金沢の冬の味覚!ブランドガニ「加能ガニ」と「香箱ガニ」食べ尽くしの旅!

2018.12.15 更新

金沢を代表する冬の味覚といえば「加能(かのう)ガニ」と「香箱(こうばこ)ガニ」。毎年11月6日に一斉解禁されると、極上の味を求めて全国から多くの人がやってきます。そこで、活気溢れる金沢のまちで食べ尽くし!おいしい加能ガニを見分けるポイントもご紹介します。

北陸の冬の訪れを告げるカニ漁が解禁!近江町市場の活気は最高潮

常に最高鮮度の魚介が手に入り、天然の生け簀ともよばれる北陸の日本海。中でも冬の名物は、なんといってもズワイガニです。貴重な資源保護のため、毎年漁期は11月6日から3月20日頃まで。つまり、全国のカニ好きがこの時期を心待ちにしているのです!
JR金沢駅から徒歩約15分、金沢の台所と呼ばれる「近江町市場」には、カニ漁の解禁翌日の7日になると、至るところに「加能ガニ」が並びます。その光景は圧倒的!そして、一年を通じて多くの人で賑わう市場ながら、いつも以上に人、人、人の大盛況!2015年に北陸新幹線が開通したことで訪れる人がさらに増えたそうで、解禁されたばかりの加能ガニを求めて地元の人も観光客も近江町市場に足を運んでいます。
▲新鮮な魚介類はもちろん、金沢でしか作られていない加賀野菜なども手に入る近江町市場
▲どこを見ても一面のカニ!
▲カニの解禁直後は朝から大賑わい!
▲こちらはケースで販売されていました

ところで、「加能ガニ」って何?と疑問に思う人もいるかもしれません。加能ガニとは、石川県内で水揚げされたズワイガニのオスのこと。日本海では水揚げされた地域ごとにオスのズワイガニの名前が違い、石川県では加能ガニと呼ばれていますが、福井県では「越前ガニ」、山陰地方では「松葉ガニ」として知られています。
この「加能ガニ」という名称は、2006年に一般公募され、石川県の「加賀」と「能登」の地名の1文字ずつを取って名付けられました。県内の漁協がひとつに統合されたことをきっかけに誕生した新ブランドガニで、橋立漁港や金沢港、輪島港といった漁港で水揚げされています。

ちなみに、この漁期以外にもズワイガニを見かけますが、それは「紅ズワイガニ」のこと。加能ガニは「本ズワイガニ」のことで、身がぎっしり詰まっていて濃厚な甘みが特徴です。
見分けるポイントのひとつが、漁港名が刻印された水色のタグ。これが本物の加能ガニの証で、金沢産は特に市場で高く評価されています。
▲この水色のタグが目印!

また、おいしいカニの見分け方のひとつが、硬い甲羅。カニは脱皮を繰り返す生き物で、脱皮後はひとまわり大きくなった殻に身がついていかないのでスカスカなんです。脱皮から時間が経つほど身が締まっておいしくなるので、脱皮直後の柔らかい甲羅のカニは要注意。指で押した時に甲羅が凹みます。

そして、甲羅の黒いツブツブもポイントのひとつ。実はこの正体は「ウミヒル」とか「カニビル」と呼ばれるヒルの卵。硬いものに寄生して卵を産み付けるので、この卵が甲羅に付いていると脱皮から時間が経っている証拠だとも言われています。とはいえ、脱皮直後に卵が産み付けられることもあるそうで、あくまでひとつの指標として覚えておくとよいでしょう。
▲見た目はちょっと悪いけど、黒いウミヒルの卵はおいしさのバロメーター

なお、加能ガニのお値段は、もちろんそれなり。1杯4,000円くらいから、大きいものでは10,000円を超えるものも多く見られます。
▲こちらはやや小ぶりで4,000円
▲こちらには15,000円のものも!

一方、値段も手頃で地元の人に人気なのが、ズワイガニのメスにあたる「香箱ガニ」です。加能ガニに比べて小ぶりなのですが、濃厚な味噌や内子(未成熟卵)が絶品!ただ、香箱ガニは加能ガニよりさらに漁期が短く、毎年12月29日までとますます貴重。金沢では汁物や炊き込みごはん、金沢おでんの具材「カニ面」などさまざまな食べ方で香箱ガニを楽しむことができるので、この時期に金沢を訪れたならぜひ極上の味わいを楽しんで。
▲「甲箱ガニ」とも書かれる香箱ガニ。昔は足折れなどを安く購入し、おやつのように食べていたという地元の人も
▲市場内にはその場で魚介を食べられるお店も。こちらは一杯1,200円(税込)で提供されていた香箱ガニ

