秋田「抱返り渓谷」で、鮮やかな紅葉とコバルトブルーの渓流に癒される

2018.10.11 更新

秋田県東部に位置する仙北(せんぼく)市には、紅葉の名所として知られる「抱返り(だきがえり)渓谷」があります。例年10月上旬から11月上旬にかけて原生林が色鮮やかに紅葉し、コバルトブルーに輝く渓流とのコントラストの美しさは、日々の疲れも忘れさせてくれるほど。片道約30分の散策コースを実際に歩いてみたので、その見どころと景観をお伝えします。

新緑と紅葉シーズンが見頃の「抱返り渓谷」

「抱返り渓谷」は、田沢湖や角館に流れる玉川の中流に位置する全長約10kmの渓谷です。JR角館(かくのだて)駅より車で約15分でアクセスでき、一帯は「田沢湖抱返り県立自然公園」に指定されています。人がすれ違うときに、お互いを抱きかかえるように支え合って返さなければ通れなかったほど狭く険しい山道だったことから「抱返り」と名付けられました。
▲入り口にある石碑

青く透き通った渓流と豊かなサクラやカエデの原生林、川沿いに点在する奇岩や滝が生み出す景観は、その美しさから「東北の耶馬渓(やばけい)」とも称されるほど。例年6月中旬~8月下旬に見頃を迎える新緑と、10月上旬~11月上旬に見頃の紅葉シーズンには多くの観光客が訪れます。
▲鮮やかな紅葉と渓流の水音に癒される(写真提供:田沢湖・角館観光協会)

周辺には遊歩道が整備されていて、川沿いを歩きながら散策を楽しめるのも魅力。「渓谷散策」というと少し身構えてしまいそうですが、実は1.5kmほどのコースを片道30分ほどで歩くことができ、しかもアップダウンがほぼないので初心者にもおすすめです。
早速、動きやすい服装に着替えて散策してみることにしました。
▲終着点である「回顧(みかえり)の滝」を目指す

散策ルートを実際に歩いてみた

まずは、遊歩道入り口にある「抱返神社」でお参りをしてから散策に向かいましょう。寛文13(1673)年に旧抱返村(現在の若松地区)が開墾した際、快晴続きで苗が枯れてしまうという危機にさらされました。そこで抱返りの水源に雨乞いをしたところ、大雨が降ったという逸話があることから雨乞い、龍神・水分神・養蚕の守護神として、今でも崇敬者より信仰を仰いでいます。
▲杉林に囲まれた風情ある抱返神社(参拝自由)

訪れたのは9月中旬頃。遊歩道は緑豊かな一本道になっていて、森林から射し込む光や川のせせらぎの音を聞きながらの心地よい散策に、足取りも軽くなります。人がすれ違う横幅は十分にあるので、「こんにちは」と声をかけあって先に進みます。
▲森林浴を楽しめるが、マムシなど自然の生き物には注意

抱返神社から2~3分歩いたところで、抱返り渓谷の象徴ともいえる「神の岩橋」に到着。
秋田県では最も古い吊橋で、大正15(1926)年に完成しました。全長約80mの赤い吊橋からは渓谷の美しい眺めと碧水の水面を見ることができ、思わずカメラを構えてしまう絶好のフォトスポットです。
▲紅葉シーズンの「神の岩橋」からの光景
▲赤い橋とのコラボも収めたい(写真提供:田沢湖・角館観光協会)

また、橋から抱返り渓谷の入口方面を見てみると、松の生えた不思議な岩があります。これは「巫女石」と呼ばれ、かつて薬師参詣に訪れた巫女が川を渡れずにいたところ、明神様が救ったことから生まれた伝説の岩として語り継がれています。
▲明神様の救いに感謝した巫女が、崇敬の念から大岩に化したといわれる「巫女石」

「神の岩橋」を渡った後は、終点の「回顧の滝」を目指しひたすらまっすぐ歩いていきます。すぐ下を流れる川や対岸の景観はもちろん、途中にある湧き水が飲めるポイントなども撮りごたえがありますよ。
▲晴天に恵まれた森と川は絶好のロケーション
▲紅葉シーズンになると、原生林が森を赤く染め上げる
▲苔に包まれた湧き水は冷たくて疲れがとれる
▲湧き水が流れる遊歩道は、カメラを低く構えると光が反射して綺麗に撮ることができる

ちなみに、抱返り渓谷の象徴とも言えるコバルトブルーの渓流は、見た瞬間に心を奪われてしまうほどの美しさ。これは「日本一の強酸性」とも呼ばれる、川の上流にある「玉川温泉」が関係していると言われています。温泉水に含まれる豊かなアルミニウムが、青い光を散乱することで鮮やかな青色に見えるそうです。
▲森の緑とコバルトブルーの渓流のコントラストが美しい(写真提供:田沢湖・角館観光協会)

