世界最大級!?宮崎「綾の大吊橋」で絶景に興奮、自然に癒される旅

2019.05.02 更新

日本最大級の面積で原生的な照葉樹林が残る、宮崎県綾町(あやちょう)。2012年、ユネスコが認定する「ユネスコエコパーク」に登録されました。その照葉樹林を見守るような場所に建設された「綾の照葉大吊橋(てるはおおつりばし)」は遠くから眺めるも良し、渡りながら自然の風景を堪能するも良しの絶景スポット。自然と文化を感じる旅へ、さあ出発です。

照葉樹林を守るために架けられた“日本最大級”の高さを誇る大吊橋

宮崎空港から車で約50分。綾町に入り県道26号を進むと、民家がどんどん減っていき、山の風景に。「こんな山奥に吊橋などあるのかしら」と心配になってきたところで、ようやく頭上高くに橋が見えてきます。
▲県道を行くと大吊橋を下から見られます

今回は官民協働で綾の照葉樹林を保護・復元するプロジェクトの事務局を担う市民団体「てるはの森の会」が主催する、大吊橋と照葉樹林をめぐるガイドツアーに参加することに。通常60分の道のりを約2時間半かけて、照葉樹林の特徴や“自然の不思議”ついて説明を聞きながらまわるツアーです(税込500円 ※別途、大吊橋入園料が必要)。

早速、待ち合わせ場所「てるは森の驛(えき)」へ向かいました。
▲駐車場の目の前に建てられた「てるは森の驛」

迎えてくれたのはガイドの山下勉さんと下村ゆかりさん。吊橋はどこ?とキョロキョロしてみると、道の先に大吊橋が!ちらっと見えている大吊橋が、筆者を手招きしているよう。これから始まるツアーへの期待値を上げてくれます。
▲てるは森の驛を過ぎると、視線の先には大吊橋が!
▲「綾ユネスコエコパーク」の看板。ユネスコエコパークには、自然生態系の保護・保全と、持続可能な利活用の調和のとれた取り組みが行われている地域が登録されています

「九州中央山地国定公園」内に位置する大吊橋とその周辺の照葉樹林へは、受付で入園料350円(税込)を払って進みます。まずは、大吊橋について、ガイドさんのお話を聞きましょう。
▲2008年からガイドを務める山下勉さん(左)と事務局の下村ゆかりさん

「橋が作られたきっかけは、1960年代にさかのぼります。この頃、照葉大吊橋周辺の照葉樹林の伐採計画が持ち上がりました。しかし、綾町議会にて反対の決議がなされ、町民からも多くの反対署名を集めて国に陳情するなどしました。そして照葉樹林は守られたのです」(山下さん)

その後、綾は町を挙げて照葉樹林を保護する取り組みを始めました。多くの人が訪れることで照葉樹林がもたらす豊かな自然の尊さを知ってもらい、人と自然の架け橋になってほしいと、代表的な観光のモニュメントとして「綾の照葉大吊橋」が架けられたのです。この照葉樹林が国定公園に指定された2年後の1984(昭和59)年のことです。
▲橋を真正面から見ると、鉄塔がまっすぐ空に伸びる様子がなんとも美しい!

人を呼び込むために作られた橋だったのか!と少し衝撃を受けましたが、架け橋という言葉を聞き、「なるほど~」と思わず声に出して言ってしまいました。高さ142m、橋の長さ250m、鉄塔の高さ28mの巨大な橋は、当時の人たちの熱意を表しているかのようです。
▲橋には、しめ縄飾りも

なお、橋のたもとには「歩く吊橋世界一」の文字が彫られた石碑があります。これは完成当時、さまざまな意味で世界一の専用歩道橋であると宣言していたから。しかし、残念なことに今は状況が変わってしまいました。日本国内で、高さでは大分県の「九重(ここのえ)“夢”大吊橋」に、長さでは「箱根西麓(せいろく)・三島大吊橋」にトップの座を譲っています。

綾の山奥に架けられた大吊橋で“絶景”と“絶叫”?

