湯の町「かみのやま温泉」界隈をぶらり。食と温泉、至福のおもてなしを体感!

2019.04.16 更新

山形市の南部に隣接し、約560年前に発見された「かみのやま温泉」を有する上山市。江戸時代、上山城の城下町として、さらに羽州(うしゅう)街道の宿場町として栄えたことでも知られています。街中には当時の面影を残す武家屋敷や古民家が立ち並び、見どころが盛りだくさん。城下町を散策したり、名物のこんにゃく料理で腹ごしらえしたり、ちょっとぜいたくに夜の日帰り温泉も…。城下町・宿場町・温泉町という3つの顔を兼ね揃えた全国的にも珍しい街で、のんびりと日帰り観光を楽しんできました。

湯の町「かみのやま温泉」の起こり

上山市までのアクセスは、東京から山形新幹線で約2時間30分。車を利用すれば山形市内から約20分とアクセスも良く、日帰りで観光が楽しめるのもこの街の良いところです。

かみのやま温泉の開湯は1458(長禄2)年、室町時代に遡ります。肥前(現在の佐賀県)出身の僧侶・月秀(げっしゅう)が、旅の途中で立ち寄ったこの地で、傷ついた脛(すね)を沼地で癒している鶴を発見。そこに温泉が湧き出ていたことから、月秀が村人と協力して開拓したのが始まりとされています。そのことから、別名「鶴脛(つるはぎ)の湯」とも呼ばれているとか。
▲温泉街には、鶴が羽を休めたとされる「鶴の休石(やすみいし)」があります

温泉街は、最も歴史の古い湯町地区や、城下町の面影が残る新湯地区、閑静な高台にある葉山地区など、市内の6地区に点在。県内の日本海側にある「湯の浜温泉」、福島県にある「東山温泉」とともに「奥州三楽郷」の一つとしても数えられています。

再建された「羽州の名城」

今回はJRかみのやま温泉駅から徒歩15分ほどのところにある「上山城」をスタートし、近くの武家屋敷を巡りながら散策を楽しみます。

江戸時代、この地に置かれていた上山藩は、山形の最上藩と米沢の伊達藩の間で重要な役割を担っていました。中心部にはかつて「羽州の名城」と称されたお城があり、その城をもとに、城郭風建築の郷土資料館として1982(昭和57)年に再建されたものが現在の上山城です。
▲3層の城郭は撮影の名所。上山市のシンボルとなっており、桜の時季(例年4月中~下旬)には多くの人が訪れます

早速、石段をのぼり、お城の中へ。照明を落とした館内には厳かな空気が漂い、入館した瞬間に背筋の伸びる思いがします。

受付で入館料(大人410円・税込)を支払い、観光ボランティアガイドに案内していただくことにしました。ボランティアガイドが城内にいれば予約なしでお願いすることもできますが、街歩きガイドもあわせて依頼する場合は5日前までに電話予約が必要です(上山市観光物産協会まで・予約は1人~)。ガイド料金は無料、ガイド時間は9時~17時の間で対応してくれます(年末年始を除く)。
▲山伏の人形がお出迎え。臨場感のある館内

館内では上山市の自然や温泉郷の成り立ち、町の歴史が映像や写真で紹介されています。
▲貴重な資料について、ガイドの菊地和人(かずひと)さんから説明を受けました

「蔵王の絶景を眺めに行きましょう」。菊地さんに案内され、4階にある展望台へ。エレベーターがあるので年配の方でも無理なく上ることができます。

展望台からは正面に蔵王連峰の絶景を、視線を落とすと城下町の名残を残す街並みを眺めることができました!
▲天守閣の高さは32m。展望台からの眺めも最高!

