北海道の郷土料理「石狩鍋」発祥の店、金大亭で本場の味を堪能

2019.03.12 更新

石狩鍋は、北海道の代表的な郷土料理。鮭や鱒(ます)と野菜などを使った味噌仕立ての鍋です。札幌市の隣、石狩市にある鮭鱒料理専門の老舗割烹「金大亭(きんだいてい)」が石狩鍋発祥の店と言われています。1880(明治13)年に創業した当時のままの趣ある店舗で脈々と受け継がれてきた秘伝の味を堪能でき、鮭や鱒の珍味なども絶品!わざわざ食べに行くに値する、本場の石狩鍋を味わえます。

▲一度食べたらまた来たいと思うこと間違いなし!近年は海外からの旅行者も多数やってくる

北海道の郷土料理「石狩鍋」とは?

石狩鍋とは、生の鮭か鱒の身やアラとキャベツやタマネギなどの野菜を、昆布で出汁をとった味噌仕立ての汁で煮込んだ鍋。もともとは石狩地区の鮭漁師の賄い飯で、獲ってきた鮭をブツ切りにして味噌汁の大鍋に放り込み食べていたのがルーツと言われています。
▲金大亭の石狩鍋。コース料理の一品として味わえます

現在では道内各地の飲食店で目にすることがあるほか、家庭料理としても親しまれている北海道の郷土料理です。店や家庭によって具材や味付けは異なりますが、鮭か鱒と野菜を使った味噌仕立ての鍋という点は変わりません。
▲金大亭が提供する石狩鍋の特徴の一つは、豆腐の上にふりかけられた山椒。これが隠し味でもあり、味の決め手でもあります

歴史の重みと風情が漂う老舗割烹「金大亭」へ

鮭鱒料理専門の割烹「金大亭」は、明治時代に鮭漁で賑わった石狩市の石狩川河口近くに店を構えています。札幌市中心部からは車で約40分、バスなら「さっぽろテレビ塔」近くにある「中央バス札幌ターミナル」から北海道中央バスに乗車し約60分で行くことができます。
▲冬は雪がたんまりと積もります
▲入口前は庇(ひさし)があるので降雪の影響はなし。雪国ならではの造りです

創業当時からずっと使われ続けている建物。ガラガラッと扉を開けて中へ入ると、昔の風情をたっぷり感じられる佇まいに圧倒!時代ものの映画や時代劇の舞台の幕が開いたかのような気分です。
▲玄関には年代ものの番傘やポスターが飾られています

靴を脱ぎスリッパを履いて廊下を歩くと、床がキシキシッときしむ音が妙に心地よく、所々傾いている床面に感動すら覚えます。
壁面には数十年前のポスターが掲示され、随所に年季の入った生活用具などが展示されています。飲食店というより、歴史的な資料を展示している博物館に訪れたかのような感覚です。
▲廊下の一角には木製のスキー板など昔の民具が展示されています
▲ショーケースの中にも昔の生活用品が多数展示されています。古いものは明治時代のものもあります
▲建物奥にある縁側も風情があります。ガラス扉の外には雪が積もり高さは背丈以上に!

金大亭は、明治時代初期に新潟から移住した初代女将の石黒サカさんが、「大石黒」という屋号で店を構えたことから始まりました。
▲4代目女将の石黒聖子さんに案内してもらいました

開店当初から、鮭漁師の賄い飯だったブツ切り鮭を入れた味噌汁の大鍋を「鮭なべ」として一般客向けに提供。大正時代に2代目女将の石黒コウさんが「氷頭(ひず)のなます」や「焼白子」など鮭の新たな料理を考案し、鮭の頭から尾まで余すことなく使うようになりました。
▲鮭のあらゆる部位をさまざまな味わいで楽しめるのが金大亭流

それ以来、今日まで調理法や味わいを代々受け継ぎ、石狩鍋を鮭なべと称して提供しているそうです。

メニューは鮭鱒尽くしのコース料理のみ

では、老舗の味を楽しんでみましょう!
金大亭のメニューは完全予約制でコース料理のみ。以下の4コースがあり、どのコースにも鮭なべのほか、6~14品つきます。

花コース(7品、3,000円)
月コース(9品、4,000円)
雪コース(12品、5,000円)
寿フルコース(15品、6,000円)
※各1人前。2人前から予約可

このほか追加メニューとして「フライ」(800円)と「いくら丼」(1,500円)があります。
▲月コースのラインナップ。鮭なべは2人前、そのほかの料理は1人前です

鮭鱒専門店だけあり、すべてのメニューで石狩産の鮭か鱒をお店でさばいて使用しています。
ちなみに鮭の漁期は秋で鱒の漁期は春。そのため、秋から早春にかけては鮭、春から早秋にかけては鱒を使いますが、メニュー内容は通年同一。いつ訪れても、鮭づくしか鱒づくしの食事を楽しめます。

今回は9品の月コースを味わってみます。

鮭尽くしの絶品料理の数々

金大亭の客席はすべて個室で全6室。客間で食事をします。
▲思わず背筋がピンと伸びてしまう、純和風の室内

客間に入ると、すでに数品が用意されていました。着座後に焼物などが順次卓上に並び、最後にメインの鮭なべが登場します。
▲お酒がすすみそうな品々がずらり!

