「水の都」島原で城下町散歩に武家屋敷、湧水庭園やかんざらしの名店などをめぐる旅へ

2018.12.23 更新

長崎県の南部にポッコリと、そら豆のような形で浮かぶ島原半島。その東海岸の有明海沿いに約50カ所以上の湧水地を持つ「水の都」島原市があります。風情溢れる街を散策しながら、水と共に暮らす人々の歴史と文化、さらに湧水仕込みの伝統料理やスイーツなども楽しむ休日はいかがですか?島原を初めて訪れる人はもちろん、より深く知りたい人にもおすすめのコースをご紹介します。

有明海を進むごとに近づく雲仙普賢岳。風情溢れる城下町へフェリーで上陸!

島原へは長崎自動車道の諫早ICを経由して車、もしくは長崎空港から接続する長鉄バスでもいけますが、せっかくならより優雅に有明海を渡る船旅も楽しみながら上陸しませんか?いくつもの航路がある中、今回の取材では、九州自動車道の南関ICから車で約45分の長洲港と島原市の北部にある多比良港を結ぶ「有明フェリー」を利用しました。
▲有明フェリーのデッキからの眺め

福岡、熊本、佐賀、長崎にまたがる九州最大の湾、有明海。長洲港を出港して左手に玉名から熊本市内にかかる山々の姿が。
そして正面には雲仙普賢岳がそびえたつ島原半島の姿が見えます。撮影時はあいにくの天気でしたが、快晴時には普賢岳の姿がバッチリ見えます。

ちなみに有明海の沿岸部には小型イルカのスナメリが生息しているそうで、運が良ければ航行中に見られることもあるそうです。さらに有明海には秋から春にかけ、多くのカモメが越冬の為に飛来します。
カモメのエサ用の「かもめパン」(100円・税込)が船内で売っていました。しかも防腐剤無添加。人が食べてもふかふかで十分おいしい、カモメにあげるにはちょっともったいないかも。
そうこうしているうちに多比良港に到着。移動時間約45分。着いたら即、城下町のある島原市街地にGO!もいいですが、島原半島にはいくつものハートストーンがあり、その1つがこの多比良港ターミナルにもあるそうです。さて、どこにあるでしょう?
ヒントはターミナルの外観。天井、床、壁などをジーッとみていると…
ありました!ハートストーン。この港を出発する人が幸せになれるようにと願いを込めて作られたそうですが、島原で素敵な旅が送れることを願って、みなさんもぜひ、探してみてください。

築城400年。天守閣で歴代の城主がおもてなしする「島原城」へ

多比良港から島原市街地へ車で約15分。城下町散策を始める前に、まずは町のシンボルである「島原城」で、島原の歴史と文化に関するキホンのキを学びましょう。
元和4(1618)年、松倉重政が安土桃山時代の築城様式を取り入れ、約7年の歳月をかけ完成させたお堀の全長2,233mの規模を誇る大城。高く頑丈な石垣は水堀で囲まれ、春は桜、夏は蓮の花も楽しめます。
築城後は高力(こうりき)氏、松平氏、戸田氏、そして再び松平氏と、幕末に至るまで4氏19代の居城となりましたが、明治維新で廃城となり、明治7(1874)年に天守閣が解体。現在の天守閣は昭和39(1964)年に復元し、島原の歴史と文化を伝える資料館に。

さらにこの方々も現世に戻ってきてました!
▲右「わしは築城主・松倉重政。2018年で444歳じゃ」 左「島原の乱の後にこの地を収めた三代目城主・高力忠房である。わしは434歳」

400歳越えの方々にしては肌ツヤがよい、声もお若い、おっさん臭くない。それもそのはず、この方々は「島原七万石武将隊」と呼ばれるおもてなし武将隊。さらにキリシタン大名の有馬晴信、島原七万石二代目藩主・松平忠雄、島原の乱の一揆勢総大将・天草四郎時貞の総勢5名が、日々、島原城の説明を行うなどのおもてなし活動を実施しています。
また天守閣の入口には武者や忍者になれる変身コーナーもあり、殿たちはその脱ぎ着のお手伝いもしてくれます。
「無論、われらとの記念写真も可能じゃ」と松倉氏。

さて、天守閣内は各階でテーマ分けされ、貴重な資料が展示されています。まず1階は「キリシタン史料」。
天草四郎氏の肖像画をはじめとした島原の乱についての解説や、マリア観音の像など潜伏キリシタンに関する数々の史料を展示しています。
2階の「郷土史料」では、松平家の鎧をはじめ、島原城を納めていた歴代の大名家の品々を展示。
3階の「民俗史料」では、17世紀に誕生した島原藩の御庭窯「眉山(びざん)焼」の名品のほか、ガスランプをはじめ、庶民の暮らしを支えた数々の生活用品を展示。さらに4階の「観光と物産コーナー」を抜けた5階は、島原市街を360度見渡せる「展望所」。
▲西側からは手前の眉山(まゆやま)、その右奥にある雲仙普賢岳も一望

