ラーメン業界最高峰!行列ができる「らぁ麺屋 飯田商店」の秘密を探ってきた!

2018.10.29 更新

ラーメン好きの間で「ラーメンの聖地」と呼ばれるお店が、神奈川県湯河原町にあります。それが「らぁ麺屋 飯田商店」(以下、飯田商店)。2010年にオープンし、2017年と2018年には業界で最高権威とも言われる「TRYラーメン大賞」(講談社)を2年連続で受賞。2018年1月には「情熱大陸」(MBS/TBS系ネット)にも登場するなど、広く話題となっています。そんな飯田商店に、人気の秘密を探りに行ってきました!

湯河原町にある「飯田商店」へ、いざ!

JR東京駅から東海道線・快速アクティーで1時間半弱。湯河原駅を降りて、徒歩10分ほどの場所に飯田商店はあります。営業時間は11:00~15:00の4時間限定。連日長い行列ができることから、整理券を配布するほどの人気店です。

店頭で待つのを極力避けたい人は、開店前の7:00、8:00、9:00、10:00、10:30の5回に分けて整理券を配布しているので、それに合わせてお店へ向かいましょう。
▲住宅街にひっそりと佇む店舗

取材当日は10:30前にお店に到着。平日にもかかわらず、既に15名のお客さんが10:30の整理券配布を待っていました。客層を見ると、まさに老若男女といった感じで、おばあさんのグループから小さい赤ちゃんを連れた親子まで。一般的なラーメン屋とはちょっと客層が違うようにも思え、万人受けするラーメンの味にますます期待が膨らみます。

時間になるとスタッフがお店から出てきて、無事に整理券をもらうことができました。
▲店頭には10:30以前の整理券配布人数が書かれていた。飯田商店のTwitter(@iidashouta)でも整理券の配布状況などが発信されている
▲整理券は1人で最大6名分までもらうことができる。この日は平日10:30の回で65番の整理券をゲット!

2時間ほど湯河原の町を散策し、整理券に記された時間までにお店に戻りました。すると、ほどなくして番号を呼ばれ、店内にある券売機で食券を買うように促されます。整理券のおかげで店頭にほとんど並ぶことがなかったため、あっという間に自分の番が来たという印象です!
▲券売機のメニューはおすすめが明らか。醤油とつけ麺が赤い表示で、塩、にぼしはボタンの大きさも控えめ
▲整理券の配布状況次第で、整理券なしの人でも店頭に並ぶことでラーメンを食べられる。この日は12:30時点で30名ほどの行列が。ちなみに取材日後の3連休には、10:30の整理券配布時点で250名に達したため、その日の受付を終了したそう…

鶏の旨みがダイレクトに伝わるスープと、自家製麺の食感に驚愕!

今回は、一番人気の「わんたん入り醤油らぁ麺」(税込1,100円)と、店主おすすめの「つけ麺」(税込1,000円)を注文。スタッフに券を渡して再びお店の外で待つこと約5分、いよいよお店の中に通されました。
▲カウンター10席と奥に4名用のテーブル席が2つ。お寿司屋さんのような高級感のある店内
▲テーブルには、使用食材に関するこだわりが書かれた卓上ポップが置かれている

卓上ポップの中には、チャーシューから器に至るまでさまざまなこだわりが。これを読んでいるだけでもラーメンへの期待感が高まります!そうこうしているうちに「わんたん入り醤油らぁ麺」が運ばれてきました。いい香り!
▲チャーシュー2種とわんたん2つ、姫三ッ葉がのっている。美しい見た目!

