「岩室温泉」で大人の街歩き。温泉や地元食材を使った料理、酒蔵見学を楽しもう!

2019.03.23 更新

江戸時代から長い歴史を重ねてきた新潟県の「岩室(いわむろ)温泉」。多宝山(たほうざん)や角田山(かくだやま)を背景に広がる田園風景が印象的な地域です。今回は日帰り温泉はもちろん、地元食材にこだわる古民家イタリアンや酒蔵、銘菓のお店など、岩室温泉のおすすめの巡り方をご紹介します。

開湯して300余年。人々の疲れを癒し続けてきた岩室温泉

JR新潟駅から南西に車で40分ほどの場所にある、新潟市西蒲(にしかん)区の岩室温泉。車で10分ほどの場所には「彌彦神社」があることから、江戸時代より全国から参拝にやってくる人達が宿泊する温泉街として栄えてきました。

最近は新潟空港から弥彦・岩室へと向かう「新潟ウエスト・コーストライナー」(1人片道2,000円、小学生以下1,000円 ※ともに税込・未就学児無料)の運行も開始され、県外からの観光客も訪れやすくなりました。
▲岩室温泉の田園風景。後ろには多宝山や天神山、角田山などの山々が連なる

温泉の始まりには言い伝えがあります。
江戸時代中期の正徳3(1713)年、ある庄屋の夢枕に白髪の老翁が現れ「村はずれの老松の下の岩石の間に霊泉があり、これに浴すれば諸病和らぐ」とお告げがありました。翌日庄屋がその場へ行ってみると、傷ついた一羽の雁が湯に浴して傷を癒しており、温泉を見つけたといわれています。この由来に基づき、「霊雁の湯」とも呼ばれています。
こうして300年以上、人々を癒し続けてきた岩室温泉。主な泉質は含硫黄・ナトリウム・カルシウム塩化物泉で、美肌効果があるといわれています。神経痛や筋肉痛、関節痛などにも効き目があるといわれており、彌彦神社参拝の長い旅路を歩いてきた人々にとって、旅の疲れを癒す温泉だったのかもしれません。

町めぐりは地域の情報発信地「いわむろや」から

まずは情報収集も兼ねて温泉街の入り口にある新潟市岩室観光施設「いわむろや」に行ってみました。こちらの施設では、岩室温泉の観光情報や歴史、伝統文化などの情報を発信しています。
▲いわむろや館長の小倉壮平(おぐらそうへい)さん。「岩室温泉には山や川、田園、畑など自然がいっぱいあるので、ぜひゆっくりしていってください」

いわむろやには食堂やお土産販売場所、足湯などもあるということなので、散策前に館内を覗いてみます。
▲小倉さんおすすめの「いわむろや」名物・ジャージー牛のソフトクリーム 300円(税込)

食堂で売られているこのソフトクリーム、岩室温泉にある酪農場の牛乳を使っているそう。さっぱりとした口当たりで、ソフトクリームというよりジェラートのような味わい。思わずおかわりしたくなるような食べやすさでした。
▲「いわむろや」では岩室温泉のお土産も販売。米菓やお酒だけでなく、地元で採れた新鮮な野菜や非加熱の「はちみつ」など、地元ならではの商品も充実している
▲天気が良ければ角田山を望むこともできる足湯も。地元の人達にも人気
岩室温泉と同じ源泉を使用。足を入れているだけで、ポカポカと温まります。身体も心もほぐれてくるからか、ゆっくりと寛いでしまいました。
▲1日500円(税込)で借りられる電動レンタサイクル

「いわむろや」ではレンタサイクルの貸し出しも行っています。温泉街は端から端まで歩いても30分ほどですが、レンタサイクルを使えば効率良くまわれます。風が心地よい季節には、特におすすめです。

岩室温泉の観光案内所としてはもちろん、お土産販売や足湯など地域の魅力が詰まった「いわむろや」。現地に着いたらぜひここからスタートしてみてください。

昔ながらの製法を受け継ぐ「宝山酒造」へ

散策の最初に向かったのは、明治18(1885)年創業の「宝山(たからやま)酒造」。岩室温泉街の南端に位置し、「いわむろや」からは歩いて25分、自転車で10分ほどの場所にあります。

宝山酒造の日本酒は、多宝山から湧き出す超軟水と、岩室温泉を中心とした新潟市内で収穫された酒米(さかまい)を使って醸造しています。

全国新酒鑑評会で何度も金賞を受賞している宝山酒造。2005年には杜氏を務めていた青柳長市(あおやぎちょういち)氏が黄綬褒章(おうじゅほうしょう)を受賞するなど、確かな技術に裏付けされている酒造です。現在の杜氏は、社長の息子である5代目渡邉桂太氏。前任の酒造りの技術や想いを受け継ぎながら、今までにない日本酒を目指し、日々研究を重ねています。
こちらの宝山酒造では、無料で酒造見学を実施しています(要予約)。

