おもてなしのこころが光る「勝沼醸造」のワイナリーツアー。甲州ワインとじっくり向き合う2時間

2015.10.26

「勝沼醸造」は、昭和12(1937)年の創業以来、ぶどう栽培からワイン醸造までを一貫して行う山梨のワイナリーです。ワイナリーツアーでは、日本のワイナリーで唯一所有しているグラスギャラリー内で甲州ワインの歴史を学び、自社のぶどう畑見学やテイスティングも楽しめます。しっとりと落ち着いた空間で、2時間たっぷりと甲州ワインの魅力に浸ってきました。

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▲ワイン色の看板が目印
「勝沼醸造」のワイナリーツアーは、「スタッフコース」と「テイスティングコース」の2つ。「スタッフコース」は、専門スタッフから甲州ワインの歴史や栽培について学んだのち、ぶどう畑見学やテイスティングを行えるコース。「テイスティングコース」は、6種類のワインテイスティングを楽しめるコースです。今回は、「スタッフコース」に参加しました。
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▲「勝沼醸造」の母屋。築140年の趣ある日本家屋
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▲入口を入るとテイスティングカウンターがあり、奥にはテラスもある

ちょっぴり本格的なワイン講座に、すっかりワイン通気分

まずは、2階のグラスギャラリーで、甲州ぶどうの栽培や歴史について学びます。
このグラスギャラリーは、代表の有賀雄二さんが、カリフォルニアのワイナリーを訪れたときに、お客さんを迎える施設が充実していることに感動し、「勝沼醸造」を訪れる人がゆっくり時間を過ごせるようにとつくったそうです。

キラキラと輝くワイングラスに囲まれながらワインについて学んでいると、なんだかワイン通になった気分に。

ワインと出会って31年というスタッフの志村聡さんは、参加者のどんな質問にもわかりやすくこたえてくれるので、ワイン初心者でも緊張することはありません。

「甲州ワインについてどんなことが知りたいかは、一人一人ちがいます。リクエストをふまえて進めていきますので、どんなことでもお気軽にご質問ください」と、志村さん。
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▲志村聡さん。話が盛り上がって、度々脱線する場面も(笑)


志村さんが、1冊の写真集を見せてくれました。そこには、季節の移り変わりとともに表情を変える甲州の風景が広がっていました。

「この美しい風景を後世に残すのも、ぶどうづくりの大切な役目です。ぶどうの歴史は、約1,300年。この土地だからこそワインがつくれるという恩恵を守っていきたいです」
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▲資料をまじえての説明でとてもわかりやすい
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▲はじめちょっぴり緊張していたものの、アットホームな空間に自然とリラックスできた

グラスギャラリーには、ワイングラスとデキャンタ、ワインセーバーなどが展示されています。すべて、250年以上の歴史を誇るオーストリアの名門ブランド「リーデル社」のガラス製品です。
ワインの個性を最大限引き出すために、ブドウ品種ごとに理想的な形状を設計したリーデル社のグラス。36種も集まっているのは日本では数少ないので、お見逃しなく。
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▲グラスギャラリー
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▲リーデル社の社長が、勝沼醸造の「甲州」にふさわしいと選んだのが、ソムリエシリーズの33番「ロワール」

グラスギャラリーでお話を聞いたあとは、1階の貯蔵庫へ。香ばしい樽の香りと、熟成中のワインの香りがふわりと漂ってきました。
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▲1階の貯蔵庫
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▲樽には、産地、樽の素材となるオーク(ナラの木)を伐採した森の名前、樽の焼き具合などが表記されている

勝沼の風景を楽しみながら、ぶどう畑を見学

つづいて、徒歩2分ほどのところにある自社のぶどう畑へ移動します。畑に向かう途中にある橋の上からは、南西に広がる甲府盆地を見渡すことができました。

「標高が高く、斜面が広がっている地形が見えますよね。この地形だからこそ、十分な日照時間があり、水はけのいい土壌が生まれるのです」
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▲のんびりと畑へ移動

畑に足を踏み入れると、地面がふかふかしていて、とってもやわらか。そのわけは意外にも、「何もしていないから」とのこと。
余分な肥料は、土が水分を多くとりこみ、粘土質となって土がかたくなってしまう。だからあえて何もせず、その分こまめに手入れをして未然に木の病気を防いでいるそうです。

収穫目前のぶどうを1粒いただくと、甘みがぎゅーっと濃縮され、濃厚!ふだん食べているぶどうよりも小さくて小房ですが、この大きさこそワインのためにつくられたぶどうの特徴です。

「糖度がアルコールにかわるので、糖度が濃縮している小粒・小房のぶどうのほうが、濃いワインができるんですよ」
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▲垣根栽培で育ったぶどう。1本1本の木の間隔が狭いので、実るぶどうは少ないが、甘みが強く、味の濃いぶどうができる
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▲志村さんが何度も口にしていたのが「良いワインは良いぶどうから」という理念。
勝沼から世界に通じる品質を追求している
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▲ワインになる前のぶどうを味わえるのはワイナリーツアーならでは
※時期によって試食ができない場合もあります

