日本三大曳山祭「秩父夜祭」の見どころは、豪華な笠鉾・屋台と冬の花火の競演!

2018.11.24 更新

毎年12月2~3日に行われる「秩父夜祭」は、埼玉県秩父市にある秩父神社の例大祭として、江戸時代中期頃から続いています。京都の「祇園祭」、岐阜の「高山祭」と並んで日本三大曳山祭に数えられ、2016年にはユネスコ無形文化遺産に登録されました。例年20万人を超える人出がある、豪華絢爛でダイナミックなお祭りの見どころをご紹介します。

▲提灯を灯した笠鉾(かさぼこ)・屋台と華やかな花火の競演が見事(写真提供:秩父市観光課)

古代から信仰を集める秩父の総鎮守「秩父神社」

秩父鉄道・秩父駅から徒歩3分ほどの市街地に位置する「秩父神社」。縁起書によると、秩父神社の創立は第10代・崇神(すじん)天皇の時代まで遡ると考えられています。2014年には創建2100年を迎えました。
▲平日でも多くの参拝客で賑わう秩父神社(写真提供:持田 仁)

主祭神は、知恵の神といわれる八意思兼命(やごころおもいかねのみこと)。その後、鎌倉時代になると妙見菩薩(みょうけんぼさつ)が合祀されました。明治以降、妙見菩薩は天之御中主神(あめのみなかぬしのかみ)として信仰されています。

そんな秩父神社の例大祭として、毎年12月2~3日に行われるのが秩父夜祭。秩父神社の女神(妙見様)と、神社の神体山である「武甲山」の男神(龍神様)が年に1度御旅所で会うお祭りとして広く知られています。
▲秩父市の南側にそびえる、秩父のシンボル的な存在・武甲山(写真提供:持田 仁)

神事としての歴史は古く、いつから始まったものなのかは正確にはわかりません。しかし、現在の秩父夜祭を象徴する豪華絢爛な笠鉾・屋台が街を曳行(えいこう)される「屋台行事」が始まったのは江戸時代中期頃のことだそう。

江戸時代から昭和初期まで養蚕業で栄えた秩父では、秩父神社の例大祭に合わせて絹市が開かれていました。そこに集まってきた全国の商人をはじめとした多くの人々に楽しんでもらうために、屋台を出し、その上で歌舞伎を上演したことが屋台行事の始まりといわれています。

秩父夜祭の主な行事と開催スケジュール

秩父夜祭の例大祭としては、12月1~6日にさまざまな神事が行われますが、主な行事は2日の宵宮と3日の本祭です。

まず、笠鉾・屋台の曳き廻しは、2日の午後から夜、そして3日の朝から深夜まで行われます。両日とも、夜になると市内の東側にある羊山公園から花火の打ち上げも行われます。
▲12月3日は19時半頃~22時頃まで、御旅所の東にある羊山公園から花火が次々と打ち上げられる(写真提供:秩父市観光課)

また、2日19時頃から行われるのが、重要な神事の1つ「諏訪渡り」です。前述の俗説によると、秩父神社の妙見様は、武甲山の龍神様のお妾さんで、本妻は秩父神社近くの番場町にあるお諏訪様なのだそう。そこで、本妻のお諏訪様にお祭りのお許しを得るために行われる神事です。
▲秩父神社の近く、番場町内にあるお諏訪様のお社で行われる諏訪渡り

そして、もっとも重要な神事は、3日22時頃から行われる斎場祭。秩父鉄道・御花畑駅近くにある御旅所まで、秩父神社の妙見様をお神輿に乗せてお連れし、そこで武甲山の龍神様と逢引(デート)するというのが、この神事の1つの形なのです。ちなみに斎場祭は、一般の見物客も少し離れた場所から見ることはできますが、人出が多いと近づけないこともあります。

メインは3日の夜、御神幸行列、花火など見どころ目白押し

先述したように、祭りのメインとなるのは3日の夜。斎場祭の他にも見どころが目白押しです。

まず、夕方18時半頃に、秩父神社の神様をお神輿に乗せて御旅所までお連れする「御神幸(ごしんこう)行列」が神社を出発します。この行列に参加する人の数は総勢200人以上。
▲大榊(おおさかき)を先頭に、道案内の神・猿田彦(さるたひこ)、楽人などが続き、そのあとに氏子各町会の高張提灯と供物が続く(写真提供:持田 仁)
▲その後に、お神輿やご神馬なども続いていく(写真提供:持田 仁)