説明を聞きながら、ゆっくり館内を一周した場合の所要時間は1時間ほど。1階には喫茶コーナーやミュージアムグッズを販売する小さなスペースがあるので、ひと休みすることもできます。

また、城門前の広場には「かかし茶屋」があり、お茶を飲んだり、お土産を購入することもできますよ。
▲敷地内にはなんと足湯も(営業時間6:00~22:00)

温泉街には「足湯」が5カ所あり、無料で足湯めぐりが楽しめます。その一つ、上山城の敷地内にある足湯で疲れを癒してから出かけることに。かみのやま温泉の散策にはタオルが必携ですね。
▲お城だけでなく、上山市内や蔵王連峰も一望できます

城下町の名残「武家屋敷」

上山市の歴史を学んだところで、菊地さんに同行をお願いして武家屋敷のほうへ行ってみることにしました。上山城を中心に一周できるコースの散策です。

散策ルートの途中には公衆浴場が。温泉街には公衆浴場が5カ所もあり、なんと一律150円(洗髪料は別途100円。ともに税込)という価格で入浴できます。「足湯めぐり」だけでなく、「公衆浴場めぐり」が楽しめるのもかみのやま温泉のすごさ!
▲1629(寛永6)年に紫衣(しえ)事件によって京都から上山に配流された沢庵禅師も入浴したと伝えられる「下大湯」
▲要所要所に道標があるので迷うことなく歩けます

「仲丁通り」と呼ばれるこの辺りには、4軒の武家屋敷が現存しています。いずれも300年以上前に建てられたもので、茅葺屋根、鉤形(かぎがた)の曲屋(まがりや)、武家中門造りの様式を採用。

屋内の見学ができる屋敷、庭園だけ見学できる屋敷、現在も子孫が住んでいる屋敷などそれぞれですが、当時の生活を感じさせる趣深い武家屋敷群です。
▲側用人や惣領席(上山藩の管理職に相当する職務)などを任ぜられた武士の住居だった「三輪家」は屋内見学が可能です(9:00~16:45/大人210円、学生160円、小人50円・すべて税込/水曜休館)(写真提供: 上山市観光物産協会)
▲キリスト教禁止の「踏み絵」などを担当する宗旨(しゅうし)奉行だった「旧曽我部家」の屋敷は、屋内だけでなく庭園も見学できます(9:00~16:45、入館料無料、水曜休館)(写真提供: 上山市観光物産協会)

時間がゆっくりと流れる武家屋敷のある界隈。黒塀に囲まれた屋敷を眺め、小路を歩きながら往時の面影を感じてみては。
お城をスタートし、ゴールするまで約1時間かけて散策。程良い疲労感と充実感に満たされながら、菊地さんとお別れしました。

こんにゃく三昧、ヘルシーな「こんにゃく箱膳」を味わう

散策してお腹がすいたので、市街地から15分ほど車を走らせ、地元名物を食べに行くことに。こんにゃく料理にこだわり続ける「楢下宿(ならげしゅく) 丹野こんにゃく」です。
▲重厚な門構えの入口

こんにゃくの販売店として、昭和34(1959)年に創業したこちらの店。売店と食事処から成る「こんにゃく番所」と、カフェ「日々蒟蒻(ひびこんにゃく)」が併設されており、「常識を覆すこんにゃく料理を食べられる」と噂を聞きつけたこんにゃくファンが全国各地から訪れます。
▲立ち寄り予約をしている団体客には、こんにゃくの「花束」でお出迎え
▲大鍋で煮る玉こんにゃくは味がしみて旨い!

併設された食事処「こんにゃく番所」に足を運び、2019年3月からの新メニュー「こんにゃく箱膳」を注文。出てきたのは、こんにゃくでつくった驚きの料理の数々。どれがこんにゃくでできているのか楽しみながら食べることができます。
▲サーモン?牛肉?ふかひれ?いえいえ、そのほとんどが蒟蒻でできているヘルシーな「こんにゃく箱膳」(2,800円・税別)

