賞味期限10分のプルプル食感!奈良・吉野で「吉野本葛」のディープな世界を体験

2019.05.12 更新

葛粉(くずこ)の本場である奈良県・吉野。葛を知り尽くす「中井春風堂」店主による「葛会」が開催され人気を集めていると聞き、さっそく参加してきました。希少な吉野本葛を使った、ここでしかできない体験の様子をお伝えします!

▲透明感バツグン!「吉野本葛」を使った葛切づくりの様子

「吉野葛」と「吉野本葛の違いは?」まずは葛と葛粉についてお勉強

▲金峯山寺(きんぷせんじ)の門前町に佇む中井春風堂

修験道の聖地・金峯山寺を擁し、桜の名所としても知られる奈良県・吉野。今回体験に訪れた「中井春風堂」は、金峯山寺蔵王堂から歩いてすぐの場所にあります。
お店までは、大阪阿部野橋駅から近鉄吉野線利用で吉野駅まで約1時間30分、駅からはタクシー等を利用して15分ほどで到着します。
「葛会」を主宰しているのは店主の中井さん。もともとは和食の料理人をしていましたが、家業を継ぐ際に葛の事を学び、そのディープな世界にどっぷりハマってしまったそう。葛についての知識や楽しみ方、本来の魅力を世に広めたいという強い思いから「葛会」をスタートさせました。

葛会は、1日1回、月4回ほど開催されていて、予約すれば誰でも参加できます。4名以上の参加で1名3,500円(税込)~。旅行の際に予定を合わせて参加することも可能です。
▲「葛会」専用の特別室

店舗の1階は葛粉を使ったお土産品の販売や葛切り作りの実演、葛切りや葛餅などを味わえるカフェとなっています。「葛会」が開催される場所は地下にある特別室。実演と体験ができるカウンターキッチンを中心に、この会のために特別にしつらえたこだわりのスペースです。
カウンターキッチンの前に座ると、おもむろにスクリーンが降りてきました。いよいよ「葛会」のスタートです!今回は取材ということでマンツーマンの開催でしたが、通常は2名以上での開催になります。
▲中井さん自作の資料を見ながらお勉強

古来より布の材料や食用・薬用として利用されてきた「葛」。大和国の国栖(くず/現在の奈良県吉野郡あたり)が産地であったことにその名が由来することからも、ここ吉野が葛の本場といわれていることが分かります。

「葛会」では、そんな葛の歴史や葛という植物の生態、葛から葛粉を作る方法など基本的な知識を学んでいきます。意外なほどに身近にある「葛」という存在にきっと驚くと思います。
木の枝のように見えるのは「葛の根」。この根を繊維状に粉砕し、真水で洗い、精製したデンプンが「葛粉」になります。
最終的には真っ白になる葛粉ですが、そこに至るまでの手間暇は相当なもの。
アク抜きと沈殿を何度も来り返して不純物を取り除き、良質なデンプン部分だけを取り出し、日陰干しで乾燥させてようやく完成するのです。大変な手間暇と根気をかけても、葛粉に精製できるのはごく少量。希少価値が高いのも頷けますね。
▲見た目もにおいも全く差がない「吉野葛」と「吉野本葛」

意外と知られていませんが、吉野で販売されている葛には「吉野葛」と「吉野本葛」の2種類あります。
その違いは粉の割合と値段。「吉野本葛」はその名の通り、吉野産の葛粉100%。一方「吉野葛」は吉野本葛が50%以上で、残りはサツマイモやジャガイモのデンプンが配合されたものを指します。先ほど紹介したとおり、葛粉を作るには大変な手間暇がかかりますので、当然「吉野本葛」の方が値段は高くなるんですね。

