ラーメン県の中でも激戦区!山形県・赤湯の個性派ラーメン3選

2019.03.16 更新

「ご当地ラーメンの宝庫」と評されるほど、地域ごとに独創的なラーメンが存在する山形県。定食屋なども含めてラーメンを提供する店が多く、ラーメン消費量(外食)日本一(平成29年総務省家計調査)に3年連続で輝いています。そんな「ラーメン県」の中でも、特に激戦区なのが南陽市。「からみそ」で有名なアノ名店をはじめ、バリエーション豊富なお店がそろっています。かつての地名にちなんで「赤湯ラーメン」という名でも親しまれる、南陽市のラーメン店をピックアップしてご紹介します。

▲「赤湯ラーメン 龍上海本店」の元祖からみそラーメン

5km圏内に50軒以上の店がひしめき合う、ラーメンの激戦区

山形県の南東部に位置する南陽市。開湯920余年の歴史をもつ小さな温泉街「赤湯温泉」や、東北の伊勢とも称される「熊野大社」があることでも知られています。この街のソウルフードともいえるのがラーメン。昔から来客時には各家庭で出前のラーメンを取ってもてなす文化があることと、温泉旅館の宿泊客が街のラーメン店に足を運んでいたという歴史から、南陽市とラーメンは切っても切り離せない深い間柄なのです。
▲南陽市のシンボル「白竜湖(はくりゅうこ)」(写真中央)と、赤湯の市街地を見渡す風景

人口10万人あたりのラーメン店舗数の全国平均は24.15軒(2017年NTTタウンページ調査)。この数字を南陽市で計算すると、人口10万人あたりでなんと約180軒にも。5km圏内に50軒以上のラーメン店がひしめき合う、ラーメンの激戦区と言えるでしょう。

山形県麺類飲食生活衛生同業組合赤湯支部長の山口昇さんに南陽市のラーメンの定義をお聞きすると、「お店によって味の違うところが南陽市のラーメンの特徴です。統一された味や定義はありません」という、意外な答えが返ってきました。
▲自身も「いもせ食堂」を経営されている山口さん

「出汁の種類や麺のタイプ、ベースの味(味噌、醤油、塩)、懐かしい味からアレンジした味まで多種多様です。自分好みのラーメンを見つける楽しさが南陽市のラーメンの定義といえるかもしれません」(山口さん)

今回ご紹介するラーメン店は3軒。「からみそラーメン」「チャーシュー麺」「塩ラーメン」と、その看板メニューも多種多様です。いずれの店も赤湯温泉の商店街に程近いところにあります。探していたラーメンが、きっと見つかりますよ。

珠玉の一杯!辛みそラーメンの元祖「赤湯ラーメン 龍上海本店」

南陽市のラーメンといえばすぐに思い浮かぶのが、「からみそ」でお馴染みの「赤湯ラーメン  龍上海(りゅうしゃんはい)本店」。「新横浜ラーメン博物館」にも直営店があり(2019年3月現在)、メディアでもたびたび紹介される有名店です。
▲赤湯温泉街の西側にある本店には、JR赤湯駅から徒歩約20分、車なら約5分、タクシーではワンメーターで行くことができます。雪が降る中でも、多くの「からみそ」ファンが訪れます

訪れたのは平日ですが、午後1時とあって店内は満席状態、順番を待つ人たちで溢れていました。並んで順番を待っていると、お店の人が注文を取りに来てくれます。駐車場は県外ナンバーの車がひっきりなしに出たり入ったり。皆さん、おいしいラーメンを食べるための待ち時間は覚悟のうえのようです。
▲赤を基調にした店内は30席用意。山形県内のラーメン店で一般的な小上がりはなく、テーブル席のみ

早速、名物の「元祖からみそラーメン」をオーダーしました!真ん中には丸く盛られた赤いからみそがのっています。
▲「元祖からみそラーメン」830円(税込)
▲最初はからみそを溶かずにスープを一口

豚のゲンコツと鶏ガラ、野菜や煮干しをバランスよく入れて6時間ほど煮込んだ出汁に、味噌を溶かしたスープは辛くなく濃厚。一口すすると出汁の風味がふわっと口の中に広がります。
▲スープに負けない存在感のあるちぢれ麺

