世界遺産とお茶の町、京都・宇治で食文化体験。「抹茶料理 辰巳屋」の人気ランチと抹茶のお手前に舌鼓

2018.10.30 更新

京都・宇治川のほとりで楽しむ、優雅なひととき。日本庭園に囲まれた数寄屋造りの本格的な茶室「対鳳庵(たいほうあん)」で薄茶をいただいた後は、25種類以上のおかずを盛り込んだ「抹茶料理 辰巳屋」昼の一番人気メニュー「宇治丸弁当」をいただく、「KYOTO365」の特別プランをご紹介します。

「KYOTO365」とは食文化を通した体験を訴求する「京都料理芽生(めばえ)会」とぐるなびの“本物の京都体験”をコンセプトに発信するプロジェクト。今回ご紹介する特別プランはあらためて文化としての食を学ぶ&味わう場を提供する、持続的な取り組みのひとつです。

時を越えて、今も昔も。お茶処・宇治の町並みに癒される

千年の時を越えて滔々と流れる宇治川を中心とした美しい景観と、世界遺産の「宇治上神社」「平等院」をはじめとする豊かな歴史・文化資源に恵まれた京都・宇治。
ある時は戦乱の舞台として、またある時は文化の中心として、日本の歴史の傍らに寄り添い、歩んできました。宇治は京都駅からJR直通で約30分の、交通の便がよい京都屈指の観光地です。
今回体験するプランの集合場所「抹茶料理 辰巳屋」はJR宇治駅から徒歩約15分の場所にあります。駅前の通りを一本奥に入った、蔵屋敷や老舗茶問屋が立ち並ぶ宇治橋通りを抜けたら、美しい宇治川が目の前に。お茶のかおりがする通りとして「かおり風景100選」に認定された平等院表参道をしばらく歩くと、世界遺産「平等院」の正門が現れます。正門を尻目に川沿いへ向かうと遊歩道「あじろぎの道」が。
▲宇治川のほとりを歩く「あじろぎの道」。ここを2~3分歩けば目的地へ到着します

時間に余裕があったため、宇治川に浮かぶ「中の島(塔の島・橘島)」へ行ってみました。
▲宇治の景色は、どこを撮っても山と空と水のコントラストが美しい

まずは、塔の島へ渡るために情緒あふれる朱塗りの反り橋「喜撰橋(きせんばし)」へ。取材日は生憎の曇り空でしたが、美しい山々に囲まれ、宇治川や町並みを眺めるだけでも本当に気持ちが良い。ここは人気のフォトスポットで、後景に「浮島十三重石塔」(下写真に映る石塔)を配して喜撰橋から撮影するのがおすすめです。
▲塔の島に立つ浮島十三重石塔は、国内最大の高さ15mを誇る石塔。ここは宇治でも随一の桜の名所で、春には美しいしだれ桜が咲き誇ります

塔の島へのお目当ては鵜(う)。実は、宇治は鵜と呼ばれる鳥を使って川魚の鮎をとる日本古来の漁法「鵜飼」が有名な場所で、毎年7月1日から9月30日がシーズンです。宇治川での鵜飼は、平安時代にはすでに行われていたといわれており、天禄2(971)年、奈良の長谷寺に参詣した藤原道綱の母が、その往路に宇治の川岸から鵜飼を見物している様子が彼女の手記『蜻蛉日記』に記されています。
▲鵜のつぶらな瞳の色は美しいエメラルド色。こちらの2羽は仲良くリハーサル中!?

島には鵜の小屋があり、20匹近く飼育されていました。取材時は9月半ばだったので、今夜の演者たちでしょうか。網に近づいても逃げることなく、マイペースに泳いだり、寛いだりする姿は、どことなく出番待ちをする役者のよう。
▲「喜撰橋」のふもとにある鵜飼船や観光船乗り場の「宇治川観光通船」。鵜飼は乗合船なら大人ひとり2,000円(税込)から。鵜飼のシーズン外は遊覧船で宇治川を満喫するのも◎

信長も秀吉も愛したお茶。宇治川のほとりで楽しむ優雅なひととき

付近を散策した後は、集合場所の「抹茶料理 辰巳屋」へ。今回のプランでは宇治の文化を体感するために、食事の前に香り高い抹茶をいただくとのこと。予約は11時~14時30分の間で受け付けており、抹茶体験を食後に希望することも可能です。
お店のスタッフが徒歩約1分の茶室「対鳳庵」へ案内してくれました。
▲「在釜(ざいふ)」とは『今、釜を掛けており、茶会を催していますよ』の合図

