飯坂温泉で湯浴み三昧!松尾芭蕉も癒された湯治場で、心と体が喜ぶぶらり散歩

2019.03.27 更新

松尾芭蕉や正岡子規らをはじめ、名だたる文人たちが訪れたという福島県の名湯「飯坂(いいざか)温泉」。9つもの個性あふれる共同浴場と「ちゃんこちゃんこ」と呼ばれる石段がシンボルの坂の町です。昔ながらの温泉情緒あふれる街並みと、温泉街の賑わいの中から生まれたグルメ、そして地元の人との語らいに、身も心も満たされる東北屈指の温泉をご紹介します。

街の歴史を知るには、飯坂温泉駅前広場へ!

飯坂温泉といえば、JR福島駅で福島交通飯坂線に乗り換え、終点の飯坂温泉駅まではわずか20分ほどというアクセスの良さが魅力。東北新幹線から小さなローカル線へ。このワンクッションが旅の気分を高めてくれます。
▲福島交通飯坂線・福島駅–飯坂温泉駅は大人片道370円(税込)
▲車内にはこんな工夫も。温泉気分が盛り上がります!

飯坂温泉駅に着いたら、駅前の広場で情報収集を。ここには飯坂温泉を知る上で重要な3つのポイントが凝縮されているので、散策前にぜひ押さえたいところ。
まず旅人を出迎えてくれるのが、松尾芭蕉の像です。
「奥の細道」の道中、飯坂温泉を訪ねた松尾芭蕉。旅で疲れた身体を温泉で癒し、さぞご満悦だったろうと思いきや、書き残したのはこんな一節。

「湯に入りて宿かるに土座に筵(むしろ)を敷てあやしき貧家也」(温泉に入った後、宿を探したものの粗末な家しかなかった)
どうやら散々な滞在となったようですが、それには理由がありました。当時の飯坂には「農業や商業に関係のない旅人に宿を貸してはならない」とのお触れがあったのです。一介の旅人にすぎない芭蕉らに土間を貸し、筵を敷いてやったのは、飯坂の人の精一杯のおもてなしだったのかもしれません。

そして芭蕉像のお隣には、温泉卵(?)の銅像が。
▲台座に鎮座するのは飯坂温泉名物・ラジウム玉子の銅像!?

実は飯坂温泉は、日本で初めて温泉の中にラジウムが発見された地でもあります。1898(明治31)年、女性で初めてノーベル賞を受賞したキュリー夫人がラジウム元素を発見。それから6年後の1904(明治37)年、真鍋嘉一郎(まなべかいちろう)が飯坂を流れる赤川の源泉に、ラジウムが含まれていることを突き止めたのです。「飯坂ラジウム温泉」の名前はこうして全国に広まったといわれています。

さらにそのお隣が、「十綱橋(とつなばし)」です。
▲幹線道路としてだけでなく、水道や温泉、電線、通信線も通っている住民のライフライン

飯坂温泉は、摺上川(すりかみがわ)とその支流の流れ沿いに旅館が軒を連ねる街。十綱橋の上に立つと、その様子が一望できます。
▲川沿いに立ち並ぶ温泉旅館。左側に見えるお城のような建物は一体……?

摺上川に橋が架けられたのは、1729(享保14)年のこと。それまで人々は、両岸に張り渡した1本の綱をたぐりながら、渡し船(十綱の渡し)で急な流れを往復していました。現在の十綱橋は1915(大正4)年に完成したもので、日本最古級の綱アーチ橋として貴重な土木遺産にも数えられています。
駅前広場から通りを挟んだはす向かいには「飯坂温泉観光協会」があり、パンフレットや散策マップなどをもらったり、観光情報を聞くことができます。

飯坂の湯、まずは「波来湯」から

十綱橋から見えた和風建築が気になって、近くへ行ってみることに。駅前の広場から緩やかな坂を上っていくと……。
なんと温泉でした!
ここは町内に9つある共同浴場の1つ、「波来湯(はこゆ)」。約1200年の歴史がありますが、2011年に太鼓やぐらを設けた和風の建物としてリニューアルオープンしたため、館内はエレベーターや多目的トイレも整っていてとても便利です。
▲女湯内部の様子(写真提供:福島市観光開発株式会社)

飯坂温泉といえばお湯の熱さで知られますが、こちらは熱いお湯とぬるめのお湯の2つの浴槽が用意されているので、温泉初心者にも安心です。まずはここに入って、旅の疲れを癒しましょう。テラスにはベンチもあり、湯上りに摺上川を眺めながらくつろぐこともできます。

