賞味期限10分のプルプル食感!奈良・吉野で「吉野本葛」のディープな世界を体験
葛粉(くずこ)の本場である奈良県・吉野。葛を知り尽くす「中井春風堂」店主による「葛会」が開催され人気を集めていると聞き、さっそく参加してきました。希少な吉野本葛を使った、ここでしかできない体験の様子をお伝えします!

「吉野葛」と「吉野本葛の違いは?」まずは葛と葛粉についてお勉強

修験道の聖地・金峯山寺を擁し、桜の名所としても知られる奈良県・吉野。今回体験に訪れた「中井春風堂」は、金峯山寺蔵王堂から歩いてすぐの場所にあります。
お店までは、大阪阿部野橋駅から近鉄吉野線利用で吉野駅まで約1時間30分、駅からはタクシー等を利用して15分ほどで到着します。

葛会は、1日1回、月4回ほど開催されていて、予約すれば誰でも参加できます。4名以上の参加で1名3,500円(税込)~。旅行の際に予定を合わせて参加することも可能です。

店舗の1階は葛粉を使ったお土産品の販売や葛切り作りの実演、葛切りや葛餅などを味わえるカフェとなっています。「葛会」が開催される場所は地下にある特別室。実演と体験ができるカウンターキッチンを中心に、この会のために特別にしつらえたこだわりのスペースです。


古来より布の材料や食用・薬用として利用されてきた「葛」。大和国の国栖(くず/現在の奈良県吉野郡あたり)が産地であったことにその名が由来することからも、ここ吉野が葛の本場といわれていることが分かります。
「葛会」では、そんな葛の歴史や葛という植物の生態、葛から葛粉を作る方法など基本的な知識を学んでいきます。意外なほどに身近にある「葛」という存在にきっと驚くと思います。


アク抜きと沈殿を何度も来り返して不純物を取り除き、良質なデンプン部分だけを取り出し、日陰干しで乾燥させてようやく完成するのです。大変な手間暇と根気をかけても、葛粉に精製できるのはごく少量。希少価値が高いのも頷けますね。

意外と知られていませんが、吉野で販売されている葛には「吉野葛」と「吉野本葛」の2種類あります。
その違いは粉の割合と値段。「吉野本葛」はその名の通り、吉野産の葛粉100%。一方「吉野葛」は吉野本葛が50%以上で、残りはサツマイモやジャガイモのデンプンが配合されたものを指します。先ほど紹介したとおり、葛粉を作るには大変な手間暇がかかりますので、当然「吉野本葛」の方が値段は高くなるんですね。
葛と葛粉について学んだら、「葛餅」で味の違いを感じよう








いかがでしょうか、この透明感!メチャメチャ美しいですよね。筆者も仕事柄さまざまなものを食してきましたが、これほど美しい食べ物はそうそう無いと思います。
というわけで、さっそく一口。まずは何もつけずに味わってみます。

味わいはといえば、ほんのりとした何とも言えない上品な甘みが感じられます。遠くのほうには少しの苦みも。非常に奥深い味わいです。


それぞれの味や作り方の違いに関しては……ぜひ実際の「葛会」で体感してください!
上手にできるかな?「葛切り」作りを体験!
まずは中井さんが作り方のお手本を見せてくれるので、しっかり見学しましょう。


ある程度固まってきたら、お湯の中に沈めて一気に加熱します。

金属の器の底が見えますよね?ほんとにあっという間に透明になるので驚きですよ!


へらで器からはがしたら、お湯からあげてまな板の上へ。おおよそ1cmほどの幅で切っていきます。

「意外と簡単でしょ?」と中井さん。
いやぁ~、手順自体はシンプルですが…なかなか手ごわそうです。
というわけで、おっかなびっくり筆者もチャレンジしてみました。

下に沈殿しているので、かなりカタい!ぐっと力を込めて泡立て器を突っ込んで粉を起こし、数回ほど混ぜると抵抗が無くなりました。



スーッと滑らすようにお湯に沈めていきます。ここまで時間にして1、2分でしょうか。加熱すると一気に透明に変化しますので、時間が勝負なんですね。

これがなかなか難しい!ちょっとずつはがしていかないと途中で破れてしまいそうなさわり心地。緊張しますが慎重に、慎重に……

いかがでしょう、けっこう上手にはがせたと思いませんか?見ての通り、持つ手の指が空けて見えるほどの透明感です。

ちなみに、この透明感とみずみずしさは、葛粉の性質上10分ほどしかもたないのだそう。たったの10分……なんともはかないですよね。でも、はかないからこその美しさを感じられるのも、日本人の美徳だと思います。

