金沢は知る人ぞ知るうどんの街。主計町茶屋街近くの「福わ家」でいただく絶品うどんと釜ごはん

2019.05.04 更新

金沢の食といえば、のどぐろやズワイガニなど海の幸を思い浮かべる人が多いはず。しかし、実はうどんも有名なのです。今回は「主計町(かずえまち)茶屋街」から「女川」といわれる浅野川沿いを散歩し、「饂飩処釜ごはん 福わ家(ふくわうち)」(以下、福わ家)でちょっと贅沢な饂飩(うどん)鍋と釜ごはんをいただきました。

そぞろ歩きたい風情のある主計町茶屋街

やってきたのは金沢駅から車で15分ほどの場所にある「主計街茶屋街」。「ひがし茶屋街」「にし茶屋街」に並ぶ三大茶屋街の一つです。石川県を流れる川のなかでも「女川」と呼ばれる穏やかな浅野川沿いは、加賀藩士の富田主計(とだかずえ)の屋敷があったことから、その名がつきました。
浅野川大橋の手前の川沿い一帯は、風情のある料亭やお茶屋が立ち並び、いまでも芸妓さんが歩いている姿を見ることができます。
▲着物姿で散策している観光客も
▲路地裏も雰囲気があります

地元の人に人気の饂飩鍋と釜ごはんのお店

主計町茶屋街から穏やかな浅野川沿いを南にのんびり歩いていると、7分ほどで「小橋(こばし)」という橋に到着。そこから左に曲がると、大きなお屋敷のような店構えの「福わ家」が見えてきました。このお店、地元の人が足繁く通う人気の饂飩鍋と釜ごはんのお店なのです。
▲古民家に大きな「福」の字が目印
▲壁には何だかにくめない感じの鬼が

階段を登り、入口に到着しました。扉はのれんの横にある紐を引くと、するする~っと開くシステム。遊び心があって楽しいです。
店内はテーブル席や座敷席、5~8名用の個室など、さまざまなタイプの席があり、珪藻土でできた七輪がセットされています。どうやらこの七輪でうどんを煮込むよう。
▲和風の落ち着いた食事処は半個室にもなります

メニューは肉や魚、野菜などさまざまな種類の饂飩鍋と釜ごはんがラインナップ。秋は秋刀魚、冬は香箱ガニなど旬の食材を取り入れた季節メニューも豊富です。今回注文したのは、一番人気の「ぎゅう牛饂飩鍋・今盛り」。

「福わ家」の饂飩鍋は「今盛り」と「昔盛り」があり、うどんの量が異なるそう。今盛りは標準の量、昔盛りはうどん2玉分になります。釜ごはんは春先に人気の「桜鯛の釜ごはん」を注文しました。

「福わ家」の料理は、“一式”と呼ばれるセットで提供されます。饂飩鍋や釜ごはんを注文すると、お抹茶と野菜の砂糖漬け菓子から始まり、メインの料理、デザートまで味わえるようになっているのです。まるでコース料理のよう……。
▲まずはお抹茶でほっこり

コシのあるうどんとコクのある和牛の旨みが絶品の饂飩鍋

やさしい甘さの野菜菓子とすっきりとしたお抹茶を味わっていると、メインの饂飩鍋や香の物が運ばれてきました。
▲「ぎゅう牛饂飩鍋一式」(お抹茶、野菜菓子、おじや、香の物、デザートがつき「今盛り」税別2,800円、「昔盛り」税別3,100円)

太いうどんの上には筍、椎茸、セリ、えのき等の野菜と、大きな和牛がドーンと乗っています。目の前の七輪の上に鍋が乗せられると、ここからじっくり3分ほどかけて煮込んでいきます。
▲立派な和牛!きめ細かいサシが入っています

煮立っても途中で火は消さないのがポイント。湯気が立つとともに出汁の香りが漂ってきました。そろそろ食べごろでしょうか。
▲お、いい感じ!

