新潟・湯沢の宿「高半」で絶景風呂を満喫 !川端康成も愛した開湯900年超の卵の湯

2018.12.17 更新

開湯 900年以上の歴史を持つ、新潟県湯沢町の「雪国の宿 高半(たかはん)」の天然温泉。約43度の源泉をそのまま使う湯は、浴槽に注がれると調度良いぬるま湯で長く浸かることができ、肌がすべすべになると言われることから「卵の湯」と呼ばれています。昭和初期に川端康成が小説『雪国』を執筆した宿で、源泉から注がれる温泉と、地元食材にこだわった料理を満喫してきました。

900年以上前から湯が湧き続ける温泉を堪能

JR東京駅から上越新幹線で約1時間20分。小説『雪国』の “国境の長いトンネルを抜けると雪国であつた”という書き出しの通り、冬季は周辺が一面の雪景色となるJR越後湯沢駅。「雪国の宿 高半」(以下、高半)は、そこから車で5分ほどの小高い丘の上にあります。
▲宿の眼下に広がる越後湯沢の冬景色。宿泊客は駅に着いてから電話をすれば迎えに来てくれる(写真提供:雪国の宿 高半)

温泉を見つけたのは、平安時代末期の承保2(1075)年のこと。越後新発田(えちごしばた)の郷士・高橋半六(たかはしはんろく)が関東へ向かう際に、急病のため近くの川に入ったところ偶然天然湧出の温泉を発見したと言われています。その温泉が、900年以上経った今でも湧出し続けているのです。

高半はそんな奇跡の温泉「卵の湯」を満喫できる、越後湯沢の中でも屈指の人気を誇る宿です。
玄関に入ると現れるのは、紫色のカーペットが印象的なロビー。昭和60年代に建て直されたという宿はレトロな雰囲気を残しており、どこか懐かしい印象。
▲今回対応してくださった若女将の高橋麻里子さん

現在の女将である麻里子さんのお義母さんは、36代目。正式な創業年こそわかっていませんが、36代という数字が長い歴史を持つことを物語っています。
「当主は代々、温泉を発見した半六の2代目高橋半左衛門の名を世襲してきました」と麻里子さんが教えてくれました。

そんな歴史ある宿はどんなところなのでしょうか。
早速チェックインし、客室へと向かいます。
▲高層階の和室は、それぞれ8畳、10畳、12畳

今回泊まらせていただいたのは、東館高層階の和室10畳のお部屋(1泊2食付き1室2人利用・14,730円~/1人 ※税込・入湯税込)。窓際には広縁が設置されていて、谷川連峰や湯沢の街並みが一望できます。
▲広縁の椅子に腰掛け、ほっと一息

座卓には、越後湯沢温泉の銘菓「笹雪」が置かれていました。南魚沼・湯沢産コシヒカリを使った柔らかな餅の中につぶあんが入った和菓子。ほのかに笹の香りを感じる餅は、少し噛むだけでスッと切れます。中に入っているあんこも甘すぎないので、お茶とセットでいただくと程よいバランスです。
▲高半でもお土産品として人気No.1の「笹雪」。ロビーにある売店でお土産として購入も可能。10個入り760円(税込)

見晴らしの良い景色に美味しいお菓子とお茶。居心地の良い空間についつい時が経つのも忘れてしまいました……。

もっとゆっくりしたい気持ちを抑えて、今回特別に見学させていただけることになった高半で最も広いという南館4階の特別室へと向かいます!
▲南館4階特別室(1泊2食付き1室2人利用・17,970円~/1人・入湯税込+別途室料43,200円/1組・ともに税込)

一歩部屋に入ると、予想を超えた広々とした空間に驚き!3つの和室を1組で借りられる客室は、13畳と12畳、8畳の和室と広縁がついています。
先ほどの部屋よりも大きな窓が印象的! 右を見ても左を見ても山がそびえ、自然をより近くに感じられます。
▲特別室に設置されていた湯のみには、昭和時代に使っていた宿の名前の「高半ホテル」が印字されている

「同級会や家族での集まりなどで使用されることもありますよ」と麻里子さん。お布団を敷く和室とくつろぐ部屋とを分けて、夜はゆっくりと飲み交わすこともできそうです。

実際部屋に入ってみて思ったのは、何も特別なことはせず、ただただゆっくりと過ごしたいということ。大きな窓から景色を眺めながら家族や友人とお喋りをしたり、読書をしたり、忙しい日々の中で出来そうで出来ないことをじっくりと楽しむ。そんな使い方もまた贅沢な時間のように思いました。
▲13畳の和室には掘りごたつも。館内の図書コーナーに設置してある本を部屋に持ってくることもできるので、ゆっくり本を読むという過ごし方もおすすめ

さて、特別室も満喫したところで、夕食前に待ちに待った温泉へと向かいましょう!

