京都の人気わらび餅3選!感動のぷるとろ食感を堪能

2019.06.09 更新

「京都に来たら食べるべき和菓子は?」と聞かれたら、まず挙がるのは「わらび餅」でしょう。わらび粉と水、砂糖を鍋で練り合わせるシンプルな製法だからこそ、素材の品質と職人の腕前が味の善し悪しに直結します。高度な技術をもった和菓子職人が集まり、全国屈指の美味しい地下水が湧き出る京の街だからこそ味わえる絶品のわらび餅――人気の3店をご紹介します。

海外のVIPも愛した超一流旅館の味を気軽に楽しめる「遊形サロン・ド・テ」

京都市営地下鉄東西線・京都市役所前駅を南に5分ほど歩いた所にあるカフェ「遊形(ゆうけい)サロン・ド・テ」。こちらは、高級旅館「俵屋旅館」の直営店です。

俵屋旅館は、初代総理大臣を務めた伊藤博文や、アップル社の創設者の一人であるスティーブ・ジョブズなど国内外の著名人が定宿にしていたことでも知られる老舗。歴史ある旅館が点在する京都市内の中でも、特に高い評価を受けています。
そんな憧れの旅館で宿泊者を迎える際に供される、人気のわらび餅を味わえるとあって、2007年のオープン以来、若者から年配まで幅広い世代に愛されているのがこちらのカフェです。
▲南北を通る麩屋町通(ふやちょうどおり)と、東西を通る姉小路通の交差点そば。俵屋旅館に隣接する、白壁のモダンな店構え

築100年以上の町家を改装した店内には、北欧家具をはじめ、旅館の主(あるじ)・佐藤年(とし)さんの美術コレクションを随所にディスプレイ。そのどれもが個性的でありながら調和し、上質な空間を演出しています。
▲店内奥には、北欧家具デザイナーの巨匠、故フィン・ユール氏の青いチェアも。これを目当てに訪れる人もいるのだとか!

「当館へお越しにならないお客様にも、お召し上がりいただけるように」との思いで年さんが始めたカフェ。看板メニューの「俵屋のわらび餅」は、本わらび粉と俵屋旅館に湧き出る清浄な地下水、そして黒砂糖のみを使っています。
▲「俵屋のわらび餅 抹茶と」(2,260円)。ほかに、煎茶または焙じ茶がつく「俵屋のわらび餅 煎茶あるいは焙じ茶と」(2,050円)がある。旅館の名を模した、かわいい俵形の和三盆糖の干菓子つき

清涼感のある青竹の筒に盛り付けられたわらび餅は、きなこがたっぷり。箸でもちあげようとすると、とろーんとこぼれ落ちてしまいそうなほどに柔らかく、見ただけでとろけるような口当たりが想像できます。
▲箸を持つ手のふるえが伝わるほどに揺れるわらび餅。早く食べたい衝動にかられる

いざ口に運ぶと、ひんやりとした心地良い冷たさと、きなこの香ばしさ、餅に練り込まれた黒砂糖のコクのある甘みがゆっくりと舌の上に広がります。もちっ、とろっとしたひかえめな弾力と繊細な柔らかさ、喉を滑りおちていく時の心地よさは、思わずため息がもれてしまうほど!

この独特な味わいがどのようにして生まれたのか、スタッフの石井亜呼(あこ)さんに尋ねると「主と料理長が1年以上もの間、毎日試作し、ようやく完成させた」のだそう。それほどまでに精魂込めたわらび餅は、旅館の板場で毎日作られています。
▲「サンドウィッチとコーヒーあるいは紅茶」(1,850円)。写真の具材は卵とツナで、ツナのみパンがトーストされる

もう1つの人気メニューであるサンドウィッチもご紹介しましょう。年さんの夫で写真家の故アーネスト・サトウ氏の直伝で、旅館の海外VIP客だけに年さん自らが手作りで提供している、オリジナルの味です。

味は2種類。1つは卵サンドで、もう1つはツナ、ハム、ベーコンの中から1種をチョイスします。サンドウィッチの具材や自家製マヨネーズには、旅館の菜園で採れたバジルやパセリなどのハーブをさりげなく忍ばせ、味わいに奥行きをもたせています。今にも崩れそうな柔らかい卵、細かく刻んだ玉ねぎのシャキシャキとした歯触り、爽やかなハーブの香り、まろやかなマヨネーズ…それらが一体となり、大満足の一品に。
▲とろとろ、ふわっとした食感と複雑な風味は、真似できない唯一無二の味