山から海へと続く扇状地ゆえに、50以上もの湧水スポットがあるんですね。
▲東側には昭和の佇まいを今に残す商店街と島原駅、さらにその先に有明海が広がる

また、各階の展示をより深く楽しみたい方のための音声ガイドサービスも用意されています。自分のスマホで専用のアプリを使ってQRコードを読込むと利用できます。
音声ガイドサービスで数々の島原の“ふしぎ”を解説してくれるのは、元NHKアナウンサーで島原出身の草野仁さん。チケットを購入する際に受付で申し込めます(音声ガイド料300円・税込)。

地下水仕込みの絶品つゆ&おもちを含む13種の具が入った「具雑煮」

島原城を見学した後は、島原のご当地グルメ「具雑煮(ぐぞうに)」を味わってはいかが?
▲やってきたのは、島原城の大手門前にある「元祖店 具雑煮 姫松屋 本店」

「具雑煮」とはその名の通り、たくさんの具が入ったお雑煮のこと。その誕生は寛永14(1637)年に起きた農民一揆・島原の乱。天草四郎率いる一揆軍が兵糧として蓄えたもちに山海の材料を加えて雑煮を作り、これを食べながら原城に約3か月も籠城したそうです。

それから176年後の文化10(1813)年、かの雑煮をもとに姫松屋の初代である初代糀屋(こうじや)喜衛ェ門が趣向を凝らした味付けをし、生まれたのが「具雑煮」だそうです。

姫松屋では創業から200年以上、7代目のご主人も初代の味をしっかり守りながら、島原の山海の具がたっぷり入ったお雑煮を作り続けています。それがこちら!
▲「具雑煮(並)」980円(税込)

小鍋のふたを開けた瞬間、三つ葉のいい香り!そこに柔らかそうな丸もちが5つ。さらにその下に、長崎白菜、ゴボウ、レンコン、高野豆腐、3種のかまぼこ、鶏肉、焼きアナゴ、薄焼き卵、椎茸と計13もの具が、黄金色のおつゆの中にびっちり!

まずは、このおつゆを一口。鹿児島県枕崎産のカツオ節ベースのお出汁にたくさんの具からの旨味が溶け出して、実に奥深い味わい。
珍しい具としては唐人菜ともよばれる長崎白菜。300年ほど前に中国の山東省から伝来したといわれ、長崎のお雑煮には欠かせないものだそうです。ちょっとほろ苦い感じが、うまみある黄金つゆのいいアクセントになっていましたよ。
▲1階のテーブル席ほか、2階にお座敷席もあり

平日で300杯、GWや11月の連休には1日1,000杯が出るという具雑煮。
「お出汁やおもちはもちろん、全ての料理にうちの地下水を使っています。島原のおいしい水があってこその具雑煮です」と、7代目ご主人。まさに具雑煮は水の都ならではのご当地グルメなんですね。

江戸時代にタイムスリップ。湧水が流れる水路沿いに並ぶ武家屋敷を散策

島原城の西側一帯はかつてお城を守る鉄砲組の住居地帯がありました。その名残が現存し、今は「武家屋敷」という名で一般公開されています。島原城から徒歩で7~8分の場所にあります。
▲全長406.8m、幅5.6mの町筋の両側に江戸時代の屋敷が並ぶ。道の中央にある水路も往時のまま
流れる水は、ここから北西へ約2km先にある「熊野神社」からの湧水。かつては飲料水として使われ、今もかわらぬ清らかさを保っていますが、現在は飲むことはできません。
道路に沿って雲仙普賢岳の火山岩で造られた石垣が続きます。日本各地に点在する武家屋敷の中でも、このように連続した石垣は非常に珍しいそうです。

