今が美味しい「越前おろし蕎麦」を食べるなら知っておきたい前情報

2019.02.07 更新

蕎麦といえば、日本人のソウルフードの一つ!日本全国にはさまざまな蕎麦がありますが、福井県(主に嶺北地方)では冷たい蕎麦にたっぷりの大根おろしと削り節、刻みネギをのせて食べる「越前おろし蕎麦」が有名です。県内の各店で毎年11月後半頃から香り高い「新そば」のおろし蕎麦が食べられます。今回は「越前おろし蕎麦」の魅力を紐解きながら、その美味しさを堪能できる3つのスポットをご紹介しましょう!

400年以上前に考案された、大根おろしと蕎麦のコラボレーション

「越前おろし蕎麦」のはじまりは、今から400年以上前のこと。慶長6(1601)年に府中(現在の越前市)の領主としてやってきた本田富正(とみまさ)が、京都・伏見から蕎麦職人の金子権左衛門をつれてきたことがはじまりでした。

城下の人々に戦や災害に備える救荒食として蕎麦の栽培を奨励し、さらに健康面でもプラスになるよう、大根おろしと一緒に食べる蕎麦を考案したのが「越前おろし蕎麦」の由来だと言われています。
蕎麦といえば、動脈硬化や高血圧などに効果がある「ルチン」が多く含まれ、テレビ番組などで取り上げられたことも。しかも、消化に良い大根おろしと一緒に食べることを400年以上前に考えついたなんて、昔の人の知恵ってすごいですね。

今回は越前そばの名店「森六(もりろく)」、蕎麦打ちなどが楽しめる「越前そばの里」、話題の塩だしそばが楽しめる「そば処一福(いっぷく)」を訪ねました。

蕎麦、大根、つゆ、すべてにこだわりが詰まった「森六」

最初に訪れたのは北陸自動車道・武生ICから車で約8分の場所にある「森六」。明治4(1871)年創業の老舗です。
▲お店は昔ながらの趣ある町並が続くエリアにあります
▲座敷席とテーブル席がある店内は、18名ほどで満席に

早速、「おろしそば」(650円・税込)を注文しました。やってきた蕎麦は、これぞ越前おろし蕎麦!というような大根おろしとネギ、削り節がかかったもの。
写真のとおり、蕎麦は少し太め。一口ズズッとすすると、蕎麦の香りが口のなかに広がります。驚くのは大根おろしの存在感。最初にツンとした辛みが鼻に抜けますが、蕎麦を噛む度に次第に大根の辛みとつゆ、削り節の香りが蕎麦にからまり、深い旨みに変わっていくのです。
森六では、地元福井県の大野産と丸岡産の蕎麦を使い、自家製粉しています。

蕎麦といえば、色の黒いものから白いものまでさまざまですが、本来蕎麦の実は黒い殻に包まれたもの。「玄蕎麦」と呼ばれるこの実を製粉するとそば粉となりますが、越前おろし蕎麦では、この黒い殻まで挽き込む「挽きぐるみ」というそば粉を使うことで、色が黒く、香りの高い蕎麦になります。
▲玄蕎麦は低温倉庫で保管。蕎麦が冬眠した状態になり、年中新そばのような風味が楽しめるそう

しかも製粉する前には、20日ほどかけて玄蕎麦をふるいにかけ、大きさを7段階に分けて揃える作業を行います。玄蕎麦の大きさを揃えることで、脱皮機にかけると黒い表皮をすべて剥くことが可能。これを製粉すると、香り高いなめらかな粉になるのです。
▲0.2mmずつ穴の大きさが違う7種類のふるいを使い分け、玄蕎麦の大きさを揃えます
▲石臼を使って製粉。摩擦熱を持ちにくいため、蕎麦の香りや味が損なわれません

さらに森六のおろしそばの決め手となる大根は、店主の堀正治(まさはる)さんが自分の畑で育てるというこだわりよう。練馬大根に信州地大根、ねずみ大根、青首大根などさまざまな大根を栽培しています。大根は時季によって味が変化するため、3~4種類の大根を組み合わせ、一年を通して一定の辛み・旨みを感じられる大根おろしに仕上げています。
▲旨みの強い練馬大根は1m近い大きさになることも
▲辛味の強いねずみ大根は主に蕎麦の汁の部分に使います

さらに店主の堀さんが「蕎麦と同じくらい、いやそれ以上」にこだわりのある「つゆ」は、4種類の削り節とどんこや最上級の昆布を使い、「かえし」に使う醤油も3種類組み合わせたもの。せいろやもりそばでは、蕎麦湯を入れることで、つゆの美味しさを最後まで堪能できます。
▲「鴨汁もりそば」(1,350円・税込)はつゆに鴨肉の旨みが溶け込んでいる逸品
▲「蕎麦湯を入れて飲むと、つゆの良し悪しがわかる」と店主の堀さん。最後まで飲み干してしまいました

冬は期間限定メニュー「鴨南ばん」が人気の森六。おろしそばはもちろん、この時期だけの美味しさをぜひ味わってみてください。
▲「鴨南ばん」(1,650円・税込)は毎年12~3月までの期間限定メニュー

