「日本一のあんずの里」長野県千曲市で花の絶景とあんずグルメを楽しみ尽くす!

2019.03.29 更新

ひと目で多くのあんずの花が見渡せることから「一目十万本」といわれ、開花時期の3月下旬~4月上旬には約10万人もの花見客が訪れる長野県千曲(ちくま)市。あんずの実の生産量も全国トップクラスを誇り、多くの魅力的なグルメや商品に生まれ変わっています。今回は、そんな「日本一のあんずの里」の魅力をご紹介します。

お姫様も愛した一面の薄桃色のあんずの花畑

あんずの生産量が全国トップクラスの長野県。栽培面積は日本一を誇りますが(農林水産省「平成27年特産果樹生産動態等調査」)、その6割を占める一大産地が千曲市です。その中でも特に水はけがよい森地区と倉科地区は、「あんずの里」とよばれ、標高380~450mのなだらかな傾斜地の一面にあんず畑が広がります。2013年4月には今上天皇皇后両陛下が「初めての私的な旅行」でご訪問されたことでも、その名が知られるようになりました。
▲「上平(うわだいら)展望台」や「窪山展望公園」まで行くと、開花シーズンの天気のよい日は美しい北アルプス、戸隠連峰の山々の残雪と青空、薄紅色の花のコントラストが楽しめます(©信州千曲観光局)

千曲市にあんずが伝わったのは、江戸時代前期の元禄時代。伊予宇和島藩主・伊達宗利公の息女・豊姫が第三代松代藩主・真田幸道公に輿入れした際、故郷をしのんで持ち込んだあんずの苗が原型といわれています。
▲千曲市キャラクター・あん姫ちゃんは豊姫がモチーフ(©信州千曲観光局)

毎年、開花時期には、あんずの花を愛でる「あんずまつり」を開催。春の訪れが遅い信州で桜よりもひと足早く花が咲くこともあり、期間中は約10万人もの花見客が訪れます。2019年の「第64回あんずまつり」は3月30日(土)~4月14日(日)の開催を予定しています。
▲一面の花畑を撮影に訪れるカメラマンも少なくありません(©信州千曲観光局)

また、「あんずまつり」の期間中には、地元有志による「花さかフェスタ」も開催。2015年からスタートし、2019年は節目となる5回目の開催です。
あんずの花の酵母を使って開発中のコッペパンを振る舞う試食会や、剪定されたあんずの枝を使ってハンカチやスカーフを染める染め物体験など、ほぼ毎日さまざまなイベントを開催予定です。
▲「花さかフェスタ」は上平展望台花さか村広場をメイン会場に開催されます

あんずスイーツや加工品がずらりと並ぶ「あんずの里」

花の絶景を楽しんだ後は、あんずを使ったグルメも味わいたくなりますよね。あんず栽培と加工を手がけて50余年となる横島物産のショップ「あんずの里のあんずショップ」では、「あんずまつり」の時期を含め通年であんず商品を購入することができます。
▲横島物産の工場横にある「あんずの里のあんずショップ」
▲店内にはさまざまな加工品がずらり

店内には、種付きのまま丸ごと漬け込んだ「杏シロップ漬」(1,280円・税込)をはじめ、一つひとつ丁寧に種を取ってふっくら天日干しした「天日干しあんず」(1,188円・税込)、もぎたての完熟あんずから作った「杏じゃむ」(756円・税込)など、昔ながらの加工品から新商品まで多彩なあんず商品が並びます。
▲「杏シロップ漬」(写真奥)は、まるで杏仁豆腐を食べているかのような濃厚な味わい!ちなみに「杏仁」とはあんずの種のこと

横島物産の取締役で、2004年から本格的に商品企画を手がけている商品開発コーディネーターの横嶋孝子さんは、昔ながらの加工品を創意工夫によって別の形に変えることで、より幅広い年齢層が楽しめるお土産にしているそうです。
▲千曲市森地区で生まれ育った経験と豊富なアイデアでさまざまな新商品を生み出している横嶋さん
▲こちらは昔ながらの「天日干しあんず」をベースにハーブをブレンドした、香料・着色料不使用の無添加のフルーツ紅茶「杏紅茶」(594円・税込)
▲あんず特有の甘酸っぱさをアクセントにしたスイーツも多数。「あんずの里チーズケーキ」(2,268円・税込)はあんずジャムをかけるとより味わい深く!

