南海高野線の“天空“へ繋がる旅!/古谷あつみの鉄道旅Vol.32

2019.03.23 更新

みなさん、こんにちは!古谷あつみです。今回もカメラを趣味にしている私が、これまでの経験やカメラマンさん達から学んだ知識を活かして、全国の魅力あふれる鉄道を、自分の目線で紹介します。鉄道で旅をしてみたいと思っている女性の皆さんにもぜひ、知っていただきたい路線をご紹介します。32回目は南海高野線へ!自然にあふれた橋本~高野山間の「山岳区間」へ向かいました。

今回の見どころ

1.天空へと繋がる観光列車「天空」
2.まさか本当に天空へ?ケーブルカーの旅
3.南海電車、写真映え鉄道スポットをご紹介

1.天空へと繋がる観光列車「天空」

今回は、南海電気鉄道の旅!関西を代表する私鉄です。「南海」や「南海電車」などの愛称で親しまれています。

特に南大阪方面に住む人々に馴染みの深い鉄道で、大阪府泉佐野市出身の私も、幼い頃から慣れ親しんできました。親しみを込めて、ここからは「南海」と呼ばせていただきますね。
南海は、現存している日本最古の私鉄。歴史がある鉄道会社なんですよ!1885(明治18)年に、今の南海本線の一部が開業しています。

今回は、大阪府の難波(なんば)と和歌山県の高野山を結ぶ「南海高野線」をめぐる旅。世界遺産・高野山への参詣輸送路線です。極楽橋と高野山の間はケーブルカーが結んでいます。
▲高野山への旅は、橋本駅から南が楽しい

出発地はこちら、橋本です。

橋本はJR和歌山線との連絡駅でもある高野線の主要駅です。難波から急行で約50分。大阪市内へ通勤する人も多く住む街ですが、高野山への玄関口でもあります。

ここからどんな旅が待っているのでしょうか?
▲橋本〜極楽橋間を走る観光列車「天空」

今回の旅の主役となる列車がやって来ましたよ!美しい緑のボディーに、キリッとした赤のラインが特徴的な「こうや花鉄道 天空」(以下、天空)です。

ヘッドマークには「全国登山鉄道‰(パーミル)会」の文字も見えます。このマークは、期間限定で取り付けられていたもの。見ることができて、ラッキーでした。

全国登山鉄道‰会は「観光地が沿線にあり、かつ登山鉄道としての性格を有している」という点で共通している私鉄6社が、山岳路線の魅力を伝えることを目的として設立されました。以前、紹介した「大井川鐵道」もこの会に参加しています。

‰という聞き慣れない言葉は、勾配(=傾斜)を示す単位。1000m進むごとに何m登るかを表します。

「天空」は、橋本と極楽橋の間、19.8kmの区間を、24ものトンネルをくぐり抜けながら、443ⅿもの標高差を駆け上がっていく観光列車です。この区間、実は通勤電車らしい難波~橋本間とはガラッと変わって、急勾配を登る「山岳鉄道」となるのです。
▲天空の座席指定券。電話で予約できる

「天空」は指定席車2両、自由席車2両の4両編成ですが、自由席はふつうの通勤型電車ですので、ぜひ指定席に乗ってみてください。

指定席の個人予約は電話のみで受付。乗車希望日10日前の9:00から、前日の17:00までに「天空予約センター」で予約をし、橋本駅または高野山駅で座席指定券を受け取ります。なお、空席がある場合は、当日券も発売されます。

私もさっそく、座席指定券を手にしました。本格的に旅が始まったような気がしてワクワクしますね!
▲「天空」のアテンダントさんが、橋本駅でグッズを販売。右手に持っているのが「天空マフラータオル」(1,000円)。左手に持っているのが「ぬいぐるみ天空とことこ電車」(1,000円)

列車の出発時刻までは、ホームで「天空」のグッズ販売が行われています。グッズを購入する場合は、出発前の方がゆっくりと選べるのでオススメです。こちらのアテンダントさんは、「天空」に乗車し沿線の見どころも案内してくださいます。放送もしっかり聞かなくては!
▲景色を楽しめるよう工夫された「天空」の指定席車内

では、さっそく列車に乗り込んでみましょう。木の温もりが溢れる、優しい印象の車内ですね。
いろいろな座席があるので、一番のビュースポットに差し掛かるまで、順番に紹介したいと思います!さぁ、いよいよ出発です。
▲流れゆく景色を堪能できる「ワンビュー座席」

車内でいちばん目を引くのが、この大きな窓に面した座席。「ワンビュー座席」といい、3枚続きの窓からとても迫力のある車窓が楽しめますよ。

この写真に見える、大きな川は紀ノ川(きのかわ)です。紀ノ川は和歌山県を代表する大きな川で、今回の高野線の旅では最初のビューポイントです。
▲後ろの席からの眺めにも配慮されている

ワンビュー座席の後ろに並ぶピンクの座席は、一段高い所に造られており、前に人が座っていても車窓を眺めやすいように工夫されています。
▲グループ向けのコンパートメント座席

こちらは、4人掛けコンパートメント座席。友人や家族などでゆっくりと語り合いながら旅ができる座席です。私が驚いたのは、足元まである大きな窓!

