焼きそばがスープに!?青森ご当地グルメ「黒石つゆやきそば」の名店を食べ歩き

2019.04.30 更新

静岡県「富士宮やきそば」や秋田県「横手やきそば」など、全国各地で賑わいを見せるご当地焼きそば。青森県では、なんと焼きそばにスープをかけたご当地グルメ「黒石つゆやきそば」が多くのメディアに取り上げられ、近年注目を集めています。今回は発祥の地・黒石市で人気店を巡り、異彩を放つソウルフードの誕生秘話と不思議なおいしさに迫ってきました。

▲黒石つゆやきそばの正体とは!?

庶民に愛された「つゆそば」が「黒石つゆやきそば」に

青森県のちょうど中央に位置する黒石市は、市の面積の約8割が森林などの自然で占められ、紅葉シーズンを中心に多くの観光客が訪れる人気の観光スポット。また、藩政時代から続く城下町としても知られ、造り酒屋や蔵などの民家が現存する歴史ある町でもあります。
▲重要伝統的建造物群保存地区に指定されている「中町こみせ通り」

そんな黒石の食文化を語るのに外せないのが焼きそばです。戦後から同市では製麺所が増え始めたこともあり、太めの乾燥麺を茹で、醤油で炒めた「黒石やきそば」がおやつ代わりに広く食されていました。
▲当時の「黒石やきそば」を再現。具がほとんどなく、新聞紙に包んで食べるのが一般的だったという

その後、「黒石つゆやきそば」が誕生したのは昭和30(1955)年代後半ごろ。黒石市内にあった「美満寿(みます)」という小さな食堂にて、寒い日でも温かく食べられるように、黒石やきそばにそばつゆをかけて「つゆそば」として提供したのが始まりとされています(諸説あり)。

「美満寿」の閉店とともにつゆそばも消えてしまいましたが、当時の味を懐かしむ地元民たちによって「黒石つゆやきそば」として市内の飲食店でメニュー化されると、たちまち話題に。普及団体の「黒石つゆやきそばHAPPY麺恋(めごい)ジャー」が「B-1グランプリ(R)」で何度も上位入賞を果たすなど全国区の人気になりました。
▲「B-1グランプリ(R)」過去開催の様子(厚木)

2019年現在取り扱うお店は市内に約70店も存在し、黒石を代表するグルメとしてすっかり定着した黒石つゆやきそば。スープは和風だしベースが最もメジャーですが、ラーメンスープや豚骨スープ、塩つゆなどお店によって味付けは様々です。それぞれのこだわりも違うということで、今回は人気の3店に食べに出かけました!
▲市内周辺で黒石やきそばや黒石つゆやきそばを扱う店の情報を掲載した無料の「やきそば探索地図(マップ)」なるものも

間違ってスープを入れたのが始まり!? 元祖つゆやきそばの「妙光」

▲「元祖つゆやきそば」の文字が目印

弘南鉄道・黒石駅から徒歩15分ほどのところにある「お食事処 妙光(みょうこう)」は、1978(昭和53)年に創業した食堂。店主・中村弘美さんは凧・ねぷた絵師としての顔も持ち、お店の外壁や店内の天井には中村さんが制作した津軽凧がいくつも飾られています。
▲店内に飾られている津軽凧は地元の凧揚げ大会でも活躍している
▲東京・浅草で料理修行を積んだ後、地元黒石で創業した店主の中村さん

看板メニューの「元祖つゆやきそば」は、ラーメンスープを使った黒石つゆやきそばの元祖として今や幅広い世代に愛される一品。しかし中村さんは、「全くの偶然から生まれた」と話します。創業から約10年が経ったある日、ソース系の焼きそばを調理中に誤って醤油ラーメンのスープに入れてしまったことが元祖つゆやきそばの始まりなのだそう。実際に作っているところを見させていただくと、本当に焼きそばがラーメンスープの中に入っていきました…!!
▲たっぷりのキャベツやもやし、豚肉などの具材と麺を秘伝のソースで炒めて作る焼きそば
▲鶏ガラや豚バラなどからダシをとった醤油味の特製スープの中に投入する
▲ネギとたっぷりの揚げ玉をトッピングして「元祖つゆやきそば」(700円・税込)の完成!

ラーメンスープに焼きそばというインパクトに少々面食らいながらまずはスープを口に運ぶと、あっさりとした優しい味が口の中に広がります。続いて焼きそば専用の太平麺を食べてみると、醤油スープが程よく絡み、思ったより食べやすい印象。
▲モチモチした太平麺は噛みごたえよく濃厚なソースに合う

そして食べ進めていくうちに、ソースや揚げ玉が溶けてスープにコクが生まれ、甘酸っぱい味わいに変化していきます。これはレンゲを持つ手が止まらないほどクセになりそう!しょっぱさや味のクドさもなく、スープとソースが不思議なほどマッチしています。
▲最初は透き通っていたスープが、気がつくと深みのあるソース色に
▲セットでついてくる自家製の金平ごぼうと大根の漬物も嬉しい