進化しつづけるおいしさの裏に、チャレンジ精神あり

「勝沼醸造」は、垣根栽培と棚栽培が主流ですが、一文字短梢仕立て(いちもんじたんしょうしたて)という栽培方法にチャレンジ中です。
それは、1本の木の枝を一方向にだけ伸ばし、その枝にぶどうを実らす栽培法で、枝を放射状に伸ばすよりもぶどうの数が少ない分、生産性が高く、品質の高いぶどうができるそう。
5年前に挑戦し、今年やっとワインづくりの品質に合格するぶどうが実ったそうです。

「わたしたちは、甲州ワインの追求、地位の確立を目指しています。10年、20年とやってみないとわからないことも多いですが、チャレンジをつづけることで、よりおいしいぶどうができる。根気強く追求していきたいと思っています」
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▲甲州ぶどう。磨りガラスのような質感のある輝きにうっとり
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▲一文字短梢仕立て。右側の1本の木から伸びた枝を、一方向へまっすぐに伸ばしていく

どんな料理に合うかな?五感を研ぎ澄ますテイスティングタイム

畑見学のあとは、ツアープログラムの最後のお楽しみ、テイスティングタイムです。テイスティングルームに入ると、テーブルの上に一人1セットずつ、ワイングラスが並べられていました。
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▲テイスティングセット。グラスが置かれているテイスティングシートには自分の名前と日付がプリントされていて、おもてなしのこころに感動。記念に持って帰ることができる

テイスティングってどうやるの?……とドキドキしていると、志村さんが、テイスティングの進め方を1から教えてくれ、ほっとひと安心。

テイスティングのポイントは、「色・香り・味わい」の3つ。
2種類のワインを注いだグラスを傾けて色の違いを観察したり、交互に香りをかいで微妙な香りの違いをかぎわけたり……こんなにもじっくりと1本1本のワインと向き合ったのははじめてです。

色や香り、味わいの違いに気づくことができると、なんだか嬉しくて、気がつくと夢中になっていました。
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▲テイスティングスタート。志村さんがおすすめのワインを注いでくれる
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▲色の違いを見る。真っ白なテイスティングシートを背景にするとわかりやすい


個性豊かな甲州ワインの味を、なんと表現していいかわからず言葉につまっていると、「どんな料理に合うか考えてみると楽しいですよ」と、志村さん。

テイスティングは、自分なりに味の違いや個性を感じとり、日々の食卓でどんな風に飲みたいかを想像する時間。これがテイスティングの楽しみ方なのですね。

「川魚料理に合いますね」、「天ぷらも合いそう!」、「カルボナーラや蟹クリームコロッケもいいですね?!」などと、アイディアを出し合って大盛り上がり!

甲州ワインは、どんな料理にもよりそってくれるバリエーション豊かなワイン。その可能性を、五感をフルに使って体感したテイスティングタイムでした。
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▲香りの違いは?
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▲味の感じ方は人それぞれ。「正解はないのでぜひ自由に感想を言ってみてください」
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▲真剣そのもの……
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▲約6~8種類の甲州ワインのテイスティングができる

ほろ酔いになってきた頃、ツアーが終了。早くこのワインと料理を楽しみた~い!と思うこと間違いなし。車で5分ほどのところに、勝沼醸造直営のレストラン「風」があるので、ランチやディナーを楽しむのもおすすめです。
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▲「勝沼醸造」が経営するレストラン「風」。ワインと食事の組み合わせを楽しんで


甲州ワインとじっくり向き合った2時間。学ぶだけにとどまらず、ワインを自宅で楽しむためのポイントを教わり、ワインがぐっと身近になりました。
気軽に、でもちょっぴり大人の空間で、本格的にワインについて学んでみたい。そんな思いにこたえてくれるワイナリーツアーでした。
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▲この日テイスティングしたワイン。左から、「アルガーノ ヴェント」(1,404円/750ml、2,808円/1,800ml)、「アルガブランカ クラレーザ」(1,728円/750ml)、「アルガーノ ボシケ」(2,592円/750ml)、「アルガブランカ ピッパ」(3,888円/750ml、)アルガーノ ゴッタシデロシオ」(1,944円/750ml)※価格はすべて税込です


写真・奥田晃司
齋藤春菜

齋藤春菜

編集者、ライター。出版・編集プロダクションデコ所属。女性の美容・健康・ライフスタイルに関する書籍、雑誌を多数編集・執筆。文芸、料理、アート本の編集も行う。全国各地へと取材に訪れたさいには地元のおいしいお店を必ずチェックする。編集を担当した本に『お灸のすすめ』『瞑想のすすめ』(ともに池田書店)、『足もとのおしゃれとケア』『わたしらしさのメイク』(ともに技術評論社)、『はじめてのレコード』(DUBOOKS)、『顔望診をはじめよう』、『月の名前』、『健康半分』などがある。

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