奇跡の43度の温泉「卵の湯」を絶景風呂で堪能!

高半自慢の源泉掛け流しの温泉は、男女それぞれの大浴場に加え、女性浴室には露天風呂とサウナが、男性浴室には水風呂とサウナが付いています。

女性浴室の扉を開けてまず左手に目に入るのは内風呂ですが、今回は内風呂のすぐ先にある絶景風呂と評判の露天風呂へと急ぎます。
▲屋根付きなので、雨や雪の中でも楽しめる

そして現れたのが、期待を裏切らないこの景色!山の斜面と目の前にある木々が美しい景色をつくり出しています。春は若葉のみずみずしい黄緑色、夏は木々の濃い深緑、秋は紅葉の赤や黄色、冬は真っ白な雪景色。季節とともに移ろう景色を見に何度でも訪れたくなってしまいます。
▲冬に見えるのは美しい雪景色(写真提供:雪国の宿 高半)

お湯は約43度の源泉をそのまま使い、湯船に張ってある状態ではおおよそ42度。源泉は温度が高すぎるためそのまま使わない施設もありますが、ここで湧き出るお湯は人が浸かるのにほど良い温度。加水なしの100%本物の温泉です。

さらに一度使ったお湯を再利用する循環も行わず、源泉かけ流し。ずっと流し続けているので3時間経つと浴槽の湯が丸々入れ替わります。いつ入っても新鮮な温泉を堪能できるのは嬉しいですね。冬の期間は外気温が下がり温泉が冷めやすくなることから、女性浴室の露天風呂だけ加温をしています。
▲こちらは女性大浴場の内風呂。手前の緑の部分には畳が敷いてある

温泉と言えば熱いお湯に浸かるイメージがあった筆者ですが、触ってみると肌寒い日だったからか少しぬるく感じました。
おすすめの入り方として、高半ではゆっくりと時間をかけて入浴することを挙げています。そのほうが皮膚や毛穴から温泉成分が吸収されるそう。さらに、長く浸かることで血液の巡りがよくなり、疲労回復や痛みの解消も期待できます。
▲無色透明で、少しヌルッとした感覚。単純硫黄泉で、慢性婦人病、切り傷、糖尿病、慢性皮膚病などに効能があると言われている

源泉掛け流しと聞いていたので、てっきり硫黄の匂いが強いのかと思えば、そんなことはありません。もちろん多少匂いはしますが気にならない程度で、長湯しても問題なく楽しめました。
▲男性大浴場は、2つの湯船。開放的な窓が印象的

男性大浴場も同じように卵の湯を使用していますが、女性浴室にはない水風呂があります。サウナは男性・女性どちらもありますが、水風呂があるのは男性浴室だけ。露天風呂がない男性客からの熱い要望で設置に至ったそうです。
▲温泉と同様、清水を掛け流しで提供している水風呂

そんな水風呂には宿の裏山から引いた清水を利用。真冬以外は毎月スタッフが山に登って管理しているんだとか。
▲水風呂とサウナは男性客からとても好評だそう

卵の湯には日帰りでも入ることが可能。繁忙期を除いて13:00~16:00の間、1,000円(税込)で入浴できます。
他の温泉宿とは違う源泉を、そのまま使った温泉に一度は浸ってみたくありませんか?

湯沢や南魚沼の旬の食材をふんだんに使った会席料理を味わう

温泉で旅の疲れを癒した後は、お待ちかねの夕食です!お食事は東館2階にある食事処でいただきます。今回案内された部屋は、「巻機(まきはた)」。湯沢町や南魚沼市にある山の名前を付けたそう。
▲季節の素材を使った会席料理(写真は一例)

お食事は旬の食材を使っているため、季節によってメニューが異なります。今回いただいたのは、八海サーモンや八色しいたけ、魚沼きのこなど湯沢町や隣接する南魚沼市の食材をふんだんに使った会席料理。

こだわりは、化学調味料を使わず、カツオと昆布から丁寧に引いた出汁。ほとんどの料理で活躍する影の功労者は、上品な味わいを作り出し、食材の魅力をさらに引き出しています。
▲八海サーモンの塩糀焼き