ちなみに、「花さかフェスタ」を発案したのも横嶋さんです。高齢化や後継者不足に伴い、農家の減少や切られてしまうあんずの木を目の当たりにした横嶋さん。まずは地元住民が楽しめるイベントをきっかけに、あんずの木がある風景を次世代につなぎたいとの思いから、地元の友人や企業、ボランティア団体などに協力を呼びかけスタートを切りました。
▲花さかフェスタのチラシを手に、「これからもあんずの里の未来のために、できることをひとつずつやっていきたい」と話す横嶋さん

「花さかフェスタ」の時期には、上平展望台に期間限定ショップ「花さか村売店」を開き、定番人気の「あんずソフト」のほか、フロートやワッフルなどの限定メニューも販売する予定です。
▲さっぱりした味わいが人気の「あんずソフト」(350円・税込)。「あんずの里のあんずショップ」では通年販売しています
▲あんずジャムがアクセントになった「あんずワッフル」(350円・税込)は「花さかフェスタ」期間限定の販売

ちなみに、2019年の目玉商品は「あんずソフト」を使ったコッペパン。片手で食べ歩きながら花見を楽しんでみては。
▲なんと取材日に完成したソフトクリーム入りコッペパン(350円・税込)。リーゼントのようなソフトクリームの形(?)もポイントだそう。ソフトクリームの下に潜んだホイップクリームと手作りのあんずのジャムが隠し味に

6月下旬~7月上旬には生のあんずの収穫体験も

横島物産では、6月下旬~7月中旬にあんずの実の収穫体験も実施しています。生のあんずは短い旬を逃したらまず巡り合えないのですが、あんずの花を見にきた方から「実も収穫したい」との声があがり、市の観光課に協力する形で収穫体験を始めたのだとか。
▲初夏のごく短い期間にしか収穫ができないあんず

旬の時期が短い上に梅雨と重なるあんずは、収穫が大変なのだそう。一時期は地区内でも収穫体験をしていた農家がいくつもありましたが、対応の苦労が絶えなかったことから、現在は横島物産も含めて2軒の生産者しか実施していない貴重なものとなってしまいました。
▲あんずの栽培と食品加工、販売のほかに、お花見の「あんずまつり」と収穫体験も行っていることから、横嶋さんは「観光型6次産業」と名付けて広めています

そんなあんずの収穫ポイントを横嶋さんに伺ったところ「落ちるくらい熟したものがおいしい」とのこと。特にハーコットという生食用の品種はマンゴーにも負けないほどの甘さなのだとか!あんずと聞くと、ドライフルーツやシロップ漬けなどの加工品を思い浮かべがちですが、実は生でも食べるんです。
▲こちらがハーコット。果皮が薄く糖度の高い、生食用の代表的な品種(©信州千曲観光局)

花の時期だけでなく、収穫期もおすすめの「あんずの里」。貴重な生のあんずは収穫だけでなく、購入することもできます。それもまた収穫期ならではの楽しみですね。

洋菓子にお寿司まで!まだまだあります、あんずグルメ

千曲市内には、ほかにもさまざまなあんずグルメを楽しめるお店があります。
昭和28(1953)年創業の「長坂製菓 杏花(きょうか)堂」は、もともと甘納豆専門店「長坂製菓」でしたが、他店に先がけてあんず菓子を作り始めたところ次第に人気に。平成元(1989)年、しなの鉄道・屋代駅前に現在のあんず菓子専門店を構えました。
▲店頭に立つ古川令子さんは創業者の娘さん

一番人気は「杏チョコレート」(6粒入930円・税込)。あんずのドライグラッセをやわらかいチョコレートで包んだ商品です。一般的なオレンジピールを使ったチョコレートよりも癖がなく、酸味が効いたさわやかな味わい。チョコレートの甘さと絶妙にマッチし、某お取り寄せ・贈答サイトのフルーツ洋菓子部門とチョコレート部門で人気ランキング1位を獲得した実績があります。
▲ホワイトチョコとビターチョコの2種がある「杏チョコレート」。10月~ゴールデンウィーク頃までの期間限定販売

特製の生あんずジャムをたっぷりのせた「杏アイス」(350円・税込)は、「北アルプス松田牛乳」とのコラボ商品でアイス職人の手作り。ミルク味と、あんずジャムが練り込まれたマーブル味の2種があり、無添加で昔ながらの「アイスクリン」のようにさっぱりした味わいです。
▲2018年からは新たにジャムの量を2倍にし、濃厚な「黒姫高原牧場」の牛乳を使ったプレミアムアイスクリーム「濃い杏アイス」(400円・税込)も販売(写真中央)