俳優や音楽家、ジャーナリストなど海外のVIP客だけが味わっていたという特別感もあいまって、優雅な気分に浸れます。

なお、予約必須の俵屋旅館と違って、こちらのカフェは予約なしでも入店できます。店内奥の苔むした坪庭を眺めながらいただくもよし。わらび餅など俵屋旅館の味を堪能する、極上のひとときを体験してみませんか。

風情ある日本庭園を眺めながら至福の一服を。「茶寮 宝泉」

京都市営地下鉄・北大路駅直結のバスターミナルから、市営バス北8、204、206系統で「下鴨東本町」停留所を下車してすぐ。住宅街の一角に現れるのは、まるで高級料亭のような佇まいの「茶寮 宝泉(ほうせん)」です。
▲打ち水された清潔感のある店構え

「あずき処」という看板を掲げる和菓子屋「宝泉堂」の喫茶を担うこちらも、「京都でわらび餅といったらここ!」と評価が高い行列必至の甘味処。素晴らしい日本庭園を前にして、店自慢の甘味を味わうことができます。
▲よく手入れされた美しい日本庭園を、築100年以上の日本家屋から眺める。席は全て座敷

看板メニューの「わらび餅」は、注文を受けてから手作りされるできたての味。保存料などの添加物は加えず、本わらび粉、水、砂糖のシンプルな材料をひたすら練り上げていきます。注文から完成までは約15分ほど。待っている間に眼前の見事な庭園に目をやり、はやる心を落ち着けます。
▲静寂の中で目の覚めるような木々の緑を眺めるひとときも、この店の醍醐味

こうして完成したわらび餅を、店主の古田智史さん自らが出してくれました。
▲「わらび餅」(1,300円)。時間が経つと徐々に形が崩れていくので、サーブされたらすぐに味わいたい

「さあ、早く召し上がって」と促されるままに箸をつけると、まとわりつくような強い弾力!ぽってりとしたわらび餅を一口食べると、餅の表面に膜がはったようなつるんつるんの舌触りに驚きました。続いて本わらび粉特有の香りと、笹の葉の青い香りがふわっと鼻孔をくすぐります。
▲餅の中にたっぷりと含まれた気泡は、生地を短時間に高速で練り上げているからこそ。黒みつをかけても美味

最後に、つつーっと喉を通り抜けていく心地よさ。この滑らかなのど越しを味わうための甘味と言っても過言ではありません。それほどにきめ細やかな食感に仕上がっています。
▲ただ甘いだけじゃない、小豆の美味しさに目をみはる「大納言ぜんざい」(1,150円)

老舗から新店まで多くの和菓子屋がひしめく京都でも、小豆を炊くところから自家製のあんこを提供している店は限られます。そんな店の一つ「宝泉堂」では、国内屈指の小豆の産地・丹波の氷上(ひかみ)地方などから取り寄せる、最高級の丹波大納言を厳選して粒あんに使用。
そこで「あずき処」の名にふさわしい、「宝泉堂」の自家製粒あんを使った「大納言ぜんざい」もオーダーしました。

こちらのぜんざいはシロップに粒あんを浸し、白玉をトッピングしただけのシンプルなビジュアル。まるで「小豆の美味しさをいかに伝えるか」という店主の情熱を表しているかのようです。ひとさじで粒あんの美味しさや、ほくっ、ほろほろとほどける食感をダイレクトに感じます。
▲粒あん好きは必食。ふっくらと炊き上がった小豆の食感がたまらない

シロップが濁っていないのは、デリケートな小豆の皮を破らないように、しかし最大限までふっくらと仕上がるように絶妙な炊き加減を施しているから。長年、小豆と向き合ってきた宝泉堂だからこそなしえる、秘伝の技術です。

席の予約はできないため、週末やおやつ時は行列の覚悟を。できれば開店直後の来店をおすすめします。

芸舞妓さんも愛する、花街のわらび餅「ぎおん徳屋」

京都の繁華街の中でも、ひときわ賑わいをみせる祇園。京阪本線・祇園四条駅から徒歩3分ほどのエリアにある、祇園の中心地・花見小路沿いに「ぎおん徳屋」があります。
▲観光の休憩にも立ち寄りやすい好立地。芸舞妓さんも出前でよく利用するのだとか(一般客の出前の取り扱いはなし)