「ちゃんこちゃんこ」とそぞろ歩きたい坂の町

さて、温泉でさっぱりしたので、今度は街の中心部へ向かいます。
飯坂は坂の町。いたるところに坂道や階段があります。
地元の人たちはこれらの石段のことを「ちゃんこちゃんこ」と呼び、それを聞いた詩人の西條八十(さいじょうやそ)は「飯坂のイメージにぴったり」と、「飯坂小唄」を作詞したそうですよ。
▲専用駐車場から共同浴場・鯖湖(さばこ)湯への道にある、その名も「湯道坂」
どの坂道も風情があって、ゆっくりとそぞろ歩いてみたくなります。

飯坂温泉の中心で湯神に祈る

飯坂温泉の特徴は、街全体がコンパクトなこと。徒歩数分圏内に見どころが集まっているんです。
駅から「湯沢通り」を5分ほど歩くと、飯坂温泉発祥の地「鯖湖神社」に到着します。
▲町の中心、石造りの小さな広場に立つ「鯖湖神社」

先ほど波古湯は約1200年の歴史があると、さらっと紹介してしまいましたが、飯坂温泉の歴史は本当に古く、一説には2世紀ごろ、ヤマトタケルノミコトが東征の折に発見したともいわれ、宮城県の鳴子温泉・秋保(あきう)温泉とともに奥州3名湯に数えられる由緒正しき湯処なのです。
▲境内には貯湯槽も。ここから温泉が湧き立っているのがわかる

弱アルカリ性単純泉は肌への負担が少なく、クセのないまろやかなお湯。温泉にありがちな硫黄のような匂いもありません。湯上りはしっとりすべすべで保温効果も抜群なので、美肌を求める女子旅にピッタリです。
お社の左側には小さな如来様「泉仏(せんぶつ)お湯かけ薬師如来」が。身体の癒したい場所に温泉をかけると、よくなると伝えられています。
慢性的な肩こりに悩む筆者は、迷わず如来様の肩におかけしました。
▲温泉パワーをどうぞお授けください……

参拝をすませたら、また散策へ。温泉郷の楽しみはまだまだこれからです!

街歩きの途中で立ち寄りたい!温泉カフェ「oncafé」

昔ながらの温泉地かと思いきや、ランチやお茶にぴったりなおしゃれなカフェもあるのが飯坂温泉のよいところ。
こちらの「oncafé」は、鯖湖神社から徒歩30秒のところに立つ和風一軒家です。
▲「oncafé」のonは温泉の温

和風の空き店舗だった古民家をリノベーションし、カフェに生まれ変わったのは2012年のこと。ミッドセンチュリー風の家具が置かれた店内は天井が高く、ゆったりと落ち着く雰囲気です。
▲地元カップルのデートスポットにもなっている。不定期でライブが行われることも

ここでぜひ食べていただきたいのが「茂庭っ湖(もにわっこ)スープカレー」!
▲「茂庭っ湖スープカレー」(スープ、サラダ、小鉢、ラジウム玉子、コーヒー/紅茶つき)(税込1,250円)

名前と見た目の由来は、飯坂温泉を流れる摺上川上流にある摺上川ダム(通称・茂庭っ湖)。ご飯が山、彩り豊かな素揚げ野菜が森の木々のイメージなのだそう。

カレーはスパイスの効いたスープカレーです。またカレーに付いてくるラジウム玉子とは、飯坂温泉名物のいわゆる温泉卵。カレーの上にのせて食べると、しょうゆで食べるのとは違った洋風の味わいになりますよ。
▲店長の藤原律子さん

このほか、「ラジウム玉子親子丼」(税込850円)や「ランチプレートセット/シーフードグラタン」(税込1,050円)など、ランチは常時4種類があります。週末は行列ができることもあるので、早めのランチをおすすめします!

アッチッチ!飯坂温泉最古の湯で地元の人と触れ合う

ランチタイムの後は、ここでもやっぱり温泉でしょう。oncaféの目の前にある 「鯖湖湯」です。
▲夜間はライトアップされて風情もアップ

鯖湖湯は飯坂温泉で最も古い温泉で、芭蕉が入ったのもこのお湯だったといわれています。長らく日本最古の木造建築による共同浴場として親しまれてきましたが、1993(平成5)年にリニューアル。かつての趣をたたえたヒバ材の壁や天井が美しい建物です。

女湯の暖簾をくぐると、自動販売機がありました。入浴料はたったの税込200円。タオルのレンタルや石鹸、シャンプーなどは別料金なので持参するとよいでしょう。

番頭さんに入浴券を渡して、いざ入場。
▲御影石の浴槽と洗い場が広がる(写真提供:福島市観光開発株式会社)

脱衣所と浴場はしきりがなく、階段を数段下りるともう湯船が。広いオープンスペースは開放感満点です。

さっそくお湯をかけてみると……アツッ!!あまりの熱さに目をパチクリさせていると、湯船に浸かっていたおばちゃんが「そこのホースで水を埋めながら入りなさい」と教えてくれました。

