新潟ならではのワインを造る「フェルミエ」で、ワイナリー見学と試飲&本格フレンチの贅沢体験

2018.09.27 更新

海と山に囲まれた新潟・越前浜。この地の風土によって生み出されたぶどうをそのまま活かしたワインを作るワイナリー「フェルミエ」では、ぶどうの栽培と醸造だけでなく、本格フレンチ料理とワインを提供するレストランの運営もしています。すべてを肌で感じるからこそ味わえる、ワインの面白さと美味しい料理を楽しみに行ってきました!

越前浜のワイナリー「フェルミエ」へ

新潟でお酒といえば、米どころというイメージから日本酒を連想する人も多いはず。しかし、実はワイン造りも盛んなのです!
豪雪地帯の雪を利用した、120年以上の歴史を持つ上越市「岩の原ワイン」、標高200mの高原の地形と気候を生かした胎内市「胎内高原ワイン」など、新潟特有のテロワール(風土)を生かしたワイン造りが行われています。
なかでも新潟市中心部から北西に約30km、車で約30分ほどの場所にある越前浜は、5軒の個性的なワイナリーが集まる「新潟ワインコースト」。越後平野の最南に位置する角田山と日本海に囲まれた海岸地域で、砂質土壌はやせ地で水はけも良く、ワイン造りに向いた土地です。
▲水はけの良い砂地がワイン用ぶどうの栽培に最適な越前浜

1992年、越前浜に「カーブドッチ」が最初のワイナリーとしてぶどうの栽培を始めてから、世界に向けたワイン造りが始まりました。そして、この土地に2軒目のワイナリーとして2006年にオープンしたのが、今回の目的地である「フェルミエ」。フランス語で「農場製の」という意味があるこちらでは、ぶどうの栽培から醸造、販売までこの場所で一貫して行っています。
▲ぶどう畑の前に設置された大きな看板が目印
▲ワイナリーに併設するレストランの外観は、まるでフランスの田舎に佇む一軒家のよう

ワイナリー見学ツアー&ランチを楽しむコースを体験!

今回こちらで体験するのは、「4種のワインを試飲!ワイナリー見学ツアー&ランチを楽しむコース」。
案内してくれるのは、本多有紀さん。夫でありオーナーの孝さんが東京の会社を退職して、2006年に地元・新潟でのワイン造りをスタートして以来、夫婦二人三脚でこのフェルミエを作り上げてきました。
▲レストラン入り口で出迎えてくれた本多有紀さん

最初に見学するのはワイン醸造の現場です。レストラン店内奥へ進み、ドアを開けるとすぐそこにはワインの発酵槽が現れます。少し肌寒いくらい、ひやっとする部屋。この温度と湿度がワイン造りには非常に重要な役割を果たします。
▲ワインの発酵槽。気温は15~16度で湿度は70~80%と、ぶどうに最適な状態を保つように管理されています

作業スペースのさらに奥にはトラックの搬入口があり、畑からぶどうが運ばれてきます。ぶどうはまず茎から実を取る除梗(じょこう)の工程へ。茎から実を取ると言っても無理に実をはがすようなことはせず、振動を加えることで自然と実を落下させる機械を使います。
無理に取ろうとするとどうしても皮を傷めるため、振動させる方法をとっているそう。この段階からぶどうを丁寧に扱う作業にびっくり!
▲実際に使われている機械を見ながら説明を受けます

そして除梗されたぶどうの実は発酵槽に詰められ発酵の工程へ。発酵槽には木樽やコンクリートタンクなどがありますが、フェルミエでは醸造するワインによって、ステンレスタンクと木樽を使い分けています。
「品種本来の香りを逃したくない場合は、ステンレスタンクを使って、低温でゆっくりと発酵させていきます」と有紀さん。この中でぶどうの糖分が、アルコールへと変化。品種によって異なりますが、約1週間から3週間ほどかけて発酵を行うそうです。
▲温度が上がりすぎてしまうと香りが飛んでしまうため、発酵槽の表層に冷却水を通して低温発酵を行っている

