「町立湯河原美術館」は現代日本画家のアトリエ×庭園×足湯を楽しめる、カフェも魅力のおすすめスポット

2018.10.06 更新

千歳川が流れ自然豊かな「湯河原」は、趣溢れる湯の里。古くは万葉集にも詠まれているこの地で、ぜひ立ち寄ってほしいスポットがここ「町立湯河原美術館」です。湯河原ゆかりの画家の作品をはじめ、国際的に活躍する平松礼二氏の作品&アトリエを見学した後は、庭園や癒しのカフェへ。モネの睡蓮の花を眺め、足湯付きテラスで憩い、しばしゆったり過ごしてみてはいかがでしょう。

▲平松礼二画「湯河原十景候補作品のうちの1点」~美術館近くの赤い橋~※未完のため正式名称はまだなし

湯河原駅からバスで約12分。千歳川沿いに佇む湯の町の美術館

都心から電車で約1時間半で行ける湯の町、湯河原で一泊。古くから人々に愛される名湯を満喫した翌日、そのまますぐ日常に帰ってしまう前に、ぜひ立ち寄ってほしい場所が「町立湯河原美術館」です。

隈研吾建築都市設計事務所の設計・デザインによる駅前広場も話題のJR湯河原駅から、バスや車に乗って約12分。清らかな川のせせらぎの傍らに佇む、赤いレンガ造りの洋館が、今回おすすめの目的地である美術館。一見地味なようですが、実は実際に訪れた人からの評判は高く、見所たっぷり。日本の美と四季が息づく館内へ、さっそくご案内しましょう。
▲かつて老舗の旅館だったという、レンガ造りの外観はクラシックな趣。併設されたカフェを目当てに訪れる人も多い

和と洋が息づく館内は、一歩入ると、どこかノスタルジック。ゆったりと広々とした空間が迎えてくれます。館内の展示室は、「平松礼二館」「平松礼二アトリエ」「常設館」など、小さいながらも充実しています。
エントランスには、万葉の時代に詠まれた湯河原の和歌と並んで、平松礼二氏のアトリエの案内板があり、当日開催のギャラリートークのタイムスケジュールなどを確認できます。観覧券(大人600円、小・中学生300円。ともに税込)を購入したら、美の世界へいざ!

【平松礼二館】現代日本画壇の重鎮による作品をじっくり鑑賞

平松礼二氏(1941年生まれ)は、現代日本画壇の重鎮として今も精力的に活躍する画家。琳派を彷彿とさせる大胆な構図と、繊細にして緻密な筆遣いが織り成す画風は「平松山水」と呼ばれ、世界的に高く評価されています。

ここ湯河原美術館には「平松礼二館」があり、名誉館長として就任した平松氏の青年期から今日までの作品を収蔵&展示。時代やテーマにより趣も技法も多彩な、美の世界にふれることができます。テーマごとに展示内容が変わる年4回の企画展もあり、湯河原に訪れるたび違う作品を観るのを楽しみに再訪するファンも多いのだとか。
▲平松氏の青年時代からのライフワークの一つ、「路シリーズ」の作品群。どこか骨太な初期の作品は、押さえられた色調に緊迫感と憂愁がみなぎっています
▲四季の花の美が描かれた「花シリーズ」から「紅白梅」Ⓒ平松礼二
▲こちらは、「日本の祈り(さくら)」Ⓒ平松礼二

幽玄なまでに艶やかな色合いと、花びら一枚一枚を立体的に描いた質感が圧巻。間近で見つめていると、画面からほとばしる花の生命力が迫ってきます。
「路シリーズ」や「花シリーズ」、「ジャポニスムシリーズ」のほか、「北京&ニューヨークシリーズ」など、方向性が異なる各カテゴリーの作品を描き続け、現在も精力的に活動を続ける平松氏。
なかでも、印象派の画家・モネの世界観を日本画の画材や手法を用いて描く「ジャポニスム研究」では名高く、モネゆかりの「ジヴェルニー印象派美術館」(フランス)で2013年と2018年に展覧会を開くほど。
▲日本画家の眼を通してみた“モネの睡蓮”が描かれた「モネの池・睡蓮」Ⓒ平松礼二

“モネの池”と“睡蓮”が描かれた作品には、浮世絵に大きな影響を受けたモネとフランス印象派に魅了された日本画家・平松氏との魂の交流が見えるかのようです。
▲2000年1月~2010年12月まで、文藝春秋の表紙を担当したことでも知られる平松氏。美術館の一角には、原画と印刷された表紙が並び、見比べることができます。当時、不測の事態に備えて、同じ絵を2枚描いていたというエピソードも

取材時の企画展では、27点の平松作品を鑑賞でき、心に響く日本美の世界を改めて感じることができました。

【平松礼二アトリエ】実際の制作現場を覗けるアトリエ&作品を公開

▲アトリエにて自ら作品や画材・技法を解説してくれる平松礼二氏

平松氏の画業の集大成となるのが、2018年現在、こちらにあるアトリエで制作中の「湯河原十景」。実際に平松氏のアトリエを公開し、作品が誕生する場とその過程を垣間見ることができるのは全国的にもめずらしい取り組みだと評判です。

