マリモのふるさと「阿寒湖」で、神秘の自然とアイヌ文化、温泉をめぐる旅

2018.11.05 更新

北海道東部にある「阿寒湖」。美しい自然に囲まれており、特別天然記念物のマリモ、北海道の先住民族アイヌの文化、良質な温泉などの魅力にあふれています。国内外から多くの人が訪れる人気観光地・阿寒湖エリアの楽しみ方をレポートします。

▲きれいな球状に成長する阿寒湖のマリモは湖のマスコットとしても有名です(写真提供:阿寒観光協会)

大自然に囲まれた美しい湖「阿寒湖」

阿寒湖は北海道東部、釧路市にある湖。約15万8千年前の火山の噴火によって生まれたカルデラ湖で、近隣の「屈斜路(くっしゃろ)湖」「摩周(ましゅう)湖」「オンネトー」などと共に「阿寒摩周国立公園」として指定されています。

その大きさは周囲約26km、面積約13平方km。北海道内にある湖の中では11番目の大きさですが、それでも東京ドーム約280個分の広さです。たんちょう釧路空港から車で約60分でアクセスできます。
▲雄阿寒岳(おあかんだけ)から見下ろす阿寒湖。周辺の山々では今でも火山活動が続いています(写真提供:阿寒観光協会)

火山地帯であることから周辺は温泉地として栄え、日本の中でも数少ないマリモの生息地、先住民族「アイヌ」が暮らす北海道最大の集落(コタン)があることなどでも有名。四季折々の美しい自然景観も大きな見どころで、多彩な魅力ある観光地として人気を誇っています。
▲様々な表情を見せる大自然に、アイヌ文化。神秘的な魅力にあふれた湖です(写真提供:阿寒観光協会)
▲真冬(12〜3月頃)には、湖に張った霜の結晶が花のように咲く貴重な自然現象「フロストフラワー」を見ることもできます

そんな阿寒湖ならではの魅力を存分に感じられるスポットを巡ってみました!

湖上からの絶景と、マリモの神秘。遊覧船でクルージング

阿寒湖に来たなら、まずは「阿寒観光汽船」の遊覧船に乗って、湖上からの雄大な景色を楽しみましょう。クルージングの折り返し地点では、湖北側に浮かぶ小さなチュウルイ島に上陸。島内にある「マリモ展示観察センター」で、マリモの生態を学ぶこともできます。
▲クルージングの所要時間は約85分。阿寒湖の魅力を存分に満喫できる船旅です
▲遊覧船の航路。湖上からの絶景を楽しみながら、マリモが観察できるチュウルイ島へ向かいます

遊覧船の乗り場は湖畔の南側に2カ所。起点と終点になる「まりもの里桟橋」と、遊覧航路の途中で立ち寄る「幸運の森桟橋」です。どちらも温泉街にあり、乗船料金は同じ(大人1,900円、小学生以下990円。ともに税込)なので、宿泊施設からアクセスの良いほうから乗船できますよ。
▲起点と終点になる「まりもの里桟橋」。今回はこちらから乗船しました

なお、運行期間は例年4月15日から11月30日まで。出航時刻や便数はシーズンごとに変わるので、事前に阿寒観光汽船のホームページなどで確認をしておくことをおすすめします。
▲今回乗船した遊覧船「すずらん丸」。定員390名の客室は2階建てで、トイレや飲み物の自動販売機も備えており、快適にクルーズを楽しめます

出航後5分ほどで、もう1つの乗り場である「幸運の森桟橋」に到着。こちらで乗船客をのせると、いよいよ本格的な遊覧の始まりです。

桟橋を離れ、船は湖の東側を目指します。遊覧中はアナウンスによるガイドもあり、見える景色や阿寒湖についての解説が。まずは進行方向の正面に「雄阿寒岳」が見えました。深い木々に囲まれた阿寒湖と、大きくそびえる山が雄大な景観を形成しています。
▲湖を見下ろす雄阿寒岳(標高1,371m)。現在も活発に活動している活火山です

湖上から温泉街のほうを見てみると、そちらにも大きな山が。「阿寒富士」と「雌阿寒岳(めあかんだけ)」です。アイヌの伝説で雄阿寒岳は「ピンネシリ(男の山)」 、雌阿寒岳は「マチネシリ(女の山)」と呼ばれ、 夫婦の山とされています。
▲左の山肌が見えているのが阿寒富士(標高1,476m)、右が雌阿寒岳(1,499m)。雌阿寒岳は日本百名山にも指定されています