「対鳳庵」は、宇治市市営の茶室で、宇治茶の振興と茶道の普及を目的に建てられた本格的な茶室です。平等院の鳳凰堂に相対していることから、「対鳳庵」と名付けられました。
▲日本庭園に囲まれた数寄屋造の本格的な茶室
▲生まれて初めて鳴らすドラに覚えた小さな感動

「対鳳庵」に入ったら最初に、入り口付近にあるドラを鳴らします。鳴らす数は同行者を含めた人数分。中にいる亭主(お茶会の主催者のこと)に、今から何名茶室に入るかをドラの音で知らせているのです。これは亭主が表に出ることなく、お茶の準備を進められるようにといった、客側の気遣いのひとつ。
▲先生たちは着物でおもてなし。美しい日本文化として海外からのお客さんにも好評です

ドラを鳴らしたら「広間茶室」という8畳ほどの茶室に案内されます。
恥ずかしながら、筆者はお茶の作法がまったくわからなかったのですが「海外からのお客様も多いので、初心者でも気軽にお越しいただけます」と先生。ドキドキしながらもはじめてのお茶会のスタートです。
▲お菓子は季節の生菓子。取材時の9月は秋を感じるきんとんをいただきました

最初にお菓子が出されます。先生から「お菓子をどうぞ」の言葉を受けたら、「お菓子を頂戴いたします」とお辞儀をしてお菓子を食べます。お茶が運ばれてきたら、「お手前を頂戴いたします」とお辞儀をします。茶碗を左手にのせ、右手をそえてから2回ほど手前に回し、お茶をいただく、というのが基本的な流れ。
▲取材時のお手前は田中宗明先生によるお薄。ひとつひとつの美しい所作にうっとりしました

「茶碗を回すのは、出された時のお茶碗の正面は自分に向いているため、正面の絵柄を避けるために2回ほど回してずらしているのです。絵柄がないものはそのまま飲んでもかまいません」と先生。
飲み終わったら、指で飲み口をぬぐい、茶碗の正面を自分の前に戻します。
▲「お茶の作法は流派によって異なりますが、ここでは基本的な流れを体験していただきました」と先生

宇治は水に恵まれた土地で、水運も茶の流通に好都合でした。室町時代になると「七茗園」や「七名水」と呼ばれる名物茶園・湧水が成立し、織田信長や豊臣秀吉などの庇護を受け、天下一のお茶の産地として名声を獲得してきました。戦後の世、武士たちにとってつかの間の休息を与えてくれたのは宇治茶だったといわれています。

良いもの、美しいものは時代を越えて人の心を打つ…。「信長や秀吉が癒された、宇治のお茶文化を次代に伝えるための取り組みを今後も続けてまいります」と対鳳庵の皆さん。本格的な茶室でのはじめての抹茶体験は、お茶文化に強い関心をわかせること必至です。これを機にお茶を習い始めたくなる人は、私だけではないはず。

五感で味わう。25種類以上のおかずと宇治茶を使った「宇治丸弁当」

抹茶体験の後は「抹茶料理 辰巳屋」へ戻って食事をいただきます。天保11(1841)年頃、茶問屋「辰巳屋」として発祥した同店。その後、料理屋になり、お茶と共に歩んできた老舗だからこそできる、宇治茶の風味と旬の食材を活かした抹茶料理が味わえる店として人気を博しています。
▲宇治川のほとりに佇む「抹茶料理 辰巳屋」。平等院の裏に位置しているので観光にも◎
▲家紋は、日本十大紋のひとつである鷹の羽を使った「丸に違い鷹の羽」
▲玄関に通されると2階へ続く通路が小上がりになっており、和室には茶器や季節の花のしつらえが
▲食事の場所は、個室のほかカウンターや広間など、混雑具合によって変わります

今回の食事場所は、2階の個室。目の前を流れる宇治川が望めます。特筆したいのが、時代を感じさせるテーブルで、実はこちら1世紀前の船の底板をリメイクしたもの。宇治川を往来した船でしょうか、悠久の時を越えた今も強い存在感を放っています。
▲窓の外から見える景色。対岸には先ほど訪れた宇治川の中の島が。秋は紅葉のライトアップ、春は一連の桜が望めます
部屋に入って一息ついていると、竹の皮に包まれた「宇治丸弁当」が運ばれてきました。宇治丸とは宇治市の特産である鰻の異名のこと。宇治の鰻は極上だ、と賞味した大阪の長者の話が 「宇治丸物語」として語り継がれたことにちなんだお弁当です。
「名前の由来になった鰻の印籠煮のほかに25種類以上のおかずが盛り込まれていて、女性に人気の高いメニューです」と話すのは、若女将の左美幸さん。
▲「お弁当に使っている食材の4割は定番のものですが6割は旬のものをとりいれています。宇治のお茶や京野菜も多く使っているので、地のものを食べて帰っていただけたらうれしいです」と若女将
▲25種類以上のおかずに俵結びのおにぎり、赤だし、デザートがつく