偶然から生まれたとは思えないほどスープと焼きそばの相性が良く、野菜もボリュームたっぷりで大満足の一品。その他のメニューでは、中村さんの津軽凧への愛と酢ダコが入っていることから名付けられた「凧ラーメン」(700円・税込)もオススメです。

発祥の店の味を今も受け継ぐ名店「すずのや」

続いてご紹介するのは、中町こみせ通りの一角にある黒石やきそばの専門店「すずのや」。「美満寿」の味を知る店主・鈴木民雄さんが切り盛りしていて、昔ながらのつゆやきそばを味わうことができる人気店です。
▲中町こみせ通りの角に構える「すずのや」
▲店内の壁には、テレビや新聞など各メディアで取り上げられた記事がズラリと並ぶ
▲「くろいしつゆやきそば」(550円・税込)

「美満寿」の味を再現したいという思いでメニュー化された「くろいしつゆやきそば」は、黒石やきそばの上にネギと揚げ玉がのり、スープがかかったシンプルな盛り付け。醤油味のあっさりスープとツルツルの太平麺は相性が良く、どんどん箸が進みます。
▲鶏ガラや昆布ダシがメインの醤油スープはあっさりして飲みやすい
▲県産小麦だけを使った太平麺

オススメの食べ方は、途中でウスターソースを入れて味を調節すること。鈴木店長も「(美満寿のつゆそばを)子供の頃はウスターソースをかけて食べていた」そうで、スープの味が締まりコクが出ます。
▲ウスターソースをかけて味の変化を楽しむ

シンプルながらコクのある優しい味付けは、当時を知らない筆者もどこか昔懐かしく感じるほど。熱々のスープは体の芯まで温めてくれるので、昔からの常連客や観光客に愛されるのも納得です。
▲黒石やきそばとスープが別になり、両方の味を楽しめる「化け焼きそば」(650円・税込)も人気(写真提供:すずのや)
▲店主の鈴木さんは県外のご当地グルメイベントなどにも出店し、黒石つゆやきそばのPRに忙しい毎日を送っている

豪華なトッピングと和風スープが味わい深い「蔵よし」

「すずのや」の約50m先にある「創作料理の店 蔵よし」は、1845(弘化2)年の江戸時代後期に建てられた土蔵を改装して造られた創作料理店。こちらで提供される黒石つゆやきそばは和食店ならではの一品ということで、味比べをしてみることにしました。
▲歴史ある土蔵造りが印象的な外観
▲江戸時代の雰囲気を感じさせる店内
▲団体予約用の客室「天保の間」にある大黒柱は、江戸時代より伝わる木組み技術で造られている

「蔵よし」の「つゆ焼そば」最大の特徴はスープ。上質な本鰹節からとったダシをベースに、醤油などで味付けした和風スープはあっさりしているものの、焼そばのソースが染み込むと味わい深くなり、一度に2つの味を楽しむことができます。
▲海老天と舞茸天がトッピングされた「つゆ焼そば」(800円・税別)
▲ダシ本来の味を楽しむため、まずはかき混ぜる前にスープを飲むのがオススメ

黒石つゆやきそばのトッピングといえばネギや揚げ玉が定番ですが、海老天と舞茸天の豪華トッピングがのることも同店の特徴。和風スープとの組み合わせは、和風そばを連想させます。太平麺は独特のモチモチ感が楽しく、気がつけば虜になっていました。
▲贅沢に4つも入った海老天はプリプリで食べごたえあり
▲食べ進めていくうちに太平麺もスープに絡んでいく

「せっかく黒石に来たのだから他のグルメも一緒に味わいたい」という人にオススメなのが、つゆ焼そばセット「津軽」。海鮮から山菜まで津軽の幸を十分に楽しめる、一番人気のセットです。
▲一年中津軽の幸が味わえるつゆ焼そばセット「津軽」(1,500円・税別)。左から時計回りに「黒石つゆ焼きそば(小)」「津軽のほんのり甘い茶碗蒸し」「嶽きみの天ぷら」「海鮮お寿司 5点盛り」「蔵よし特製手作り抹茶アイス」「七戸産長芋の紫蘇漬け」
▲セットの中でも筆者オススメは「嶽きみの天ぷら」。生でも食べられるほど糖度の高いご当地ブランドのトウモロコシ「嶽きみ」は一度食べたら病みつきに(※5個入り単品の場合は500円・税別)
▲津軽地方の茶碗蒸しは、栗が入ってほんのり甘い

飲み干してしまいたくなる和風スープと贅沢なトッピングに大満足。「つゆ焼そばセット」は以前は予約が必要でしたが、好評につき予約なしで注文できるようになったため、より気軽に立ち寄れるようになりました。
▲世界中から観光客が訪れるため、メニューもすべて英語対応している
焼きそばとスープが混ざり合うと、何とも表現しがたい新しい味になるのも黒石つゆやきそばの魅力。一度食べたらクセになるご当地グルメを、ぜひ現地で味わってみてください!
下田翼

下田翼

東京生まれ、東京育ち。観光で青森県に初上陸し、人の暖かさに感動し2015年に移住。地域おこし協力隊を経て、青森の魅力を伝えるフリーランスのプランナー・ライターとして活動中。

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