遊覧船は木々の間を抜ける入り江に入っていきました。この場所は「滝口」と呼ばれ、四季を通じて様々な花や紅葉を楽しむことができる景勝地になっています。秘境の中を進むような楽しさがあり、冒険しているような気分にワクワクしました。
▲奥深い木々に囲まれた「滝口」。特に10月中旬の紅葉の時期は見事な絶景を見せてくれるそう

チュウルイ島に上陸して、マリモの秘密を観察

▲出発から約40分。チュウルイ島が見えてきました。中央の建物が「マリモ展示観察センター」

滝口の奥の行き止まりを折り返し、遊覧船は湖北にあるチュウルイ島へ。「マリモ展示観察センター」があるこの島に上陸し、約15分滞在してマリモの生態に関する様々な展示を観覧します。
▲マリモ展示観察センターの屋上は展望スペースになっています。山々と湖をバックに記念写真を撮影できる絶好のビュースポット

島内の桟橋から約3分歩くと、雄阿寒岳や雌阿寒岳を見渡せる展望スペースに到着。ここが展示センターの屋上になっており、ここから階段を下りて入館します。入館料は乗船料に含まれています。
▲館内にある巨大水槽。阿寒湖を再現しており、湖で採取された天然のマリモを見られます

マリモは、1897(明治30)年に札幌農学校(現在の北海道大学)の植物学者・川上瀧彌(たきや)氏によって阿寒湖で発見されました。その後、1921(大正10)年に日本の天然記念物、1952(昭和27)年に特別天然記念物に指定。現在は湖の限られた場所で保護され、簡単に見ることはできませんが、このセンターを訪れれば、そんなマリモを観察できます。
▲水槽に近づいてみると、大小さまざまなマリモがいっぱい!

マリモは、北アメリカやヨーロッパなど北半球の各所でも確認されています。でも、直径30cm以上の大きな球状のマリモが群生する場所は、世界中で阿寒湖だけとの説もあるのだとか(諸説あり)。地球上でも貴重な自然現象と考えると感動ものです。
▲展示されていた直径約20cmのマリモ。巨大なマリモが育つのは阿寒湖ならでは

マリモのできる仕組みについて解説したパネル展示もありました。丸い形状が愛らしいマリモは、水中で生活する緑藻類(りょくそうるい)の一種ですが、ボールのような球状体一つが「マリモの個体」というわけではないのだそう。岩に付着して生活する緑藻、綿くずのような状態で湖底を漂って生活する緑藻など、細い繊維のような「糸状体(しじょうたい)」の緑藻ひとつひとつがマリモの個体なのです。
▲湖底で広がった状態のマリモの標本。まるでビロードのよう

その糸状体が波の動きによって転がり、他の糸状体を巻き込みながら次第に大きく丸く成長していきます。やがて大きくなったマリモは中身が空洞化して形が崩れていきますが、再び湖底を転がりながら新たな球状体になるとのこと。
▲成長と崩壊を繰り返しながら、美しい球状の形が作られています

なぜ阿寒湖のマリモが大きく丸く成長し、多く群生しているのかは、まだ解明されてないのだそう。そのような神秘的な部分も相まって、多くの人を惹きつけているのかもしれません。
▲大自然が起こす奇跡の結晶が阿寒湖のマリモなのです

再び遊覧船に乗り、「幸運の森桟橋」を経由して「まりもの里桟橋」に戻ります。短い時間ではありましたが、阿寒湖の自然とマリモの神秘に触れることができる、非常に中身の濃い船旅でした。
▲湖上の移動にはモーターボートもおすすめ。2人以上からチャーターでき、遊覧船と違った魅力があります(「まりもの里桟橋」を出発し、「マリモ展示観察センター」を見学するコースは1人2,500円 ※税込)

アイヌコタンで民芸品や伝統料理を楽しむ

マリモと共に、阿寒湖の魅力といえるのが北海道のアイヌ文化を身近に感じられること。2018年現在、温泉街の一角には36戸・約130人が暮らす北海道最大のアイヌコタン(アイヌの集落)があり、アイヌの伝統文化を紹介する資料館、木彫製品などを販売する民芸品店、アイヌ料理を楽しめる飲食店、伝統舞踊を上演する劇場などが揃っています。
▲コタンの入り口。いたるところに見られるフクロウは、コタンの守り神として崇められてきました

