土の感触を楽しむ60分。窯元「つかもと」が開く陶芸教室だから、工房も見学できる!

2015.10.26

栃木県の益子町に窯を構える「つかもと」は、今年で創業151年。「土にさわる楽しさと、日用品ができるまでのストーリーを知ってほしい」そんな思いから陶芸教室を開催しています。工房見学もでき、釉掛けや本焼きなどの工程も見ることができます。

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益子駅から車で約7分。周囲を緑に囲まれた「つかもと」の工房では、職人さんが益子の作品づくりに励んでいます。今回は、「つかもと」が開催している陶芸教室プログラムのなかの、「ロクロ体験」に参加しました。プログラムはほかに、「手ひねり体験」や「絵付け体験」もあります。
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▲真岡(もおか)鐵道「益子駅」または、東野バス「益子停留所」で下車。自然に囲まれた益子では、陶器づくりに適した土が豊富にとれる
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▲釉場や窯場などの見学ができる工房の敷地内にロクロ教室がある。弟子入りした気持ちでがんばります!
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▲広々とした教室には電動ロクロ台が20台ある

上手につくるよりも、楽しむことが大事!

今回、電動ロクロを使った器づくりを教えてくれるのは、陶芸教室担当の中根康夫さんです。ロクロ体験では、益子焼の製造工程のなかの「成形」を行います。
「成形」とは、粘土を器のかたちにする作業です。体験教室は約60分。今回は、ちょっとしたおかずを入れるのに役立ちそうな小鉢をつくることにしました。
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▲18年前に東京から益子へ移住した中根康夫さん。窯元で修行を積んだのち陶芸作家となり、体験教室の講師を務めている
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▲電動ロクロにセットされた粘土。つくりたいものにもよるが、一玉から約2~4個の器をつくれる
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▲はじめに、中根さんが一連の流れを見せてくれる
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▲この粘土から成形していく。ちなみにこれは、「芯出し」(中心を整えて作品をつくれる状態)が済んだ状態。初心者には少しむずかしいので、職人さんが準備してくれる
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▲電動ロクロを回転させ、片方の親指の第一関節を曲げて中央部分に差し込み穴を空ける
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▲穴を少しずつ大きくしながら器のかたちに近づけていく。簡単そうにも見えるけど、果たして……

いざ成形スタートです。「わたしにもできるかな……」と緊張していると、
「まずは楽しんでいただくのがいちばん!楽しんで、それがかたちにのこるんです」と、中根さん。

電動ロクロを回転させたら、手に水をつけて、粘土の表面をまんべんなくぬらしていきます。ひんやりとした土の感触が、なんだかなつかしくて気持ちがいい!
このとき、水をつけすぎると粘土がゆるくなってしまうので注意します。かといって水が少ないと粘土が乾いて固くなってしまう……。土の表面が明るい灰色の状態を保つのがコツです。
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▲「久しぶりに土をさわったなぁ」と、しみじみ。ロクロ台に座るときに足を開くのでスカートは避け、動きやすい格好で参加しよう。エプロンを持参すると、汚れを気にせずに作業ができる
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▲手についた泥はむやみにとらない。この泥が粘土の表面をなでるときに、滑りをよくしてくれる
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▲そーっと、そーっと穴を大きくしていく。緊張しています……

「肩に力が入っていますね。脇を少しあけるようなイメージで肩の力を抜いてください。失敗してもいいんです。修行ではありませんので(笑)」と中根さん。

どんなふうに手を動かせばいいのか、どのくらい力を入れればいいのか……なかなかコツがつかめません。
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▲ちょっとおそるおそる。でも思い切って手を動かしていく
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▲格闘しながらも、イメージしている小鉢に近づいてくるとうれしい!


中根さんいわく、陶芸は頭で理解してもだめで、手が感覚をつかみだしたときに、はじめて思い通りのかたちをつくれるようになるということです。

さて、つくりたい小鉢の大きさになったら、深さを出していきます。
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▲時計の9時の位置(座った位置からの目線で)に右手の中指を置き、左手で外側からそっと支える。そのまま、時計の8時の位置をめがけて両手をゆっくり移動。この動作を繰り返すと、少しずつ器の側面が薄くなり、深さも出てくる

「右利きだと、どうしても右手のほうに余分な力が入ってしまいますよね。右手が3、左手が7くらいの気持ちで、力を入れてみてください」

ふだん何気なく動かしている両手ですが、このときばかりは全神経を両手に集中させます。
繰り返すほど表面がなめらかになっていき、これは快感!
ただし、この作業を行いすぎると、薄くなりすぎて割れやすくなるので、ほどほどにします。
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▲なんとか小鉢らしきかたちになりました!