まずはスープを一口。(ワーーー!!!)鶏の香りが鼻から抜け、鶏油のたっぷりと入ったガラスープの旨みがぐわぁーと口の中に広がります。濃厚なのにスッキリ。なんでしょう、この味。そして醤油の深い味わいがついてきます。
▲見た目には鶏油がたっぷり。それなのに重たくなくスッキリとしたスープ

続いて、麺をいただきます。一口食べようと思ったら麺が結構長い(笑)。それでもツルツルの細麺なので、スルスルと口の中に吸い込まれていきます。
▲細麺に鶏ベースの醤油スープが絶妙に絡んでいる。ツルツルなのに歯ごたえもしっかり

「うまいっ!!!」声に出してそう叫んでしまいそうな味わいを噛み締めながら、トッピングへ。豚のロースチャーシューはしっとり、モモ焼豚の方も厚みがあるのに柔らかくて食べやすく、さらに食欲を掻き立てられます。
▲さがみ豚を低温調理して作られたロースチャーシュー(左)と、さがみ豚の“しきんぼう”という希少部位を特製ダレに漬けてオーブンで焼き上げたモモ焼豚(右)

わんたん2つも中身のお肉が違う(鶏と豚)ということで、食べ比べる楽しさがあります。どちらもお肉がぎっしり入っていて、スープと一緒に食べると満足感抜群!
▲金華豚を使った豚わんたんと、山水地鶏を使った鶏わんたんの2種。皮がチュルッとしていて、食感も楽しめる

鶏の旨みがギュッと詰まったスープ、ツルッツルの麺、具材一つひとつのこだわりを感じられる美味しさです。食べていると思わず笑みがこぼれてしまうレベル!
▲ニヤニヤが止まらない
▲雑味のないスッキリとした優しい味わいのスープは、気づけば飲み干していた

5度にわたって楽しめる!こんな“つけ麺”はじめてかも!?

「わんたん入り醤油らぁ麺」の余韻に浸っていると、今度は「つけ麺」が運ばれてきました。ザルに盛られた麺を想像していたら、なんと黄色いスープに麺が浸っているではありませんか。麺そのものの見た目も、先ほどの醤油らぁ麺とは色や太さが異なる様子です。
▲麺とつけダレのほかに、湯河原柑橘果汁(季節によって柑橘の種類は異なる)、海苔、塩、わさびが添えられている

テーブルの上に置かれた「つけ麺のおいしい食べ方指南書」に従って、まずは麺に塩だけをつけて食べてみます。

(ん!?!)つけダレにまだ浸けていないのに、とろろ昆布の出汁に浸けたような味がします!ここでメニューを再確認すると、「つけ麺(濃厚昆布鰹水出汁)」とありました。つまり、もともと麺の浸かっていた冷たい黄色いスープ自体が、昆布と鰹の水出汁だったのです。
▲昆布と鰹の香りがあとからついてきて、つけダレに浸けなくても味わいが十分!

麺自体の小麦の香りがまたすごいので、麺のみを味わうためにもまずは塩だけでいただくのがベスト。味覚だけでなく、嗅覚もフル回転です!

次に、つけダレに麺をサッと浸けていただきます。汁の色味からも明らかなように、醤油らぁ麺のスープよりも醤油のコクと香りが強いのですが、麺が浸かった昆布鰹水出汁と合わさると、口の中でちょうど良い味わいになるのです。
▲食べ方指南書によると、昆布鰹水出汁が麺をコーティングしているから麺につけダレが染み込まず、麺、水出汁、つけダレ、それぞれの味わいが存在感を放つそう
▲さがみ豚のモモ焼豚に加えて、鶏チャーシュー、メンマ、姫三ッ葉が入ったつけダレ

ある程度食べ進めたところで、今度は柑橘果汁をつけダレに加えて味の変化を楽しみます。あぁ~これも柑橘の香りと酸味が加わっていい!
▲柑橘果汁を加えることでさっぱりとした味わいに。入れすぎると酸っぱくなり過ぎるので、少しずつ加えるのがコツ

一般的なつけ麺は、食べ進めるうちにつけダレが薄くなったり若干飽きが来てしまうこともあるのですが、このつけ麺は柑橘果汁の他にも海苔を入れたり、わさびを麺につけて食べたりと、本当に様々な変化を楽しめて、お箸が止まりません!

麺を食べ終わったら、最後にお楽しみがもうひとつ。つけダレを昆布鰹水出汁で割ってスープとして飲めるんです。
▲コクのある醤油と鶏油の旨み、昆布と鰹の出汁が生み出すハーモニーが最高!