発酵を終えたら、次は果皮や種を除く作業である「圧搾」で、液体だけの状態にします。最初はぶどう自身の重みだけで果汁が絞り出され、その後は空気を少しずつ送り込むことによって圧を掛けて絞っていきます。
▲空気圧式のワイン圧搾機

「このように、実の状態のまま発酵させてから圧搾をして果汁を絞るのが赤ワインの製法。逆に、発酵を行う前にぶどうを圧縮して果皮を取り除き、無色の果汁を搾り発酵させると白ワインになります」。
赤・白のワインの違いは、ぶどうの種類の違いだけだと思っていましたが、工程にも違いがあるとは初めて知りました!
▲ぶどうの香りがただようワインの木樽が並ぶ熟成室

圧搾した果汁を木樽に入れ、熟成の工程へ。樽が保管されている倉庫に入ると、ふわ~っとぶどうの香りが!華やかで甘い香りに、試飲への期待が高まります!

ここでも空気の管理が重要な役目を果たします。
「温度を下げるためにエアコンを付けてしまうと、風の当たり方によってはコルクが乾き、酸化する可能性があるんです。ここでは専用の機械を使い、冷却水でゆっくりと優しく空気を冷やしています」。
小さな違いのように思いますが、出来上がるワインの味には大きな違いをもたらすそうです。ただ、冬の新潟の寒さはワイン造りにちょうど良く、冬は倉庫の温度管理はほとんど行わないと言います。
▲フランス製の木樽・フレンチオークを使って熟成。木樽に押してある刻印はそれぞれのメーカー等を指します

「ワインは熟成させる樽によって味や香り、口当たりが全く変わってきます。そのため、樽選びも大切なんです」と、有紀さん。使う樽によっても影響を受ける繊細なワイン。少しずつ試行錯誤し、理想とする味を追い求める過程は果てしない道のりです。

熟成を終えたワインは澱(おり)と呼ばれる沈殿物を取り除いて瓶に詰められます。そしてやっと私たちが普段飲んでいるようなワインが出来上がるのです!
▲樽熟成させた赤ワイン。左から「カべルネ・フラン」と「メルロー」

「色々な積み重ねが、最後に瓶詰めされたワインの味に現れるんです。そして追い求めるワインによってぶどうの扱いも人それぞれ。ワインを作る上での自然環境、テロワールには風土だけでなく、人というファクターも入ってきます」。
少しの工夫やこだわりが、最終的にワインの味となることはワイン造りの醍醐味なのかもしれません。

数多くの品種を栽培するぶどう畑へ

ワイン醸造の現場を見学した後は、外へ出てぶどう畑を案内していただきます。綺麗に整えられたぶどう畑は垣根栽培という方法で、3~4年育てて初めてワイン造りに適したぶどうになります。
▲ワイナリーの近くには一面にぶどう畑が広がる

ワイン用のぶどう栽培も、細やかな作業が必要な仕事。例えばぶどうのツルが伸びて葉が重なると日陰が多くなり、湿気がたまって病気にかかりやすくなるそう。そのため、葉を適度な量に除葉することで風通しを良くし、光を浴びやすくなるように調整します。
また、ぶどうの実は糖度を高くするため、房を落として減らし、さらに残した房の実も摘粒(てきりゅう/粒を間引くこと)するんだとか。房に無数になるぶどうの実の様子を見て、ひとつひとつ手作業で丁寧に手入れをしていきます。
▲白ワインの品種「アルバリーニョ」

スペインの北西部、太平洋沿いに位置するリアスバイシャス地方で栽培される「アルバリーニョ」は、白ぶどうのなかでも高貴なワインに適している品種。また、海岸近くで栽培されていることから、この品種で造られたワインは「海のワイン」とも言われています。リアスバイシャス地方と越前浜は気候も似ているので、栽培にも適しているそう。
▲色づき始めた赤ワインの品種「カベルネ・フラン」

