京都のツウな遊び方。約440年の歴史を誇る「山ばな 平八茶屋」で日本古式の蒸し風呂と昼懐石に癒される

2018.11.09 更新

紅葉の美しい季節到来。京都・洛北にある老舗料亭「山ばな 平八茶屋」で、季節の魚や旬の野菜を使った昼懐石と日本古式の蒸し風呂、かま風呂体験ができる「KYOTO365」の特別プランをご紹介します。

「KYOTO365」とは食文化を通した体験を訴求する「京都料理芽生(めばえ)会」とぐるなびによる“本物の京都体験”をコンセプトに発信するプロジェクト。今回ご紹介する特別プランはあらためて食文化を学ぶ&味わう機会を提供する、持続的な取り組みのひとつです。

秋の京都に誘われて。洛北の穴場「山ばな 平八茶屋」で紅葉を堪能

息を呑む美しさを誇る、11月の京都。多くの名所では紅葉が見頃を迎え、秋の観光シーズンの最盛期となります。
とはいえ、美しい情景に思い焦がれる気持ちは皆同じ。この時季の京都は、どこも混雑を極めています。せっかくの紅葉も、大混雑のなか自由に動き回れず、シャッターを切っても、他人が写り込んだ写真ばかり…なんてこともしばしば。
「京都らしさを感じながらも、紅葉を愛でて、美味しい料理を楽しみたい!ほかの観光客を気にせず、ゆっくり過ごしたい!」そんなわがままを叶えてくれる、とっておきの体験プランをご紹介します。
京都駅からバスを乗り継いで約50分の平八前下車、または叡山(えいざん)電鉄・修学院駅徒歩約5分の地に、創業440年以上の老舗料亭「山ばな 平八茶屋」があります。440年前というと、歴史好きな方はピンとくるかもしれませんが、豊臣秀吉によって全国統一が進められた、安土桃山時代。
同店の目の前を通る若狭街道は、福井県・若狭の海で水揚げされた魚介類を近江や京まで運んでいた街道で、中でも鯖が主流を占めていたことから、後に“鯖街道”と呼ばれるようになりました。
「山ばな 平八茶屋」は、その鯖街道にある街道茶屋として営業していたのが始まり。若狭からの鯖の塩まわりが、この辺りで一番美味になることから、当時の食通は同店に集い、都に入る前に上質な鯖を食していたといわれています。
現在は宿泊もできる料理旅館として営業しており、文豪・夏目漱石の著書にも登場するほどの名店。
今回ご紹介するのは、高野川に面した「山ばな 平八茶屋」の個室でいただく昼懐石と、日本古式のかま風呂入浴がセットになった、美食と文化の体験プランです。
通りに面するように建てられた門「騎牛門(きぎゅうもん)」は、築400年以上といわれ、「山ばな 平八茶屋」の玄関口として大切に使用されています。創建当初、山口県・萩にある禅宗寺院の門として使用されていたものが、様々な変遷を経た後、京都に移築されてきました。

2本の巨大な欅(けやき)を門の脚に使用しながら、その上に柿葺(こけらぶき)の庵を抱いたスタイルは、荘厳的な雰囲気を創り上げています。よくみると、庵の左右には仏像を安置できる空間があり、寺院に建造されていた名残を伺い知ることができます。
このような高さ1.6mほどの門は、通称「下馬下乗(げばげじょう)の門」と呼ばれ、牛や馬に乗ったまま通ることを許されない門として、格式の高い寺院に設置されることが多かったそう。実際にくぐりぬけてみると女性の私でも頭上ぎりぎりで、その低さに驚きました。
石畳を通って中に進むと回遊式の庭園が広がります。不思議なことに一歩足を踏み入れると、通りに面しているにもかかわらず、突然の静寂が訪れました。ジャリ、ジャリ、ジャリと響く足音が、非日常空間へいざないます。
▲街道と高野川に挟まれた、約600坪の細長い庭の中央には水が流れています

匠の技が光る庭は店とともに進化し続ける

陰陽を配置した庭では小鳥がさえずり、四季折々の花が咲き誇り、季節を存分に感じることが出来ます。作庭しているのは宝暦年間(1751~1764年)創業の「植治」次期十ニ代目の小川勝章(かつあき)さん。実は小川さんに依頼し始めたのは2008年から。「山ばな 平八茶屋」の二十一代目主人、園部晋吾さんに代替わりしてすぐのことでした。
自らを「改革派」と自認する園部さん。「庭師を変えたのも僕の改革のひとつです。大きな声では言えませんが、これまでの美しく整えられた庭が、あまり好みじゃなかったんです(笑)。お越しいただいたお客様が部屋でゆっくりしたり、庭を散策したり、食事をされる時間は、日常の延長線上の非日常であればいいなと。だから庭は、あくまで木々が自然に美しく見えるデザインにして欲しかったのです。自然によった、緩やかで和める感じにしたい、そう思ったときに小川さんの名前が頭に浮かびました」。
▲昭和の数奇屋造りの建物を引き立てるために計算されつくした庭は、どこを切り取ってもフォトジェニック

「今の庭は完成形ではないと思っています。庭は生き物ですから、最終的な形になるまでこの先何十年かかるかわかりません。でも、小川さんと庭のことについて話し合う時間がとても楽しくて。家業を継ぐという生い立ちもですが、感覚が近いのか、同士のような存在です。この先もふたりで考えながら庭を造っていきたいです」と園部さん。