コタンのメインストリートには木彫りや刺繍の工芸品を扱う民芸品店が多く並び、店舗ごとに職人の手による個性あふれる作品を展示販売しています。外から見ているだけでも楽しめますが、その中から2つの店内を覗いてみました。

「ニタユンクル」にはたくさんの木彫りのフクロウがいました。手彫りの温かみのある作品は、お土産としても人気なのだそう。1,000円台の手ごろなものから、数十万円の大作まで幅広い価格帯の品々が揃っています。
▲「ニタユンクル」のフクロウの木彫製品(営業時間は夏季9:00~22:00、冬季10:00~21:00/無休)

「サンラマント」では、ネックレスやピアス、イヤリングなどアイヌの伝統の模様をモチーフにしたアクセサリーや、アイヌの伝承に登場するコロポックルの木彫りなど可愛らしい商品が目に留まりました。
▲「サンラマント」の商品は、小さいながらもアイヌ伝統の模様をセンス良くデザインに取り入れており素敵です(営業時間は9:00~22:00/不定休)

コタンには日本でも数少ないアイヌ料理を食べられるお店もあります。「アイヌ料理の店ポロンノ」では、アイヌの伝統的な料理からアレンジ料理まで様々なメニューを提供していると聞き、立ち寄ってみました。
▲最近はアイヌを扱った漫画などの人気もあり、訪れる人も増えているとか

今回は、このお店のおすすめメニューという「ユクオハウ(鹿肉の汁物)」のセット(税込1,000円)を注文してみました。鹿肉とギョウジャニンニクなどの山菜を煮込んだアイヌの基本的な鍋料理「オハウ」と、豆やいなきびを一緒に炊き込んだご飯「アマム」、鮭の血合いの塩辛「メフン」が一緒になった定食です。
▲オハウ(右)に入っている鹿肉は地元のハンターがしとめたもので、山菜も店主自ら山に入り採取してきたもの

オハウは基本的に昆布の出汁と塩のみの味付けということですが、食べてみるとしっかりとした滋味を感じる美味しさ。具材豊富な「アマム」と共に栄養満点で身体に良さそうな、まさに自然食というものでした。「メフン」もアクセントのある珍味で、ご飯だけではなくお酒にも良く合いそう。
▲柔らかく煮込まれた鹿肉は、しっかりと処理されており臭みやクセがありません

もう一品、デザートに「コンブシト」(税込450円)をオーダーしてみました。米粉の団子「シト」に、北海道沿岸の名産である昆布ダレをかけたもので、こちらも磯の風味と濃厚な旨みが口の中いっぱいに広がります。
▲日高地方のアイヌに伝わる、お祭りなどで食べられる料理とのことです

ポロンノでは、他にもジャガイモを自然発酵させた「ポッチェイモ」(税込450円)や、ボリューム満点の鹿肉がのった「ユック丼」(税込1,000円)など、個性的で美味しく、体に良さそうなメニューが盛りだくさんでした。
▲他の料理も食べてみたくなりました。食事に感謝するアイヌ語「ヒンナ」が思わず口に出るような料理を味わってみてください
なお、コタンのお店はどこも22時ぐらいまで開いています。宿の食事や温泉を楽しんだ後でもゆっくりと巡れるのがうれしいですね。

アイヌの伝統的な踊り、儀式の実演もあるシアター

アイヌの文化を知るうえで、欠かせないのが歌や踊り。文字を持たない彼らは、物語や伝承をそれらによって後世まで伝えてきました。その伝統を守り、未来へ伝えていくための施設もコタン内にあります。「阿寒湖アイヌシアター イコロ」です。
▲こちらにも守り神のフクロウの像が。上演前には、公演の始まりを知らせる告知車が温泉街を走ります

シアターのメインとなる演目は「アイヌ古式舞踊」(入場料大人1,080円、小学生以下540円 ※ともに税込)。アイヌ民族が日常や儀式など様々な場面で歌い踊ってきた舞踊を観覧することができます。喜びや悲しみを体を使って表現する姿はすばらしく、約30分の上演時間の間、その世界観に引き込まれます。