「伊豆急行」の記事で、鉄道ライターの土屋武之さんが「高さのある窓よりも、下辺が肘あたりまでくると、景色がすごく大きく感じる。」と話していましたが、この座席は足元まで窓があるので、とても大きく感じます。
▲「天空」自慢の展望デッキ。自然の風を直接、感じられる

そして、「天空」に乗車するなら、ぜひ体験していただきたいのがこの展望デッキです。上部にガラス窓がないので、風が吹き抜け、五感で高野山麓の自然を感じることができるんです。全国の大手私鉄では唯一、展望デッキが設けられた列車なんですよ!ビューポイントが楽しみですね。
▲途中駅の下古沢(しもこさわ)

車内を探索しているうちに、もう下古沢までやってきました。橋本を出発して15分ほどです。下古沢駅の標高は177ⅿ。橋本駅が92ⅿですので高低差は85m、ずいぶん山道を登ってきたことになります。

ですが、ここからが本番です。終点の極楽橋駅は標高535ⅿ。まだまだ登りますよ!
▲車窓には豊かな緑が流れる

沿線で一番のビューポイントがやってきました!

上古沢(かみこさわ)と紀伊細川の間は、130ⅿほどの標高差があり、険しい山岳地帯のパノラマが望めるポイントです。車窓が緑に染まっています!
▲高野山へと山々が連なる

高野山へと続く尾根がよく見えます。このあたりで、展望デッキに出るのがオススメです。さっそく出てみましょう!
▲展望デッキで自撮りを1枚

風が気持ち良いのはもちろんのこと、自然の香りがして気持ち良いです。登山列車特有の、きしむようなレールの音も新鮮に聞こえます。けっこうな風が入るため、帽子などを飛ばされないように気をつけてくださいね!

しかし、自撮りって難しいですね(笑)。ひとり旅では、自撮りの勉強もしなくてはなりません!
▲極楽橋駅の側にある極楽橋

車窓に、朱塗りの鮮やかな「極楽橋」が見えたら終点、極楽橋駅です。この橋は、駅名の由来ともなっていますが、明治までは「不動橋」と呼ばれていたそうですよ。橋のたもとにお地蔵さんがおまつりされているので、時間のある方は行ってみてくださいね!
▲「天空」に乗れるのは、この駅まで

標高535ⅿの極楽橋駅に到着です。約45分で、こんなに高い所まで登って来たんですね!なんだか空気が澄んでいるような気がして、気持ちいいです。「天空」は、高野線の車窓の魅力を目いっぱい引き出す、素晴らしい列車でしたね!
▲ケーブルカーは列車と連絡して運転される

さて、この高野線の旅は、ここで終わりではないんです!さらに“天空“へ近い所に行ってみましょう。

そう、このコンコースの奥に見えるのは、ケーブルカーの乗り場へと続く通路です!極楽橋からはケーブルカーで高野山まで行くことが出来るんです!

2.まさか本当に天空へ?ケーブルカーの旅

▲極楽橋駅のケーブルカー乗り場

こちらが、極楽橋駅のケーブルカー乗り場です。「高野山ケーブルカー」と呼ばれて、親しまれています。わっ!なんだかとっても傾斜のきつい乗り場に見えますね。

それもそのはず……。2両連結の車両が最大562.8‰の勾配を登っていくのです!……と言ってもわかりにくいですよね?橋本~極楽橋間の勾配が最大50‰でした。こちらはたった0.8kmのあいだに、328ⅿも登るのです。ひょえ~!ここからさらに、そんなに高い所まで行くなんて驚きです。
▲高野山ケーブルカーの車内(新型車両)

車内に乗り込んでみますが、この急斜面に対応した車両は、やはり車内も急斜面。私…ちょっとビビっています。ケーブルカーの写真は、2019年3月1日にデビューした新型車両です!
▲新型車両の外観は流線形

先代の車両は1964(昭和39)年のデビューでした。54年ぶりに2019年に登場した新型車両は、高野山への期待感を高める和洋折衷のデザインで、ヨーロッパ風の流線型の車体が特徴です。

客室の窓はとても広くなっているので、以前、先代のケーブルカーに乗ったことがある方もぜひ改めて乗りに行ってほしいと思います。
▲ケーブルカーに沿って急坂の道が…

さて、出発です。私が取材した時はまだ先代の車両でしたが、意外とスピードが出るな!というのが私の感想です。ぐいぐいと登っていきます。

いちばん驚いたのは、左手に見える坂道。ほぼ崖のような道ではないですか。この気持ちを何と表現したらいいのか……。「おっかなワクワク!」ですかね。怖いけど、ワクワクするというか。
▲外国人もわくわくする?急勾配

外国人観光客の方も「ワオ!」と声をあげて驚かれていました。そうですよね、こんな急勾配を登るケーブルカーに乗ることが、なかなか無いのかもしれません。

328ⅿといえば、東京タワーとほぼ同じ高さ。それを5分ほどで登るのですから、驚くのも無理はありません。
▲最後まで、凄い坂道!