では、お待たせしました!橋を渡ってみましょう。幅1.2mの橋は2人がすれ違うのがやっとで、カップルも腕を組んでは歩けないほど。まずは橋の反対側から来るお客さんを先に通して、われら一行が出発です。
▲橋を斜め横から見るとこんな感じ

100回以上はこの橋を渡っているというガイドの山下さんは「行く手に広がる山の木々はすべて照葉樹林です。落葉樹は少ないのでいつも緑色なんですよ」と説明しながら進んでくれます。

「木々がモコモコとしていてブロッコリーみたいでしょ」とは下村さん。これが照葉樹の特徴なのですね。青々とした木々が集まって森を形成していくのだなと改めて感じます。新緑の時季には、もっと黄緑の若い葉も出てきて、森がカラフルな緑色でおおわれるのだそうです。
▲照葉樹林に向かって伸びる大吊橋

と、その時、強風が!ひえー、こわいー!!橋がぐらんぐらんと揺れるのです。たぶん、ぐらんぐらんは大げさな表現なのですが、私にとってはそんな気分。高所恐怖症でも何でもないのですが、橋の端に寄るのが怖くなりました。

そんな筆者の様子に山下さんは「この大吊橋は実は2代目。2011年にデザインも変更された新しい吊橋が架けられたんです。理由は耐震強度を高めるため。そのおかげで昔より揺れるようになったんですよ」と笑顔で教えてくれました。
▲遠くに見えるのは先ほど大吊橋を望んだ県道。安全だから揺れるとはいえ、車で上ってきた道路がこんなに小さく見えると恐怖感が募ります…

「ちょっと後ろを振り返ってみてください。あれが、後の散策ツアーで通る『かじか橋』ですよ」と山下さん。そして「その周辺に見えるのは、どれも高さが10mもあろうかという常緑広葉樹です。そんな大きな木を上から見られるのは、この大吊橋があるおかげ」とのこと。たしかに、大木を見下ろすなんてなかなかできない体験です。
▲小さく見えるのが「かじか橋」
▲最高地点から望む景色を見るべし

そうこうしているうちに、「ここが吊橋から一番深い場所です」という高さ142m地点に到着。勇気を振り絞って下を見てみると、深い緑色をした水が流れています。橋が架けられているのは渓谷の上。きれいなはずです。
▲綾南川(あやみなみがわ)の美しい水流
▲足元を見よ。足場の真ん中が網状になっていて、下がのぞけるのです

豊かな自然に包まれながらの5分ほどの旅。「もうすぐ渡り終える!」と安堵したとたんにもう一度強風にあおられ、髪は逆立つは、恐ろしいやら…。でも写真を見ていただければお分かりの通り、実は笑顔なんです、私。“楽しい恐怖”が味わえるスリリングな絶景ポイント「綾の照葉大吊橋」。くれぐれもスマートフォンやカメラを谷底に落とさぬように気をつけて撮影してくださいね。

照葉樹林からパワーがもらえる!癒しの「遊歩道散策ツアー」

大吊橋の終点は、綾の照葉樹林をめぐる遊歩道の出発点でもあります。途中で折り返す約20分のショートコースと大吊橋のスタート地点まで戻れる1周約2kmの60分コースがありますが、今回はガイドツアーなのでロングコース。ガイドの解説を聞きながら、ゆっくりと2時間半ほどかけて散策します。
▲遊歩道の案内図

「綾の照葉樹林は春がベストシーズンなんですよ」と下村さん。照葉樹林とは、冬でも落葉しない広葉常緑樹を主とした林のこと。具体的にいうと、シイやカシのような葉が厚く、つやつやとした深緑色の葉を持った木で構成された林です。

綾の照葉樹林には約848種類の植物が生息しているといわれ、春は芽吹きの季節。ヤマザクラ、ツツジなどが次々と花を咲かせ、色とりどりの植物がいちばん多く見られるのが3~5月なのだそうです。
▲のんびりと遊歩道を進むガイドツアー
▲少しですが、ヤマツツジが咲いていました(例年の見頃:3~4月)

遊歩道は歩きやすく整備されていますが、緩やかなアップダウンが続きます。でも息が切れるというほどのものではなく、森の中をのんびりと歩く幸せを感じます。オフィスでのデスクワークで流れる時間の速さと、照葉樹林の中をガイドさんの後ろをついて歩く時間の速さがこれほどまでに違うなんて!ゆったり、ゆっくり…。
▲雨が続く天気のせいで、普段水の流れていないところが滝に

頭を空っぽにして、陽の光が葉に当たってきらきらしている様子を観察したり、思わぬところが滝になっていることを知ったり、そんなちょっとした発見がうれしいなんて、ここに来るまで思いもしませんでした。
▲木漏れ日がまぶしく、きれい
▲1周2kmの遊歩道
▲橋脚に規則正しく積まれた石も