「ワクワクしながら身体に良いものを味わっていただきたい」と話すのは、社長の丹野真敬(まさひろ)さん。

「こんにゃく箱膳」は前日までの予約が必要です(2名~受付)。個室で食べることができるのもうれしいですね。他に、予約なしで食べられる「こんにゃく懐石」(1,200~3,200円・税別)もあります。罪悪感なく(笑)、たっぷり食べられるこんにゃく料理にお腹も心も満たされました!
▲おみやげにも人気の「こんにゃく蒸しパン」(150円・税別)

売店では、こんにゃくが入ったフワフワの蒸しパンやあんみつ、みそ田楽が購入でき、店内で食べることも可能ですよ。
▲「みそ田楽」は1本100円、5本で360円(ともに税別)
食後は、こんにゃくスイーツが食べられるカフェ「日々蒟蒻」に立ち寄るのもおすすめ。ケーキやジュレなど、限りなく本物に近い食感のこんにゃくスイーツの数々に驚きの連続です。
▲「こんにゃくぱいケーキ」が美味しい、レディースセット(ドリンク付)800円(税別)

「月の池」で楽しむ「夜のお日帰りコース」

かみのやま温泉駅から徒歩で15分ほどのところにある、1979(昭和54)年創業の「花明りの宿 月の池」は女子旅におすすめの旅館です。昭和な佇まいを感じさせる街並みの中心部にあり、道路を挟んだ向かいには記事の冒頭にご紹介した「鶴の休石」があります。
▲和風づくりの落ち着いた宿

「泊まれる余裕はないけれど、豪華な夕食をいただきながら、ゆっくり温泉に浸かりたい」。こちらの宿には、そんな希望を叶えてくれる、とっておきのプラン「夜のお日帰りコース」(税別8,000円・入湯税別/チェックイン16時、チェックアウト21時/2名より受付/土・日曜も利用可能)があるんです。
▲正面奥に飾られている鮮やかな屏風が印象的なロビー

スタッフの方に出迎えていただき、玉砂利を敷き詰めた渡り板を通って中に入ると、和モダンなロビーが視界に飛び込んできます。やわらかな明かりと、心地良い音楽が疲れを癒してくれます。
▲「いつでもカフェ」では、無料のコーヒーやアロマティーと季節のお菓子をいただきながらチェックインの手続き

客室は利用できないので、入浴や食事以外の時間はロビーで過ごします。※前日までに予約すれば、追加料金一室5,000円(税別)で控室を借りることもできます。

デザインや柄が異なるソファやアンティークな調度品など、女性の心をつかむ趣向やこだわりの工夫が随所に。これから始まる非日常の時間にワクワクが止まりません。
▲「紅茶やアロマティーもどうぞ。17時~19時の間は、こちらのカフェで県産ワインも無料でご用意しています」。細やかな気遣いで応対してくれる女将の工藤真理さん

可愛らしさとサプライズが詰まった個性的な温泉

夕食の前に、温泉でリラックスすることにしました。女将さんが渡してくれたのは「湯カゴ」。可愛いカゴバックにテンションが上がります。ちょっとしたところに、おもてなしのセンスを感じますね。
▲カゴの中にはバスタオルとフェイスタオルが入っています。つまり、「夜のお日帰りコース」は手ぶらでも大丈夫!

「うわっ、可愛い!」
脱衣室の引き戸を開けるやいなや、真っ白な空間が。白と赤の樹木をポイントに装飾されたスタイリッシュな脱衣室に感動!女性はホワイト、男性はブラックで統一されています。それほど広くありませんが、その分プライベート感満載です。
▲明るく清潔感あふれる女性用の脱衣室
▲お風呂上りにうれしい、柑橘系のフルーツが入ったウォーター。常温と氷入りと2種類のビタミンウォーターが用意されています
▲形の違う脱衣カゴが並び、雑貨屋さんの棚のよう。カゴ選びから迷ってしまいそうです