ここならではのお楽しみとして、平松氏自らアトリエを案内してくれる特別な日もあり、あらかじめ日程をホームページでチェックしておきたいところ。気さくで穏やかな口調で、ご自身の作品を解説してくれます。
▲壁一面に並ぶ愛用の岩絵具。岩絵具は鉱物を砕いたもので、その粒子を膠(にかわ)で溶いて絵の具をつくり、日本画は描かれます
▲たとえ平松氏本人がいなくても、アトリエには制作中の気配がそのまま漂っています
▲桜咲く湯河原の風景。間近で見ると、花の一輪一輪が生きているよう
▲公開時間は9:30~15:30。自然光が降り注ぐアトリエで、傑作が生まれます

実際の制作風景を体感できるアトリエ公開。日本画で使用される絵の具の発色の美しさ、間近でつぶさに観ることができる本物の画の迫力に、圧倒されるひとときでした。
▲アトリエを出た後は、窓一面に庭園の緑を望む「展望休憩室」で鑑賞途中の一休みも。四季の美景が清々しく広がります

【常設館】竹内栖鳳など湯河原にゆかりのある画家の作品を展示

「常設館」では、湯河原に逗留していた画家や湯河原の風景を描いた作品などを中心に、約400点の作品を収蔵。竹内栖鳳(たけうちせいほう)、安井曾太郎(やすいそうたろう)など約20点の作品を3カ月ごとの展示替えで公開しています。
▲かつて「東の大観、西の栖鳳」と讃えられた竹内栖鳳作「喜雀」。愛らしい雀が生き生きと描かれたこの屏風は、晩年をここ湯河原で過ごした記念に描かれたものだとか
▲繊細な絵筆のタッチと文字が美しい竹内栖鳳作「旅寿々里」
▲戦後、栖鳳の旧居に移り住んだという安井曾太郎。近代洋画界の中軸として活躍した名画家の作品「赤き橋の見える風景」も必見です

【庭園】モネの睡蓮が咲く庭園を散策

館内から見えた庭園も、この美術館の魅力の一つ。ぜひゆっくり散策して、四季折々の自然も鑑賞ください。
▲例年2月頃に見ごろを迎える寒桜

冬から春の寒桜、秋の紅葉も見事ですが、夏に咲く睡蓮は、あのモネが描いたジヴェルニーの庭に咲く睡蓮と同じ株なのだそうです。
▲平松氏がフランス・モネ財団から譲られた睡蓮が、池に可憐な花を咲かせます
▲庭園の一角には、かつて湯河原に居を構えて制作活動をした安井曾太郎の記念碑も
▲池のほとり、リンリンとひそやかな音を奏でる水琴窟に耳を澄まして

【美術館カフェ】足湯のあるテラス席でヘルシーランチ&お茶を

散策を楽しんだら、おいしい食事やスイーツを目当てに訪れる人も多いという、1階ミュージアムカフェ「and garden」へ。プロデュースするのは、湯河原で評判の豆腐店「十二庵」です。
厳選した国産大豆を使った濃厚な豆乳や豆腐の味を生かしたメニューは、どれもカラダにじんわりしみる優しい味わい。湯河原の自然を感じるテラス席で味わえば、心身ともに解きほぐされていきます。金・土曜は湯河原のジビエを堪能できるディナーも。
▲ランチタイムで人気の「湯河原十二庵の豆乳スープセット」(1,000円・税込)
▲地元の洋菓子屋さんと共同開発した「豆乳バウムタルト マンゴー」(単品600円、コーヒーセット900円。共に税込)
▲ほんのり感じる豆の味わいがクセになる「秘伝豆のソフトクリーム」(350円・税込)のみの購入もOK
▲庭園を眺める特等席の足湯。竹林にそよぐ風やせせらぎの音、四季の風景、湯河原の湯に癒されているうちに日常をすっかり忘れてしまいそう

【ミュージアムショップ】旅の記念やお土産探しに立ち寄って

美術館オリジナル商品や平松礼二画伯関連グッズ、工芸作家の作品、竹内栖鳳ゆかりの京都のお香など、様々な商品が取り揃えられたミュージアムショップも1階に。お土産探しにも絶好です。
▲平松氏自ら紙の選定や印刷にもこだわったというオリジナル葉書は、発色が美しく、記念に何枚も求めたくなるはず。親しい人へお便りを出したり、フレームに入れればインテリアにも(1枚108円・税込)
実は、カフェやショップがある1階フロアは、観覧券を購入しなくても自由に利用可能。湯河原の町の散策途中に、バスの待ち合わせに、休憩に、気軽に立ち寄ってもらえるよう旅行案内のパンフレットも設置。観光客への気配りもうれしいスポットです。
「ちょっと寄るつもりが、ついゆっくり過ごしてしまった」――そんな声が多数寄せられているという「町立湯河原美術館」。
平松氏の作品をはじめとする日本画の美しさ、四季が巡る庭園の美しさに、改めて日本の美を再発見できるこの場所は、まるで小さな宝石箱のよう。カフェで味わうおいしい時間も含め、ぜひ旅のスケジュールにゆとりをもって訪れてみてください。きっと、心が潤う豊かなひとときを満喫できることでしょう。
ゴトウヤスコ

ゴトウヤスコ

ホテル、レストラン、神社、婚礼、旅、食、暦&歳時記、ものづくりなどの広告コピー、雑誌記事、インタビュー記事などを多数執筆し、言葉で人と人をつなぎ、心に響くものごとを伝える。旅は、基本一人旅好き。温泉、パワースポット、絶景、おいしいものがあるところなら、好奇心がおもむくままどこへでも。得意技は、手土産&グルメハンティング。最近は伝統.芸能、日本刀、蓄音機など和文化への興味を深堀中。読書会なども開催。(制作会社CLINK:クリンク)

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