目の前に見える急斜面は、もはや壁のようです。ね?すごいでしょ?高野山駅に入線する瞬間なんて、急斜面過ぎて駅にいる人たちが心配になるほど(笑)こんなに急斜面なのに後ろに落ちていかないのが不思議なくらいです。

とっても貴重な体験をしたような気がします。高野山の山上には町があり、学校もあるので、ケーブルカーで毎日通学している学生さんもいるそうです!これに毎日乗れるのか……。羨ましい気もします……。
▲金剛峯寺(こんごうぶじ)などへは、高野山駅でバスに乗り継ぎ

さぁ、高野山駅に到着です!まさに天空への旅という感じでした。ここからはバスで高野山へ参拝しに行くのが普通ですが、鉄道の旅の魅力をお伝えするのが仕事。すぐさま橋本方面へ戻ります!(笑)

3.南海電車、写真映え鉄道スポットをご紹介

さて、急いで折り返したのには理由があるんです。

そう、みなさんに橋本から極楽橋までの区間の、写真映え鉄道スポットを紹介したかったからなんです!
▲秘境駅と言われる紀伊神谷(きいかみや)駅

まずは紀伊神谷駅。極楽橋駅の隣りの駅ですが、ここは都会から手軽に行ける秘境駅としても有名です。周辺に民家はなく、自動販売機すらない駅で、1日の平均乗降客数はなんと10人なんだとか……。かつては、高野山に最も近い宿場として栄えていたそうです。 

そんな駅で、私がスマートフォンで撮影した写真がこちら。
▲ひっそりとした紀伊神谷駅のホーム

まずは、ホームから高野山側を写した写真です。秘境駅感がたまりません。どうでしょうか?
続いて、駅舎内。味がある木造の駅舎に、無機質な自動改札機のアンバランスさがとても気に入りました。
▲下古沢も静かな駅

続いて、下古沢駅です。ここでは、一眼レフを使用して駅前のビューポイントから列車を撮影しました。
▲下古沢に到着する高野線の各駅停車

駅の右手側に倉庫のような建物があり、その裏から撮影した写真です。一般の人も立ち入ることが出来ます。駅員さんに聞くと場所を教えてくれますよ!撮り鉄さんたちがよく利用するスポットです。
▲列車を見守る駅員さん

また、この駅では偶然にも駅員さんの素敵な写真も撮ることが出来ました。
▲高野下(こうやした)駅の「南海思い出ミュージアム」

こちらは、高野下駅です。「南海思い出ミュージアム」といって、ホームに古レールを中心とした数々の展示物があります。駅構内に鉄道部品のミュージアムを常設している駅は、大手私鉄では高野下駅が初めてだそう。
▲高野下駅のホームも雰囲気がいい

今回私が注目したのは、ノスタルジックな雰囲気のホームです。懐かしい鉄道風景を撮影することができます。
▲九度山(くどやま)は観光地としても知られる

最後にご紹介するのは、極楽橋駅から6駅目の九度山駅。この駅から歩いて10分ほどのところにある「真田庵」は、戦国武将の真田昌幸(まさゆき)・幸村(ゆきむら)父子が隠棲した屋敷の跡。県の史跡に指定されています。

そのため、この駅舎も、真田父子ゆかりの地ということで、真田家の家紋「六文銭」の装飾がたくさん施されています。戦国時代のお城のような雰囲気もありますね!
▲九度山真田花壇。花は季節により植え替えられる

九度山駅のホームには、「九度山真田花壇」と名付けられた花壇もあります。高野線橋本~高野山間の愛称「こうや花鉄道」にちなみ、高野山への道のりを、よりいっそう魅力的にしようという取り組みの一つです。

木材は紀州材を使用し、「真田十勇士」のイラストを配しています。花のお世話は、地元ボランティアの方々と南海の社員さんたちが協力して行っています。
▲最後は九度山駅のホームで自撮り

九度山では、ベンチにスマートフォンを置き、タイマー機能で自分の後ろ姿を撮影しました。不思議な雰囲気の1枚が撮れました。みなさんもこんなふうに、思い出を写真に残す旅に出てみてはいかがでしょうか?観光列車「天空」に乗って通り過ぎる駅も、降りてみると意外な発見があるものです。

乗って楽しい、見て楽しい、撮って楽しい!と、色々な楽しみ方がある南海高野線の旅。みなさんも、それぞれの楽しみ方をぜひ見つけてみてくださいね!

※記事内の価格表記は全て税込です
古谷あつみ(鉄道タレント・松竹芸能所属)

古谷あつみ(鉄道タレント・松竹芸能所属)

小学生の頃、社会見学で近くにある車両基地へ行き、特急電車の運転台に上げてもらったことがきっかけで、根っからの鉄道好きとなる。 学校卒業後は新幹線の車内販売員、JR西日本の駅員として働く。その経験から、きっぷのルールや窓口業務には精通している。 現在はタレント活動のほか、鉄道関係の専門学校や公立高校で講師をしている。2015年には、「東洋経済オンライン」でライター・デビューし、鉄道旅行雑誌「旅と鉄道」等で執筆活動中。

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