のっぺいうどんの老舗「茂美志や」。人情味溢れる店主のこだわりが、長浜名物の“ほっこり”を生む!

2019.03.10 更新

創業100年以上の歴史を誇る滋賀県長浜市にある「のっぺいうどん 茂美志(もみじ)や」。3代目の店主・辻喜八郎(つじきはちろう)さんが切り盛りする老舗で味わえるのは、体の芯から温まる長浜の郷土料理「のっぺいうどん」。冬の滋賀を代表するこの名物は、なんと言っても、とろみのあるお出汁が魅力。今回は、お店に伺ってその人気の理由を確かめてきました。

城下町の面影と昭和を感じさせる、どこか懐かしい雰囲気の店構え

JR長浜駅から徒歩約5分。黒壁スクエアの中心である「黒壁ガラス館」のほど近くにある「のっぺいうどん 茂美志や」(以下、茂美志や)。大手門通りの昔ながらのアーケード街の一角にひっそりと佇んでいます。
▲長屋を改装した店舗は、奥へ奥へと続く“うなぎの寝床”と呼ばれる造り

店の暖簾をくぐる前、ふとショーウィンドウを見ると紅葉のガラス細工が。店名の「茂美志や」とは、その名の通り“紅葉”にかかっているんですね。大正元(1912)年に現店主の祖母が食堂としてはじめたといいます。
▲「名物のっぺいうどん」の看板が目印

中に入ると、待合スペースにL字型の長椅子が配され、背もたれの格子になった部分には、一つひとつの枠に箸袋が挟まっていました。この店を訪れたお客さんによるメッセージです。
▲温かみのある雰囲気。おばあちゃん家みたいでとても落ち着く空間
▲帰りにそっと挟んで、記録を残して帰れば、旅の思い出になりそう
▲奥に入るとテーブル席が。お昼時にはお客さんでいっぱいになる
▲創業当時のメニューにしては贅沢なラインナップでは?カツレツやチキンライスなど、ハイカラなメニューも

1階の奥、テーブル席の壁に掛けられているのは、食堂だった頃のメニューです。薄いガラスに手書きで書かれた貴重な品で、昭和15(1940)年に発見されたといいます。見つかった時には藁に包まれていたそう。
▲どれも戦前の貴重な品

また、店内には樹の皮に書かれた貴重な経文(きょうもん)も展示されていました。法華教の経文で、昭和45(1970)年に地下から発見されたものだそう。店に飾られているのはほんの一部で、その多くは近くの博物館に寄付しているとのこと。

他にも、戦前に作られた信楽焼のたぬきや、2代目店主が実際に着ていた藍染めのはっぴなども飾られています。さすがは歴史を重ねた老舗だけあって、博物館のようにも楽しめそう。

さっそく名物の「のっぺいうどん」をいただきます!

のっぺいうどんを語る上ではずせないうどんの出汁には、厳選された材料を使用。こちらの店ではうるめ、鰹など5種の「節」と、利尻昆布を合わせています。厨房の奧にある出汁釜で煮詰められた出汁は、美しい琥珀色。見た目にもとても上品です。
▲これぞ「長浜名物 茂美志やのっぺいうどん」

登場したのは「長浜名物 茂美志やのっぺいうどん」(税込1,100円)。蓋を開けると、見た目にもとろみを感じることができる出汁とその香りが一気に押し寄せてきます。うどんには湯葉も添えられ……よく見ると、どん!と大きな椎茸が。
なんとも大きすぎるくらいの椎茸。出汁のとろみと相まって、ずっしりと重みを感じます。のっぺいうどんの香り・味をより複雑に、コク深いものにしているのが、この大きな椎茸です。

茂美志やのっぺいうどんと同時に運ばれてきたのは、滋賀が誇る近江牛を使用した「近江牛のっぺいうどん」(税込1,300円)。
「近江牛のっぺいうどん」の器には有田焼を使用。鼻孔をつつく出汁の香りがたまりません。

……と、見た目や香りのレポートはこれくらいにして、もうお腹の虫がだまってくれないのでいただきます!
▲うどんにとろみのある出汁がこれでもかと絡み、なかなか持ち上がらない

とろみのある出汁がいつまでもアツアツなので、一口目はすすれないほど!ハフハフ言いながら、少しずついただきます。麺はけっこう柔らかめ。小麦の香りを十分に感じられます。さらに、あとから鰹節など魚介の出汁がふんわりと鼻を抜けます。
サシがいっぱい入った近江牛のしゃぶしゃぶ肉は、食べるのがもったいないほど。とろみのある出汁で見えにくいですが、お肉は全部で持ち上げているものの5倍くらいの量はあります!近江牛はとても柔らかいのに、出汁に負けない脂の甘みを感じられました。
▲添えられた生姜もお揚げによく合う

