紅葉の名所・名古屋「徳川園」は、知れば知るほど魅力が増す癒しスポットだった!

2018.10.09 更新

尾張徳川家の大名屋敷跡を整備した「徳川園」は、名古屋の中心部にある約4万5,000平方メートルの公園です。敷地内には「蓬左(ほうさ)文庫」と呼ばれる古典籍を所蔵する公開文庫や「徳川美術館」などがありますが、今回は自然の癒しと日本文化の魅力、そして紅葉を堪能できる日本庭園をご紹介します。日本庭園を眺めながら食事ができるレストランにも行ってきました。

▲園内に広がる「龍仙湖(りゅうせんこ)」と紅葉(写真提供:徳川園事務所)

名古屋駅から約20分の場所にある日本庭園

名古屋城から東へ約3kmに位置する「徳川園」は、名古屋駅から電車で行く場合はJR中央本線で12分の大曽根駅南口下車、徒歩約10分。バスの場合は基幹バスで約30分の「徳川園新出来」下車、徒歩約3分。名古屋市内の観光スポットを循環しているバス「メーグル」のコースにも入っており、公共交通機関でも訪れやすいスポットです。
▲園の西側にある入口「黒門」は、明治33(1900)年に完成。昭和20(1945)年の大空襲による被害を免れた尾張徳川家の邸宅の遺構です

「徳川園」の日本庭園の入口は、黒門から入ったところにある黒門口と、園北側の大曽根口の2つあり、バスで訪れた場合は黒門口、電車で訪れた場合は大曽根口が便利です。
▲園内マップ。広い敷地内の北側半分ほどが、今回散策する日本庭園です(写真提供:徳川園事務所)
▲今回は黒門口の案内所で入園券(300円・税込)を購入
▲この橋を渡るといよいよ日本庭園です

そもそも「徳川園」は、尾張徳川家第二代藩主・光友の隠居所として造られた大曽根屋敷が起源。昭和6(1931)年に名古屋市は第十九代尾張家当主・義親から邸宅と庭園の寄付を受け、翌年に「徳川園」として一般公開しました。
それが第二次世界大戦の空襲でほとんど焼失。戦後に都市公園として改修されましたが、平成17(2005)年の「愛知万博」開催に向けて平成13(2001)年から再整備され、平成16(2004)年にオープンして今に至ります。

ガイドと巡ると面白さ倍増!トリビア盛り沢山!

最初に見えてくるのが「虎仙橋(こせんきょう)」という檜造りの木橋です。
ここで「徳川園ガイドボランティア友の会」のガイドさんに遭遇したので、庭園を案内してもらうことにしました。
ガイドの柴田さんによると「虎仙橋」の周辺は、園内でも随一の紅葉スポット。また橋のたもとのモミジは上部が赤色、下部が黄色に変わり、赤と黄色のコントラストがとても美しいので必見だそうです。
▲赤と黄色の半分に色が変わるというモミジ。取材した9月初旬には色づく気配がないですが……
▲紅葉の時期の「虎仙橋」付近はこんな感じに色づきます(写真提供:徳川園事務所)

「徳川園」での紅葉の見頃は11月下旬~12月上旬。例年であれば11月中旬から色づき始めるそうです。また、毎年行われる「紅葉祭」は、多くの人が訪れる人気イベント。2018年は11月23日~12月9日に開催され、夜間のライトアップをはじめ、筝曲演奏会、生花展、ナゴヤカブキ特別公演などが行われます。
▲夜間にはライトアップもされます(写真提供:徳川園事務所)

「徳川園」トリビア①~四睡庵~

▲「虎仙橋」の下は「虎の尾」と呼ばれる渓流になっています

「徳川園の庭園は、池泉回遊式(ちせんかいゆうしき)です。池泉回遊式とは、池と周囲を巡る園路を中心にした作庭法で、江戸時代の代表的な庭園形式です。徳川園の場合は、西側にある龍仙湖を海、東側を山に見立てて造られています」(柴田さん)
と、ここで柴田さんからクイズが。「ところで徳川園の庭園は、元々あった大名屋敷を復元したものだと思いますか?」

普通に考えると復元が一般的だと思いますが……。

「実は愛知万博前の再整備の際に、大名屋敷の復元か、全国の庭園などの優れたものを集めた形にするかで話し合われ、後者が選択されました。だから今の徳川園は、全国の素晴らしいものをお手本にした、いいとこ取りの庭園なんです」とのお答え。
▲梅や桃など果実のなる木に囲まれた東屋「四睡庵(しすいあん)」

