奄美大島「金井工芸」で体験できる「泥染め」で、シミのついた洋服をリユース

2015.12.02

奄美大島を生産地とする本場大島紬は、「泥染め」という手法で絹糸を染め、手織りでつくられる日本の伝統的工芸品です。奄美大島には「泥染め」で自分の持ち物を染められる工房があると聞き、早速行って来ました。

▲「金井工芸」の敷地内には泥染めした洋服がズラリ

先染め・手織りを基本とし、完成までの工程の多さや織りの緻密さ・美しさなどから「着物の女王」と称される本場大島紬。今回お邪魔した「金井工芸」は、「泥染め」の工房が集まる奄美大島の北部・龍郷(たつごう)町にあります。龍郷町は自然豊かな美しい町で大島紬発祥の地とも呼ばれています。美しいものは、美しい環境でつくられるということですね。
▲「金井工芸」の染め場

「泥染め」は化学反応!?

「泥染め」は奄美大島特有の染色方法で、島内に自生する「テーチ木」(「シャリンバイ」の奄美方言)という低木常緑樹からつくられた染料で染めた後に、泥田に浸す作業を繰り返すことをいいます。

これは、「テーチ木」に含まれるタンニン色素と奄美大島の泥に含まれる鉄分の化学反応を利用した染色方法なのだとか。何だか化学の実験みたいな話ですが、「泥染め」には1,300年以上の歴史があるんです。昔の人々の知恵ってすごい!

ちなみに本場大島紬特有の光沢ある渋く深い黒は、「テーチ木」で染めて泥田につける作業を100回近く繰り返すことでようやく生まれるのだそう。相当な労力と時間がかかっているんですね。
▲「金井工芸」の金井志人(ゆきひと)さん

金井志人さんは、「金井工芸」の若き後継者。高校卒業後、一度は上京したものの、「泥染めの技術を受け継ぎたい」と11年前にUターンしました。
現在は本場大島紬用の絹糸のほか、アパレルメーカーとコラボして、洋服やファッション小物を染めることも多いそうです。
「金井工芸」には、一般客はもちろん、服飾作家やアパレルメーカーの関係者なども「泥染め体験」(有料)をしに訪れます。だから工房はご覧のとおり、いつも大賑わい!

余談ですが「金井工芸」では、「泥染め」のほか、夜光貝を使ったアクセサリーづくりも体験(有料)することができますよ。

さて、楽しそうに作業する人の姿を見てウズウズしてきたところで筆者もいざ、「泥染め体験」をスタート!

染め直せば、洋服は生まれ変わる

▲染まりやすい素材かどうかを確認中

筆者は金井さんから事前に「染める素材は持ち込みをおすすめしているので、もし汚れが気になる洋服があったら持ってきてください」と言われていました。そこで、うっかりシミをつけてしまったリネンの白シャツを持参しました。

素材については、シルクやコットン、リネンなどの天然素材は問題なくきれいに染まりますが、ポリエステルなどの化学繊維は一部ムラになりやすいものもあるので、事前に確認してくださいね。

もし持ち込むものがない場合は、白無地のエコバッグ(税込300円)や手ぬぐい(税込300円)、Tシャツ(税込1,300円)などを「金井工芸」で購入することもできます。
▲サンプルをもとに仕上がりの色を決定

早速、色を選びます。ブルー系の色は「藍」をベース、茶色っぽい色は「テーチ木」をベースにしたものです。両方とも染色を繰り返すにつれて濃い色に仕上がります。

筆者は、どちらの染料も使ってみたかったので、スモーキーブルーをチョイス。スモーキーブルーは写真左下の水色を少しくすませたような色です。「藍」で染めた後に「泥染め」でさらに染め重ねると、少しくすんだブルーになるんですって!筆者のようにサンプルにない色でも「これよりも少し濃い色」とか「これよりもくすんだ色」といった具合に希望の色味を伝えると、どの染料で何回染めればいいか、アドバイスしてくれますよ。仕上がりを想像するだけでワクワクしますね。
汚れないように上着とエプロン、長靴を着用し、作業スタート!まずは染色しやすい状態にするため、シャツを地下水につけます。
そしてお待ちかねの藍染めです。「金井工芸」では、インド藍と琉球藍の染料をつくっていますが、筆者はこれらをブレンドした染料を使用しました。ムラになるのを防ぐため、表面にある泡をよけて、染料の中でシャツを泳がせながらしばらく浸し、引き上げます。