誰にも邪魔されず紅葉を愛でる。のんびりゆったり癒し時間

今回案内されたのは、二階にある和個室。本プランは11時30分から15時の間で最大3時間半滞在できるのも嬉しいポイント。予約時に食事時間を伝えれば、前後の時間は風呂に入ったりお庭を散策したりと、自由に出入りすることができます。
「山ばな 平八茶屋」の部屋はすべて高野川に面しています。これからの季節は、窓辺に腰掛けて紅葉をひとり占め。静寂の中、誰にも邪魔されずに景色を堪能…なんて贅沢な時間でしょう。
▲二階の廊下から見下ろした風景。訪店した9月はまだ緑一色だった庭も、11月末になると写真のような紅葉のグラデーションが楽しめます
食事まで時間があったので、「かま風呂」に入ってみました。筆者が知っている「かま風呂」といえば、温泉によくある釜の形状をした小さなお風呂。“日本古式のかま風呂”とは一体どんなものなのでしょうか。
実は「かま風呂」とは、今でいうサウナのようなもの。耐火煉瓦と土壁で、人の入れる穴蔵のような竈(かまど)の蒸し風呂のことを指します。中で草木を焚き、塩水をかけて湿らせたむしろの上に横たわって蒸気に浴するもので、神経痛や胃腸病、喘息などに効果があるとされています。
▲かま風呂内の温度は55~60度。中にはむしろが敷かれており、陶器の枕を持って入り静かに横になっていると、ゆっくりと体が温まり、自然と汗がでてきます

“風呂”の語源は岩室である室(むろ)から転じたものだといわれています。熱気浴、蒸し風呂の類で、蒸気の動きから「風」という漢字が当てられたと考えられています。

「若狭街道を通る旅人たちは、街道茶屋で食事をとる前に風呂で埃や疲れをとってさっぱりしていたそうです。そんな旅人たちの癒しの空間を再現したのが、このかま風呂です。当初は宿泊者用でしたが、日本古式の貴重な風呂を体験してもらうことは文化体験のひとつだと思い、この懐石料理とかま風呂を体験できる日帰りプランをはじめました」と園部さん。
▲もちろん、お湯に浸かるタイプの風呂も完備。スキンケア以外のバスタオルやシャンプー類、ドライヤーは用意されています
▲昼懐石は7品の料理に名物の麦飯とろろ汁と水物つき(前菜/造り/吸物/焚合/焼物/揚物/酢物/麦飯とろろ汁/水物)

部屋に戻ると、待ちに待った昼懐石がスタート。旬の食材を用いて移ろいゆく季節を一皿一椀に描き出した、月替わりのコースです。京都が誇る山の恵みや近郊の食材はもちろん、全国各地より取り寄せた旬の素材を使った料理は、舌の肥えた美食家たちから定評があります。
コースに登場する麦飯とろろ汁は、創業当初から提供されていた歴史あるメニューです。江戸時代に発行された旅行ガイドブック『拾遺都名所図会(しゅういみやこめいしょずえ)』や『浪花講定宿帳(なにわこうじょうやどちょう)』にも記載されているのだそう。

まるで光輝く真珠のようなとろろは、丹波産のつくねいもを使用。「大きな鉢で、天然昆布とかつお節を使った秘伝だしと、白みそなどを合わせてゆっくりと伸ばし、伝統の手法で丁寧に作り上げられています」。
細かなキメと強い粘り気のとろろ汁は、濃厚でいて上品な味わい!ちゃっかりお替りしてしまったほどで、その美味しさにとろろの概念が覆りました。
「庭もそうでしたが、食事も自分が納得いくものをお出ししたいと思っています。これまでの伝統や歴史も大事ですが、当代がいいと思ったものが継がれていけばいいなと。出汁をとる際の湯の温度や、時間を細かく設定して味を確立したり、名物の麦飯とろろ汁に使う米をこしひかりから朝日米に変更したりと、進化のための変化を恐れません」と園部さん。
▲宵の頃になると庭はまた違った雰囲気に。時間ごとに表情を変えるのも美しい庭ならでは

園部さんにお話を伺った中でも特に印象に残った話がありました。
「食には2種類あって、ひとつは生きるための食、もうひとつは人と人を繋げるための食だと思っています。だから 、“おもてなし”はお客様自身がホストとしてゲストにするものであって、スタッフにはその”おもてなし”のお手伝いを精一杯してください、と伝えています。おいしさだけでなく、温かさやぬくもりが反映された料理で、お客様のゲストを喜ばせること。それが、我々の役目のひとつだと思っています」。
▲庭の一角にはお土産が購入できる売店が。「むぎとろ饅頭5個入り」600円をはじめ、「ちりめん山椒」600円や、「鯖寿司」(前日までに要予約)4,000円(すべて税別)など、旅の思い出におすすめです
京都の街中から少し足をのばしたところに、こんな自然あふれる癒しの場があるなんて、ほんの少し“京都ツウ”になったような気持ちになりました。静寂の中の庭園探索、紅葉を愛でながらの食事、日本古式のかま風呂…日常では味わえない体験がここにはあります。ゆったりとした贅沢なひと時に出会いに、秋の京都へ足を運んでみませんか。

撮影:久保田狐庵
岡久加苗

岡久加苗

「KYOTO365」コンテンツ編集長。出版社で10年間編集者として勤務し、退職後はぐるなびのWEB媒体へ。現在は「KYOTO365」の編集長として京都の食と文化、ガイドブックには載っていないとっておきの場所や、地元の人でさえ知らなかった食体験など、京都の魅力に深く触れることのできる機会を企画・提案しています。

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