柴田さんの言う“いいとこ取り”を体験するためにまずやってきたのは、「虎仙橋」を渡りしばらくいくと見えてくる東屋「四睡庵」です。
「全国から集めたといっても、庭石などとは違い、建造物は移築したわけではなく、当時の愛知県の職人が本物を忠実に再現したものです。この四睡庵の周りにもいろいろありますよ」と柴田さん。
▲「四睡庵」は腰掛けが卍型に作られ、京都・桂離宮の卍亭のようです
▲園内にいくつもある灯篭は、全国の様々な灯篭がモデルとのこと。「四睡庵」周りの灯篭は、日光東照宮や春日大社のものを再現。写真の灯篭には鹿が彫られています
▲土の中に埋めた甕に水滴が落ちた時に鳴る音を楽しめる「水琴窟(すいきんくつ)」もありました
▲「四睡庵」へのアプローチにある一際大きな石は京都の鞍馬石だそうです

ガイドの柴田さんによる説明は、建造物はもちろん歴史や植物についてのトリビアが多く、聞いていると目の前の景色が面白くなることを実感した筆者。この後の見どころにも期待が高まります。

「徳川園」トリビア②~大曽根の瀧~

さて、「虎仙橋」から「四睡庵」を経て、東へと歩いていくと、里山から森林に入っていくような雰囲気になり、だんだん風景が変わります。そして水音が近づいてきたと思ったら見えるのが……。
▲落差6mの「大曽根の瀧」です!

「大曽根の瀧は、上・中・下の3段に分け岩の組み方を変えているので、水の流れや水しぶきの表情が変わるのも特徴です。個人的な見解ですが、“音の景色”も楽しめると思います」と柴田さん。

“音の景色?”と立ち止まった筆者に柴田さんが先を促します。

「さっきの場所から5mほど歩いただけで、滝の音が和らいだ気がしませんか?さらに進むと、ある地点で滝の音が消えてせせらぎと虫の声に変わるんです。そんな音の変化も計算されて造られていると私は思います」と柴田さん。
鈍感な筆者でも感じられた、この“音の景色”は必聴!都会にいるとは思えない音の癒しだと思いました。
▲耳に心地よいせせらぎも、計算された渓流の石の配置により生まれているそう

「大曽根の瀧」周辺から時計回りに歩く時に左手に生垣が続いているのが見えますが、これも案内がなければ気にも留めない風景でした。
▲京都の建仁寺で最初に使われたことから「建仁寺垣」と言われる美しい生垣。この辺りだけに生垣の向こうを覗ける窓があります

渓流沿いを歩きながら、柴田さんが続けます。
「大名屋敷の庭園には庶民には縁のない珍しいものや縁起ものが置かれることも多く、それはステータスシンボルでした。この渓流自体もそうですし、この周りだと例えば壇香梅やサワフタギ、愛知県の県木でもあるハナノキなど多彩な植物を見ることができます。これは花や草木によるおもてなしという意味もあると思います」
▲和紙の原料にもなる「ミツマタ」。この隣には同様に和紙になる「コウゾ」もありました

「このミツマタは、日本一高価な紙の原料ですよ。何か分かりますか?答えは、紙幣です(笑)」
そんな植物トリビアなどを聞きながら、最初に渡った「虎仙橋」をくぐると、急に視界が広がり「龍仙湖」が見えてきます。

「徳川園」トリビア③~龍仙湖~

「龍仙湖が伊勢湾、池の中に浮かぶ島が篠島、日間賀(ひまか)島、佐久島の愛知三島に見立てられています。また池の北東側に常夜燈があるんですが、そこをかつて熱田神宮の南にあった宮宿(みやじゅく)、池の南西側の灯篭を桑名宿に見立てて“東海道の七里の渡し”を表しています」と柴田さん。
▲亀だけに、かめはめ波のポーズで……

愛知三島に見立てられた島以外に、見るからに亀の島もありました!亀の上の黒松は鶴に見立てられ、まだ手入れの途中だそうです。そんな縁起のよい鶴亀島から少し歩くと、龍仙湖を一望できる茶室「瑞龍亭(ずいりゅうてい)」があります。
▲2018年で御年74才の柴田さんと休憩。柴田さんの幼少時、龍仙湖のある場所はグラウンドだったそうです

