長楽館 京都100年の歴史を肌で感じる、贅沢ステイ体験

2018.09.24 更新

明治時代に建てられ、ヨーロッパの様々な建築様式が組み込まれた歴史的建築物「長楽館(ちょうらくかん)」。そんな日本の近代史を肌で感じられる建物が、実は現在も京都・祇園の地でカフェやレストラン、そしてホテルとして営業しているんです…というわけで、さっそく滞在してきました!

華やかな存在感を放つ「京都の迎賓館」

明治の煙草王・村井吉兵衛の別宅として明治42(1909)年に建てられ、京都の迎賓館として名を馳せたのが、今回伺った長楽館です。
大正4(1915)年に執り行われた御大礼(大正天皇の即位式)に参列した各国大使の宿泊場所に選定されたほか、初代内閣総理大臣伊藤博文や大隈重信、山縣有朋など、明治の時代を築いた偉人たちもここで安らぎの時を過ごしました。
▲気品あふれる空間「迎賓の間」

実業家であった村井氏が私財を投じ、西洋の数々の建築様式を取り入れて建てられた長楽館。当時は、訪れた国内外の賓客たちが、東京の鹿鳴館(ろくめいかん)と肩を並べるほど華やかなひと時を過ごしました。100年を超える歴史、その文化的な価値が認められて昭和61(1986)年に京都市有形文化財の指定を受けています。
そんな長楽館は、京都四条通の東の突き当り、八坂神社のすぐ近くにあります。神社正面から本殿を抜け、円山公園に入った最初の角を右にまがると、長楽館の玄関が見えてきます。
正面から見た長楽館。レンガと石造りの重厚な佇まいは、当時の面影を今に伝えています。玄関の屋根を支える二つの門柱は古代ギリシャの建築様式のひとつであるイオニア式。女性的で繊細な形の美しい柱です。
玄関上部にある飾り。金色の円で囲まれた部分には、村井家の家紋である「三つ柏」が刻まれています。
玄関を一歩中に入り、ふと振り返れば美しいステンドグラスからやわらかな外光が玄関ホールに射し込んでいます。
玄関を入れば目の前に広がる、赤じゅうたんが敷かれたロビー。積み重ねた100年の時を感じさせてくれる空間です。

本館に隣接した新館「ホテル長楽館」へ

▲客室へはこちらのエレベーターに乗って。描かれた孔雀の絵が迫力満点

薄明りのロビーを通り抜け、まずはチェックイン。本館を抜け「ホテル長楽館」に向かいます。ホテル長楽館は、築100年の本館に隣接し2008年にリニューアルオープンした新館にあります。3・4階に各3室ずつ、合計6室のみでプライベート感満点のステイが楽しめます。
今回宿泊したのは、客室の中でも一番広くて眺望のよい「パノラマビューハリウッドツインルーム」。部屋に入れば円山公園や京都市内を一望できる景色が広がります!訪れた8月中旬頃は東山、円山公園の緑がとても美しく、しばし放心して見とれてしまいました。
お部屋は広く53平米。ツインですがベッドサイズはダブルサイズ(幅140cm × 長さ210cm)が2つとゆったり使えます。
▲白磁の名人として知られる京都清水焼の林紅村(はやしこうそん)さんの作品がお部屋に

設えられた家具も無垢材の椅子やテーブルが使われていたり、調度品も京都清水焼の茶器や京都の作家が織り上げたラグが使われていたりとこだわりがスゴイです。アメニティも京都産のオーガニックなものが用意されているので、「京都」を感じられる宿泊が楽しめます。
▲染織家・富田潤さんにより、京都愛宕山麓の工房で丁寧にじっくりと作り上げられたラグ
▲宿泊者専用プライベートラウンジ。コーヒーや紅茶を飲みながらくつろげる
▲4階の展望スペース。東山、比叡山、知恩院などを一望できる絶景ポイント
朝、目覚めればこの景色。最高ですよね!
平安神宮の赤い鳥居も見えました。天気が良ければ京都市内北部の町並から、遠く北山までを見渡すことができます。
京都の町中にありながら都会の喧騒は遠く、閑静なリゾート地にいるかのような雰囲気で過ごすことができますよ。

滞在中に巡りたい館内の見所をご紹介

築100年を超える本館は、どの部屋も歴史と文化を感じられる空間ばかり。その中でも特に素敵な場所をいくつかご紹介します。
▲長楽館ブティックは宿泊者以外の利用もOK

まずは本館1階の「長楽館ブティック」。ここは建築当時温室だった場所で、たくさんの観葉植物が置かれていたそうです。現在は長楽館のパティシエ手作りのお持ち帰り用ケーキや焼き菓子の販売を行っています。
▲村井吉兵衛が販売していた煙草の、当時のパッケージデザインを復刻。煙草をモチーフにしたお菓子「MURAI'S CAMELIA」1箱1,200円(税別)
続いては玄関から入ってスグにある「迎賓の間」。ロココ様式で造られ、かつて応接室として使われたお部屋です。ヨーロッパにおいて食後に女性たちがおしゃべりに興じたドローイングルームの流れを汲むもので、主にご婦人方のおもてなしの部屋として使われていました。
椅子やテーブルなどの一部は、修復を加えながらも当時のものを使っているそう。腰をかければ往時のエレガントな空気を感じることができます。
▲迎賓の間のシャンデリアはかの有名なバカラ社製
▲年季の入った暖炉も、冬には実際に火を入れて使っている
▲「アフタヌーンティセット」4,000円(税別)※写真は2名分。宿泊者以外も利用可