また、その碧水の中や遊歩道沿いに点在する、ゴツゴツとした巨石や奇岩も抱返り渓谷の魅力。紅葉だけではなく、点在する不思議な石や岩を探しながら散策してみるのも面白いですよ。
▲ゴザが数枚敷けそうなことから名付けられた「茣蓙(ござ)の石」
▲抱返神社のご祭神である「抱返り大尺明神」の生まれ育った岩屋ともいわれる「帝釈(たいしゃく)の岩屋」。表面がブロックのようにゴツゴツしている

渓谷の奥まで進むと橋が続き、そこから見える景色もさらに美しくなっていきます。「誓願(せいがん)橋」まで来ると終着点の「回顧の滝」まであと少しですが、この先の「誓願寺」も渓谷随一を誇る景勝地なので、先を急がず景色を楽しみましょう。
▲散策路が崩壊したために造られた「誓願橋」

「誓願寺」という立て札を見たときは思わずお寺を探しましたが、ここでいう「寺」とは景色のこと。橋の上から眺める渓谷は両岸の岩壁の距離が近く、水の渕に流れ出る泡沫が、お寺で香を焚くときに漂い舞う煙に似ていることから名付けられました。
▲下を覗くと絶景の渓谷美が広がる

「神の岩橋」からの景色が壮大な自然美であれば、「誓願寺」からの眺めは神秘的な渓谷美といったところ。迫る岩壁がコバルトブルーをより美しく際立たせ、紅葉シーズンになれば紅・山吹・黄・緑色の森が間近に広がる絶景です。
▲「誓願寺」からの紅葉は迫力満点

橋を渡り切ると、まるで修験場の関門のように3つの洞穴が続きます。洞穴はかなり薄暗く、探検しているようでワクワクしますが足元には気をつけて。
▲洞穴はジブリに出てきそうな不思議な空間!
▲50mくらいの薄暗い道をゆっくり進むと、ようやく向こう側が見えてきました

洞穴を抜けると右側から滝の音が聞こえ、最終地点「回顧の滝」に到着です。「また振り返り見たくなる美しい滝」という説明の通り、落差30mの滝は豪快さと優美さを兼ね揃えていて、いつまでも見ていたくなります。カメラのシャッタースピードを調整して撮ると、絹のように美しい滝を収めることができますよ。
▲緑の中では白い滝が際立って美しい
▲紅葉に囲まれる回顧の滝も優美

滝から発生するマイナスイオンをたっぷり浴びて癒されたら、折り返してスタート地点に戻りましょう。実際に歩いても本当に片道30分ほどで、ほどよい汗を流して爽やかな気持ちになりました。
▲回顧の滝より先は、崩壊の恐れがあるため通年通行止めになっている

なお、毎年10月上旬から11月上旬にかけて開催される「抱返り渓谷 紅葉祭」期間中は、角館駅や田沢湖駅からシャトルバスが運行します。渓谷案内人によるガイドや芸能披露など各種イベントもあるため、催しを楽しみながら散策するのもいいですね。
▲渓谷入口には売店もある。ここだけで売られている「抱返りビール」(570円・税込)はすっきりとした味わいが特徴

巨木の仁王像と杉並木の大きさに圧倒される「金峰神社」

せっかくなので、少し足を延ばして近くの観光スポットにも行ってみることにしました。
抱返り渓谷から車で約20分のところにある「金峰(きんぽう)神社」は、県指定天然記念物である樹齢350~800年といわれる杉並木に覆われています。静寂に包まれた神社の入り口には仁王門が構えていて、その中に杉の巨木一本で彫刻された仁王像が安置されています。
▲約30mの高さを誇る杉並木の中に佇む仁王門
▲門の左右に安置された高さ約3.8mの仁王像。表情があまり険しくなくて癒される?

圧倒的な高さの杉並木と苔の階段が続く参道を歩いていると、どこか異世界に迷い込んだかのような尊厳な雰囲気に包まれます。
▲足音しか聞こえない神秘的な参道
▲仁王門から約5分ほど歩くと本堂に到着

仁王像の見事な彫像と天空まで伸びるような杉の木に囲まれて、散策がてら森林浴を楽しむことができました。
紅葉の名所は数多くあれど、コバルトブルーの渓流と紅葉のコラボを気軽に見られる抱返り渓谷は、ぜひ一度は立ち寄ってほしい貴重な景勝地。この秋は忘れられない絶景を見るために、カメラを持って癒しの旅に出かけましょう。

※紅葉写真は2017年以前のものです。
下田翼

下田翼

東京生まれ、東京育ち。観光で青森県に初上陸し、人の暖かさに感動し2015年に移住。地域おこし協力隊を経て、青森の魅力を伝えるフリーランスのプランナー・ライターとして活動中。

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