「瑞龍亭は、織田信長の実弟・織田有楽斎(うらくさい)が好んだ様式で建てられた茶室で、いまでも茶会に利用されています。また紅葉時期のここからの眺めは、色づいた木々と対岸の柳の緑がコントラストになって見事ですよ」
▲取材した日の「瑞龍亭」からの眺め
▲紅葉時期の「瑞龍亭」からの眺め(写真提供:徳川園事務所)
▲龍仙湖側から見ると、瑞龍亭前に大きな岩が見えます

「瑞龍亭前の岩は“五枚岩”と呼ばれ、5つに見えますが地中ではつながっている園内で一番大きな岩ですね。この岩がなければ瑞龍亭からの眺望はよくなりますが、有楽斎好みの美意識でしょうか、あえて遮ってあると思いますね」と柴田さん。
「瑞龍亭」を後にして、龍仙湖の北側にある常夜燈までやってきました。ここは園内でも人気の撮影スポット。池の鯉にエサをあげることもできる場所です!せっかくなのでエサやりします。
▲鯉のエサ(100円・税込)は、大曽根口の案内所横で売っています。池に近寄るとカラフルな鯉が寄ってきて……
▲小さい子が見たら泣いてしまうかもしれないほどの迫力で、エサを争奪する鯉たち

あっという間にエサやりを終え、「瑞龍亭」から見えた柳の方に向かうことにしました。
▲途中はボードウォークのようになっていて風情があります。渡りきると菖蒲園が見えてきます
▲菖蒲園では約1,700株の花菖蒲を楽しめます。見頃は例年5月下旬~6月初旬(写真提供:徳川園事務所)
「瑞龍亭」から見えたのは、地面まで葉が届くという六角柳でした。筆者は居酒屋の暖簾をくぐる風に撮りましたが、結婚式の前撮り撮影では美しい花嫁姿が撮れると大人気のスポットです!

いよいよ最後の見どころ「龍門の瀧(りゅうもんのたき)」に向かいます!

「徳川園」トリビア④~龍門の瀧~

▲滝の手前に鯉に見立てられた石があります。登竜門伝説になぞらえ、石に祈願する人もいるそう

「龍門の瀧は、尾張家の江戸下屋敷跡にあった滝の石を使用して再現されたものです。元々、滝の下流にある飛び石を渡りきると滝の水量が増し、飛び石が水中に没するという仕掛けが施されたもので、江戸時代の将軍や大名たちが驚き喜んだと言われています。この滝も20分間隔で水流が増す仕組みなので、ぜひ楽しんでみてください」と柴田さん。
▲滝から発生するマイナスイオンに包まれながら飛び石を渡ります
▲紅葉の時期には「龍門の瀧」近辺も色づきます(写真提供:ガーデンレストラン徳川園)

ちなみに「龍門の瀧」の横には「観仙楼(かんせんろう)」という二階建ての建物があり、1階がレストラン、地下1階がホールとして利用されています。
▲夜の「観仙楼」(写真提供:ガーデンレストラン徳川園)

春の牡丹、夏の花菖蒲、秋の紅葉など四季折々の花や草木を楽しめ、遊び心や仕掛けもあり、自然の癒しに溢れた日本庭園はいかがでしたでしょうか。
柴田さんから聞いたトリビアのおかげでかなり面白かったので、初めて行くならガイドと一緒にまわることをオススメします。また年に数回ある無料開園日(※ホームページで確認を)を狙って行くのもいいかもしれません。
▲庭園の北西には牡丹園があり、見頃となる例年4月中~下旬には約1,000株もの牡丹が紅白に咲き誇るそうです(写真提供:徳川園事務所)

庭園を眺めながらフレンチを楽しめるレストラン

庭園の散策を終え、龍門の瀧の隣りにあった観仙楼にある「ガーデンレストラン徳川園」に向かいます。
▲入口は、日本庭園入口のすぐ横、北側にあります

暖簾をくぐると、昼はカフェ、夜はバーとして楽しめる「蘇山荘(そざんそう)」があります。この日はランチを楽しむために「蘇山荘」の前を素通りし、奥にあるレストランへ。
▲国の登録有形文化財に指定されている「蘇山荘」は、上質な和建築が持つ凛とした雰囲気(写真提供:ガーデンレストラン徳川園)

