青根温泉「不忘閣」。伊達政宗も愛した490年以上の歴史ある秘湯の老舗宿へ
宮城県柴田郡にある青根(あおね)温泉は、伊達藩の湯治場として1528(享禄元)年に開湯して以来490年以上の歴史を誇る名湯。中でもテレビCMの舞台にもなった「湯元 不忘閣(ふぼうかく)」(以下、不忘閣)は、青根温泉を代表する老舗旅館として多くの文豪が訪れたことでも知られています。人里離れた場所にたたずむ静かで自然豊かな秘湯では、温泉に浸かり日々の疲れを癒やすだけではなく、歴史もたっぷりと味わうことができました。

かつて伊達政宗も泊まった、歴史ある静かな温泉宿


不忘閣は歴史や秘湯好きの間では名の知れた宿で、JR東日本のテレビCM「行くぜ、東北。」の舞台になったことでも話題を集めました。館内に足を踏み入れると、暖かい空気が漂い、祖父母の家に遊びに来たような懐かしい気持ちになりました。


チェックインを終えたら客室に向かいます。不忘閣は本館、不忘庵、西別館など複数の建物が棟続きになっている造りで(これらを総称して「金泉堂」という)、その中に客室が点在しています。客室ごとに趣や眺望が異なり、全14室と多くないので、館内が混み合うこともなくゆったりと過ごせるのも魅力のひとつ。懐かしい雰囲気の漂う広い部屋では、時間がゆっくり流れているような気持ちになります。



伊達政宗も入浴した歴史ある温泉に感激。6つのお風呂を味わい尽くす!

最初に向かったのは、唯一洗い場とアメニティの設備がある「御殿湯」。浴場の大きな窓からは中庭を望むことができます。不忘閣の湯は、源泉掛け流しの単純温泉。無色透明でさらさらとしており、硫黄の臭いなどもなくサッパリとした入り心地です。神経痛や疲労回復、健康増進などへの効能も期待できる湯で、ゆったりと疲れを癒やすことができました。

ここだけでも十分満足できましたが、お次は青根温泉の由緒を受け継ぐ「大湯 金泉堂」へ。かつて、伊達藩主の御殿湯として使われた広いお風呂です。2006年まで男湯と女湯を仕切りで分け、街の共同浴場として利用されていましたが、老朽化が進みいったん閉鎖。その後、復元工事によって2008年に復活し、宿泊者専用の大浴場として男女入れ替え制で楽しめるようになりました。

木と土壁が調和した木造建築と、490年以上前から変わらない石組みの湯船に歴史を感じつつ入浴。温かい灯りに包まれた空間で心が落ち着きます。誰も来なければこの広いお風呂を一人占め。贅沢すぎますよね!

続いて、貸し切り風呂である「亥之輔の湯」へ。宿泊客であれば追加料金なく利用が可能となっています。御殿湯や大湯のある本館から3mほどの渡り廊下を歩いて向かいます。中庭の一角に立つ小屋の中に入ると小さな脱衣所があり、背の低い戸が。そこをくぐり抜け顔を上げると目の前には定員2名ほどの小さな半露天風呂。取材に訪れたのは3月、外から吹き込むまだ冷たさの残る風を感じながら少し熱めのお湯に浸かると、まるで異空間に入り込んだような気分に。

次に向かったのは、本館の反対側、敷地内の北側に立ち並ぶ蔵の中に設けられた「蔵湯浴司」。同館で最も人気がある貸し切り風呂です。ロビーの受付で声をかけて、空いていれば「貸切札」をもらって入浴します。


この蔵湯浴司、なぜ人気があるのかは、一歩足を踏み入れて分かりました。蔵の大きな扉を開けると、ライトで照らされたひのき風呂が。蔵一棟が丸ごと浴室になっており、中にはお風呂と脱衣かごがあるのみ。なんと贅沢な空間でしょう!