麺はモチッとした食感が特徴の太いちぢれ麺。濃い目の味噌スープがうまく麺に絡みます。しっかりした味なのにくどくなく、味噌汁感覚で毎日食べられそう。
▲からみそは、少しずつ溶きながら好みの辛さに調整して

しばらく食べ進めた後にからみそを混ぜてみると、スープ全体に深みが増したようなおいしさに。ニンニクの効いた絶妙な辛みです。
▲チャーシューはスープの味を計算して味付けしているそう

豚バラ肉で作ったチャーシューは、やわらかくなるまでじっくりと煮込んでいます。赤身と脂身のバランスにもこだわっているそうで、ジューシーで雑味がなく、格別の美味しさです。

もちもちの太麺とコクのあるスープのせいか、だいぶ食べたはずなのに減った気がしないほどボリューム満点。出汁とからみそがうまく溶け合ったスープは、何度も口に運びたくなる美味しさでした。完食後は、かなりの満腹感です!
▲「元祖からみそラーメン」を完食したところで、3代目の佐藤元保(もとやす)さんにからみその誕生秘話をお聞きしました

「からみそのイメージが強い当店ですが、1958(昭和33)年の創業以来、こだわってきたのは麺づくり。“自家製ラーメンの店”を看板に、開店当時は普通の醤油ラーメンを提供していました。しかし、せっかく仕込んだスープが残ることも多く、うちでは毎日そのスープに味噌を入れて味噌汁代わりに飲んでいたそうです。その時、祖父(初代)の脳裏にひらめいたのが味噌を入れたスープ味のラーメンでした」(佐藤さん)

それから試行錯誤を繰り返し、からみそラーメンの原型である辛い「みそ中華」が完成したのは1960(昭和35)年のこと。今では、からみそラーメンを求めて全国からお客さんがやってきます。平日は1日300食、土・日曜は400~450食、ゴールデンウイークなどの連休時には500~600食を作るそう。

特別に厨房で「からみそラーメン」を調理している様子も見学させていただきました。
▲まずは手作り味噌をたっぷり入れた丼に、手際よくスープを注いでいきます
▲太めのちぢれ麺

麺は水分量と練りの時間にとことんこだわって作る多加水麺。時間を置くと麺の食感が変わってしまうので、毎朝4時から打っています。スープを吸い込んだ時の加減を計算し尽くして作っているので、茹で時間にも気を抜くことはありません。
▲麺の扱いも職人技。佐藤さんは後継者として、高校1年の時からラーメン作りを手伝ってきたそう
▲主役のからみそ!ニンニクや唐辛子を入れてつくるオリジナル味噌です

からみそは、スープに使う味噌をベースに、ニンニク、なんばん(唐辛子)、まろやかさを出すための油、その他10数種類の材料をバランスよく配合しています。それを丁寧に手でこねるように混ぜ合わせ、味を馴染ませるために1日置いて完成させます。
▲真ん中にからみそをのせて、あっという間に完成!

「祖父、父と繋いできた龍上海の味をしっかりと守り続けていきたいです」と佐藤さん。

「元祖からみそラーメン」はまさに「龍上海」の傑作!ただひたむきにラーメン作りに打ち込み、からみそラーメンを誕生させた初代、麺づくりにこだわり続けた二代目、先代から「ラーメン道」を受け継ぐ三代目。「龍上海」は伝統と思いをつなぐ貫禄のラーメン店でした。

チャーシューのインパクトが凄い!「いもせ食堂」

次に紹介するのは、昔ながらの味を守る「いもせ食堂」のラーメン。噂に聞く、チャーシューメンとはどんなものやら。では、さっそく行ってみることにしましょう。
▲赤湯中学校の近くにある店。黄色い暖簾が目印

引き戸を開けて中に入り、お店の人の案内で席に座ってから注文します。店内はテーブル席とカウンター席、奥の小上がり合わせて38席。お昼の提供時間が終了した後でしたが、今しがたまで来客で賑わっていた余韻が残っています。
▲2006(平成18)年に現在の場所に移転オープン