加能ガニをリーズナブルに味わい尽くせる「大名茶家」

ということで、やはり加能ガニを見るだけでなく存分に食べたい!
とやってきたのが、金沢駅前にある「加賀料理 大名茶家」です。加能ガニをコース料理で提供する「蟹づくし会席(要予約)」を手頃な価格でいただけると評判の名店です。
▲金沢駅東口から徒歩約2分。“金沢らしさ”をコンセプトに旬の地元料理を提供しています

昭和37(1962)年に割烹料亭として創業し、店名は「お客様に大名気分で料理を堪能していただきたい」という思いに由来しているのだそう。現在は3代目店主の吉岡典昭さんが営んでいます。加能ガニ料理も吉岡さんが平成12(2000)年に店を継いでから、お客様からの要望に応える形で提供が始まりました。
▲20歳で料理の道を志し、東京や京都の有名店で修業後、家業である「大名茶家」を継いだ吉岡さん
▲店内に入るとすぐに加能ガニの水槽が!
▲店内にはテーブル席やカウンター席のほかに、個室も用意。個室は掘りごたつ式のテーブルで脚が伸ばせるタイプ

吉岡さんによると、今の時期は、やはり加能ガニを注文するお客様が多いそう。中でも「蟹づくし会席」は、茹でガニから焼きガニ、お造りや雑炊までいただけるのに、料金は13,000円(税別)と、加能ガニ1杯分相当の値段です!
▲こちらが1人前。このボリュームで加能ガニ1杯分の金額とは!

「少しでもおいしくいただいてほしいので、毎年カニの研究を重ね、少しずつ進化させて現在のスタイルに至っています」と吉岡さん。例えば、茹でガニも多くの店では厨房で茹でてからお客様の前で仲居さんがはさみで切って提供しているそうですが、その方法だとカニが冷めてしまうため、大名茶家では茹で上がったカニに食べやすく包丁を入れ、そのまませいろに入れてスチームをかけて提供しているそう。
▲せいろを開けるとフワッと湯気が。アツアツのまま提供されます

焼きガニも昔は厨房で焼いていましたが、現在はお客自身がその場で焼くスタイルにしています。

「特に焼きガニの場合は冷めると身が取りにくくなり、おいしくなくなってしまいます。お客様に焼いていただき、焼きたてをすぐ召し上がっていただけるのが、うちの焼きガニの一番のメリットです」
▲炭火焼用のコンロで自分で焼いて食べられるため、カニ本来の焼き立ての味わいが楽しめます

ということで「蟹づくし会席」をいただきましょう!

まずは先付(本日の旬菜)と八寸(冬の4種盛り)。こちらは時期によって内容が変わります。
▲この日の先付はあん肝の豆腐
▲八寸は奥から時計回りに、なめこのみぞれ和え、鮭のしんじょう、ポアロネギの肉乗せ焼き、ゴリ(小魚)とくるみの佃煮

続いて、造里(お造り)。生きたカニを仕入れているので、お刺身でも提供できるのです。「蟹の花咲き造り」はその名の通り、冷水につけて洗いをかけることで花が咲いたように身が開き、淡い甘みが極上です。
▲エビのように透明感があり、繊細な肉質とプリプリとした食感、とろけるような甘みがなんとも贅沢な「蟹の花咲き造り」
▲醤油などをつけずそのまま食べてみると、ダイレクトに甘みが伝わってきて思わず笑みが…

次に提供されたのが、焼物の「焼き蟹」。殻が剥かれているほうを上にし、片面だけ焼きます。温める程度に軽く焼き、身が白くなったら食べ頃です。香ばしい香りとしっとりとした食感。生のカニとはひと味ちがった磯の風味も感じられ、塩気があるので、そのままでも素材の濃厚なおいしさを贅沢に楽しめます。
▲甘みとコクのあるカニ味噌もこれまた絶品!ひと口食べると海の香りとカニの旨みが口いっぱいに広がります

続く温物は「蟹の小鍋」。カツオと昆布から出汁(だし)をとったつゆのやさしい旨みと、カニの身の甘さや上品な口当たりが楽しめます。軽く添えられた柚子の皮がほどよいアクセントに。
▲シンプルにカニそのものの旨みを感じられる鍋料理。つゆにもカニの風味が染み出ていて、おいしい!

揚物は「蟹足の天ぷら」。素材のよさに加え揚げ加減も絶妙で、ジューシーかつ引き締まったぷりぷりの身と、サクサクと軽い歯ごたえの衣は文句なしのおいしさです。
▲サクッとした衣の中からふわっと広がる身の甘さが魅力の天ぷら。天つゆにつけるのはもちろん、何もつけずに食べてもおいしい!