そして「お花きつねのっぺいうどん」(税込1,000円)も忘れてはいけない人気のメニュー。香ばしく炙られ、焦げめのついたお揚げがのったおうどんで、長ネギの食感が良いアクセントになり、たまらない美味しさです。

同じ出汁を使用していても「近江牛のっぺいうどん」とは違い、野菜の旨みと食感が楽しめる「お花きつねのっぺいうどん」。炙ったお揚げの香ばしさも相まって、サラリといただけます。

最後に、滋賀の郷土料理「長浜田楽」をアレンジした「赤こんにゃくの田楽」(税込450円)も味わわせていただきました。
▲「赤こんにゃく」の弾けるような食感と、田楽の甘い味噌が楽しめる一品

その他にも、各種丼物やお寿司などとのっぺいうどんがセットになった、お得なメニューもたくさん用意されていました。

のっぺいうどんへのこだわり

移り変わる時代の中で、長く人々に親しまれてきた「茂美志や」。3代目・辻喜八郎さんは、地元長浜を愛してやまない笑顔が素敵な店主。でも、うどんのこととなるとこだわりは相当なものでした。

食堂だった「茂美志や」が二代目店主の時に郷土料理の店となり、昭和63(1988)年の黒壁スクエア設立の際に、メニューの一つだった「のっぺいうどん」を店の看板メニューにしたそう。それは“長浜にも名物を”という喜八郎さんの思いから。それから30年以上にわたり変わらぬ味を守ってきました。
▲どんな質問にも丁寧に答えてくれるやさしい喜八郎さん

そんな喜八郎さんのこだわりのひとつがうどんの麺!毎日午後に、店舗の奥でうどん職人さんに麺を打ってもらっているそうです。あえて一晩寝かせ、粉臭さが消えた(生地がなじんだ)うどんのみを翌日に使用します。もちろん、添加物などは一切使用していません。
▲見た目にもどっしり、しっとり、生地がなじんだうどん

「茂美志や」にはグツグツとお湯の煮える釜が2つあります。茹でている最中に、お湯の温度が下がらないよう、熱湯をつぎ足しながら茹でていくのが喜八郎さんのこだわり。
▲麺を茹で始めると、途端に職人の顔になる喜八郎さん

熱湯の中で麺が踊ってきたら火をゆるめます。茹で時間は全部で12~13分ほど。“うどんは生き物”と語る喜八郎さん。茹で上がった麺は、時間が経つにつれ食感や風味、味わいが変わっていきますが、そんな変化も本物のうどんの魅力だといいます。ちなみに、のっぺいうどんに合うのは、やはり少し柔らかめの麺なのだとか。

そしてのっぺいうどんの出汁といえば、とろみが命!複雑に香る風味豊かな出汁を仕上げるのは、喜八郎さんに長年連れ添ってきた奥さまです。
とっても可愛らしい奥さまの手によって、出汁にとろみがつけられていきます。
少し太めの菜箸を複数本使い、片栗粉を数回に分けて投入。ぐるぐるとかき混ぜると、厨房は魚介の旨みが感じられる出汁の香りいっぱいに包まれます。
少し柔らかめのうどんに、とろみのある熱々の出汁をかけて出来上がり!一杯のうどんには、たくさんのこだわりが詰まっていました。

「茂美志や」のうどんの美味しさ。本当の秘密は夫婦中の良さ!?

▲現在の2階の様子。店主自慢の調度品が飾られている

かつては、住居と店舗を兼ね備えていたというこちらのお店。2017年の改装までは、2階を自宅にして子どもたちと暮らしていたそうです。
▲手を取り合うように繋がる紅葉の紋

商店街に面した窓を見ると、店の象徴であるもみじの紋が。喜八郎さんが店を任された後、特注で職人さんに作ってもらったとのこと。このもみじは、葉先と葉先が手を取り合うように繋がっており、その様子はまるで喜八郎さんと奥さまを表しているかのよう。
▲笑顔の絶えないお二人。こんなご夫婦に憧れます
▲「やってるで」の札も年季が入っていて可愛い

うどんと出汁、そして長浜の土地と家族を愛する3代目店主・辻喜八郎さんが作るのっぺいうどんは、どこか懐かしくやさしい味わい。温かいのっぺいうどんを味わえば、身も心もホッカホカ。故郷へ帰ってきたかのような、ほっこりと落ち着いた時間を過ごしてみませんか。
藤井彩加〈Stylo Plume〉

藤井彩加〈Stylo Plume〉

フリーランスの編集・ライター。西の湖の畔に住み、コーヒー片手に仕事をしています。主に京都・滋賀で活動中。愛犬のGINGERとの散歩が癒しの時間です。

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