この石垣の先にある「鳥田邸」「山本邸」「篠塚邸」の3軒の武家屋敷が無料で見学できます。
▲3軒のうち一番川下にある「鳥田邸」

どの屋敷も大きさは90坪・約300平方メートルずつに区切られていて、茅葺屋根の住居は25坪ほどの大きさ。庭には梅や柿、柑橘類、ビワなど四季の果物が植えられています。これは自給できるようにとの藩命だったそうです。
靴を脱げば、屋敷内に上がって見学もできます。必見は各屋敷に置かれた武家の暮らしを再現した等身大人形。鳥田邸では夕餉(ゆうげ)のシーンを再現。娘さんの着物が少し傷んでいましたが、これも当時のシーンをリアルに追求している?慎ましい暮らしぶりだったのでしょうか。
こちらは、代々砲術師範として島原藩の重職を担ってきたという「山本邸」のお座敷。父からの手習い、またはきついお説教?のシーンが再現されていました。
▲水路の一番上流にある「篠塚邸」
初代藩主の松平重政と共に三河から移り住み、明治まで11代続いた篠塚家。主に郡方祐筆(書記)や代官などを務めていたそうです。立派な欄間があるなど、屋敷内の造りがほかの2軒より洗練された感じもしますし、奥座敷のご主人の佇まいも実に凛々しい。
また、武家屋敷の中央には無料の休憩スポットもありました。売店では島原名物の湧水スイーツ「かんざらし」も味わえます(300円・税込)。

鯉が泳ぐ水路沿いを歩きながら、湧水庭園「四明荘」でひといき

島原城周辺を楽しんだ後は、「鯉の泳ぐ町」ともよばれる市内の中心部・新町一帯へ
地面を50cmほど掘ると湧水が出る、島原市内でも特に湧水の多い新町エリア。城下町らしい風情を残す町並みに沿って、清らかな湧水が流れる水路が張り巡らされています。
▲たくさんの錦鯉が優雅に泳ぐ

この「鯉の泳ぐまち」での散策とともにぜひ訪れたいのが、2014年に国の登録有形文化財になった湧水庭園「四明荘(しめいそう)」と呼ばれる水屋敷。
▲明治後期に建築。当時開業医だった伊藤源三氏の別宅
門をくぐった右手に小さな池があって、よく見ると底からぽこぽこ水が湧いています。なんと1日3,000トンを湧出しているそうです。
「いらっしゃいませ。ようこそ四明荘へ」。と縁側で挨拶してくださったのは、案内人の慶田久美子さん。「入口の湧水池の水がこのお庭の池を満たすだけでなく、町の水路にも流れているんですよ。どうぞ、中に入ってお庭をご覧ください」と慶田さん。
▲池の正面と左側にはけやきで作られた広い縁側がある

屋敷に入って見事な池泉式庭園を望む座敷へ。目の前の絶景はもちろん、池に流れ落ちるリズミカルな滝落としの音にも癒されます。

「ここの完成当時は周辺には何もなく、目の前に有明海、背後に眉山を望むなど、四方に絶景が望めたことで四明荘という名がついたそうですよ」と慶田さん。見学者には慶田さんら案内人の方が、お茶とお菓子で接待してくださいます。
この大池に面した座敷の背後にもう一間あり、そこにも小さな池泉式庭園があります。
それがこちら。4つの中島を配した四角形の池を持つ庭園です。錦鯉が泳ぐ大池を“動”とするなら、こちらは黒い真鯉が身を潜め、大池の滝落としの音も一切聞こえない、まさに“静”の世界。

「表の庭園では春は桜、初夏は新緑、秋は紅葉、冬はときどき雪景色も楽しめますが、こちらの小さいほうの庭園は花菖蒲。5月末から6月に咲く可憐な花々も、それはそれは見事ですよ」と慶田さん。四季折々の庭園美を楽しみにリピートされる方も少なくないそうです。

20年の時を経て復活した湧水スイーツ「かんざらし」の元祖店「銀水」へ

続いては島原を代表する湧水スポットへ。
▲「浜の川湧水」。湧水庭園「四明荘」から徒歩10分ほど

細い路地を抜けると瓦葺の櫓(やぐら)と用水路が登場。用水路は4つに区画され、水が流れる上流から食品用、食器用などと使用用途が昔から決められていて、現在もそのしきたりが守られているそうです。

この「浜の川湧水」に隣接するのが、島原ならでは湧水スイーツ「かんざらし」の元祖店「銀水」。2代目店主の死去により平成9(1997)年に惜しまれつつも閉店しましたが、地元の方々の尽力により、19年の時を経て平成28(2016)年8月、見事に復活!
▲老朽化していた建物も改修し、ほぼ閉店前の姿に
▲店内もかつての姿に近い形に。カウンターのほか、小上りもあり、そこから隣接する浜の川湧水も眺められる
銀水の顔ともいえるタイル張りの流しも再現。この中に注がれる水温15~16度の浜の川湧水でジュース類のほか、名物のかんざらしに使われる白玉やそれにかける蜜が入った瓶などが冷やされます。その名物かんざらしが、こちら!
▲「かんざらし」350円(税込)