現在は、アフタヌーンティー利用者専用のお部屋になっています。チェックインの前後やチェックアウト後にぜひ利用してみてください。優雅な午後のひと時が過ごせますよ。
最後は、通常非公開の「長楽庵(ちょうらくあん)」と「御成の間(おなりのま)」。宿泊者のみ、特別に見学することができます。
1階と2階は西洋建築なのですが、3階は趣をかえた純和風の部屋になっています。ロビー横の階段を登り、3階へ向かいます。
表千家にある書院形式の「残月亭」を模して造られたと伝えられる茶室「長楽庵」。写真からは見えませんが、丸窓には和室に珍しいステンドグラスがはめ込まれています。
▲「御成の間」。左奥にあるのが「華頭窓(かとうまど)」

「御成の間」は日本建築のなかでも最も格式のある書院造(しょいんづくり)の和室です。天井には、村井家の家紋の三つ柏があしらわれ、違い棚や華頭窓がその格式の高さを表しています。天井は、折上格子天井となっていて、これまたバカラ社製シャンデリアが使われるなど、和と洋が見事に融合した空間になっています。

かの伊藤博文が滞在した際に、御成の間の窓から東山を眺め「長く楽しみが続くように」と名付けたのが「長楽館」の由来です。日本の近代史の1ページを肌で感じられる貴重な空間。宿泊した際はぜひ見学してみてください。

麗しき近代建築のレストランで美食を堪能

長楽館でのステイ体験のクライマックスは、素敵な建物の中で味わう料理の数々。館内には、本格的フレンチが味わえる「ル シェーヌ」、カジュアルにイタリアンが楽しめる「コーラル」の2つのレストランがあります。
今回は本館にある「ル シェーヌ」をチョイスしました。
本館1階にある「ル シェーヌ」は、もともとがダイニングルームであった場所。英国ビクトリア朝のネオ・クラッシック様式で造られたダイニングはまさに豪華絢爛。まるで英国貴族になったような気分を味わえる空間です。
▲村井家の家紋・柏の葉がデザインされた大倉陶園製の特注のお皿
天井に飾られた豪華なシャンデリアは迎賓の間と同様にバカラ社製。重厚かつ華やかな光が空間を温かく照らしています。
▲天井や壁面にも繊細で美しいレリーフが。柏やオリーブなどの植物がモチーフ
そしていよいよ夕食の時間!伝統的なフランス料理の技法を生かし、ソースにこだわった料理の数々をフルコースで味わうことができます。野菜は京都大原や近隣の滋賀県産の無農薬・減農薬野菜を使用するこだわりよう。
▲フランス ラカン産仔鳩のバリエーション

仔鳩の上品な香りと旨み、そして柔らかい肉質はラカン産の一級品だからこその贅沢な味わいです。また、チーズプレートに、ソムリエオススメのワインを合わせれば、至福の時間を過ごすことができるでしょう。
▲ハモのミキュイとコンコンブルとのコンポジション、紫蘇の香り

香ばしく薫るハモに、地場野菜のキュウリのソースとトマトのジュレを添えた一品。京都らしい夏を味わえる涼やかな一皿です。
夕食後は大人の雰囲気漂うバーで一杯。「ライブラリーバー マデイラ」は、もともと書斎だった場所。薄明りで雰囲気抜群の部屋には、皮張りのソファや椅子が配されています。

ここでは、煙草王であった村井氏にちなみ、日本に煙草を伝えたポルトガルの名産品「マデイラワイン」を100種類以上取り揃えています。
▲ボトルに記載されている西暦がワインの醸造年

大航海時代にポルトガルで生まれたマデイラワインは、加熱熟成した酒精強化ワイン。長期保存に優れ、時が経つほどに味や香りが熟成していくのが特徴です。
熟成数十年のヴィンテージや自分の生まれ年のワインなど、貴重な一杯をリーズナブルに味わえます。積み重なった時の流れに思いを馳せ、じっくり楽しむのもいいですね。
長楽館の周囲には、円山公園や東山祇園の町並などが広がっています。四季を感じられる自然環境や神社仏閣が集う様は、まるでエリア全体が博物館や美術館のよう。歴史あるホテルに宿泊した後は、ぜひ周辺の観光も楽しんでください。
妙加谷 修久

妙加谷 修久

京都市在住の旅行系ライター兼ディレクター。全国各地に足を運び、旨いモノを食べ、温泉に浸かる日々。ここ京都を中心に、知っているようで知らない「日本のイイトコロ」を紹介します。日本酒好きが高じて利き酒師の資格を取得しました。

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