アテンドしてくれるのは、女将を務める渡邉由紀子さん。明るく笑顔が印象的な女将は身近な話題も取り入れながら、楽しく酒造りの工程の説明をしてくれました。
▲創業以来、変わらず使い続けている和釜。右奥に見えるのは、現在も使用している蒸籠

まず案内してくれたのは、酒米を蒸す場所。酒造りは、酒米を磨き上げる精米作業からスタートします。次に「洗米(せんまい)」、水を吸わせる「浸漬(しんせき)」、その後に米を蒸す「蒸米(むしごめ)」が行われます。宝山酒造は昔ながらの手法を大切に、他の蔵では現役で使われることが少なくなった和釜と蒸籠を使って米を蒸しているそう。
「機械化すべき工程としないほうが味を守れる工程、それぞれを見極めながら機械を入れていきたい」とも語ります。
▲頃合いを見て、どれくらい発酵が進んでいるか検査する

次に案内されたのは、仕込み蔵。麹菌とともに丸2日間かけて菌を繁殖。麹を作って酒母(しゅぼ)と呼ばれる酒のもとを作ります。その後、麹や蒸した米、水を合わせじっくりと仕込み、表面から気泡が出てくるまで発酵させていきます。

発酵が終わったら、もろみを搾り出します。このときに使われるのが、ヤブタと呼ばれる圧力をかける機械。酒造業界では通常ヤブタと呼ぶそうですが、女将は「フィルタープレス」と機械名で呼んでいるそう。その理由は、フィルタープレスのほうが観光客でもイメージしやすいため。細かなところにも女将の心遣いを感じます。
最後に案内されたのが、貯蔵場。タンクの中で小さな固形物である滓(おり)を沈澱させ、澄んだ部分を抽出します。その後、日本酒は濾過や火入れ、調合などを行い、瓶詰めの後に出荷されます。
▲大吟醸や純米吟醸はもちろん、にごり酒や原酒まで様々なお酒を試飲できる。一番左が「大吟醸 宝山」

工場見学を終えると、お待ちかねの試飲タイム。
まず筆者がいただいたのは、「大吟醸 宝山」(720ml/税込3,090円)。岩室温泉を中心に新潟市内で収穫された酒米の一種「越淡麗(こしたんれい)」を40%まで精米し、低温でじっくりと発酵させたお酒です。

「大吟醸 宝山」はスッキリしていながらもまろやかな味わい。りんごやバナナのような完熟した香りが口の中に広がり、大吟醸ならではの旨みを残してくれます。
次にいただいたのは、「コシヒカリ純米吟醸 宝山」(720ml/税込2,060円)。新潟市内で収穫された食用のコシヒカリを50%精米して作ったお酒です。

香りはまさに炊きたてのご飯。口に含むと、いつも飲む日本酒とは違う、お米本来の甘さが感じられます。「淡麗辛口の日本酒が苦手な女性でも、好んで飲む人が多いですよ」と女将も言うようにご飯の香りを楽しむような感覚です。今まで飲んできた日本酒よりも飲みやすく感じました。
こちらの可愛らしい細くて小さな瓶は、「もっと日本酒を気軽に楽しんでほしい」と若女将の渡邉えりかさんが考案した「ひと飲み酒」シリーズ。コンパクトなサイズとその見た目を気に入り、自分用だけでなく、お土産としても購入する女性が多いのだとか。

そしてこの中の純米酒(200ml/税込620円)には、用途がもう一つあります。
それは、化粧水の代わりとして使うこと。最近は日本酒の成分を含んだ化粧水やパックなどを目にするようになりましたが、女将は若い頃からこの純米酒をスプレーに入れてそのまま顔や身体につけているそう。
▲写真で伝えられないのが惜しいほど綺麗な肌の女将

そもそも日本酒には、シミの原因となるメラニンの生成を抑制するといわれるアミノ酸や角質層の入れ替わりを促進するといわれるフルーツ酸など、肌に良いとされる要素が含まれています。美容効果と保湿効果が期待できる日本酒。使わない手はありません。
※化粧水として使用する際は、必ずパッチテストをしてください。最初はコットンに染み込ませて、腕につけることをおすすめしています。