遊歩道を進んでいて驚いたのですが、綾の照葉樹林には岩や石が多く、地面が岩盤でできているところもあります。そのため、一度崩壊してしまったら、人の手で元に戻すことはできないのでしょう。自然を保護することの大切さを感じます。

遊歩道の一部は、昔、トロッコ列車が走っていた線路跡を利用しています。木材などを運ぶために、大吊橋の下を流れる綾南川沿いに作られたもので、昭和40年代までは使われていたそうです。
▲風雨にも負けず、トロッコ列車が走っていた当時の姿を残す橋脚

1時間ほど歩いたところで、湧水が出ている岩壁の近くにかわいらしい小さな葉を発見。シダ植物の一種でその名も「マメヅタ」です。音が鳴るというので、葉に耳を近づけてみると…。あれ、何も聞こえない。
▲シダ植物のマメヅタ

それもそのはず。ひとりでに音が鳴るのではなく、葉をつまんで指で折り曲げると「ぷちっ」と気持ちいい音がするのです。なんだかスカッとする。やみつきになってしまいました。
▲子どものように音を鳴らして遊ぶ

先を進むと、威勢のいい名前の木が!ロックンロールが似合いそうなバリバリノキです。
▲クスノキ科の照葉樹亜高木・バリバリノキ

なぜ、バリバリノキなのか。一説によると、葉が触れ合う時に「バリバリ」と音がするからとか。それほど硬い葉にも思えませんが、嵐の時などにはそんな強烈な音が鳴るのかもしれませんね。
▲バリバリノキの葉

途中、木の前に案内板が立っていました。はめられた板を手で右にずらすと、木の名前や特徴が分かるしかけ。
▲こちらのイチイガシ。幹周225cm、高さ23mで、ドングリはイノシシなどのエサになるそうです

そのほか、幹周りが3m近くあるイスノキやタブノキの巨木も。お気に入りの一本を見つけるのも楽しいのでは?
▲大雨や台風などの影響で途中から折れ、オブジェのようになった大木も
▲ある動物の皮の模様から名が付けられた木。さてなーに?

ガイドの山下さんから、「この模様、何に見えますか」と質問されました。とっさに「…迷彩っぽいですね」と答えましたが、残念、不正解。答えは、シカの模様「鹿の子」に似ていることからカゴノキ(鹿子の木)です。成長すると自然と皮が剥げていき、こんなまだら模様になるそう。これも自然が作り出す美しさに思えます。

綾の照葉樹林には鳥類も数多く生息し、約50種が確認されているそうです。アカゲラ、オオゲラ、サンコチョウのほか、山下さんが「めったに見られない貴重な鳥」と話してくれたのがクマタカでした。
▲山下さんが持ち歩いている特製ガイドブックに載っているクマタカ

2時間ほど散策したところで、先ほど見下ろした「かじか橋」にたどり着きました。そして、その小さな吊橋から見上げると、大吊橋!小さく見えるけど!
▲あそこから、ここまで来たのかと、思っていた以上に感慨深かったです
▲あんなに小さく見えた「かじか橋」ですが、幅は大吊橋と同じくらい

ここまで来ると、いよいよツアーも終盤です。ちょっとした坂を10分ほど上がると、遊歩道の最終地点。
▲ガイドの山下さんと記念撮影

さらに20分ほど歩いて大吊橋のスタート地点に戻り、そこから2分ほど行ったところにある「照葉樹林文化館」にも寄ってみました。照葉樹林が人類に影響を与えていたことや、文化の発達と密接な関係を持っていたことなどを学べる場所でした。照葉樹林を実際に歩いてから、後で“復習”するのがおすすめです。
▲照葉樹林やその他の森に関する情報をパネルや模型などを使って解説
▲開館時間は4~9月8:30~18:00、10~3月8:30~17:00、年中無休。大吊橋入園料で入館可

原生的な照葉樹林が残っているおかげで、植物、動物の生態系が守られ、そこに多様な生物が共存していることを肌で感じることができた今回のツアー。癒されるだけでなく、学びも多いアクティビティでした。

食事が船で運ばれる!?清流を眺めながら綾の美味を味わう「綾の里」

▲ブルーの看板が目印です

照葉樹林の散策を楽しんだ後は、照葉大吊橋から車で約2分のところにある食事処「綾の里」へ。1984(昭和59)年創業の郷土料理のお店で、今は2代目店主が切り盛りしています。
▲綾南川沿いに立つ「綾の里」

