります。「皮に始まり、せんざんきで終わる」。これが今治流だとか。あるいはこれが「通」なのだという噂も。

真偽のほどは置いておいて、好きなものを好きな順序で、美味しくいただくのが一番!でも皮とせんざんきは、どちらも食べておいて損はない、というところではないでしょうか?

今治を訪れるなら、焼き鳥屋めぐりも計画に入れて!

いかがでしたか?今治焼き鳥が食べたくなってきませんか?
今治にたくさんある焼き鳥屋は、各店で個性を発揮しあっています。地元の人たちもそれぞれにお気に入り店があり、この店はこうであの店はこうだと、焼き鳥談義に花が咲くこともしばしば。食べ比べをして、お気に入りの店を見つけるのも楽しみ方の一つですよ。
また「鳥林」もそうですが、持ち帰りができる店も多くあります。子供の頃に家族が持ち帰った焼き鳥をみんなで食べたという思い出もあり、まさに今治のソウルフード。

「鳥林」には子供と一緒に訪れる人もいるそうですよ。メニューにある「ごはん」は、白飯をお茶碗で出してくれるそうで、子供ももりもり食べられます。なんだか嬉しいですね。
ぜひ友達や家族と一緒に、今治焼き鳥を味わってみてください。
矢野智子

矢野智子

愛媛県在住。愛媛県出身ながら高校卒業後ほとんどの時間を県外で過ごした後、生活の拠点を愛媛に定めた現在、改めて気付く地元の魅力に感動しきり。 人生を豊かにするものは「食」と「読」と信じ、そこに情熱を傾ける日々。

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