葛と葛粉について学んだら、「葛餅」で味の違いを感じよう

中井さん曰く「この違いを知らずに葛粉をお土産に買う人が多い」のだそう。体験では、「吉野葛」と「吉野本葛」で作った葛餅の味を食べ比べます。というわけで、さっそく葛餅づくりの実演がスタート。まずは「吉野本葛」で葛餅を作ります。
葛粉に水を加えて混ぜていきますが、沈殿するのでしっかり混ぜないとなかなか混ざりません。ちなみにこの水は浄水器でろ過した無味無臭の水。「葛粉」そのものの味をしっかりと感じて欲しいという中井さんの強いこだわりが感じられます。
「コツはとにかく絶対に焦らないこと」と中井さん。葛粉の特性上、ゆっくり混ぜることが大事なんだそう。
葛粉を水に溶いたら、鍋に入れて火にかけていきます。最初は白濁していますが、加熱しながら混ぜること約1分、だんだん透明になっていきます。
透明なかたまりになったら取り出して、ボウルに張ったお湯の中に入れていきます。実はこの“お湯“に入れることがとても大事な工程で、これによって葛餅や葛切りがより透明になるのだそう。
出来上がった葛餅を一口サイズに切り分けたら……
再びお湯にさらして……
お皿に盛って完成です!
いかがでしょうか、この透明感!メチャメチャ美しいですよね。筆者も仕事柄さまざまなものを食してきましたが、これほど美しい食べ物はそうそう無いと思います。

というわけで、さっそく一口。まずは何もつけずに味わってみます。
……なんという柔らかな口あたり。表現が難しいのですが「ツルッ」と「ムニュ」のいいとこどりという感じ(伝わりますでしょうか……)。
味わいはといえば、ほんのりとした何とも言えない上品な甘みが感じられます。遠くのほうには少しの苦みも。非常に奥深い味わいです。
葛餅そのものを味わったあとは、ぽん酢、黒蜜、きなこの3種類の味で楽しんでみてください。筆者的には風味と甘みが加わって味わい深いきなこが好みでしたが、どれもそれぞれの美味しさがあり、葛餅の味を引きたてていました。
「吉野本葛」で作った葛餅を味わった後は「吉野葛」の葛餅を頂きます。そして最後は「吉野本葛」を一番美味しく味わえる特別な製法で作った葛餅が待っています。
それぞれの味や作り方の違いに関しては……ぜひ実際の「葛会」で体感してください!

上手にできるかな?「葛切り」作りを体験!

続いては「葛切り」作りの体験です。
まずは中井さんが作り方のお手本を見せてくれるので、しっかり見学しましょう。
専用の器に水に溶いた「吉野本葛」を流し入れていきます。
続いて、100度に近いお湯に浮かべながら器を前後に揺らし、全体に均一になるようにならしていきます。
ある程度固まってきたら、お湯の中に沈めて一気に加熱します。
じゃぼんっと沈んだ瞬間、白濁していたものが透明に変わりました!
金属の器の底が見えますよね?ほんとにあっという間に透明になるので驚きですよ!
透明になったら熱いお湯から上げて、温度の低い方の湯の中に入れます。へらを使って慎重に器から外していきます。
この透明感、伝わりますか?
へらで器からはがしたら、お湯からあげてまな板の上へ。おおよそ1cmほどの幅で切っていきます。
流石プロ、キチンと切幅が揃っていてとっても美しいです。
「意外と簡単でしょ?」と中井さん。
いやぁ~、手順自体はシンプルですが…なかなか手ごわそうです。