そして、いよいよ「茹で蟹」です。一気に茹で上げた一番おいしい状態をせいろで蒸すことでキープ。新鮮で甘い身をアツアツの状態で楽しめます。身はしっとりと甘く、繊細な旨みを堪能できます。そのままでももちろんおいしいのですが、添えられている追いガツオ仕立ての土佐酢に付けるとさっぱりしてまた格別の味わいです。
▲茹でると海の滋味がより鮮明になるため、「カニのおいしさが一番わかる調理法」とも言われるのだとか
▲身の繊維がしっかりと感じられ、甘みと芳醇な味わいがたまりません!

ちなみに、水色タグの横に船名が記されたタグが付いていますが、これは漁師のさらなる自信の証拠なのだとか。金沢港では底曳き網漁の船が28隻あり、良質なカニを多く漁獲している船は自分たちの名前をタグにしてブランド化しています。このタグがあると競りでも高値がつけられるのだそう。
▲このカニは「第十末廣丸」で水揚げされたもの。他にも数隻の船のタグが存在しています

それにしても、すごいボリューム!もうここまででかなりお腹がいっぱいで、思わず「これ、本当に1人前ですか?」と確認してしまったほどですが、最後に「蟹雑炊」と季節のデザートで〆。
▲カニの味わいが濃厚なので、雑炊にしても最後までしっかりと風味を感じることができます

いやー、どれも甲乙付け難いおいしさでした!1人前には約1.5杯のカニが使用されているそうで、至福すぎる!本当にこんな金額でよいのでしょうか?

ちなみに、蟹づくし会席はお手頃価格で提供するため少しサイズの小さい加能ガニを使っているそう。さらに大きなサイズの加能ガニを味わいたい人には「時価(税別8,000円~20,000円ほど、要予約)」がおすすめです。お造り、焼き、茹で、しゃぶしゃぶなど4通りの調理法からお好みのものを選ぶことができます。蟹しゃぶが一番人気だそうで、吉岡さんも一番おいしいと感じるメニューなのだとか。こちらも気になる!
▲身がぎっしりと詰まった大きな加能ガニを贅沢に味わうなら「加能蟹の一杯売り」がおすすめ

また「個人的には加能ガニより香箱ガニのほうが断然おいしくて好きなんです」と吉岡さん。脚は小さいながらも濃厚な味わいで、オレンジ色の内子は香箱ガニの一番の珍味として格別のおいしさを誇ります。

そこで、せっかくなので香箱ガニの単品(時価2,000円前後)を追加注文。これがまた本当に絶品!甘みある身のおいしさもさることながら、内子やカニ味噌と一緒に身を食べると凝縮した旨みが口の中に広がります。また、ぎっしりと詰まった外子(小さな茶色い卵)はプツプツと弾け、今まで味わったことがないような独特の食感!
▲吉岡さん曰く「香箱ガニの茹で汁は、そのままラーメンを入れて食べられるくらいの出汁が出る」ほど濃厚なのだとか

ちなみに、吉岡さんによると、加能ガニは解禁されたばかりの頃はまだ脱皮したてで身が薄いものがあり、「寒くなった1月頃のほうが身の薄いものが減っておいしくなると感じています」とのこと。とはいえ、1月を過ぎるとカニの絶対数が減ってきて漁獲量が落ち、良質なカニに当たる確率自体も低くなるのだとか…。とのことで、思い立ったらすぐに食べに行くべき!です。
▲カニの脱皮時期はよくわかっていないそうで、主に9~10月と言われていますが、「大名茶家」では水槽のカニが4月頃に脱皮したこともあるとか

それにしても、これまでの人生でこんなにもカニを満喫したことがあったでしょうか。なんだかバチが当たりそうなほど贅沢をした気分ですが、栄養豊富な日本海で育った加能ガニは今しか味わえない極上の素材。冬が来るたびに味わいたいと改めて感じた絶品でした。この時期しか味わえない魅惑の冬の味覚、どうぞ食べ逃しなく!
島田浩美

島田浩美

編集者/ライター/書店員。長野県出身・在住。信州大学卒業後、2年間の海外放浪生活を送り、帰国後、地元出版社の勤務を経て、同僚デザイナーとともに長野市に「旅とアート」がテーマの書店「ch.books(チャンネルブックス)」をオープン。趣味は山登り、特技はマラソン。体力には自信あり。(編集/株式会社くらしさ)

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