「あんず紅茶」(10パック1,200円・税込)は、稲玉丸(いなだままる)という水分量の少ない昔ながらのあんずの品種を手作業で干し、細かく刻んで国産紅茶とブレンドした商品。あんずの味をしっかり味わうためには5~6分と時間をかけて抽出する必要がありますが、それでも独特の渋みが出にくい貴重な国産紅茶をセレクトしてブレンドしているそう。自然な甘酸っぱさが後引くおいしさです。
▲筒入りのパッケージも可愛く、ティーパックなので手軽においしい紅茶が抽出できます

なお、古川さんのおすすめの飲み方は、2杯目に「杏花の実」(上の写真ティーカップ左のもの、180円・税込)という甘露煮を入れるという方法。甘酸っぱさが加わり、また違った味わいを楽しめるそうです。お徳用「杏花の実 6個入」(上の写真左奥、680円・税込)を使うと、より手軽に味わえます。
▲1週間煮込んで作る「杏花の実」は、ふっくら仕上げるのが大変なのだとか

さらに杏花堂では、収穫の時期に採れたてのあんずをジャムにして限定販売しています。人気が口コミで広がり、全国に長年のファンがいるのだそう。例年6月1日頃から予約を受け付けているそうなので、気になる方は公式ホームページをチェック!
▲こちらも予約でほぼ完売してしまうという珍しいあんずの生搾り果汁ドリンク「濃い杏」(720ml・1,080円・税込)。100%果汁は困難というあんずにおいて60%という高濃度を実現
▲屋代駅前通りにある店舗
さらに、なんとあんずのお寿司を毎年数量限定で提供しているのが「大(だい)寿司」です。
2019年でこの道45年となる寿司職人の店主・鈴木土記大(ときお)さんは、妻が漬けていたあんずの漬け物をヒントに、約15年前にあんずの握りと巻き寿司を考案しました。
▲「あんず寿司握り」(1貫100円)と「あんず寿司巻物」(1本300円)※いずれも税込
▲あんず色の作務衣も印象的な鈴木さん

実は筆者「あんずとお寿司…?」と半信半疑でいただいたのですが、その感動的なおいしさにびっくり!握りは肉厚のあんずの食べ応えがあり、シャリのほんのりした甘さとあんず自体のほのかな酸味、あんずの漬け物特有の甘みのバランスも絶妙。あんずと言われないと、何のネタかわからないほど不思議な食感と味わいです。
▲鮮やかなオレンジ色のあんずは、一見、貝類や玉子のようにも

巻き寿司は細かく刻んだあんずの漬け物が巻かれ、風味豊かな漬け物の旨みとピリリと効いたわさび、海苔の磯の香りのハーモニーが抜群!シンプルゆえの深い味わいがたまりません。追加注文したくなったほど個人的に大ヒットでした。
▲リーズナブルな価格も魅力

あんずは、酸味があって大きめの「平和」という品種を使っており、直接農家に伺い、朝採れのあんずのみを仕入れているそう。収穫から1日経つだけで柔らかく熟しすぎてしまうため、その日のうちに仕込み、塩と砂糖、酢で24時間下漬けをしたあと、本漬けをしています。
▲大粒の「平和」の実を半分に割ってネタに

さらに米は、美しい景観でも知られる姨捨(おばすて)地区の棚田で育った棚田米を使用。「第17回米・食味分析鑑定コンクール」(2015年)でプレミアムライセンス認定を受けたもので、地産地消にもこだわっています。

なお、これらのあんずのお寿司は、収穫期に仕込んだ分が終われば販売終了。新たに販売を開始するのは7月終わりから8月にかけてだそうで、2019年のあんずまつりの時期は「在庫が残っていれば提供可能」だそうですが、今のところ難しいかもしれない…とのことです。
▲「あんずの里」から車で15分ほど、旧北国街道沿いの稲荷山地区にあります
花の時季の観賞はもちろん、食としても楽しみが広がる千曲市のあんず。五感で楽しむ旅を満喫しませんか。
島田浩美

島田浩美

編集者/ライター/書店員。長野県出身・在住。信州大学卒業後、2年間の海外放浪生活を送り、帰国後、地元出版社の勤務を経て、同僚デザイナーとともに長野市に「旅とアート」がテーマの書店「ch.books(チャンネルブックス)」をオープン。趣味は山登り、特技はマラソン。体力には自信あり。(編集/株式会社くらしさ)

※本記事の情報は取材時点のものであり、情報の正確性を保証するものではございません。最新の情報は直接取材先へお問い合わせください。
また、本記事に記載されている写真や本文の無断転載・無断使用を禁止いたします。

こちらもおすすめ

もっと見る
PAGE TOP