御神幸行列は秩父神社を出発すると、本町通り、中町通り、聖人通りを通って、急な団子坂(だんござか)を登り、御旅所へ到着します。御神幸行列に続いて、6基の笠鉾・屋台も御旅所へと向かいます。巨大な笠鉾・屋台が、傾斜のきつい団子坂を曳き上げられるのが、このお祭りのクライマックスといっていいでしょう。
▲下郷笠鉾の団子坂曳き上げ。残念ながら、こんな近くからは、祭り関係者でないと見ることができない(写真提供:秩父市観光課)

御神幸行列と6基の笠鉾・屋台がすべて御旅所に到着するのが21~22時の間。そして、22時頃から斎場祭がスタートします。御旅所には亀の子石と呼ばれる亀の形をした石があり、斎場祭では、その前で神事が行われます。
▲12月3日の夜には、6基の笠鉾と屋台が御旅所に一堂に集まる(写真提供:持田 仁)

ちなみに、笠鉾・屋台がすべて御旅所に入るまでは、団子坂周辺は、安全面から桟敷席を購入している観客と祭り関係者のみしか入ることができません。桟敷席は、秩父観光協会と民間の団体が運営しているものがありますが、例年10月頃の受付開始直後に売り切れてしまうことが多いので、早めの申し込みが必要です。2018年の分は残念ながら売り切れているようなので、来年以降ぜひ早めに予約をしてみてください。
▲6基の山車が団子坂を上がると、交通規制が解かれ近くで見ることができる(写真提供:持田 仁)

6基の山車が御旅所の中に入ると交通規制が解かれ、団子坂周辺や御旅所がある秩父公園の中に入ることができます。また、斎場祭が終わって深夜0時頃に、笠鉾・屋台は再び団子坂を下って各町会に戻りますが、この時も交通規制はありません。そのため、笠鉾・屋台を見る穴場の時間ともいわれているので、もし近隣に宿を取っている場合は深夜まで待つのもお勧めです。

「動く陽明門」とも言われる豪華な笠鉾・屋台

さて、ここからは、秩父夜祭を訪れたら見ていただきたいポイントを紹介します。まずは、笠鉾・屋台の曳き廻し。秩父夜祭では、市内6つの屋台町が所有する、2基の笠鉾と4基の屋台が曳き廻されます。2日の宵宮では4基の屋台が、3日の本祭では2基の笠鉾を加えた6基の笠鉾・屋台が、勇壮な秩父屋台囃子の音色を響かせながら街中を曳行されます。

笠鉾・屋台の大きさは、高さが6~7mほど、重さは10~20tほど。「動く陽明門」といわれるほど、屋根や腰組には豪華な彫刻が施されています。
▲豪華な彫刻や繊細な幕の刺繍が見事な屋台(写真提供:持田 仁)

一見すると区別がつきにくい笠鉾と屋台ですが、歌舞伎を上演するための移動式の舞台になるのが屋台。宮地、上町、中町、本町の4町会が所有していて、水引幕と後幕がついているのが、笠鉾と見分けるポイントです。
▲屋根の下にぐるりと回されているのが水引幕。こちらの本町屋台は、後幕の大きなダルマが特徴的(写真提供:秩父市観光課)
▲中町屋台の後幕には、鯛や蛸など海の生き物が描かれている(写真提供:秩父市観光課)

一方、中近と下郷という2つの町会が所有するのが笠鉾。笠鉾は、屋根の上に3層の花笠などを立てているのが本来の姿です。しかし、現在は架線の関係でそれらが取り外された姿で曳行されています。
▲こちらは下郷笠鉾。6基のうち、もっとも大きく20tもの重さがある(写真提供:秩父市観光課)

笠鉾・屋台には4~6人ほどの男性が乗り込み、「ホーリャーイ、ホーリャーイ」という独特の掛け声を掛けながら進みます。

勇壮な秩父屋台囃子やぎり回しにも注目

笠鉾や屋台が曳行されるときに欠かせないのが「秩父屋台囃子」。屋台は幕の中、笠鉾は土台の下に20人ほどの奏者が乗り込み、曳行の間中、交代で絶え間なく演奏を行っています。秩父屋台囃子の特徴は、テンポのいいリズムと力強い大太鼓の響き。この屋台囃子があるからこそ、お祭りがよりいっそう盛り上がるのです。