お風呂は、男女とも大浴場(内湯)1つと露天風呂が2つ。泉質は塩化物硫酸塩で、源泉の温度は62~69度と高めですが、風呂の温泉は42度程度まで冷ましています。

評判の高い露天風呂に行く前に内風呂から入ってみることにしました。温泉は無色透明でさらりとした手触り。肌に優しい湯ざわりに、つい長湯をしてしまいそうなほど。硫黄泉のような匂いはありません。
▲レトロな雰囲気が残る大浴場

内風呂であたたまった後は露天風呂へ。露天風呂はかけ流しの「檜露天風呂」と、加水した「笹舟」の2種類があります。泉質は大浴場の湯と同じです。
▲「檜露天風呂」には、夕方になると花明りが灯ります
▲透明な湯の中にゆらゆらと浮かぶ明りに身も心も癒されます(写真提供: 花明りの宿 月の池)

そして、なんと「檜露天風呂」では、枡酒を板にのせ、入浴しながら日本酒を味わうことができるんです(利用時間16:00~20:00無料)。日本酒好きにはたまりませんね。
▲くれぐれも飲み過ぎにはご注意を!

「檜露天風呂」の奥に、翡翠色したお風呂を見つけました。「笹舟」の形をした信楽焼の笹風呂は、女性や子どもに大人気だそう。夜には明りが醸し出す幻想的な雰囲気を楽しむことができます。「笹舟」は女性風呂には2つ、男性風呂には1つあります。
▲形のインパクトがすごい!ゆったりと足を伸ばせる大きさなので、独り占めしてゆっくりと入ってみたくなりますね(写真提供: 花明りの宿 月の池)

脱衣室にもどり、ビタミンウォーターをいただきます。体全体のぽかぽかが持続して、肌もしっとりしている気がします。
洗練された雰囲気の脱衣室、個性豊かな風呂など、こちらの浴場はため息がこぼれるほど素敵な空間でした。

宿泊客と同じ内容の、発想豊かな和懐石を味わう

入浴の後は、2階の「Hanaダイニング」で夕食。「夜のお日帰りコース」は、宿泊客と同じ「月の池 花懐石」をフルコースでいただくことができます。前菜からデザートまで全7種類。
▲花々に囲まれたレストランで、地元の食材を取り入れた発想豊かな料理を召し上がれ!(写真提供: 花明りの宿 月の池)
▲野菜など地元の食材をたっぷり使った前菜は、どれから食べるか迷ってしまいます(写真提供: 花明りの宿 月の池)
▲米沢牛のステーキか牛肉のワイン煮から選べるメイン料理(写真提供: 花明りの宿 月の池)
▲一つ一つの料理におもてなしの心があふれています(写真提供: 花明りの宿 月の池)

「『この食材とこの食材を組み合わせたら、こういう味になる』という、食の発見を楽しんでください」と女将さん。ご紹介した料理はほんの一部ですが、前菜からデザートまで心のこもった料理を堪能できますよ。

今回は日帰りコースをご紹介しましたが、もちろん「月の池」では宿泊プランも充実しています。全18室のうち3室は、1年中バラの花が浮かぶ露天風呂付き。
▲バラは1年中、生産者から仕入れています(写真提供: 花明りの宿 月の池)
▲赤いソファが印象的な入口(写真提供: 花明りの宿 月の池)

「疲れた時には心休めにいらしてください」と女将さん。風情たっぷりな郷土の懐石料理と湯のぬくもり、花と明りをコンセプトにした幻想的な館内で非日常のひとときを過ごしてみませんか?
かみのやま温泉は歴史と温泉情緒に溢れ、人の優しさに触れられる素敵な町です。カラダとココロを癒しに、日帰りの旅に出かけてみませんか?

撮影:佐藤友美
佐藤昌子

佐藤昌子

エディター&ライター。山形県知事認可法人アトリエ・ミューズ企業組合専務理事。山形県内を中心にタウン誌、フリーペーパーや企業広報誌等ジャンル問わず、印刷物の企画、取材・編集の仕事を手掛ける傍ら、モデルハウスのディスプレイやリメイク等『気持ちの良い暮らし方』も提案している。

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