1日の上演回数や、時間はシーズンによって変わります。詳細は「イコロ」のホームページで確認を。
▲鶴が舞う様子と鳴き声を表現した「サロルンカムイリムセ」
▲独特のメロディーを奏でる伝統楽器「ムックリ」の演奏も披露されます

毎日21時からの最終公演では「イオマンテの火まつり」(入場料大人1,080円、小学生以下540円 ※ともに税込)が上演されます(12月~4月20日までは休演)。ステージ中央に本物の炎が掲げられ、神聖な雰囲気の中で舞踊や儀式が繰り広げられます。
▲こちらも上演時間は30分ほど。舞台の中央で炎が舞い踊り、より迫力ある力強い舞台を見ることができます

コタンには、アイヌの文化を学べる「アイヌ生活記念館 ポンチセ」もあります。残念ながら筆者が訪れたときは改装中だったので、隣接するもう1つの施設「アイヌ文化伝承館チセ」で狩猟道具や生活道具の展示を見学しました。
▲「アイヌ生活記念館 ポンチセ」は2019年度にリニューアルオープン予定。「チセ」とはアイヌ語で家の意味
▲コタンのメインストリート中央にある「アイヌ文化伝承館チセ」。こちらでも企画展をはじめ、アイヌの文化を紹介する展示を行っています
▲展示されていたのは木の樹皮で作られた衣服「アットゥシ」や、鮭皮の靴「チュプケリ」など。自然をうまく利用し生活していたことが感じられます

阿寒湖を訪れたなら、ぜひアイヌコタンを訪れ、アイヌの文化に触れてみてください。できればコタンの人たちとも話してみると、より彼らの文化を深く知ることができると思いますよ。

温泉やボッケも!さらなる阿寒湖の楽しみ方

阿寒湖の自然についてもっと詳しく知りたいのなら、「阿寒湖畔エコミュージアムセンター」へ。館内には湖周辺の地形や生息する動植物、アイヌ文化などについて解説する展示があります。マリモや湖に生息するヒメマスなどが見られる水槽もあり、見ごたえのあるスポットです。
▲動植物の標本と工夫を凝らした展示で阿寒湖の自然をより詳しく知ることができます(開館時間は9:00~17:00/火曜定休)

また、エコミュージアムセンター周辺には遊歩道が整備されており、湖周辺を散策することもできます。遊歩道を湖畔近くまで進むと見られるのが「ボッケ」。「煮え立つ場所」というアイヌ語で、地下の泥が火山ガスと共に吹き出て地上に盛り上がったり、あぶくの膜が破裂したりしています。ここが火山地帯だということを感じさせてくれますね。
▲ポコポコと音を立て、泥の沼が煮え立っているような「ボッケ」。吹き出している泥の温度は97度ほどにもなるとか!

そして、阿寒湖といえば温泉。ホテルや旅館に宿泊してゆっくりと浸かれるのはもちろん、無料で入れる足湯や手湯も各所にあり、気軽に阿寒のお湯を楽しむことができますよ。
▲エコミュージアムセンター近くにある「弁慶の足湯」。温泉街を散策した後に、まったりと浸かってみるのも乙なものです

白銀の世界が広がる冬の阿寒湖もおすすめ。凍結した湖面に咲く氷の花「フロストフラワー」を見られるだけでなく、スノーモービルやワカサギ釣りといったアクティビティも楽しめます。冷たく張り詰めた空気の中で入る露天風呂も格別ですよ!
▲凍った湖の上をスノーモービルで疾走!

山と森に囲まれた美しい景観、マリモをはじめとした神秘の自然、未来に伝えられるアイヌの文化など、多彩な魅力にあふれた阿寒湖の旅。多くの人を惹きつけるのも納得の観光スポットでした。もしこの地を訪れるのなら、当地に宿泊し、温泉を堪能しながらのんびりと巡ることをおすすめします。
▲大自然に温泉、アイヌ文化、阿寒湖の全てに癒されてください(写真提供:阿寒観光協会)
長尾悦郎

長尾悦郎

北海道十勝地方でカメラマン、ライター、新聞記者として活動中。撮影ジャンルは広告、風景、人物など幅広く。地元観光協会勤務やご当地キャラマネージャーなどの経験を生かし、地元をもっと盛り上げていきたいと思っています。(編集/株式会社くらしさ)

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