地元食材にこだわる古民家イタリアンで舌鼓

酒造見学も終え、お腹が空いてきたところで、温泉街の中心にある古民家イタリアン「灯りの食邸 KOKAJIYA」(以下、KOKAJIYA)へ。100年以上の歴史を持つ古民家を改装し、2013年に開店したイタリアンレストランです。
▲仲間とともにオーナーシェフ自ら古民家を改装

こちらのお店は新潟県産の素材にこだわっており、オーナーシェフの熊倉誠之助(くまくらせいのすけ)さんが直売所などで仕入れた野菜や、毎朝お店に届く魚介や肉の種類によってその日のメニューを考えています。
▲スープやパスタ、メイン料理、自家製パン、ドリンクがセットになったランチコース(税別2,600円)
この日のスープ「岩室産じゃがいものポタージュ 帆立の炙りと菜花」は滑らかな舌触りで、じゃがいもの旨みをそのまま味わえます。さらにふりかけられた胡椒がピリッとした刺激を与え、味のメリハリが利いた一皿です。
パスタとメイン料理はともに魚介と肉の2種類から選択可能。
この日筆者は「十日町産鹿とフレッシュトマトのラグー」の肉のパスタと、メイン料理には「寺泊(てらどまり)産鱸(すずき)と白子のポワレ あん肝ソース」の魚料理を選択しました。

パスタソースには鹿肉がたくさん入っていますが、鹿特有のクセはなく、言われてみなければわからないほど。口に入れると溶けてしまうトマトの酸みと鹿肉の旨みのバランスが絶妙です。
▲メインの魚料理「寺泊産鱸と白子のポワレ あん肝ソース」

メイン料理の鱸を食べてみると、旨みがぎゅっと閉じこめられていてびっくり。表面はカリッと焼かれていても中はふわっと蒸したような仕上がりで、グリルするときよりも、濃厚な味わいでした。

とろりとしたあん肝ソースは、鱸との相性バツグン!クリーミーでありながら少し酸みも感じるあん肝ソースだからこそ、濃厚な鱸をより引き立てています。
▲ローズマリーとフェンネルが練りこまれている自家製パン(手前)

セットに付いてくる自家製パンに使用する小麦粉は、車で約10分の農園から仕入れているそう。外側はパリッ、中はフワフワで小麦の甘みを感じることができます。あん肝ソースをつけて食べると塩気とマッチし、いくらでも食べられそう。

なお、KOKAJIYAでは今回ご紹介したランチコースからメイン料理がない「スープとパスタのセット」も1,300円(税別)でいただけます。どちらも予約不要で食べられるので、その時のお腹の具合に応じて選ぶことができます。
▲KOKAJIYAのロゴをあしらった装飾。鍛冶屋の分家であることからKOKAJIYAと名付けられた

オーナーシェフである熊倉さんは、新潟市西区の出身。
飲食業に興味を持ったきっかけは、学生時代に経験したカフェバーでのアルバイトでした。進学先の沖縄で「café & bal RitMo(リトモ)」を立ち上げ、6年半運営。その後、家庭の事情で新潟に戻ると、地元食材を使ったケータリングを開始し、数々のイベントに参加する中でこの古民家とも出合ったそうです。
▲KOKAJIYAの2階は、カフェとして利用可能

「KOKAJIYAは古きものを次の世代へと受け渡すと同時に、豊かな自然がある岩室の魅力を伝える役目も担っていると思います」と言う熊倉さん。古民家でほっとくつろぎ、地元食材にこだわった本格イタリアンを食べたいときにはぴったりの場所です。

3種の源泉を楽しめる「だいろの湯」で極上湯浴み

お腹を満たしたので、いよいよお楽しみの温泉へ。岩室温泉街の南にある日帰り入浴施設「だいろの湯」は、50畳の大庭園露天風呂に使用している1号源泉、内湯に使用している2号源泉、露天岩風呂に使用している3号源泉と、3つの源泉を楽しめます。入館料は、大人800円(税込)でタオル・バスタオル付。平日の17:00以降は大人500円(税込)で入浴可能です。
▲こちらは大庭園露天風呂。加水は行わず、無濾過にてすべて源泉掛け流し。触ってみると少しぬるっとした感触で、お肌もスベスベになりそう