また、笠鉾・屋台の曳き廻しの際に、もう1つ注目していただきたいのが「ぎり回し」と呼ばれる道路の交差点での方向転換です。
▲このように、てこ棒によって大きな山車が持ち上げられる(写真提供:秩父市観光課)

10数tから20t近くある巨大な笠鉾や屋台を、てこ棒2本を使って持ち上げます。そこに凸型の台を入れ込み、一度屋台をおろし、この台に乗せた状態にしてぐるりと回すのです。時間にして10分から15分くらいでしょうか。

ぎり回しの間、屋台囃子は小太鼓による軽快な「玉入れ」という叩き方に変わります。方向転換が終わり、再び笠鉾・屋台が動き出すのに合わせて大太鼓がドコドコドコと鳴り響くと、周囲からは拍手喝采が巻き起こります。

華麗な曳き踊りや歌舞伎…さらなるお祭りの楽しみ方

冒頭にも説明した通り、屋台はもともと移動式の歌舞伎舞台として作られました。秩父は地芝居が盛んなことでも知られており、秩父夜祭でも、屋台の上で歌舞伎公演が行われます。
▲こちらは本町による歌舞伎の上演。上演時は屋台の両脇に張出舞台が付き、中央には回り舞台も備えた、本格的な舞台になります(写真提供:秩父市観光課)

4つの屋台町が年ごとに交代で上演を行っており、2018年は上町が当番町。3日の午後に上演されます。演じるのは、秩父歌舞伎正和会の役者さんたちです(中町が当番町の時のみ、小鹿野歌舞伎保存会・津谷木部会の役者が出演する)。上演される演目は、歌舞伎の演目の中でも、衣装や動きが派手でわかりやすい「時代物」であることが多いそう。また、町会の青年部のメンバーや子どもたちが歌舞伎を習って演じる場合もあります。今年はどんな舞台を見られるのか、楽しみです。

また、2日から3日にかけて、街中や町会の会所の前などで披露される曳き踊りも見どころのひとつ。曳き踊りとは、屋台の上で三味線や長唄に合わせて踊る所作事(舞踊)のこと。3日の昼間には秩父神社で、3日夜の斎場祭の後にも、御旅所で奉納舞が行われます。
▲3日の夜、斎場祭の後にも所作事が奉納される。夜は一層幻想的な美しさに(写真提供:持田 仁)

以上、秩父夜祭の見どころをざっくりとご紹介しました。当日はかなりの混雑が予想され、しかも山間の街なので夜は寒いです。しっかりと寒さ対策をして足を運ぶことをお勧めします。また、秩父鉄道・西武鉄道ともに、夜遅くまで臨時列車が運行しますが、事前に帰りの電車を確認しておくと安心です。

お祭りをいつでも体験できる「秩父まつり会館」も

2018年の秩父夜祭(本祭)は平日に行われます。しかも季節は師走の忙しい時季。なかなか行けないという方には、1年中いつでもお祭りの熱気を感じられる「秩父まつり会館」もお勧めです。
▲音と映像も加わり、実際のお祭りの様子をリアルに体験できる(写真提供:秩父市観光課)
▲秩父夜祭の歴史などを学べる展示コーナーは2階に(写真提供:秩父市観光課)

祭り当日の雰囲気を、プロジェクションマッピングでバーチャル体験できたり、そのほかの秩父のお祭りや四季折々の風景を立体映像で見たりすることができます。また、資料の展示、秩父屋台囃子の実演なども行われています。実際のお祭りを見る前に予習しておきたい方も、まずはこちらに立ち寄るといいでしょう。
勇壮なお祭りである一方で、実はその背景には、男女の神が出会うというロマンチックなストーリーもある秩父夜祭。都心からであれば日帰りも可能なので、ぜひ足を運んでみてください。
相馬由子

相馬由子

編集者、ライター。広告系出版社を経て独立。最近は旅、アウトドア、子育てなどのジャンルを中心に、書籍からウェブまで、編集、執筆を手がけている。趣味は低山歩きとヒップホップを聴くこと。合同会社ディライトフル代表。

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