大穴子を使った「べぇすけ鍋」が、プルプルふわふわでおいしすぎ!

2019.03.18 更新

突然ですが、「べぇすけ鍋」ってご存知ですか?香川県高松市の老舗和食店「天勝(てんかつ)」の名物料理で、「べぇすけ」と呼ばれる大きな穴子がたっぷり入っているんです。最近では県外だけでなく、海外からのお客さんにも好評ということで、一体どんな鍋なのか、さっそく天勝へ行ってきました。

すき焼きのように卵をからめて食べる「べぇすけ鍋」

「べぇすけ」とは、元々は讃岐地方の漁師さんの間で呼ばれていた大穴子の俗称。べぇすけという種類の魚がいるわけではなく、目安としては体長50cm以上の大穴子のことを指します。その由来は諸説ありますが、穴子は夜行性なので別名「ヨネズ(夜寝ず)」とも言われ、夜に寝ないのは助平(すけべえ)、言葉をひっくり返してべぇすけと呼ぶようになったという説が有力だそう。
▲高松の歓楽街、兵庫町のアーケードを抜けたところにある「天勝」

穴子を使った料理は、焼穴子や煮穴子、天ぷらなどがポピュラーですが、「他にもおいしい食べ方はないだろうか?」という発想から生まれたのが「べぇすけ鍋」。JR高松駅から徒歩約7分の場所にある老舗和食店「天勝」が発祥です。
▲店内に入ると、目に飛び込んでくるのは瀬戸内の旬の魚が泳ぐ巨大ないけす

「天勝」は、創業が慶応2(1866)年という老舗。瀬戸内の海鮮料理を中心に、寿司や天ぷらなど、幅広い和食メニューを堪能することができます。1階の中央には巨大ないけすがあり、泳いでいる魚をその場で調理してくれるので、新鮮さは折り紙付きです。

では、さっそくべぇすけ鍋をいただいてみることに。今回は欲張って「べぇすけづくし鍋コース」(税込1人前5,940円 ※注文は2人前から)を頼みました。早速、主役の鍋から!
▲べぇすけ鍋の材料が、お皿にどーん!べぇすけの切身の大きさにびっくり(写真は2人前)

運ばれてきた大きなお皿には、鍋の材料が山盛り。白菜、水菜、人参、ネギ、きのこ類、しらたき……。中でも、主役のべぇすけの大きさは、驚きのあまり二度見してしまったほど。一切れが10cm角ほどありそうなくらい大きいのです!プリプリとした分厚い身は、見るからにおいしそう。
▲鍋の作り方を教えてくれた若女将の鈴木佳代さん

「元々、穴子は柳川鍋など、甘辛い味付けの料理との相性がいいんです。それで、すき焼き仕立ての鍋にしようと、15年ほど前から始めました」
こう語るのは、若女将の鈴木さん。なんと、ベースはすき焼き鍋なんですね!
▲最初にべぇすけを入れるのがコツ

では、若女将においしいべぇすけ鍋のいただき方を教わります。
まずは、鍋にはった特製の割り下に、べぇすけを全部入れます。「最初からべぇすけを入れることで、旨みが徐々に割り下に染み出てきますし、少し煮込んでとろけるような食感になるとおいしいんですよ」
▲すべての食材を投入したら、蓋を閉めてしばし待つ

その後は、味の染み込みにくい人参などの根菜から入れていき、いったん蓋を閉めて待ちます。「ごぼうからもいい出汁がでます。再び沸騰してきたら食べ頃ですよ」

しばらくすると、蓋の穴から湯気が出てくるのと同時に、割り下の甘辛い香りが漂ってきました。これは食欲が刺激されます!
▲煮えばなもいい感じ。火を弱めてもう少し待ちます

「そろそろいいと思いますよ」。若女将の合図で蓋を開けると、湯気がふわーっと立ち上り、食欲はMAXに!鍋の中の食材は、どれもいい具合に煮えています。
▲べぇすけを箸で持ち上げてみると、崩れそうなほど柔らかくなっている

