「水の都」島原で城下町散歩に武家屋敷、湧水庭園やかんざらしの名店などをめぐる旅へ
長崎県の南部にポッコリと、そら豆のような形で浮かぶ島原半島。その東海岸の有明海沿いに約50カ所以上の湧水地を持つ「水の都」島原市があります。風情溢れる街を散策しながら、水と共に暮らす人々の歴史と文化、さらに湧水仕込みの伝統料理やスイーツなども楽しむ休日はいかがですか?島原を初めて訪れる人はもちろん、より深く知りたい人にもおすすめのコースをご紹介します。

有明海を進むごとに近づく雲仙普賢岳。風情溢れる城下町へフェリーで上陸!

福岡、熊本、佐賀、長崎にまたがる九州最大の湾、有明海。長洲港を出港して左手に玉名から熊本市内にかかる山々の姿が。

ちなみに有明海の沿岸部には小型イルカのスナメリが生息しているそうで、運が良ければ航行中に見られることもあるそうです。さらに有明海には秋から春にかけ、多くのカモメが越冬の為に飛来します。




有明フェリー(長洲営業所)
熊本県玉名郡長洲町長洲2168-25
[運行時間]6:00~最終20:00(1日16~19便)
[乗船料]大人440円、小学生以下220円、車両1,540円~(運転者1名含む)※すべて税込
[定休日]なし
0968-78-0131
築城400年。天守閣で歴代の城主がおもてなしする「島原城」へ


さらにこの方々も現世に戻ってきてました!

400歳越えの方々にしては肌ツヤがよい、声もお若い、おっさん臭くない。それもそのはず、この方々は「島原七万石武将隊」と呼ばれるおもてなし武将隊。さらにキリシタン大名の有馬晴信、島原七万石二代目藩主・松平忠雄、島原の乱の一揆勢総大将・天草四郎時貞の総勢5名が、日々、島原城の説明を行うなどのおもてなし活動を実施しています。

「無論、われらとの記念写真も可能じゃ」と松倉氏。
さて、天守閣内は各階でテーマ分けされ、貴重な資料が展示されています。まず1階は「キリシタン史料」。




山から海へと続く扇状地ゆえに、50以上もの湧水スポットがあるんですね。

また、各階の展示をより深く楽しみたい方のための音声ガイドサービスも用意されています。自分のスマホで専用のアプリを使ってQRコードを読込むと利用できます。

島原城
長崎県島原市城内1-1183-1
[開城時間]9:00~17:30
[入館料]大人540円、小・中・高生270円※すべて税込
[定休日]なし
0957-62-4766
地下水仕込みの絶品つゆ&おもちを含む13種の具が入った「具雑煮」

「具雑煮」とはその名の通り、たくさんの具が入ったお雑煮のこと。その誕生は寛永14(1637)年に起きた農民一揆・島原の乱。天草四郎率いる一揆軍が兵糧として蓄えたもちに山海の材料を加えて雑煮を作り、これを食べながら原城に約3か月も籠城したそうです。
それから176年後の文化10(1813)年、かの雑煮をもとに姫松屋の初代である初代糀屋(こうじや)喜衛ェ門が趣向を凝らした味付けをし、生まれたのが「具雑煮」だそうです。
姫松屋では創業から200年以上、7代目のご主人も初代の味をしっかり守りながら、島原の山海の具がたっぷり入ったお雑煮を作り続けています。それがこちら!

小鍋のふたを開けた瞬間、三つ葉のいい香り!そこに柔らかそうな丸もちが5つ。さらにその下に、長崎白菜、ゴボウ、レンコン、高野豆腐、3種のかまぼこ、鶏肉、焼きアナゴ、薄焼き卵、椎茸と計13もの具が、黄金色のおつゆの中にびっちり!
まずは、このおつゆを一口。鹿児島県枕崎産のカツオ節ベースのお出汁にたくさんの具からの旨味が溶け出して、実に奥深い味わい。


平日で300杯、GWや11月の連休には1日1,000杯が出るという具雑煮。
「お出汁やおもちはもちろん、全ての料理にうちの地下水を使っています。島原のおいしい水があってこその具雑煮です」と、7代目ご主人。まさに具雑煮は水の都ならではのご当地グルメなんですね。
元祖 具雑煮 姫松屋 本店
長崎県島原市城内1-1208
[営業時間]11:00~19:00(L.O.18:30 )
[定休日]第2火曜※変更もあり、1月1日
0957-63-7272
江戸時代にタイムスリップ。湧水が流れる水路沿いに並ぶ武家屋敷を散策



この石垣の先にある「鳥田邸」「山本邸」「篠塚邸」の3軒の武家屋敷が無料で見学できます。

どの屋敷も大きさは90坪・約300平方メートルずつに区切られていて、茅葺屋根の住居は25坪ほどの大きさ。庭には梅や柿、柑橘類、ビワなど四季の果物が植えられています。これは自給できるようにとの藩命だったそうです。





武家屋敷
長崎県島原市下の丁
[営業時間]9:00~17:00※武家屋敷売店は9:00~17:30
[入場料]無料
[定休日]なし
0957-63-1087(武家屋敷売店)
鯉が泳ぐ水路沿いを歩きながら、湧水庭園「四明荘」でひといき