糸をつかってカット!

粘土は、焼くと水分が抜けて縮まるため、つくりたい大きさよりも少し大きめに。縮まった分、厚みも出るので、厚さも薄めにつくります。
成形が終わったら、糸を使ってロクロ台から切り離します。
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▲いざ、トライ!
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▲あとで底の部分を削って高台(こうだい)をつくってもらうので、高台の高さを決めたらその下に糸を軽く巻きつける。左手の位置は固定したまま、右手だけ手前に引いていく
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▲両手でピースをつくって、手の平を上にして両側からはさみ、そっと持ち上げてロクロから切り離す。器がごろんと落ちないように気をつけて
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▲木台に置くときに油断してしまい、ちょっとゆがんでしまった……。ここまでで12~13分

小鉢のほかに、平皿とコップにも挑戦してみました。つくりたいかたちがちょっと変わるだけで、手の動かし方や力の入れ具合が変わり、器づくりの奥深さを体感できました。1時間で2~3個くらいつくれます。

「お疲れさまでしたー!」体験はこれにて終了です。夢中になって、時間を忘れていましたが、あっという間に1時間が経っていました。
どんなかたちになろうと、一生懸命つくった器は愛しくてたまりません。

ここから、削り→乾燥→素焼き→釉掛け(くすりがけ)→窯詰→本焼きなどの行程をへて、器は完成を迎えます。乾燥から本焼きまでの作業は、職人さんにお任せ。約45日後に手元に届きます。
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▲仕上がりの色は、6色の釉薬(ゆうやく)から選びます。左から並白、黒釉、糠白釉(ぬかじろゆう)、灰釉、青磁(せいじ)、飴釉(あめゆう)
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▲参加者がつくった作品は、2~3日たってから底の部分に高台(こうだい)がつくられる。カンナと呼ばれる鉄製の道具で削り出していく

熟練した職人技と製造工程を見ることができる

「つかもと」では、職人さんが働く工房を見ることができます(※注)。職人さんが益子焼をつくっている工程を見学できるのは、益子ではなかなかありません。工房を持っている「つかもと」だからこそ体験できる時間です。
この道40年の職人さんをはじめ、この日は5人の職人さんが、息の合ったチームワークで益子焼をつくっていました。
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▲釉掛けの作業。器の色を出したり器から水が漏れないようにしたりする
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▲「簡単そうに見えますが、同じ厚さで釉薬を掛けるのには熟練した技が必要です」と、中根さん
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▲器を釉薬の中にまるごと入れて釉掛けする方法もある
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▲チョコレートみたいでおいしそう……
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▲「つかもと」のみなさん。お互いの信頼関係が伝わってくるあたたかい工房でした
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▲窯。陶芸教室の参加者の作品もこの窯で焼かれる
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▲敷地内には登り窯もあった(現在は使用されていない)

つくっているときは、はじめての作業の連続に、戸惑いあり、笑いありのあっという60分でした。でも、体験を終え時間がたつほどに、自分でつくったという感動がじわじわとこみ上げてきて、改めてよろこびをかみしめています。
気持ちを込めてつくった器が食卓に並ぶのも楽しみです。
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▲乾燥中の作品たち。どんな料理が盛り付けられるのかな?

写真 阪本勇

(※注)工房見学について
[見学時間]8:30~12:00、13:00~17:00
[定休日]毎週木曜、隔週水曜、年末年始
※一部見学できない工程があります。また、日によって作業内容が異なるため、見学できない工程もあります。
齋藤春菜

齋藤春菜

編集者、ライター。出版・編集プロダクションデコ所属。女性の美容・健康・ライフスタイルに関する書籍、雑誌を多数編集・執筆。文芸、料理、アート本の編集も行う。全国各地へと取材に訪れたさいには地元のおいしいお店を必ずチェックする。編集を担当した本に『お灸のすすめ』『瞑想のすすめ』(ともに池田書店)、『足もとのおしゃれとケア』『わたしらしさのメイク』(ともに技術評論社)、『はじめてのレコード』(DUBOOKS)、『顔望診をはじめよう』、『月の名前』、『健康半分』などがある。

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