そして隣の畑には「カベルネ・フラン」。フランスのボルドー地方では、ブレンド品種として5%程度使われ、ワイン全体の骨格作りの役割を果たしている品種。その特徴の一つには「ピーマン香」と表現される香りがあるのですが、この土地で栽培するとハーブの様なさわやかな香りを纏うといいます。フェルミエではこのカベルネ・フラン100%の赤ワインも作っています。
「アルバリーニョは樹勢が強く、スペインの海岸地帯で伸び伸びと育つような旺盛さを持っています。すぐにツルが伸びるので、葉が重ならないように枝の管理が必要なんです。一方で、フランス生まれのカベルネ・フランの垣根は少し上品な感じがしますよね」。栽培から愛着を持って見守られているのが伝わります。

そして数メートル先には赤ワイン品種「ピノ・ノアール」を栽培。2018年春に植えたばかりという苗木も見せてもらいました!
▲植えてから約5カ月の「ピノ・ノアール」の苗木

ぶどう栽培では、ぶどうを植える垣根の幅によっても品質や味が変わってくるそう。フェルミエでは、区画によってはピノ・ノアールの本場、フランス・ブルゴーニュ地方と全く同じ間隔で苗を植えているとか。このこだわりにはびっくり!それくらいに愛情と熱意を持って作られたぶどう畑なのです!

また、フェルミエではここ越前浜のほかに、20kmほど内陸の新潟市南区・新飯田(にいだ)という地域でもワイン用のぶどう栽培を行っています。越前浜は海砂ですが、内陸部は信濃川が近いことから川によって堆積された豊かな土壌を持つ川砂エリア。昔から食用のぶどう栽培が盛んな地域ですが、そこで育つぶどうで造るワインもまた違った味わいになるそうですよ。

ぶどう畑見学は、ここで終了。有紀さんのお話を聞きながらワイナリーを見学し、ワインについて詳しく知ることができて大満足!
ここからランチまでの間には、1時間程度のフリータイム。徒歩圏内にある周辺ワイナリーの見学も可能です。「カーブドッチ」にはワイナリーショップやカフェ、日帰り温泉も併設されているので、興味のある方は足を運んでみては。

本格フレンチ料理とワインの組み合わせを堪能!

▲レストラン店内からは、先程見学したぶどう畑を眺めることができます

さて、見学が終わるとついにランチタイムです!ランチはフレンチコースと、料理に合わせたワインを4~5種試飲することができます。
たくさんお話しを聞き、ぶどう畑を散策してお腹もちょうど空いた頃。栽培から醸造までを見学し、どんな味のワインなのか期待が高まります。
▲「夏野菜とシェーブル、ハーブ」

前菜はサラダ。ズッキーニやナス、トマトなど夏野菜の上には野菜本来の味を引き立てるシンプルなハーブソースとやぎのシェーブルチーズ。

こちらの前菜とともにいただくのは、白ワインの「ケルナー」。
▲「ケルナー2017」1本(750ml)3,600円(税抜)。説明を受け、いざ試飲!

このワインは北海道農家からぶどうを仕入れ、醸造を行ったもの。グラスから香りが華やかに広がり、さらに食欲をそそります!フルーティーでありながら酸味もあり、しっかりとした密度の高い味わい。

甘みの濃い夏野菜本来の味を邪魔することなく、それでいて濃厚なシェーブルチーズとの相性が抜群!チーズの香りとケルナーの華やかな香りが鼻を抜けます。

そして前菜2品目は「白桃のガスパチョ」。
▲「白桃のガスパチョ」。ピリッと黒胡椒の効いたトマトベースの冷製スープ、ガスパチョになんと生ハムと白桃が!