出汁はほんのり甘辛い醤油ベース。和牛の旨みを引き立てるやさしい味で、あっさりとしたすき焼きのようです。野菜やうどんに出汁がからまり、するする~っと胃のなかに入っていきます。
▲うどんは太くて煮崩れしにくく、最後までコシがあります

うどんを食べ終わったタイミングで、小さな桶が登場。パカッと開けると、なんと俵形のおにぎりが!
こちらのおにぎりは、鍋に入れておじやにして食べます。
うどんからおじやへと2度楽しめる饂飩鍋。絶品です!

出汁の香りが漂う季節感あふれた釜ごはん

饂飩鍋と同じく、釜ごはんも到着!生米から厨房で炊き、蒸し終わる段階で客席に運ばれます。
▲「桜鯛の釜ごはん」(お抹茶、野菜菓子、味噌汁、香の物、デザートがついて税別2,800円)

味噌汁はお鍋に入って登場!2~3回おかわりできそうな量です。中身は日によって替わり、この日は鶏団子となめこ、豆腐、ぎばさ(海藻の一種、別名アカモク)が入った酒粕の味噌汁でした。
▲ぎばさを味噌汁のなかに入れると、ほんのり緑に色づきます

釜ごはんもいただきましょう!蓋を開ける前からすでにいい香りが漂っています。
▲しゃもじを入れるたびにふわ~っと漂うごま油の香りにノックアウト寸前

ふっくら艶やかなごはんに皮目の香ばしさも感じられる鯛の旨み、なんともいえない上品な味に、お箸が止まりません。
▲釜ご飯も2~3杯分楽しめます

うどんは大衆に欠かせない味だった

「福わ家」は、昭和5(1930)年創業の老舗うどん店「小橋お多福」の姉妹店。創業者の齊田甚太郎(さいだじんたろう)さんは「夜泣き車」という屋台引きから商売をスタートさせました。
▲戦後、齊田さんは日本調理師会に名を連ね、金沢の食文化に貢献したそう

昭和30(1955)年代から40(1965)年代後半にかけた高度経済成長時代、金沢の外食産業のなかで、うどん屋は洋食、寿司屋と並び、大衆食堂の花形的な存在になりました。車が普及するなか、「小橋お多福」はいち早く駐車場を購入。当時のうどんの価格は一杯60~80円だったのに対して、駐車場の価格は1台200万円だったそう。桁が違います……。

「そこで、うどんに付加価値をつけようと、お抹茶とお菓子からはじまり、ゆがきたてのうどんとおじやで〆る、『福わ家』が誕生したんです」と教えてくださったのは、三代目の齊田和代さん。

お店で出すものはできるだけ新鮮で身体に良い食材を使いたいと、肉や魚、米、味噌は県内近隣のものが中心。野菜も信頼できる農家さんから仕入れたり、自分たちで見て選んだものを使っています。
▲「たまに私たちも泥だらけになって野菜をとりに行くんですよ~」と齊田さん

最後は饂飩鍋と釜ごはんのデザートが到着。こちらもすべて手づくりで毎日変わります。
▲きなこをまとったみるく餅と寒天
▲こちらはぜんざい。小豆も時間をかけてコトコト炊いています
▲桜の形をした最中をのせていただきます

食べる人のことを思い、丁寧につくられた料理の数々。味はもちろん、お店の方の接客や店内のしつらえも洗練されていて、とても心地よく過ごせる空間でした。
▲店内のお花も毎日齊田さんが生けています

常に工夫を凝らしうどん屋のイメージを脱却していった「福わ家」。移り変わる季節ごとに何度も訪れたくなるお店です。
▲「またぜひ来てくださいね」と最後まで見送ってくださいました
石原藍

石原藍

ローカルライター。 大阪、東京、名古屋と都市部での暮らしを経て、現在は縁もゆかりもない「福井」での生活を満喫中。「興味のあることは何でもやり、面白そうな人にはどこにでも会いに行く」をモットーに、自然にやさしく、心地よい生き方、働き方を模索しています。趣味はキャンプと切り絵と古民家観察。

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