かんざらしとは、白玉粉で作ったお団子を冷やし、砂糖やはちみつなどをベースに作られる特製の蜜をかけて味わう、実にシンプルな和スイーツのこと。白玉粉のもとになるもち米を大寒の日に湧水にさらすことで「寒ざらし」という名になったそうです。
銀水のかんざらしはお団子を仕込む水から冷やす水、さらに蜜まで、すべて浜の川湧水を使用。湧水を含んで膨らんだお団子はもちもちプルプル。お団子を浮かべる蜜も程よい甘み、そして深いコク。

多くの銀水ファンを虜にしたこの蜜のレシピは門外不出。でもこれがないと銀水は復活できない!そこで復活計画のスタッフが当時の味を知る地域の方にヒアリング。さらに店内に残っていた原材料の空袋をもとに当時の仕入れ先を探すなどして、ようやく「伝説の味」が再現できたそうです。
▲「ぜんざい」(お漬物付き)350円(税込)

冬場はかんざらしのもちプルお団子を使った「ぜんざい」も登場。「栗入りぜんざい」400円(税込)もありますよ。

湧水とかかわりの深い山々のパワーに迫る、ジオと火山体験ミュージアム「がまだすドーム」

城下町散歩だけにとどまらず、島原に来たらぜひ訪ねていただきたいのが、ジオと火山のミュージアム「がまだすドーム」。
▲多比良港から車で約30分、城下町エリアから車で約15分、島原外港から車で約10分

城下町に水が多く湧き出すようになったのは今から約200年前。島原半島の中央にある普賢岳の火山活動による地震で、町の背後にある眉山が大崩落し、この大地変でできた地割れによって水が湧き出たといわれています。さらに平成3(1991)年、普賢岳の噴火による火砕流で多くの被害をもたらしました。
「がまだすドーム」は江戸と平成の2大災害を振り返りながら、火山の秘密やその共存などを楽しく学ぶ体験型のミュージアム。開館から16年たった2018年4月のリニューアルで、常設展示の内容も一部、新しくなったそうです。展示の注目は以下の3つ。
▲「火砕流の道」

平成の大噴火で起きた火砕流の猛威を解説。足元の光が時速100kmの速さを表現し、さらに新設の大型モニターで激しい熱風によって吹き飛ばされる木々や車、焼き尽くされた家々の様子も紹介します。
▲ドローンを使って雲仙普賢岳を撮影した「雲仙岳スカイウォーク」
床に用意した円形のスクリーンの上に立って、未だ立ち入りできない地区も含め、普賢岳やその周辺エリアを鳥の目線で見下ろすことができます。
▲立体紙芝居「島原大変劇場」

湧水噴出のきっかけにもなった寛政4(1792)年の眉山の大崩落を大きな立体紙芝居でわかりやすく解説(上映時間13分)。

他にも立体ジオラマを使ったプロジェクションマッピングや火山にまつわるゲーム、クイズなど、体験しながら学べる展示が満載です。常設展示を見終わった後は、ぜひ屋上の展望スペースへ。
右にある山肌が少しえぐれているのが眉山。左にあるのが普賢岳。噴火から20年以上たった今も、火砕流の名残を見ることができます。
展望スペースの東側には有明海。快晴時には対岸の熊本、天草へと続く宇土半島の姿も。
また、2018年のリニューアルでおしゃれなカフェも誕生。島原半島内にある数種の自家焙煎コーヒー(250円~)が楽しめるほか、平成新山グリーンカレー(700円)などのランチメニューも用意。※すべて税別
世界ジオパークにも認定されている島原半島。館内にはその関連スポットを紹介する情報コーナーもありますので、興味のある方はそちらもぜひ、どうぞ。
見どころ満載の島原の旅、いかがでしたか?さらに島原には「島原温泉」という名湯もありますが、そちらはまた別の機会に。

今回は有明フェリーを利用し、多比良港から入るルートを紹介しました。ほかにも博多駅、天神駅から電車とバスで行ける福岡県三池港と島原外港を約50分で結ぶ高速船「三池島原ライン」、さらに熊本市熊本港と島原外港を約60分で結ぶ「九商フェリー」、「熊本フェリー」の3航路があります。島原外港から旅をスタートするなら、がまだすドーム→銀水→四明荘……など、今回紹介した逆のルートで回ったほうがスムーズかも。
▲「また来るよー!」
山田誠

山田誠

新潟県十日町市生まれ、現在は福岡県福岡市在住のフリー編集者・ライター。九州の宿や温泉、飲食、雑貨系のショップ、さらに漁村、農村、道の駅など、暮らしと休日に関わるスポットをほぼ毎月、年間150軒以上を取材。取材後は必ず近隣の直売所で地元食材を買って帰る。1児の父。

※本記事の情報は取材時点のものであり、情報の正確性を保証するものではございません。最新の情報は直接取材先へお問い合わせください。
また、本記事に記載されている写真や本文の無断転載・無断使用を禁止いたします。
PAGE TOP