1962(昭和37)年に創業したこちらは、冒頭でお話をお聞きした山口昇さんがご夫婦で切り盛りしている、地元民から愛されてきたラーメン店です。
早速、一番人気の「チャーシューメン」をオーダーしました。
▲「チャーシューメン」950円(税込)

「はい、どうぞ!」
提供された途端、バーンとのった特大チャーシューのインパクトにビックリ!4枚のチャーシューが器からはみ出るほどに盛り付けられています。

「お客さんの驚く顔が見たくて」と話す山口さん。

どこから箸を入れていいか迷いつつ、まずはチャーシューからいただきます。
▲見よ!この肉の大きさ

チャーシューは厚みがあるのにやわらかく、ふわっと生姜の香りも。水洗いなど肉の下処理にも手を抜かないそうで、脂のしつこさがありません。チャーシュー好きな人たちにぜひ食べてほしいボリューム感とおいしさです。
▲「若い人にも満足してもらえるように」一人分の麺の量は200g。食べごたえ十分!

ようやくたどりついた麺は、加水率高めの手もみ中太麺。程よいうねりにスープがよく絡んだ、モチモチッとした食感がたまりません。
▲飽きのこない醤油味のスープ

鶏ガラがベースのスープはすっきりした味わいの中にまろやかなコクがあり、最後の一滴まで飲み干せるほどのおいしさ。懐かしい味わいの、昔ながらのスープです。歯ごたえが良く、スープの味を邪魔しないメンマも格別。それぞれの旨みが凝縮された美味しいラーメンでした。

美味しくいただいた後に、ラーメンづくりの様子も覗かせていただきました。
▲麺は両手で麺を揉み、その日に必要な分だけつくります

麺は長年の研究から導き出した、この店いちばんのこだわり。選び抜いた複数種類の最高級強力粉をブレンドして作っています。
▲チャーシューメンに使用されている、超加水のちぢれ中太麺

出汁のベースには親鶏と若鶏の2種類の鶏ガラを使い、さらに昆布、椎茸、煮干し、野菜を加えてしっかりエキスが出るまで煮込みます。昆布は、北海道釧路市昆布森から取り寄せたもの。材料に妥協はありません。
▲根元から先まで旨みが詰まった最高級の昆布を使用

“かえし”に使う薄口醤油は、隣町の醸造所製。製造元との長年の信頼関係でおいしいスープが生み出されています。
▲麺のタイプに合わせた茹で加減は、職人の目と勘で

主役のチャーシューは豚バラに生姜を加え、3時間半ほど時間をかけてじっくり煮込みます。それにしてもチャーシューのビッグなこと!厚み5mm、長さ20cmほどの大きさです。
▲肉の臭みを取るために、煮込む前に何度も手で洗います
▲丼にチャーシューを入れてから肉を炙って、さらに旨みを出しています

この店ではメンマも手作り。乾燥メンマを水から炊いて煮えたら水に戻す、この作業を3~4回繰り返した後で味付けをしています。
▲この乾燥メンマを戻すと約10倍の容量に膨れあがる

食材それぞれにここまで手間暇かけて作る理由を山口さんに尋ねると、「只々、お客さんに喜んでもらいたいだけ。自分たちができる範囲で頑張っていきます」という答えが返ってきました。「いもせ食堂」はまた行ってみたくなる、心に残る老舗のラーメン店です。

イタリアンテイストをちょい混ぜ!「麺や兼蔵」

しのぎを削る激戦区にあって、ユニークなメニューで新風を吹き込んでいるのが「麺や 兼蔵」です。
▲2016(平成28)年にオープン。赤湯地区では新しいラーメン店
▲一人でも気軽に入れる、明るい雰囲気の店内

店主の高橋謙典(けんすけ)さんは、イタリアンをメインに洋食の世界で研さんを積んできたという経歴の持ち主。「この店の隣にあるイタリアンレストラン『オステリア エスト!』を両親と一緒にやっているんですが、ラーメン好きが高じて2016(平成28)年にこの店をオープンさせました」と話します。ラーメン店の営業はお昼の時間だけ。夕方から、隣接するレストランで腕をふるう二刀流です。
▲独学で新たなラーメンに挑戦する高橋さん