女湯の大庭園露天風呂に一歩入ると、温泉らしい硫黄の香りが漂います。泉質は含硫黄―ナトリウム―塩化物温泉で神経痛や筋肉痛、やけどや切り傷などにも効果があるといわれています。
内湯に使用している2号源泉の泉質は1号源泉と同じですが、硫酸イオンが特に高いことが特徴。角質を軟らかくし、お肌の潤いを取り戻すといわれています。浸かってみると、先ほどの大庭園露天風呂よりぬるっとした印象。少しの間しか浸っていませんでしたが、肌を触ってみるとしっとりとした感触がしました。
露天岩風呂や露天打たせ湯に使用されている3号源泉は、長湯しても疲れにくく、最もリラクゼーション効果に優れています。3号源泉のお湯は特にアルカリ成分が多いため、皮膚にも優しいとのこと。打たせ湯もあるので、肩こりが気になる方は打たせ湯でゆっくりするのも良いですね。
浸かってみると、露天風呂だからか少しぬるめな印象。人の体液に近い温泉成分ということで、長湯をしても疲れませんでした。筆者はいつも温泉に入るとかなり体力を消耗してしまうのですが、これには驚きました。
だいろの湯では3つある源泉の入浴の順番も提案しています。
まずは2号源泉(内湯)でお肌を柔らかくし、1号源泉(大庭園露天風呂)で美肌効果や血流を促進、そしてリラクゼーション効果のある3号源泉(露天岩風呂など)でゆっくりと休むと、効果的に温泉の効能が期待できるそうです。

「角屋悦堂」で昔から続く岩室温泉のお菓子を味わう

温泉で身体を温めた後は、お土産を探しにお菓子処へ。先ほど紹介したKOKAJIYAの目の前にある「角屋悦堂(かどやえつどう)・岩室本店」へと向かいます。
▲出迎えてくださった女将の佐藤千恵子さん
▲「金鍔(きんつば)」は小豆、白いんげん、青えんどう豆の3種類。小豆、青えんどう豆は各1個税込138円、白いんげんは1個税込150円(※すべて7・8月以外で販売)

佐藤さんにおすすめを聞いてまず名前があがったのが「金鍔」。
一口食べると皮の柔らかさとモチモチとした食感に驚かされます。それもそのはず、皮の部分は今でも手焼き。手焼きだからこそ、この柔らかさが出せるそうです。そして中にはぎっしりと詰まった小豆。甘すぎず、さっぱりとした味わいです。
▲「おこわだんご」5個入り税別 700円

もう一つの名物は「おこわだんご」。こしあんが入った米粉の団子をさらに餅米で包んだ商品。新潟県在住の筆者もあまり名前を聞いたことがありませんでしたが、岩室温泉では昔から食べられていたお菓子だそう。農作業の時に余ったご飯を団子のまわりに付けたことが始まりなのだとか。その後、ご飯から餅米に変わっていったそうです。

「それぞれの味が主張しそうだな」と思いつつ食べてみると、予想以上に味がまとまっていてびっくり。こしあんの甘さは少し抑えめに、餅米に塗られた醤油はしっかりめに。それぞれが主張することなく、全体で一つの味になっていました。
他にも羊羹や饅頭、ロールケーキなど和洋どちらのお菓子も取り扱っています。街歩きの最後、お土産を購入するのにピッタリのお店です。

初夏には木立に蛍が舞う、自然豊かな岩室温泉

岩室温泉は蛍の名所としても知られ、例年6月下旬から7月上旬には多宝山の麓から流れる「岩室払川(いわむろはらいかわ)」の沢沿いに、清水で育った蛍が飛び交います。地元では「冬妻(ひよつま)ほたる」と呼び、長年親しまれています。
▲条件が良いと息を飲むような景色が目の前に現れる(写真提供:いわむろや)

冬妻ほたるが多く飛ぶのは、20度以上の生暖かい気温で、湿度の高い日。かつ曇りで風のない雨上がりの夜だとさらに良いそう。おすすめの時間は20:00頃から30分程度。陽が沈み、暗くなった時間帯に木立に輝き舞う蛍を見つけたときは感動しますよ。
▲秋の岩室温泉。農道に植えられたはざ木に刈り取った稲を掛け、天日で乾燥させている様子(写真提供:いわむろや)

温泉に酒蔵、地元食材を使ったレストランなど、一日を通して楽しめる岩室温泉。慌ただしい日々に疲れたときには、自然溢れる岩室温泉を訪れてみてください。趣きある温泉宿もたくさんあるので、一泊してゆっくりと街歩きを楽しむのもおすすめです。ゆったりとした休日を岩室温泉で過ごしてみませんか?
長谷川円香

長谷川円香

ライター。新潟をもっと楽しくするWEBマガジン「にいがたレポ」参加ライター。広告会社にて勤務後、フリーランスに転向。「暮らすような旅」をモットーに地域に住む人・日常も含めて伝えることを目標にしている。 編集:唐澤頼充

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