八海サーモンとは、南魚沼市にある八海山の水で養殖された大型のニジマスのこと。ほんのりと塩麹の香りがする八海サーモンは箸を入れるとほろっと身が崩れるほどの柔らかさ。川魚独特の臭みはなく、苦手な人でも食べられそうです。
隣には味噌を包んだしそ巻きが。中には甘い味噌が入っていて、塩気のある魚と交互にいただくと口の中が中和されて食べやすく感じました。
▲海老と八色しいたけの茶碗蒸し

八色しいたけは一般的なしいたけよりも肉厚な南魚沼市の名産品。口に入れてゆっくり噛むと、出汁がジュワ~ッと溢れ出てきます。肉厚なしいたけなので、その分出汁が染み込んでいるんですね。
▲もち豚と魚沼きのこの朴葉味噌焼き

新潟県産のもち豚は柔らかく脂身が少ない印象。朴葉味噌をよく絡めていただくと甘みのある味噌が良い役割を果たしています。
▲南魚沼川永農園産の新米

そして宿泊客の多くが感動する南魚沼産のコシヒカリを炊いたご飯。取材したのは新米の時期である11月。艶やかな白米が食欲をそそります。料理と一緒にいただくのも良いのですが、やはり最初は白米だけで、いただきます!
ご飯は一粒一粒がしっかりと立っていて、噛めば噛むほど甘みが!ご飯だけでもお茶碗が空になってしまいそうなほど箸がすすみます。

白米も料理も堪能し、幸せなひととき。
豪勢なお肉や舟盛りなどが並ぶ料理ではないですが、地元の食材を使った料理は身体が喜ぶメニューばかりで、ほっと安らぐ夕食でした。

映画『雪国』の鑑賞や読書でゆったりとした時間を過ごす

夕食を満喫したら、2階にある映画鑑賞室へ。ここでは昭和32(1957)年に公開された映画『雪国』を毎日20:00から上映しています。
翌日は川端康成が執筆に使った部屋を見に行く予定なので、その予習がてら『雪国』がどんな作品だったのかを勉強しておきます。
▲上映時間は約2時間15分。川端康成が描く世界にどっぷりと浸ることができる
手前には図書コーナーも。そこは映画のセットかと思うくらいレトロな空間。ずらっと並ぶ本にどれを読もうか迷ってしまいます。文学作品から絵本まで数えきれないほどの本が並べられていました。ソファに座ってゆっくりと、部屋に帰ってじっくりと……。どんな形で読んでも楽しめそうですね。

白米を引き立てるシンプルな料理が揃う朝食

部屋に戻り、本を読みながら気づけば寝落ち!翌朝はちょっと朝寝坊して、朝食会場へと向かいました。
朝食はブッフェ形式。並んでいるのは白米を引き立てるシンプルな料理の数々です。
▲金時豆の甘煮や切り干し大根、とろろなど身体に良さそうな料理が並ぶ

どれにしようか迷いながら見ていると、目に入ったのは新潟の郷土料理「のっぺ」。里芋や人参、きのこなど具沢山の野菜が入っています。
▲郷土料理「のっぺ」
▲白米が進みそうな和食中心のセレクト(写真は一例。料理は毎日変わります)

選んだのは、温泉卵や自家製豆腐にとろろなど、ご飯と一緒に食べたら何杯でも食べたくなるような料理。もちろん朝食も南魚沼産のコシヒカリと聞いて、色々な組み合わせを楽しみたくなってしまいました。

数ある料理の中でも一番ご飯が進んだのが、栃尾(とちお)の油揚げでした。湯沢町から車で1時間半ほどの場所にある長岡市栃尾。そこで作られる油揚げはとにかく大きく、一般的な油揚げの約3倍もあるんですよ!
▲噛んだだけで溢れ出る煮汁の量にびっくり

取材した日にはこれを煮物にしていました。
味がしっかりと染み込んでいて、一口噛んだだけでジュワ~ッと甘じょっぱい煮汁が口の中に広がります。ついつい油揚げ2個でご飯1杯を食べきってしまいそうに……。

他にどんな料理をいただこうかと悩んでいると、目の前に「からむし麺」が!
「え、からむしって布の原料では?」と思ったらその通り。その繊維で布や縮を織る、からむしの若葉を小麦粉に練りこんで作っているそう。
からむし麺の始まりは、戦国時代。上杉謙信や景勝(かげかつ)、直江兼続(なおえかねつぐ)が開発し、農民に作付けを奨励。京都や大阪に送り出していたといわれています。