レストラン店内に入り、ダイニングスペースに案内されると、庭園側がすべて窓になっていて開放感抜群です。天井に輝くシャンデリアや木を使った内装などからも上品なスタイリッシュさを感じられて素敵ですが、とにかく眺めが最高です!
▲「龍仙湖」を一望できる窓側の席は、早めの予約がオススメです

この日は一番お値打ちなランチメニュー「素材の彩り」(3,000円・税抜)を頂きました。
▲撮影用にコース全品を一度に用意して頂きました

この日の前菜は「軽く炙ったカマスの酢橘(すだち)〆 和のハーブ 冷たい天狗茄子のフォンデュと小豆島のオリーブ素麺」です。
▲ミルフィーユ状で見た目も美しい。オレンジ色の粒々は土佐酢をイクラ状にしたものです

味も見た目同様に爽やかで、ナスとオリーブ素麺の香りがよく合います。意外に食べ応えもありました。ちなみに天狗茄子は、見た目が天狗のような奥三河の伝統野菜だそうです。
▲支配人の滝塚さんにお話を聞きました

「当店は庭園の付帯施設ではありますが、当店を目的にご来園して頂けるようクオリティの高いものを提供しています。また、素晴らしい日本庭園のロケーションの中で楽しんで頂くため、フレンチに和の要素を取り入れたフュージョン料理をシェフが創作しています」と滝塚さん。

2品目は「旬野菜のスープ」です。
▲白にオイルの黄色とハーブの緑が綺麗!

ジャガイモの冷製スープ「ヴィシソワーズ」でした。味は濃厚でしたが、後味はくどくなくサッパリ。ジャガイモの味も引き立っていて素材の良さが感じられます。

「食材はいわゆる地物を使っていますが、市場を通さず直接生産者の方たちとやり取りしています。だから、いつ・誰が・どうやって獲ったかが分かる、本当に自信を持って食べて頂ける食材ばかりです。次の魚料理の鰆も豊浜漁港であがったものです」

3品目は「鰆のミ・キュイ 九条葱の味噌焼きとそのソースで」です。
▲写真からは伝わらない香りが、最高に食欲をそそる一品!

春のイメージのある鰆ですが、秋も脂がのって旬だそう。西京味噌との相性が抜群で白飯好きの筆者はどんぶりご飯が欲しくなりました……。
本来、ランチ「素材の彩り」コースでは魚料理と肉料理のいずれかをセレクトするのですが、この日は特別に両方頂きました。

ということで肉料理「三河赤鶏のデクリネゾン 玉蜀黍(とうもろこし)のピュレとジュ・ド・オマール 赤万願寺唐辛子を添えて」です。
▲とうもろこしの黄色と万願寺唐辛子の赤色が紅葉をイメージさせます

火入れが抜群なムネ肉とモモ肉それぞれの旨みの違いを楽しめ、フォアグラを使っているというソースを絡めるとさらに味わいが増し、驚きのある一皿。

いよいよ最後のデザート「黒糖のクレームブリュレと青柚子ソルベ ほのかに珈琲を香らせて」です。
▲見た目は至ってシンプルですが……

黒糖の深みのある甘みと柚子の香る爽やかなソルベの甘みがバランスよく、口の中にはほのかな苦みが残り、華やかなコースを気持ちよく締めくくってくれました。

「ランチもディナーも、メニューは2カ月に1度変わるのでぜひまたお越しください。また、お料理にあわせたお飲み物をご用意するペアリングも好評ですよ」という滝塚さん。ペアリングには、ワインだけでなく日本酒やソフトドリンクの用意もあり、相当こだわりがあるようです。訪れた際にはぜひお試しください!
▲今回入店していませんが、「蘇山荘」の店内はこんな雰囲気。庭園散策の合間にぜひ利用してみてください(写真提供:ガーデンレストラン徳川園)
▲「蘇山荘」にはこんな庭園もあるそうです(写真提供:ガーデンレストラン徳川園)
※紅葉の写真はすべて2017年以前のものです。
※徳川園の作庭意図についてはそれぞれ解釈が異なる部分もあり、必ずしも公式の見解ではありません。
澤井敏夫

澤井敏夫

愛知県・清須市在住のライター。情報誌の編集制作、音楽事務所でのマネジメント業務を経て独立。読書と落語鑑賞とヨガが趣味。

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