全国各地からこの味を求めてやってくる「塩だしそば」

次にやってきたのは、福井県池田町にある「そば処 一福」。北陸自動車道・鯖江ICから車で20分ほどの場所にあります。県内でも特に雪が多い地域ですが、ここの蕎麦を目当てに全国各地から多くのお客さんがやってきます。
▲外観から雰囲気の良さが感じられる「一福」
▲小上がり席が設けられた和風の店内は、ゆっくりくつろぐことができます

一福の蕎麦は醤油ベースだけではなく、昆布だしに数種類の塩をあわせた塩ベースのだしを使っているのが特徴。今から40年以上前、初代店主が魚の旨みを塩で引き出す「潮(うしお)汁」をヒントに、5年の歳月をかけて考案しました。

越前おろし蕎麦と言えば醤油ベースのだしが主流のなか、「塩だしそば」が誕生したときは今までにない大きな話題に。その評判は県外にまで広がり、北は北海道から南は沖縄まで全国各地から多くのお客さんが訪れるようになりました。
▲「塩だしそば」(680円・税込)。器は福井の伝統工芸である越前焼

醤油ベースに比べ、塩だしは蕎麦の風味を邪魔しないあっさり味。大根おろしもほどよい甘さです。食べ進めていくとだしの深い旨みが広がり、蕎麦と大根おろしの甘みを引き立たせます。

2杯一度に注文する人が多いのも納得。余裕で食べられます。
「だしは蕎麦と大根の甘みを考慮して、ちょっと濃いくらいがちょうど良いんです。だしと蕎麦と薬味、すべてが調和して100点の味になることを考えて作っています」と教えてくれたのは、女将の山内幸枝さん。
▲女将の山内さん

なかでも、塩だしそばの味をキメるのに欠かせないのが、添えられた天然わさび。なんと、2代目店主の山内篤文(あつふみ)さんが自ら近隣の山に採りに入ります。山深い渓流の斜面に自生しているため足元が悪く、熊に出合う危険と隣り合わせのわさび採りは、まさに命がけ。しかし、市販のわさびでは決してこの味を出すことはできないそうです。
▲ツンとした強い刺激の後に香りと甘みが広がるのが天然わさびの特徴

一度食べると病みつきになるという一福の塩だしそば。県外から通うお客さんが多いのも納得です。この美味しさをぜひ一度体験してみてください!

工場見学に蕎麦スイーツも。まさに越前おろし蕎麦のテーマパーク!

最後に訪れたのは、北陸自動車道・武生ICから車で約3分の「越前そばの里」。ここでは食事はもちろん、そば工場の見学やそば打ち体験など、越前そばをまるごと楽しめる施設なのです。
そば工場では毎日5万食の蕎麦を製造。あっという間に蕎麦ができあがり、手際よくパッケージされていく様子を見ることができます。
▲年越しそばシーズンはなんと1日10万食作るそう

館内ではここで作られた蕎麦を食べることもできます。「そば処越前屋」では「おろしそば」(637円・税込)だけでなく、福井名物の料理も充実。
▲そば処越前屋
▲「ソースカツ丼」(864円・税込)や「焼き鯖寿司」(432円・税込)など福井名物の料理も楽しめます
▲蕎麦を使ったスイーツも人気。そば処越前屋の隣にある「お菓子工房」の「そばソフト」(300円・税込)は香ばしい蕎麦の実がアクセントになっています

さらに持ち帰り用の蕎麦や蕎麦を使ったさまざまな商品も販売しています。買物や見学だけでも十分楽しむことができるので、食事をする時間がない方も気軽に立ち寄れます。
▲高速のインターに近いので、帰り道に立ち寄れるのも便利
▲直営農場産・自社製粉の旨味そば、八割そばなど種類も豊富(参考価格:旨味そば6食1,728円・税込)
▲蕎麦をひと玉そのまま揚げた「そばかりんとう」。しお味とさとう味の2種類(各313円・税込)

また、「体験夢工房」では、子どもから大人まで本格的な越前おろし蕎麦ができる「そば打ち体験」を実施。広々とした体験工房では1日3回(所要時間90分・要予約)、1人2皿分(1,944円・税込)のそば打ち体験ができます。
▲最大100名まで利用可能
▲生地を回転させながら、均一に四角く伸ばしていきます
薄く広がった生地を丁寧に折りたたみ、蕎麦切り包丁で切っていきます。一定の太さに切るのは難しいですが、不揃いなのが手打ちの良いところ。打った蕎麦をその場で茹でておろし蕎麦にしてもらうもよし、1皿食べて残りを持ち帰ることもできますよ。
▲よーく見ると太いのや細いのが混ざっています……これもご愛嬌
シンプルながらも奥が深い「越前おろし蕎麦」。使う素材や蕎麦の打ち方、だしに至るまで、お店によってさまざまなこだわりが感じられる、まさに魂の一品なのです。

今回ご紹介したお店以外にも、福井には越前おろし蕎麦の名店がたくさんあるので、いくつか巡ってみるときっと満足できること間違いなし!食べれば食べるほどその美味しさにハマるはずですよ。
石原藍

石原藍

ローカルライター。 大阪、東京、名古屋と都市部での暮らしを経て、現在は縁もゆかりもない「福井」での生活を満喫中。「興味のあることは何でもやり、面白そうな人にはどこにでも会いに行く」をモットーに、自然にやさしく、心地よい生き方、働き方を模索しています。趣味はキャンプと切り絵と古民家観察。

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