というわけで、おっかなびっくり筆者もチャレンジしてみました。
まずは葛粉と水を混ぜるところから。
下に沈殿しているので、かなりカタい!ぐっと力を込めて泡立て器を突っ込んで粉を起こし、数回ほど混ぜると抵抗が無くなりました。
混ざったらサッと器に流し込みます。のんびりしているとまた沈殿してきますので、ここは手早く行うのがコツだそう。
「ゆっくり、慎重に、均一に、お湯が中にはいらないように…‥」中井さんの指示を聞きながら、熱湯に浮かべた器を少しずつ動かしていきます。白濁している液体がだんだんと半透明になり、動かなくなってきました。頃合いですね。
「はい、じゃあ沈めて!」
スーッと滑らすようにお湯に沈めていきます。ここまで時間にして1、2分でしょうか。加熱すると一気に透明に変化しますので、時間が勝負なんですね。
温度の低いお湯に沈めながらへらを使ってはがしていきます。
これがなかなか難しい!ちょっとずつはがしていかないと途中で破れてしまいそうなさわり心地。緊張しますが慎重に、慎重に……
はがせました!
いかがでしょう、けっこう上手にはがせたと思いませんか?見ての通り、持つ手の指が空けて見えるほどの透明感です。
▲均等な幅で切ったら、器に盛って完成!

ちなみに、この透明感とみずみずしさは、葛粉の性質上10分ほどしかもたないのだそう。たったの10分……なんともはかないですよね。でも、はかないからこその美しさを感じられるのも、日本人の美徳だと思います。
葛切りも葛餅と同じくぽん酢、黒蜜、きなこで味わいます。

葛餅よりも、もっとみずみずしいというか、のどごしがいいというか……ツルっとした感じが強いです。
ひと噛みふた噛みして、ツルっと飲み込む。食べるという行為がなんとも美しく感じられる不思議な食べ物ですね。
そして、体験の最後は「葛湯」でシメ。

お土産などで貰うことも多い葛湯。お湯を注いですぐできるインスタントタイプのものも多いですが、実はそれらはほとんどが「葛粉」が少量しか入っていません。
というのも、本来葛粉は性質上水を加えてしっかり加熱しないととろみや透明感がでないからです。
なので、インスタントタイプは葛粉以外のサツマイモやジャガイモのデンプンが主成分なんだそう。
「インスタントのものがダメ、というわけではなくて、違いをしっかり理解してから購入して欲しいんです」と中井さん。なかなか葛の世界は奥が深いんですね!
体験では「吉野本葛」で作った葛湯を頂きました。
温かくて、トロっとしていて、独特の風味と甘みが口からのど、胃の中に滑り落ちていきます。ほんのりついた色は、自然糖(阿波和三盆)の色。体の中から温まり、心もほっとする味わいでした。
「葛会」は2時間30分ぐらいでしたが、本当にあっという間に過ぎてしまいました。
「料理人やお菓子職人さんなど、本職の方も結構こられますよ」と中井さん。葛にかける並々ならぬ情熱に、きっとプロの方たちも圧倒されたことでしょう。
葛に興味がある、もっと葛の事を知りたい!という方はぜひ体験してみてください!

もう少しライトに吉野本葛を楽しみたい人は、1階の店舗&カフェへ

1階のカフェでは、四季折々の景色が美しい吉野山を眺めながら吉野本葛の葛切りや葛餅、葛菓子を味わうことができます。
路地に面した店頭には、中井さんの解説つき実演コーナーも。道行く人々に、葛のすばらしさを伝える中井さんは、まさに「葛の伝道師」。訪れた際に中井さんの実演が見られたら、ぜひいろいろと質問してみてください。びっくりするぐらい葛に詳しくなれますよ!
▲吉野本葛切り(税込800円)
▲吉野本葛餅(税込800円)

歴史も古く、そして奥深い葛の世界。身近でありながら実はよく知らないこの食材を深く知り、味わうことで、とても心が豊かになった気がします。賞味期限が10分の出来立てを味わうことができるのはお店だけなので、ぜひ吉野を訪れた際には立ち寄ってみてください。
妙加谷 修久

妙加谷 修久

京都市在住の旅行系ライター兼ディレクター。全国各地に足を運び、旨いモノを食べ、温泉に浸かる日々。ここ京都を中心に、知っているようで知らない「日本のイイトコロ」を紹介します。日本酒好きが高じて利き酒師の資格を取得しました。

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