大吊橋から見下ろした綾南川沿いに建てられたお店で、清流の音が聞こえ、それだけでも癒される空間です。全部で22卓あり、最大130人が座れるとのこと。

個室に入ってみると、窓の外に水の流れるレーンがあり、お盆にのせられた食事が運ばれていきます。
▲ビールが運ばれていく~

これがこのお店が多くの人に愛される理由のひとつ。先代が「お客さんに楽しんでほしいから」と作ったもので、部屋番号が書かれた舟が窓の外のレーンを通っていきます。その様子は見ているだけでも、心が和みます。

さあ、今日は何をいただこうかな!迷った末にお店の定番メニューである「地どり定食」と12~4月中旬の期間限定「猪鍋(ししなべ)」を味わうことにしました。
▲大人でも楽しめること請け合いです

注文して待っている間、水の流れるレーンを見ながらソワソワ。そんなにすぐに来るわけはないのに、待ち遠しいったらありません。写真映えもするし、本当に楽しい!
▲そして「地どり定食」(ごはん、たまごスープ付。税込1,900円)が到着!

まずは地どり定食から。綾町でとれた鶏をお客さん自らが七輪で焼く炭火焼きと、たたきの2種で味わえます。炭火焼き用の鶏肉はなんと、250gで一人前!たっぷり食べられて大満足です。

炭火焼きは火を通しすぎないように、サッと焼くのがポイント。一口大に切ってあり、すぐに焼けるので、どんどん頬張ることができます。甘めのしょう油ににんにくなどを加えた特製ダレも絶品です。少しコリコリとした食感で噛めば噛むほど地鶏の旨み、甘みを感じられて幸せすぎる!
▲イノシシ肉に6種の野菜が入った「猪鍋」(ごはん付。税込2,600円)

次は店主自らが狩りをしてとってきたというイノシシ肉をつかった「猪鍋」です。猪肉というと「獣臭いのでは?」と心配する方がいるかもしれませんが問題なし。臭みはなく、肉も脂身もほんのり甘くてうまーい!味噌ベースのスープで味付けされていて、地鶏をたっぷり食したことも忘れて、どんどん箸が進みます。

なぜ、こちらのイノシシ肉に甘みがあるのかというと、綾の山里をかけめぐっているイノシシはドングリを食べて育っているから。「イベリコ豚ならぬイベリコ猪だからおいしいんですよ」と2代目店主が教えてくださいました。
▲季節限定の「鮎定食」(税込2,600円)

4月下旬~12月中旬の夏料理として「鮎定食」、7月下旬~8月31日の夏休み期間は「そーめん流し」も楽しめます。鮎定食は鮎の塩焼き1尾、みそ焼き1尾、酢みそ和えの鮎の背越し、鮎コク、鮎飯が付いた鮎づくしのセットです。
▲専用の会場でいただく「そーめん流し」(食べ放題。大人800円、小学生500円、小学生以下300円 ※すべて税込)は夏季限定

エンタメ感を味わえるだけでなく、味も抜群にうまい地鶏やイノシシ肉の郷土料理。季節ごとに綾町ならではの味覚を楽しめて、満足感が半端ないです。本当にごちそうさまでした!
綾町にはそのほか、大吊橋から車で15分ほどのところにある「綾城」も。室町時代に九州を広く平定した伊藤氏の持つ四十八城の一つであり、1985(昭和60)年に再建されました。現在は、城内に陶芸品、木工品、絹織物などの工房が立てられ、「綾・国際クラフトの城」として人々に親しまれています。
▲綾城の全景。周囲には伝統工芸作りを体験できる工房もあります(営業時間9:00~17:30、入場料350円・税込、定休日なし)

今回の旅で、綾町にこんなに魅力的な自然、建造物、食があることを宮崎人である筆者でも初めて知りました。仕事に追われる都会の人ならなおのこと、綾の魅力にとりつかれるのでは?大吊橋でスリリングな体験をし、照葉樹林を歩き、地元グルメに舌鼓。思い出深い旅を綾町で楽しんでみませんか。
新名有佳

新名有佳

フリーランスライター。宮崎県出身。生まれた頃から海や山、自然に恵まれた宮崎県北の日向市で過ごす。高校時代は福岡で暮らし、都会と地元の違いを体感。故郷では「当たり前」だったことに価値があると気づく。通信制の短大で学びながら、地域活性化に取り組む。ローカルフードをこよなく愛す。 (編集/株式会社くらしさ)

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