この「鯉の泳ぐまち」での散策とともにぜひ訪れたいのが、2014年に国の登録有形文化財になった湧水庭園「四明荘(しめいそう)」と呼ばれる水屋敷。




屋敷に入って見事な池泉式庭園を望む座敷へ。目の前の絶景はもちろん、池に流れ落ちるリズミカルな滝落としの音にも癒されます。
「ここの完成当時は周辺には何もなく、目の前に有明海、背後に眉山を望むなど、四方に絶景が望めたことで四明荘という名がついたそうですよ」と慶田さん。見学者には慶田さんら案内人の方が、お茶とお菓子で接待してくださいます。
この大池に面した座敷の背後にもう一間あり、そこにも小さな池泉式庭園があります。

「表の庭園では春は桜、初夏は新緑、秋は紅葉、冬はときどき雪景色も楽しめますが、こちらの小さいほうの庭園は花菖蒲。5月末から6月に咲く可憐な花々も、それはそれは見事ですよ」と慶田さん。四季折々の庭園美を楽しみにリピートされる方も少なくないそうです。
湧水庭園 四明荘
長崎県島原市新町2-125
[営業時間]9:00~18:00
[入場料]大人(高校生を除く18歳以上)300円、高校生以下150円※すべて税込
[定休日]なし
0957-62-3986(島原市観光案内所)
20年の時を経て復活した湧水スイーツ「かんざらし」の元祖店「銀水」へ

細い路地を抜けると瓦葺の櫓(やぐら)と用水路が登場。用水路は4つに区画され、水が流れる上流から食品用、食器用などと使用用途が昔から決められていて、現在もそのしきたりが守られているそうです。
この「浜の川湧水」に隣接するのが、島原ならでは湧水スイーツ「かんざらし」の元祖店「銀水」。2代目店主の死去により平成9(1997)年に惜しまれつつも閉店しましたが、地元の方々の尽力により、19年の時を経て平成28(2016)年8月、見事に復活!




かんざらしとは、白玉粉で作ったお団子を冷やし、砂糖やはちみつなどをベースに作られる特製の蜜をかけて味わう、実にシンプルな和スイーツのこと。白玉粉のもとになるもち米を大寒の日に湧水にさらすことで「寒ざらし」という名になったそうです。

多くの銀水ファンを虜にしたこの蜜のレシピは門外不出。でもこれがないと銀水は復活できない!そこで復活計画のスタッフが当時の味を知る地域の方にヒアリング。さらに店内に残っていた原材料の空袋をもとに当時の仕入れ先を探すなどして、ようやく「伝説の味」が再現できたそうです。

冬場はかんざらしのもちプルお団子を使った「ぜんざい」も登場。「栗入りぜんざい」400円(税込)もありますよ。
銀水
長崎県島原市白土桃山2-1093
[営業時間]10:00~17:00
[定休日]火曜
0957-63-4610
湧水とかかわりの深い山々のパワーに迫る、ジオと火山体験ミュージアム「がまだすドーム」

城下町に水が多く湧き出すようになったのは今から約200年前。島原半島の中央にある普賢岳の火山活動による地震で、町の背後にある眉山が大崩落し、この大地変でできた地割れによって水が湧き出たといわれています。さらに平成3(1991)年、普賢岳の噴火による火砕流で多くの被害をもたらしました。


平成の大噴火で起きた火砕流の猛威を解説。足元の光が時速100kmの速さを表現し、さらに新設の大型モニターで激しい熱風によって吹き飛ばされる木々や車、焼き尽くされた家々の様子も紹介します。



湧水噴出のきっかけにもなった寛政4(1792)年の眉山の大崩落を大きな立体紙芝居でわかりやすく解説(上映時間13分)。
他にも立体ジオラマを使ったプロジェクションマッピングや火山にまつわるゲーム、クイズなど、体験しながら学べる展示が満載です。常設展示を見終わった後は、ぜひ屋上の展望スペースへ。




がまだすドーム
長崎県島原市平成町1-1
[営業時間]9:00~18:00(最終入館17:00)
[入場料]常設展示 大人1,000円、中高生700円、小学生500円※すべて税込
[定休日]なし
0957-65-5555
今回は有明フェリーを利用し、多比良港から入るルートを紹介しました。ほかにも博多駅、天神駅から電車とバスで行ける福岡県三池港と島原外港を約50分で結ぶ高速船「三池島原ライン」、さらに熊本市熊本港と島原外港を約60分で結ぶ「九商フェリー」、「熊本フェリー」の3航路があります。島原外港から旅をスタートするなら、がまだすドーム→銀水→四明荘……など、今回紹介した逆のルートで回ったほうがスムーズかも。


山田誠
新潟県十日町市生まれ、現在は福岡県福岡市在住のフリー編集者・ライター。九州の宿や温泉、飲食、雑貨系のショップ、さらに漁村、農村、道の駅など、暮らしと休日に関わるスポットをほぼ毎月、年間150軒以上を取材。取材後は必ず近隣の直売所で地元食材を買って帰る。1児の父。
また、本記事に記載されている写真や本文の無断転載・無断使用を禁止いたします。
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