そんな歴史ある、からむし麺。早速、そばと同じようにつゆにつけていただきます。
しかし味や食感はそばというより、ひやむぎに近い印象。のどごしも良く、ツルッといただけてしまいます。ちょっと取りすぎたかな?と思ったのですが、さらりと食べられるのであっという間に食べきってしまいました。
▲スクランブルエッグやベーコン、ウインナーなど洋食の料理も並ぶので、朝はパン派という人も満足できる

ノーベル文学賞を受賞した川端康成の魅力に迫る

朝食が終わったら、最後のお楽しみへと向かいます。

高半は川端康成が小説『雪国』を執筆した宿。そのため、館内には康成に関する展示スペースが用意されています。
▲高半に保管されている小説『雪国』の初版本

“国境の長いトンネルを抜けると雪国であつた”

あまりにも有名なこの一節から始まる小説『雪国』は、作中で明言こそされていないものの、この高半のある湯沢の話だと言われています。康成はこの高半に宿泊し、小説を執筆していました。そのため、今でも康成が宿泊した宿として高半を訪れるファンが後をたたないそうです。
▲人気を博した『雪国』は様々な出版社から出版された

『雪国』は、実は小説として1本で書き上げた作品ではなく、様々な雑誌に寄稿する形で書いた作品でした。高半には3年の間に5回ほど訪れ、現在も移築保存されている「かすみの間」で執筆していました。

主人公の島村と芸者の駒子を中心に繰り広げられる悲しい恋の物語。駒子のモデルは湯沢の芸者・松栄(まつえ)さんで、康成が滞在する「かすみの間」に頻繁に遊びにきていたといいます。
そう考えると、『雪国』は湯沢の高半で逗留していたからこそ生まれた作品だったのですね。
▲宿舎は無料で見学できる「かすみの間」。宿泊せずに展示のみ見学する場合は大人税込500円 小人(小学生以下)無料(見学時間/9:00~17:00)

早速、『雪国』を執筆していた「かすみの間」へ。中に入って実際に康成が見た景色を楽しめるとのこと。
▲右に見える着物は、松栄さんからの寄贈

部屋の中心には机と火鉢。このような場所で小説『雪国』を執筆していたのですね。湯沢の景色を望める三面窓が気に入り、この部屋を好んで宿泊していたんだそう。
▲康成になりきって写真撮影。こうして写真を撮っていく観光客も多い

高半には他にも『雪国』に関する書籍を集めた「文学資料館」や、ゆかりの作家の作品を一堂に集めた「作品展示室」があります。

「文学資料館」には昭和12(1937)年発行の初版本や映画撮影時の台本、川端康成直筆の書など、歴史的価値の高い品がずらりと並んでいます。
▲世界各国の言語に翻訳された『雪国』。世界各国から高半を訪れる川端康成のファンが自国の言語に訳された本を持ってきて寄贈していくそう

文学資料館と併設する「作品展示室」には、高半に逗留したこともある北原白秋や与謝野鉄幹・晶子夫妻など、名だたる作家や詩人などの作品が飾られています。
▲右から与謝野晶子、与謝野鉄幹の書

康成が執筆した当時の部屋や他の作家の作品も楽しめ、充実した時間を過ごすことができました。

温泉と料理、そして川端康成の世界にも浸って、大満足!
さあ、チェックアウト…。

と思ったらフロントの方から何とも魅力的なお誘いが。
「ご宿泊のお客様限定で、13:00~16:00の間であれば無料で温泉に入れますので、もし時間があればどうぞゆっくりなさっていってください」

これはもう一度温泉に浸かるしかない!と最後の最後まで満喫しちゃいました!
▲男性大浴場からの眺望(写真提供:雪国の宿 高半)

900年以上も受け継がれてきた温泉と、本物にこだわった出汁からつくる会席料理、そしてかつて文豪が滞在していた部屋の見学と、一度に3つも楽しめる「雪国の宿 高半」。春夏秋冬で異なる景色を見せてくれる露天風呂や客室からの景色など、見どころも満載です。
この冬は越後湯沢の良宿に宿泊してみませんか?
長谷川円香

長谷川円香

ライター。新潟をもっと楽しくするWEBマガジン「にいがたレポ」参加ライター。広告会社にて勤務後、フリーランスに転向。「暮らすような旅」をモットーに地域に住む人・日常も含めて伝えることを目標にしている。 編集:唐澤頼充

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