バリエーション豊富なメニューの中からご紹介するのは、女性に人気の「W貝だし塩ラーメン」。オーダーから5分程度でラーメンが運ばれてきました。
▲アサリの身が入った「W貝だし塩ラーメン」700円(税込)

まずはスープを一口。貝出汁のきいた塩味のスープが細麺に絡んで食べやすく、コクがあるのにしつこさのない後味。スープと麺がお互いの風味を消し合わず、うまくバランスを取り合っているようなおいしさです。
▲塩ラーメンには細ストレート麺を使用

おいしさを左右する麺は太ちぢれ麺と細ストレート麺の2種類。スープの味によって麺を使い分けているそうです。いずれにもパスタ用のデュラム粉を配合しているのでコシがあり、もちもちの食感です。パスタを作り続けてきた高橋さんだからこその発想ですね。
▲きれいなピンク色の肉は、ローストした豚肩ロース

チャーシューは、豚肩ロースと豚バラの2種類がのっています。どちらも絶妙な火加減で調理されており、とろけるような美味しさ。それぞれの味の違いも楽しめます。

なお、丼の中央にトッピングされていたのはタマネギのみじん切り。長ねぎではなく、みじん切りしたタマネギを使っているのも考えた末のことだそうです。タマネギの甘さと風味がスープに溶け込み、和でもなく洋でもない、これまで食べたことのないような味わいになっていました。
▲こちらでも厨房を覗かせていただきました!

同店こだわりの出汁の基本は、豚の“背ガラ”とトビウオの組み合わせ。「豚の背ガラを使っている店は少ないと思います。複数の部位の骨で試行錯誤した結果たどりついたのが背ガラです」と、高橋さんは試行錯誤の日々を振り返ります。背ガラを使うことでスープに深みが増し、またトビウオの風味とも相性がよいことから、クセがなく、まろやかな味に仕上がるのだそう。
▲透き通るようなきれいなスープ

ここからが「W貝だし塩ラーメン」の真骨頂。アサリと、蛤に似た味のホンビノス貝の煮汁に、シチリア産の塩を加えた特製の塩ダレと、ベースの出汁を混ぜ合わせて麺を入れます。その上にアサリとタマネギのみじん切りをたっぷりのせて。
▲みじん切りしたタマネギとアサリの珍しい組み合わせ

チャーシュー作りもこの店ならでは。地元産の豚バラは、注文を受けた後に炙って香ばしさを出しています。一方の豚肩ロースは、隣接するイタリアンレストランのピザ窯で低温調理しているというこだわりよう。
▲ローストポーク(写真左)と炙り豚バラ肉

他にも「飛魚ニボつけ麺」(税込830円)や「特製豚骨ラーメン」(税込1,100円)など、ここでしか食べられないラーメンも人気です。
▲奥さんの麻衣さんと二人三脚で

「南陽に今までなかった新しい味を追及し続けているので、ぜひ食べに来てください」。パスタ用の粉で作る麺、ピザ窯で焼くローストポークなど、イタリアンの手法をラーメン作りに取り入れ、独自の味を追求する高橋さん。おいしいラーメン作りへの挑戦は、これからも続きます。
南陽市では、地域おこしのために実施した市内の中高生向けアンケートをきっかけに、2017(平成29)年に「ラーメン課 R&Rプロジェクト」が発足。市民と若手市職員が「ラーメン課員」として、ラーメンをPRするためのプロジェクトを町全体で進めています。ラーメンを愛する人たちが住む街で、オリジナリティあふれるラーメンを楽しんでみませんか?
▲各店に設置されたオレンジ色ののぼりが「南陽市のラーメン」の目印

撮影:佐藤友美
佐藤昌子

佐藤昌子

エディター&ライター。オフィス マウマウワン代表。山形県内を中心にタウン誌、フリーペーパーや企業広報誌等ジャンル問わず、印刷物の企画、取材・編集の仕事を手掛ける傍ら、モデルハウスのディスプレイやリメイク等『気持ちの良い暮らし方』も提案している。

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