2003年のオープン以来、店主の山内正悟(しょうご)さんが「おじいちゃん、おばあちゃんの時代の懐かしさと美味しさ」をコンセプトに提供するのは、素朴なメニューの数々。本わらび粉を使ったできたてのわらび餅をはじめ、吉野の本くず粉で作るくずもち、卓上コンロで楽しむ焼き餅など、天然の食材にもこだわっているのがこの店の身上です。
▲テーブル席と、座敷席(個室)がある

中でも「徳屋の本わらびもち」は人気メニューのひとつ。国産の本わらび粉と水、和三盆糖を加えた砂糖を材料に、注文を受けてから作るので、できたてを味わえます。
▲黒みつときな粉がつく「徳屋の本わらびもち」(1,200円)。冷たさを保つため、固めたかき氷の周りにわらび餅を盛り付けている

オーダーからほどなくして、わらび餅が到着しました。まずは何もかけずに一口。箸でやっと持ち上げられるほどに柔らかいものの、口に運ぶとコシのある食感や、ぷるんとしたみずみずしい風味に思わず顔がほころびます。

その次にコクのある黒みつをかけて、その次は梅の花を象ったきな粉をまぶして。
深煎りと浅煎りそれぞれのきな粉と和三盆糖を独自に配合したきな粉は、香ばしく深い味わいに驚くはず。さらには黒みつときな粉両方をかけて…と、好みの味わい方ができるのも魅力です。
▲別皿にわらび餅をとり、別添のきな粉や黒みつをかけていただく。山内さんは、「黒みつときな粉のWがけがおすすめです」とのこと

わらび餅を食べ終わったら、残った氷にきな粉や黒みつをかけて、かき氷風に味わうこともできます。この氷は祇園にある「鳥居氷業」のもの。ぎおん徳屋で提供している「特上抹茶宇治金時」(1,300円)などの全てのかき氷にも使用されています。きめ細やかな食感が店主のお気に入りなのだとか。
ちなみに、8つのわらび餅を丸い器に盛り付けているのは、店が「祇園甲部(ぎおんこうぶ)」と呼ばれる花街にあり、その花街の紋章“8つのつなぎ団子”にならっているため。花街の店ならではの粋な演出ですね。
▲濃い緑色が美しい「お抹茶の本くずもち」(1,200円)

「お抹茶の本くずもち」もおすすめ。抹茶は、祇園を代表する老舗茶屋「一力亭(いちりきてい)」の女将さんの実家「柳桜園茶舗(りゅうおうえんちゃほ)」のものを使っています。くずもちには、稀少価値が高く最高級品とされる吉野の本葛粉を使用。しっかりと練り上げるため、手間暇を考えると1日に30食程度しか提供できないのだそうです。

その味は、ぷるん!と大きく揺れるほどの強い弾力と、抹茶の豊かな香りと甘み、その後を追いかけてくるほのかな苦みが見事に調和。いくらでも食べたくなる一品です。
▲京都らしい風情を求める観光客で賑わう花見小路

好立地なこともあり、平日・休日問わず賑わっているため、やはり開店直後の入店がベター。花見小路の飲食店では珍しい2階席で、行き交う人々を眺めながら、ゆっくり一服してみては。

最高級の材料で作られる、京都の絶品わらび餅!

▲京都ならではの風情とともに味わうわらび餅の味は格別(写真は「伏見稲荷神社」の千本鳥居)

今回紹介したどの店舗も、使用しているのは国産の本わらび粉。材料の絶対数がごくわずかで価格が高騰しているため、和菓子の材料の中でも最高級品とされ、代用品を使わざるをえない菓子店もあるほど貴重な素材なのに、です。
それを惜しげもなく使う理由は「本わらび粉だけが出せる、本物のわらび餅の風味を味わってほしい」という真摯な姿勢を貫いているから。

材料だけでなく、手間も暇もかけて作る甘味処の心意気を感じながら、古都・京都の情緒とともに、とびきりのわらび餅をじっくりと味わってみては。

※記事内の価格表記は全て税別です。
中河桃子

中河桃子

編集・ライター、京都出身滋賀育ち。大学在学中に京都でライター業を開始。以後、関西・東京の出版社や制作会社で、グルメ・エンタメ・街情報を中心に18年以上携わる。新しいもの・おいしいもの・興味のあることは自分で体感しないと気が済まない現場主義。今は酒蔵巡り・和菓子作り・美術鑑賞・旅にハマり中。

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