葛餅よりも、もっとみずみずしいというか、のどごしがいいというか……ツルっとした感じが強いです。
ひと噛みふた噛みして、ツルっと飲み込む。食べるという行為がなんとも美しく感じられる不思議な食べ物ですね。

お土産などで貰うことも多い葛湯。お湯を注いですぐできるインスタントタイプのものも多いですが、実はそれらはほとんどが「葛粉」が少量しか入っていません。
というのも、本来葛粉は性質上水を加えてしっかり加熱しないととろみや透明感がでないからです。
なので、インスタントタイプは葛粉以外のサツマイモやジャガイモのデンプンが主成分なんだそう。
「インスタントのものがダメ、というわけではなくて、違いをしっかり理解してから購入して欲しいんです」と中井さん。なかなか葛の世界は奥が深いんですね!

温かくて、トロっとしていて、独特の風味と甘みが口からのど、胃の中に滑り落ちていきます。ほんのりついた色は、自然糖(阿波和三盆)の色。体の中から温まり、心もほっとする味わいでした。

「料理人やお菓子職人さんなど、本職の方も結構こられますよ」と中井さん。葛にかける並々ならぬ情熱に、きっとプロの方たちも圧倒されたことでしょう。
葛に興味がある、もっと葛の事を知りたい!という方はぜひ体験してみてください!
葛会
[開催時間]10:00~22:00(最終入店は19:00) ※土・日曜、祝日と11月は17:00~22:00まで
[開催場所]中井春風堂 地下1階
[所要時間]2時間~2時間30分程度
[参加料金]2名参加:1名5,000円、3名参加:1名4,250円、4名以上参加:1名3,500円 ※全て税込。葛干菓子・葛餅3種・葛切2種の試食、調理体験費用含む
[定休日]水曜 ※4月1日からGW最終日までの間は受付不可。原則として1日1回、1ヵ月4回までの開催
0746-32-3043
もう少しライトに吉野本葛を楽しみたい人は、1階の店舗&カフェへ




歴史も古く、そして奥深い葛の世界。身近でありながら実はよく知らないこの食材を深く知り、味わうことで、とても心が豊かになった気がします。賞味期限が10分の出来立てを味わうことができるのはお店だけなので、ぜひ吉野を訪れた際には立ち寄ってみてください。
中井春風堂
奈良県吉野郡吉野町吉野山545
[営業時間]10:00~17:00(L.O.16:30)
[定休日]水曜(冬期は月~金曜)
0746-32-3043

妙加谷 修久
京都市在住の旅行系ライター兼ディレクター。全国各地に足を運び、旨いモノを食べ、温泉に浸かる日々。ここ京都を中心に、知っているようで知らない「日本のイイトコロ」を紹介します。日本酒好きが高じて利き酒師の資格を取得しました。
また、本記事に記載されている写真や本文の無断転載・無断使用を禁止いたします。
この記事の関連キーワード
こちらもおすすめ
関連エリア
吉野・天川村・十津川で体験できるプラン
-
オンライン予約OK
奈良・あだみね高原ファームのいちご狩り:章姫(あきひめ)45…
約60分|1,900円(税込) / 人
吉野・天川村・十津川
-
オンライン予約OK
28【奈良】吉野神宮 オリジナル願い札づくり
約90分|3,500円(税込) / 人
吉野・天川村・十津川
-
オンライン予約OK
29【奈良】吉野神宮 神職のご案内でご本殿昇殿参拝
約60分|2,000円(税込) / 人
吉野・天川村・十津川
-
オンライン予約OK
27【奈良】櫻本坊 お寺で癒よう~五感を澄ます ~ 宝聚堂特…
約3時間|4,000円(税込) / 人
吉野・天川村・十津川
-
オンライン予約OK
小学3年生からOK!洞窟内の青く澄んだ地下河川を潜水して探検…
約4~5時間|13,200円(税込) / 人
吉野・天川村・十津川