早速お風呂に浸かると、水の音だけが響く静かな空間の中で、身体が芯から温まっていきます。頭上を見上げると、高い天井に土壁。その美しさに見とれてしまいました。

そして、最後に向かったのが「新湯」。こちらは1528(享禄元)年頃に作られ、現在までそのまま残されている石造りのお風呂。伊達政宗をはじめ多くの文人たちが体を休めた場所として深い歴史を持っています。

扉を開けると木の温かみを感じる脱衣所があり、浴場の真ん中に石造りの湯船がぽつり。自然光が差し込むそのお風呂は、朝と夜では違った風情を味わえます。


さて、6つのお風呂を楽しんだところで、お風呂上がりに立ち寄りたいのが本館にある「喫茶去 金泉堂」。貴重な展示物が置かれた昔懐かしい空間に、飲食物が用意されており、宿泊客なら無料でいただくことができます。飲み物の中には、コーヒーやお茶だけではなく日本酒も。さらに、お味噌をつけて食べるこんにゃくやお菓子などの軽食類も充実しており、座ってゆっくりいただけます。



伊達政宗も宿泊した「青根御殿」で貴重な展示物を見学

内部は資料館になっており、宿泊者限定で女将さんの案内のもと無料で見学可能となっています(見学を希望される方は受付でその旨をお伝えください)。書物や掛け軸、伊達家ゆかりの美術品や伊達政宗の父の甲冑など多くの貴重な資料が展示されており、女将さんの話を聞きながら歴史を感じることができます。窓からの景色も絶景。宿泊した際にはぜひ足を運んでみてください。


季節の食材を使った豪華な会席料理にリピーター続出

新鮮な魚を使ったお造りや仙台黒毛和牛紙鍋など、素材の味をゆっくりと味わいながらいただきます。さらに、地酒も豊富。不忘閣からほど近い柴田郡に仕込み蔵がある「伯楽星」や「あたごのまつ」などの銘柄はもちろん、青根温泉にある2つの旅館でしか味わえないという日本酒「思手成し(おもてなし)酒」も。豪華な食事についついお酒も進んでしまいます。

歴史情緒あふれる不忘閣では懐かしい和室の客室と趣ある6つのお風呂を楽しめ、日常を忘れて体を休めることができます。懐かしさを感じる廊下や部屋にすっかり心も癒やされました。筆者が訪れた3月上旬は、まだ雪が残っていましたが、暖かくなってきたらまた違う景色が見られるのでしょう。
湯元 不忘閣
宮城県柴田郡川崎町青根温泉1-1
[宿泊料金]1泊2食付き西別館17,000円~、不忘庵16,000円~(ともに税別、入湯税込)/2名1室利用時
[チェックイン]15:00~、[チェックアウト]10:00~
[定休日]なし
0224-87-2011

阿部ちはる
宮城県出身。東京の出版社で編集者として勤務。現在は仙台市在中のライターとして活動中。(編集/株式会社くらしさ)
また、本記事に記載されている写真や本文の無断転載・無断使用を禁止いたします。
この記事の関連キーワード
こちらもおすすめ
この記事の関連ご当地情報
宮城蔵王・白石で体験できるプラン
-
オンライン予約OK
【宮城・蔵王】四季を満喫!蔵王の森を馬と歩くやすらぎの30分…
約60分|6,000円(税込) / 人
宮城蔵王・白石
-
オンライン予約OK
【お土産付き:ヨーグルト、アイスクリーム】大自然の中で牛とた…
約60分|3,000円(税込) / 人
宮城蔵王・白石
-
オンライン予約OK
大自然の中で牛とたわむれる30分乳搾り体験プラン
約60分|2,000円(税込) / 人
宮城蔵王・白石
-
オンライン予約OK
金蛇水神社の天然水で作るそば打ち体験教室
約60分|1,620円(税込) / 人
宮城蔵王・白石
-
オンライン予約OK
自然の中の釣堀!川魚90分釣り放題プラン
約90分|1,980円(税込) / 人
宮城蔵王・白石