つけ麺のスープも最後の一滴まで飲んで完食。昆布鰹水出汁に浸った麺はそのままでも楽しめますし、つけダレに浸けて食べた後も、次々に違う味わいを楽しめます。こんなつけ麺を食べたのは、初めてかもしれません!
▲醤油らぁ麺に続き、こちらもスープまで完食しました!

ちなみに驚いたのが、他のお客さんの中にも1人で2杯、2人で3杯などと連食している人が多いこと。後で聞いた話によると、この日の最高記録は1人で7杯だったとか!!!

最初に食券を買わなくても、お腹と相談しながら追加注文することもできます。行列はお店の外なので、一度店内に入ると他のお客さんのことを気にせずラーメンとじっくり向き合えるのも嬉しいですね。

先輩たちからヒントを得た麺とスープ

胃袋が満足したところで、店主の飯田将太さんにお話を伺いました。
神奈川県真鶴町出身の飯田さんは大学卒業後、日本料理店で料理人を目指し始めていました。しかし25歳の時、商売をしていた実家の諸事情で実家に戻ることに。そして、叔父さんが営んでいたチェーン系ラーメン店のフランチャイズオーナーになります。
▲店主の飯田さん

「ラーメン店をやることになった時は少し戸惑いましたが、大学も出してもらって好き勝手やらせてもらっていたので、これまでの恩返しかなと思いました。それから寝る間も惜しんでめちゃめちゃ働きましたよ。今思い出すだけでも眠くなる」

そう当時を振り返る飯田さん。そして、その仕事を通して「お客様を大切にすること」を学んだと言います。

「働いていたお店はチェーン店だったため、味や調理法は決まっています。そんな中でもお客様に来てもらうためには+αの工夫が必要で、僕は来てくれるお客様を好きになることから始めました。人は好かれると悪い気はしないし、好きな奴が作ったラーメンは美味しく感じますよね(笑)」
▲厨房から見える柱に貼られた「お客様は来てくださらないもの」という言葉。経営を学ぶために読んだ本にあった、イトーヨーカ堂グループ創業者の言葉なのだそう

8年ほど働いた頃、もともと料理人を夢見ていた飯田さんは、やはり自分自身のラーメンを作りたいと思うように。そして、理想の味を求めてラーメン屋を巡る中で、ラーメン界の巨匠である故・佐野実氏のラーメンに衝撃を受けました。
▲厨房も含めてとても整理整頓された店内。「店構えも味の一つ」と話す飯田さんは、料理人としての仕事の基礎を日本料理店で学んだと話す

「それまでラーメンはスープ料理だと思っていたんですが、麺の旨さに軽いパニックになりましたよ。小麦の味がある麺にスープの味がしっかり入っていて、こんな料理性のあるラーメンはすごいなと感激しました」

そこから飯田さんは佐野氏のお店に通い続け、麺の研究に励むことに。佐野氏が使っているという小麦粉を使用してみたり、実際に小麦の産地まで足を運んでみたり、とにかく佐野氏の麺をお手本に、自分の味を突き詰めていきました。
▲製麺室の入口上部には、飯田さんが尊敬する佐野氏の写真が飾られている
▲こだわりの麺は、客席の奥にある製麺室で毎日製麺。厳選した国産小麦をブレンドして、一般的な製麺機よりも大きなローラーで圧をじっくりかけて生地を作るため、ツルツルの食感に仕上がるんだそう

「麺はメニューによって小麦の種類や配合、形状など全て変えています。例えば、つけ麺では2種類の形状の麺をブレンドして使用しています。平打ち麺と真四角の切り出し麺なんですが、平打ち麺はスープを拾い、切り出し麺は食感に主張を加える、といった具合にそれぞれ役割があるんです」
▲手前左から時計回りに、つけ麺、塩、醤油、にぼし用の麺。麺の長さは口の中でよく味わってもらえるように、すすってちょっと余るくらいの長さにしているそう
▲製麺室には石臼があり、なんと小麦の一部は自身で挽いているんだそう!