湯口の上についている温度計を見ると48度。はっきり言って、入れる気がしません。でも大丈夫。上がり湯の近くにホースがあり、冷たい水を注ぐことができるんです。その際、同浴者に断ること、ホースの水は足元など自分の身体近くに注ぐこと、上がる際には水を止めてホースを戻すこと、の3点を守るのがマナー。

しばらく経つと、長く入っていられるようになってきました。「慣れてきましたね」と、同浴のお姉さんに声をかけられます。飯坂温泉にはもっと熱いお湯もたくさんあり、熱いのが苦手なら最初に紹介した波来湯がおすすめ、と教えてくれました。こんなふうに地元の方と触れ合えるのも共同浴場の醍醐味。身も心も癒されますよ。

一度食べたらやみつき!名物「円盤餃子」

温泉に浸かって、街歩きを続けていたらお腹が空いてきました。その土地ならではのグルメを味わうのも、旅の楽しみ。飯坂温泉でぜひ訪れてほしい名店といえば、「餃子 照井(てるい)飯坂本店」です。
▲温泉街の住宅が集まる場所で営業している「餃子 照井」

創業は1953(昭和28)年。先代の店主が戦時中に満州で味わった餃子の味が忘れられず、試行錯誤を繰り返して作り上げた特製餃子の「円盤餃子」で有名なお店です。野菜炒めや醤油ラーメンなど、庶民的なメニューも人気を集めています。
▲「いらっしゃい!」と元気に迎えてくれた女将・佐藤とも子さん

まずは、この味を求めて週末には行列ができるという「円盤餃子」をいただきます。皮も餡も毎日マスター自らが手作りする自信作は、「注文をいただいてから包むので、少しお時間をいただきます」と佐藤さん。

餃子を待つ間、店内を見てみましょう。
落ち着いた座敷席と、奥にはテーブル席もあります。ん?テーブル席の壁にすごい数の色紙が……。
▲数々の有名人の色紙や写真がずらり

これは期待がふくらみます!

待つことおよそ10分、「お待たせしましたー」と佐藤さんが運んできてくれたのがこちら!
▲円盤餃子(22個入り/税込1,296円)

ま、丸い……!まさに円盤!

「そうなんです。メニューに取り入れた当初は近隣の旅館からの注文がほとんどで、フライパンで焼き上がったものをそのまま配達していたため、こんな形になりました」と佐藤さん。飯坂温泉が一大温泉地として賑わっていたころ、旅館の従業員たちのまかない用に生まれた出前料理なのだとか。

さっそく、特製タレにラー油とお好みで一味唐辛子を加えていただきます。
皮が薄くてパリッパリ、中のお肉もジューシーで、これはいくらでも食べられます!!

「皮は3日間寝かせた後、極限まで薄く伸ばして軽さを出しているんですよ」と佐藤さん。この皮の軽さは初体験です。一皿22個と聞いてはじめはおののきましたが、一つ5、6センチの大きさで一人でも一皿いけそう……。ちなみに、半皿11個入り(税込648円)もありますよ。

もう一品、こちらも人気メニューの「野菜炒め」もいただくことに。
▲野菜炒め(税込864円)

どうですか、このボリューム!もやし、キャベツ、ニラ、玉ねぎ、ニンジン、そして豚肉と、ど定番の野菜炒めですが、シャキシャキと歯ごたえ抜群。お皿が鉄製なのでいつまでも熱々が楽しめます。こちらも大満足の逸品でした。
▲外で待つお客さんのために、入口横には源泉掛け流しの足湯が。行列を待つ間も寒くない

もともと居酒屋だったというだけあり、地酒の種類も豊富です。気さくなマスターや女将の人柄に、心もほっこり。ぜひ訪れてみてはいかがでしょうか。

福島盆地を一望!絶景穴場スポット

温泉地に来たからには共同浴場巡りは外せません。宿に一泊して翌朝早く、街を散策していると、ザザー、ザブーンとお湯をかける音が聞こえてくるではありませんか。音の聞こえる方へ行くと……。
ありました!「大門の湯」です。こんなに朝早くから皆さん温泉に入っているんですね(6:00~22:00、木曜定休)。こちらのオススメは、お湯もさることながら、その眺望です。共同浴場の先を少し上ると駐車場があり、そこから福島盆地が一望できるのです。
ジャーン!ちょうど日の出に遭遇しました。昇る朝日に照らされた福島の街並みと山々。息をのむ美しさです。
▲福島の名山・安達太良山(あだたらやま)も見える