宇治丸の印籠煮は、八幡巻のようにゴボウに鰻を巻くのではなく、筒切りにした鰻の中にゴボウが詰められています。ほかのおかずも、鯛のせせり身とゴボウ、にんじん、サツマイモのすり身揚げや、ニシンの昆布巻き、鴨の松風(けしの実をふって焼いたもの)など、品数が多いながらもひとつひとつ手の込んだものばかり。

俵結びのおにぎりにのせられた碾茶(てんちゃ/抹茶を臼で挽く前の状態の原葉)も珍しく、お茶の香ばしさが鼻孔をくすぐります。お米は秋田から産地直送し、使う分だけ精米するこだわりよう。
▲料理が高く盛り付けられ、食べ手の迷う楽しみや、中からおかずが出てくるサプライズ感が◎ 印籠煮は宝物のように、おかずの中に隠されています
▲おかずもごはんの量もボリュームがあるので、成人男性でも満腹感必至
▲宇治のお茶やハーブを配合した独自の餌で育てた鶏の卵「京たまご 茶乃月」を使った卵焼き。色素分を与えていないためキレイな黄色で、うまみの増した味わいになっているのが特徴です
▲取材時のデザートは抹茶のチーズケーキ。1日10個限定でお土産購入も可能(200g 1,080円・税込)

地のものや、旬のものをたくさんいただける「宇治丸弁当」。笹の葉に包まれて目の前に出されたときは、そのインパクトに思わず笑顔になりました。色合いや食材の宝石箱のような楽しいプレゼンテーションは写真映えも抜群。宇治のことがさらに好きになった昼下がりでした。

「宇治の食文化を体験してほしい」特別プランに込められた想い

今回ご紹介した特別プランについて「抹茶料理 辰巳屋」8代目主人の左聡一郎さんに話を伺いました。
「宇治は、歴史や文化、食材等資源に恵まれた場所です。京都の世界遺産(文化財)17件のうち、『平等院』と『宇治上神社』2件が宇治にあるんです。しかもどちらからも徒歩約10分という、観光に最適な距離感。せっかく宇治まで来てもらっているのだから、世界遺産だけでなく、お茶という宇治で大切にしている食文化も一緒に体験していただきたいなと思い、『対鳳庵』さんでの抹茶体験と宇治丸弁当をセットにしました。うちも茶問屋からスタートし、宇治の地に約180年根付いた店ですから、もっと抹茶料理の魅力を発信していきたいですね」。
2018年で40歳を迎えた聡一郎さんは、宇治市の食育にも注力しています。
「昔から贔屓にしてくれているお客さんも、どんどんお年を召されてきました。お店を持続していくには、新しい世代のお客様をつくっていくということも、私の使命のひとつだと考えています。日本や京都に住んでいると、身近すぎて和食やお茶の文化に価値を感じなくなってくるんです。だから和食離れしている若い世代への“食育”は和食本来の魅力をきちんと伝えるうえで重要なことです。同時に、インターネットからの予約や、情報発信など、時代にあわせた動きも必要だなと感じ始めました。“京都”というブランドに胡坐をかいていては、和食は衰退の一途をたどってしまいますから、日々精進です」。

京都も本格的な秋を迎え、観光シーズンに突入しました。京都の魅力は数え切れないほどですが、この秋は宇治の食と文化の魅力に触れた体験をしてみませんか?

撮影:久保田狐庵
岡久加苗

岡久加苗

「KYOTO365」コンテンツ編集長。出版社で10年間編集者として勤務し、退職後はぐるなびのWEB媒体へ。現在は「KYOTO365」の編集長として京都の食と文化、ガイドブックには載っていないとっておきの場所や、地元の人でさえ知らなかった食体験など、京都の魅力に深く触れることのできる機会を企画・提案しています。

※本記事の情報は取材時点のものであり、情報の正確性を保証するものではございません。最新の情報は直接取材先へお問い合わせください。
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