トマトの酸味と甘い白桃、そして塩気のある生ハムはどれも特徴を持つものの、それぞれが引き立て合い、幾重にも味を楽しめる一品!入っているチーズがスープ全体の濃厚さとまろやかさを加え、クセになる味です。

こちらと一緒に合わせたワインは、アルバリーニョを使った2種類の白ワイン。
▲左から「エルマール(越前浜)」(1本750ml/10,000円)と「アルバリーニョ(新飯田)」(1本750ml/6,300円)※いずれも税抜

同じ品種、同じ醸造所で造ったワインですが、それぞれ越前浜と新飯田、異なる土地で栽培されたものを飲み比べます。かすかな違いに気づくのかな?と思い飲んでみると、それはまるで別物かのような全く違う味わいにびっくり!
「これがワインの醍醐味です」とニッコリ笑う有紀さん。これにはやられました!
越前浜で栽培され、スペイン語で海と名付けられた「エルマール」は、酸味のあるしっかりとしたボディでありながら、海風のように爽やかでミネラルを感じます。後味はさっぱりとしていて、どちらかというとケルナーのように密度の高い味。
一方「アルバリーニョ(新飯田)」は、口当たり柔らかでフルーティーな味わいです。

エルマールは生ハムやピリッと効いたトマトの酸味をよく引き立て、アルバリーニョは白桃の甘みと相性抜群!2種類のワインが一皿の料理と見事に調和します。面白いほどに味や風味が異なり、飽きのこない味に何度も飲み比べてしまいます!
続いてはメインディッシュの「北海道産仔鹿のロティときのこのピュレ・仔鹿エキスのソース」。
仔鹿はミディアムにローストされ、ロースとモモの2種類が楽しめます。ソースはきのこのピュレと仔鹿の出汁を使ったソース。さっぱりとした赤身肉にキノコの風味豊かなソースがとっても合う一品!

肉料理ということで、ここでは2種類の赤ワインを合わせていただきました。
▲左から「カベルネ・フラン 2016」(1本750ml/10,000円)と「メルロー 2017」(1本750ml/3,500円)※いずれも税抜

果実味があり、口当たり柔らかで喉にすっと入るような軽さを持つ「メルロー」。木樽で熟成させたまろやかさは、お肉に添えられたキノコのソースの風味をさらに豊かにしてくれます。
そして「カベルネ・フラン」はハーブのような香りが高く、それでいて熟成されたしっかりとした味。脂身が少なく、旨味をしっかりと感じる赤身肉とよく合います。濃厚で舌に残る酸味と奥ゆきのある味わい。そして鼻に抜けるハーブのように少し苦みを持つ香りまで美味しい!

そして最後はデザートと食後のドリンクでほっと一息。ドリンクは紅茶やコーヒーなどの数種類の中から選べます。
▲デザート「ブラマンジェとマンゴーソース」とホットコーヒー

フランス語で白い食べ物の意味を持つ「ブラマンジェ」。牛乳の優しい甘みがあるブラマンジェと上にかかった濃厚なマンゴーソースが爽やかな一品でした。
▲試飲したワインは店内で購入可能です

新潟の旬のこだわり食材で提供されるフレンチと、それに合わせたワインがいただけるコースは、大満足でした!

ぶどうの栽培からワインができるまでを実際に見て話を聞けたからこそ、いただいたワインはとても味わい深く、最高に美味しかったです!見学した際のそれぞれのストーリーも思い出しながら、ひと口ごとに堪能する特別な時間になりました。

時期によっていただける料理やワインが異なるので、また訪れるのも楽しみです。
「フェルミエでは栽培、醸造、販売まで一貫して行っていることで、それぞれの工程を臨場感をもってお伝えすることができます。また、醸造で出た澱(おり)を料理のソースに使うなど、一つずつの作業に関連性が生まれ、ワインだけでなく料理もフェルミエならではの味になっていくんです」と話す有紀さん。

約2時間のコースでは全ての工程を見学し、実際に料理と一緒にいただくことで、フェルミエならではの味を体感することができました!
ツアーは、希望に合わせて時間を早めたり、 ディナーと組み合わせることも可能です。新潟の自然が詰まったワインの魅力をぜひ、見て、知って、味わってみてはいかがでしょうか?
村山亜紗美

村山亜紗美

新潟県出身・在住のフリーライター。大学在学中からローカル・インタビュー雑誌『Life-mag.』に弟子入り。様々な価値観を伝えることをモットーに活動。新潟の食べものとお酒が大好き。 編集:唐澤頼充

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