湯上りにこんな景色を眺められたら、気持ちの良い1日がスタートできそうですよね。

このほか、源泉温度56度!激熱を体験できる「切湯(きりゆ)」をはじめ、住宅街にあって地元の人たちに親しまれている「導専(どうせん)の湯」や「十綱湯(とつなのゆ)」、ヘルニアに効くといわれる「仙気(せんき)の湯」など、飯坂温泉には個性的な共同浴場がいっぱいあります。湯温や泉質もそれぞれ異なるので、ぜひ入り比べてみてはいかがでしょうか(営業時間などの詳細は飯坂温泉オフィシャルサイトをご覧ください)。

歴史的建造物と名家のあゆみに見る飯坂の心

朝の街歩きを続けます。鯖湖湯から北に2分ほど歩くと、飯坂温泉の名所「旧堀切邸」があります。
▲「旧堀切邸」の表門

ここは江戸時代から続いていた豪農・豪商「堀切家」の屋敷跡。約4,000平方メートルの広大な敷地内には、現存する福島県内最大・最古の土蔵や近代和風住宅の主屋など歴史的価値の高い建物が並ぶとともに、展示スペースや足湯など憩いの場が設けられ、市民や観光客に広く無料で開放されています。
▲1880(明治13)年に火災で焼失、その翌年に再建された近代和風建築の「主屋」

屋敷のかつての主人であった堀切家は、大庄屋として飯坂、そして日本の政治に大きく貢献した一家です。
そもそも屋敷の西を流れていた赤川が大雨で氾濫した際、「堀を切って」村の被害を食い止めたことから「堀切」の名を名乗るようになったというから、すごい人たちです。その後も天明の大飢饉で民衆を救済したり、大火の復興に奔走するなど、飯坂の発展に尽くしました。
▲主屋の内部も見学できる

主屋には「新蔵」「中の蔵」「道具蔵」の3つの蔵が併設されていて、それぞれ内部が展示スペースとなっています。
▲「新蔵」には、堀切家の誕生や先祖由緒、家系図などが展示されている

それぞれ中に入ると、「堀切三兄弟」と呼ばれた堀切善兵衛(当時の最年少衆議院議員)、善次郎(第13代東京市長)、内池久五郎(きゅうごろう)らの足跡をたどる資料が。
▲こちらは堀切三兄弟の父、堀切家14代当主・堀切良平。1888(明治21)年の飯坂町の大火では、私財を投じて焼け跡の整備に奔走した

大蔵政務次官として財政立て直しに成功したり、関東大震災後の復興に尽力したり。日本の近代国家づくりに欠かせない人物たちがここ飯坂町から出たと思うと、背筋が伸びる思いです。

そして「旧堀切邸」のもう一つの見どころは、こちらの「足湯・手湯」です!
源泉掛け流しの温泉に手や足を浸しながら、美しい庭園を眺めていると、気分はすっかり江戸時代。歴史の重みを感じながらのリラックスタイムを楽しめますよ。
春にはシャクナゲ、ハナミズキ、ハクモクレンなどが美しく咲き誇り、夜間は間接照明が美しく建物を照らします。街巡りの合間に一息つくのにもぴったりの癒しスポットです。

名物「ラジウム玉子」をお土産に

旧堀切邸を出てすぐのところに、「ラジウム温泉たまご」の看板を発見!
▲町内に4、5軒あるラジウム温泉玉子を扱う店の一つ「菅金(かんきん)商店」

店内に入ると、まさに今、玉子が次々と箱詰めされているところではありませんか!
今朝、温泉に浸かってきたばかりという赤玉玉子たちが目の前でカラフル&キュートな包装紙に包まれていきます。
▲ラジウム玉子(10個入り/税込540円)
見た目もかわいらしく、常温で4週間ほど日持ちするので、お土産にもピッタリですね。
いかがでしたか?古き良き温泉情緒が徒歩圏内で満喫できる「飯坂温泉」。とにかく温泉がマイルドで、筆者は肌のしっとり感が数日続くほどでした。身体のホカホカが長時間続き、つらかった肩こりと腰痛もじんわり和らいだのにもびっくり。女性に全力でおすすめしたい温泉地です!4月から5月にかけては近くの「花ももの里」にて花桃が見頃を迎えますので、あわせて出かけてみてはいかがでしょうか?
髙松夕佳

髙松夕佳

編集者、ライター。茨城県つくば市のひとり出版社「夕(せき)書房」代表。『家をせおって歩いた』(村上慧著)、『山熊田 YAMAKUMATA』(亀山亮著)、『宮澤賢治 愛のうた』(澤口たまみ著)、『失われたモノを求めて 不確かさの時代と芸術』(池田剛介著)が好評発売中。ふるさと、茨城の魅力を再発見する日々。

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