「挽きたての小麦は鮮度が違うので、それだけでも香りが違ってきますね。小麦の香りと味を際立たせるために、塩らぁ麺の麺には自分で挽いた小麦粉を2%だけ使用しています。逆に醤油らぁ麺の場合は醤油のキレや香りを大事にしたいので、石臼挽きの粉は使用しません」
▲「僕はただパスタよりも蕎麦よりも美味しい、世界一の麺を作りたいと思ってやっているだけです」と飯田さんは控えめに語ります

さらに飯田さんには、佐野氏の他にもう一人強く影響を受けた職人がいるそう。飯田さんがラーメン屋巡りをしていた当時、神奈川県相模原市にあった「69’N’ROLL ONE」(現在は兵庫県尼崎市に移転し「ロックンビリーS1」として営業)の店主・嶋崎順一さんです。

「鶏と水のみで作る69’N’ROLL ONEのラーメンがすごいと思って通い詰めていた時、たまたま嶋崎さんと店内で2人になって。2号ラーメン(醤油ラーメン)を続けて2杯食べたら話しかけてくれて、営業終了後、スープの手ほどきを受けたんです。これをキッカケに僕のラーメン人生は大きく変わりました」
▲逆浸透膜システムで不純物を取り除いたピュアウォーターを使い、比内地鶏、名古屋コーチン、山水地鶏の丸鶏と、比内地鶏、名古屋コーチンのガラからとったスープ
▲スープ作りの過程で取れる鶏油

醤油は兵庫、群馬、和歌山などから、濃口醤油、淡口醤油、再仕込醤油、たまり醤油など6種を厳選してブレンドしています。

「6種類の醤油それぞれに役割があって、たまりはコク、濃口はキレやふくよかさ、淡口は香りの華やかさを演出してくれます」
▲鶏油と6種類のブレンド醤油ダレを加えた器に、スープを注ぐ

こうして自身の麺とスープを完成させていった飯田さんは2010年3月、もともと実家の家業の倉庫があった湯河原に、晴れて「飯田商店」をオープンさせました。

お店ができるまでの経緯や今のラーメンの味に至るまでの話を伺って、ラーメン一杯にかける飯田さんの情熱の深さを改めて垣間見ることができました。
▲茹で上がった麺を器に盛る飯田さん。白い調理服が割烹料理店を連想させる

湯河原へわざわざ行く価値のある店

ラーメン界の先輩たちから頂いた想いを大切に、自身の味を追求し続けている飯田さん。業界の最高峰に輝きながらも謙虚に「まだまだです」と語ります。

「“古人の跡を求めず、古人の求めたるところを求めよ”という言葉があるんですが、先輩のマネをするだけでなく、なぜ先輩がそれをしたかをきちんと理解することが大切だと思っています。なぜを知れば、材料のありがたみも分かりますし、未来にきちんとラーメンを残せると思います」
▲「飯田商店」という店名は両親がやっていた家業の屋号。「商売の内容は違えど、飯田商店を継いだことは亡くなった父も喜んでくれていると思います」と飯田さんは話します
▲終始とても気さくに話をしてくれた飯田さん

素材や製法はもちろん、飯田さんの仕事に対する真摯な姿勢に、全国からお客さんが足を運ぶ理由がわかったような気がしました。ラーメン好きも普段ラーメンを食べない人も、ぜひ一度湯河原の飯田商店へ行ってみてください。それまでのラーメンの印象が変わるかもしれませんよ!
撮影:是枝右恭
長谷川浩史・梨紗(株式会社くらしさ)

長谷川浩史・梨紗(株式会社くらしさ)

広告出版社を退職後、世界一周、日本一周を経て「くらしさ」を設立。全国各地のモノ・コト・ヒトを伝え、つないでいく活動に尽力している。全国の仕事人に会いに行ける旅「Life Design Journey」も運営。 http://lifedesign-j.com/

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