トロトロてびちのマスタード添え。宮古島の老舗「島おでん たから」へ

2015.11.11 更新

宮古島の繁華街、「イーザト」の入り口に佇む「島おでん たから」は昭和32(1957)年創業の老舗。トロトロのてびちにマスタードを添えていただく島おでんに、解毒作用があるというイカ墨料理。地元の島人に愛される名店を訪れた。

▲宮古島の中心地、夜の西里(にしざと)大通り

100軒以上の飲食店が連なるイーザトの名店へ

約5万人が暮らす宮古島の中心地には「イーザト」と呼ばれる飲み屋街がある。日が沈んだ後の島を楽しむため、イーザトへ足を運んだ。

午後7時、宮古島の中心地、平良(ひらら)では、西里大通りに軒を連ねる酒場やお土産店に灯りがともり、民謡酒場からは島唄が聞こえてくる。そこからイーザトエリアの路地に入ったところに「島おでん たから」はある。
▲イーザトの入り口付近にある「島おでん たから」

創業は昭和32年。60年近く宮古島で愛されてきた老舗の暖簾をくぐると、開店から間もない時間帯に、テーブル席はすでに満席となっていた。

運良くカウンターの席に座ると、名物の島おでんが美味しそうな湯気をたちのぼらせていた。

地元の島人に愛される島おでん

▲島おでんたからのおばぁこと、創業者の下地シゲさん

「おばぁ、おでん二つお願い」。注文を通す店員さんの声を受け、おばぁはひとつかみの青菜をおでん出汁のプールにくぐらせ、決まった具材をお皿によそっていく。次々と運ばれていく「おでんの盛り合わせ」を、こちらにもと急いで注文。
▲カウンター席は島おでんの湯気まで楽しめる特等席

盛り合わせに入る具材は、てびち(豚足)、玉子、厚揚げ、大根、かまぼこなど。長時間煮込まれたトロトロのてびちを口に運ぶと、鶏ガラ、昆布、カツオのダシがふんわり香る。その優しい味は、この島で愛され続けるおばぁの味である。ちなみにおでんに添えるのはカラシではなくマスタード。意外と思いきや付けてみて納得の美味しさだった。
▲おでんの盛り合わせ(1,000円・税込)

メニュー表を見ると、沖縄らしい「チャンプルー」や「スクガラス豆腐」と共に、「うな重」や「月見うどん」といったメニューも並ぶ。「昔はにぎり(寿司)もやってたのよ」とおばぁ。なんでも、おばぁの旦那さんが若い頃に大阪で学んだ味をお店で提供していたらしい。

たからが創業した昭和32年は、沖縄がまだ戦後の米軍統治下にあった頃。おばぁは「砂糖とか酢なんかは困ってね」と、当時のことも教えてくれた。
▲ お酒のアテにぴったりのゴーヤキムチ奴(350円・税込)

いくつかの肴を堪能するそば、カウンターのすみでピンクの電話がまだまだ現役と言わんばかりに鳴ると、「今日は予約でいっぱいで……」とお断りの声が聞こえてきた。

宮古島の名物「イカ墨」料理には解毒作用も?

▲店内ではピンクの電話が現役で活躍中

せっかくなので、少しがっつりしたものが食べたいと店員さんにオススメを尋ねると、「タコライスも美味しいですけど、やっぱりスミ汁ですね。ごはんにかけて食べたら超サイコーなんです!」とにっこり。

オススメされるがままスミ汁こと「イカの墨汁」を注文すると、墨色のスープが運ばれてきた。
▲イカの墨汁(1,000円・税込)

具材はイカゲソにしろ菜など。まずはスープを一口。イカ墨のコクとまろやかさが絶品で、半分味わったあとは、ごはんにかけてさらに美味しくいただいた。

イカ墨を使った料理は宮古島の名物でもあるらしく、たからには「牛すじのイカ墨炒め」「イカゲソの墨炒め」といったメニューもある。「イカ墨には腸をきれいにする作用があるのよ。悪いものをみんな流してくれるからね」とおばぁ。島では産後の女性がスミ汁を飲む習慣もあるそうだ。
▲イカの墨汁をごはんにかけていただくと絶品!

メニュー表をよく見ると「イーザトへの出前も承ります」との文字がある。スナックやバーが軒を連ねるイーザトは夜更けこそにぎわうエリア。それだけに23時以降は、スナックへの出前も増えるという。
▲23時以降はイーザトエリアへの出前もにぎわう

それにしてもイーザトはなぜ「イーザト」と言うのかと思っていると、カウンターのお隣になった常連さんが「島では西を『いり』、東を『あがり』と呼ぶ。イーザトは『西里』のことだ」とご教授くださった。

常連さんは「ここはなんでも美味いよ」と一言。その言葉通り、はずれのない老舗の味を堪能することができた。
▲温かさと歴史を感じる「たから」の文字

店の外に出たところで、ほろ酔いのおじさんとすれ違いさまぶつかりそうになる。おじさんは目が合うなり「宮古ンチューだから大丈夫~」とにっこり。この場所はイーザトの入り口だが、ここからさらに一歩、踏み込んでみたくなった。
山野かもめ

山野かもめ

文筆家。地域をめぐりながら紀行文を執筆。得意な分野はグルメや伝統芸能など。自然や健康好きだが運動音痴。

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