まずは、月コースで登場する鮭なべ以外の8品を紹介します。

1品目:「生筋子(いくら)」
▲醤油漬けのいくらですが比較的薄味で上品な味わい。軽くつまみつつ、最後に鮭なべに追加投入するために残しておきます

2品目:「氷頭のなます」
鮭の目と目の間の鼻の部分をスライスして丸一日かけて血抜きし、酢漬けにして大根のなますと合わせたものです。
▲コリコリッとして軟骨っぽい食感ながらコラーゲンのような舌ざわり。大根の酢漬けとともにあっさりと味わえます

3品目:「とも和え」
鮭のレバーと胃袋、腸をペースト状にし、砂糖や味噌などで味付けした和え物です。
▲ほんのり甘くどことなくフルーティーに感じます。軽い弾力がある食感で、お肉のホルモンっぽくもあり、ホタテの耳のような不思議な噛み応えです

4品目:「メフンの塩辛」
メフンとは背わた(鮭の中骨に沿ってついている腎臓、血合い)のこと。これを塩辛にしたものです。
▲これぞ珍味!トロッとした舌ざわりで軟らかい食感。これは間違いなく日本酒が飲みたくなる味わいです

5品目:「寒塩引(かんしおびき)」
石黒さんが特に自慢の品と語る伝統の保存食で、江戸時代からこの地に伝わる製法で今なお作っているそうです。
10月に獲れた鮭をしっかり塩漬けし、1月に冷水に漬けて塩気を適度に抜く作業を1週間~10日間繰り返したのち、屋根裏などに干して5月にやっと完成するというもの。今卓上に出されているものは一昨年の秋に水揚げされた鮭とのこと。
▲少々硬いのですが噛むとだんだん軟らかくなります。不思議なことに、噛めば噛むほどじんわり鮭のうま味が染み出てくるような味わいです
▲店内には鮭が干してありました

はじめの5品を食べ進めているうちに、次の品々が順番に運ばれてきます。

6品目:「焼鮭」
▲薄塩なので鮭の味わいをしっかり感じられます。意外とボリューミーで、このあとの鍋まで食べきれるか不安になるほど!

7品目:「焼白子」
鮭の白子の塩焼きで、大根おろしが添えられています。
▲プリッとした張りのある皮の中は濃厚な味わいでややトロッとした食感。塩気が染み込んでいて美味!大根おろしと一緒に食べるとさっぱりと食べられます

8品目:「鮭氷刺身(ルイベ)」
ルイベとは、鮭などの刺身を凍らせて半解凍したもの。刺身の表面がほんのり溶けたくらいが食べ頃で、ワサビ醤油で味わいます。
▲舌にのせると生の感覚がありつつも、かじると中はまだ凍り気味で、軽いシャリシャリ感があります。鮭の味わいとともに食感を楽しめます

元祖石狩鍋はまろやかで奥深い味わい

順番に食べているところへ鮭なべが登場。いよいよメイン料理の出番です。

金大亭の鮭なべのベースは、キャベツやタマネギを昆布出汁でじっくり煮込んだ白味噌仕立て。ここに、生鮭のブツ切りのほか、春菊や長ネギ、つきこんにゃく、豆腐が入り、いくらがパラパラッと添えられ、豆腐の上などに山椒がかかっています。
鮭は石狩産で、野菜も石狩をはじめ近郊で収穫されたものを使っているそうです。
▲卓上で火にかけると湯気がたくさん出てきて、美味しそうな匂いが室内に漂います
▲はじめの一杯を石黒さんがよそってくれました

まずは汁をひと口。
野菜の甘さと昆布出汁や鮭のうま味が混ざり合い、まろやかな味わい。思いのほか味噌の味の濃さや塩味は感じられず、上品な味噌の風味がふわりと鼻に抜けます。
山椒はしびれ感を楽しむためというより、鮭の生臭さを消してマイルドな味わいに調える隠し味のようなイメージ。さまざまなうま味成分が鍋の中にギューッと凝縮されているような感覚です。
▲あたりまえですが、家で作る石狩鍋とは訳が違う!あまりの美味しさに箸がどんどん進みます
▲鮭の切り身にいくらをのせれば鮭の親子鍋!?

鮭はホクホクとしていてやさしい味わい。野菜はどれを食べてもすごく甘いです。小皿に数杯盛れる量がありそれなりのボリュームですが、何杯でも食べられます。汁まで一滴残らず完食!
▲食べ終えると、湯気で室内にある鏡台の鏡面が曇っていました

130年以上、この地でこの鍋だけで勝負をしてきたというのも納得の味。これは絶品!この味と趣ある店の佇まいを楽しむためだけに、再訪したくなります。札幌から片道1時間かけて、わざわざ訪れるだけの魅力と価値がじゅうぶんあり!さすが元祖、これぞ石狩鍋のレジェンドです。ぜひ一度ご賞味あれ!
※本記事に記載している料金はすべて税込です。
川島信広

川島信広

トラベルライター・温泉ソムリエ・イベントオーガナイザー/横浜市出身、札幌市在住。北海道内の全市町村を趣味で訪ね歩くうちに北海道の魔力に惹かれ、都内での雑誌の企画営業と執筆業務を経て北海道へ移住し独立。紙媒体やweb媒体などで主に観光や旅行、地域活性をテーマにした取材執筆と企画・編集を手がける。スイーツ好きの乗り鉄、日光湿疹と闘う露天風呂好き。

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