引き上げた瞬間は美しい若草色をしていたシャツが、空気に触れたところから酸化してブルーに変化していきます。「染め」の作業は、本当に化学の実験のようです。
藍染めをしたシャツは、脱水し、クエン酸を入れた水につけて色を定着させた後、一旦干します。そして、この爽やかな藍色に「泥染め」のヴェールをかける作業に移ります。

いざ、「泥染め」にチャレンジ!

「テーチ木」の染料を揉み込むように染めていきます。「テーチ木」の染料は酸性なので、石灰のアルカリで中和させ染めを促進させます(石灰のない昔は、珊瑚の死骸を焼いて砕いた焼石灰を用いていたそう) 。最初は使い古しの2番液で染め、次に原液の1番液と2番液を混ぜた状態で染めたら脱水し、干します。
そしていよいよ泥田の登場です。太ももまであるゴム長靴を履いて、工房の裏手にある泥田へと向かいます。底に沈殿している泥を起こして、水と泥を撹拌します。

泥はキメが細かく、とってもクリーミー。泥に足を取られるので、泥を起こすだけで意外と体力を使います。

撹拌できたら、先ほど染めたシャツを浸していきます。ボタン周りや襟周りなど、細かい部分まで揉み込むようにしっかりと泥をつけて、泥に含まれる鉄分をまんべんなく行き渡らせます。最後に地下水でよく洗って干したら完成です。

ルールがないから面白い!

こちらが完成品です。市販品ではなかなか見ない、絶妙な色合いのスモーキーブルーになりました。我ながら上出来!最初の2、3回は、色移り防止のため個別に洗ったほうが良いですが、色が完全に落ち着いたら他の洗濯物と一緒に洗えるそうですよ。

今回は白シャツを染めましたが、色柄ものでもOKです。お好みでグラデーションにしたり輪ゴムやロウケツ(染色前にロウで模様を描き、染色後にロウを剥がす技法)で模様をつけたりするのも楽しそうですね。中には前に染めた服を自ら染め直しに来るお客さんもいるんだとか。

また、「拾った石やサンゴのかけらを染める」なんていうのもアリなんです!お土産にすると喜ばれそうですね。

ものに愛着を持って使い続ける大切さ

消費社会の現代、ものを手入れして長く使うことが少なくなっています。でも、かつての日本は着物を染め直したり仕立て直したりしながら、次世代へと受け継ぐ文化がありました。「ものづくりを通じて、ものを大切にする気持ちを思い出して欲しい」と金井さんは言います。

「泥染め」は奄美大島の自然を利用した染色方法。しかも、煮出した後の「テーチ木」のチップは薪にして、燃えた後の木灰は「陶芸の釉薬」や「藍染の灰汁」にしたり、地元のお菓子屋さんが引き取って「あく巻き(鹿児島の郷土菓子)」に使ったりと、ゴミはまったく出ません。そんなエコなサイクルの中でオリジナルの染色ができるなんて、素敵ですよね。

きっと誰でも「タンスの肥やし」になっている洋服を持っていると思います。リゾート地としても大人気の奄美大島で、捨てるに捨てられないファッションアイテムを「泥染め」してみてくださいね。
さわだ悠伊

さわだ悠伊

鹿児島市出身・在住のフリーライター。グルメ、旅、コラム等ジャンルや媒体を問わず活動中。鹿児島県内の離島取材も豊富。

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