柔らかく煮込まれたべぇすけは、箸で持ち上げるとプルンプルン。すき焼きなので、溶き卵につけていただくと……
▲骨切りされた筋目の間に、卵がよくからむ

うわー、このふわっとやさしい食感、まさに口の中でとろけそうです!
脂が乗ったべぇすけの品のよい風味に、食材の出汁が行き渡った割り下の甘辛さが程よくからみ、それをまろやかな卵がコーティング。すき焼きといえば牛肉しか頭にありませんでしたが、穴子がこれほどまでに合うなんて!牛肉よりも後味がさっぱりしているので、いくらでも食べられそうです!
▲締めはうどん!2人前とは思えないくらいたっぷり

野菜や豆腐、お餅などの具材も、たくさんあったはずなのに、連れと2人でいつの間にか平らげていました。甘めの割り下と卵の相性もさることながら、べぇすけから出る旨みが煮込むほどに増していき、その旨みをすべて吸わせた締めのうどんも格別だったことは言うまでもありません。

さっぱり派は夏、こってり派は冬に味わうのがおすすめ

べぇすけ鍋を満喫し、ぜひとも調理風景を見てみたくなりました。快く対応してくださったのは、料理長の五十嵐卓也さん。まずは、いけすの中を拝見!
▲網を開けて見せてもらっていると、隙あらば脱走しようとするべぇすけたち

いけすのべぇすけは、網に入れられて泳いでいました。フリーにして泳がせてしまうと、ポンプなどの管の中に入ってしまう習性があるからだそう。
▲五十嵐さんがさばいた、下処理後のべぇすけ

この日のいけすの中のべぇすけは、サイズが小さめとのことで、下処理が終わっていた大きめのものを見せてくれました。
お、大きい!頭を切ってある状態でも、ゆうに50cm以上はあります。
▲バットからはみ出るほどの大きさ!

地元素材へのこだわりから、可能な限り瀬戸内産のべぇすけを使うようにしているそうですが、不漁の際は別の地域のものを使うことも。
「べぇすけは年中獲れるので、鍋も一年中食べられます。夏は淡泊な味わいで、大きく育つ秋から冬は脂が乗ってくるので、味わいを比べてみるのもおすすめですよ」と五十嵐さん。
▲アジと比べると、その大きさは一目瞭然

さばいたべぇすけは、まず塩もみをしてぬめりを取り、皮目にお湯をかけます。氷水で締めてから、さらにぬめりをこそげとり、臭みをきちんと取り除くことが大事なのだそう。職人の手間ひまが、とっておきの素材をさらにおいしくしているんですね。
▲骨切りをする五十嵐さん。鮮やかな包丁さばきに見惚れます

さらに欠かせないのが、骨切りの作業です。骨切りといえばハモが思い浮かびますが、穴子もべぇすけサイズになると、小骨が大きくなるので必須だそう。丁寧な仕事のおかげで、ふわふわの食感を堪能することができました!

コースで味わう、べぇすけの多彩な味と食感

「コースメニューでは、べぇすけの様々な美味しさを味わっていただけると思います」と五十嵐さんに言われて、「べぇすけづくし鍋コース」の続きを味わうことに。このコースは、鍋のほかに、小鉢・べぇすけのたたき・べぇすけの一本揚げが付く、盛りだくさんの内容です。
▲この日の前菜は「イイダコの旨煮」

前菜の「イイダコの旨煮」は、香川の冬の幸・イイダコが甘辛く炊いてあり、しみじみ美味しい。
▲「べぇすけのたたき」。たっぷりの薬味とポン酢で

次は「べぇすけのたたき」。この食感にはびっくりしました!モチモチと弾力があって、さっと炙った香ばしさに加えて、噛むほどに旨みもでてきてやみつきになる味わいです。
▲迫力の一本揚げ(2人前)。ビールが進みそう

続いて出てきたのは「べぇすけの一本揚げ」。さすがと言うべきか、一本揚げにすると迫力が違います。天つゆに浸けて頬張ると、外はカリッ、中の身はふわっふわでさっぱりしていて、全然もたれません。カレー塩も添えられていたので付けてみると、こっちもすごく合う!淡泊な身にスパイシーなアクセントがぴったりで、再び食欲が湧いてきます。
▲「穴子棒ずし」ハーフセット(税込1,620円)。欲張りにはうれしいメニュー

最後に、天勝名物の押し寿司メニューの中から、「穴子棒ずし」を追加で注文。焼穴子と煮穴子がありますが、ハーフセットだと両方が食べられるということで、そちらを頼みました。

焼穴子の方は、秘伝のタレを使って焼き上げてあり、香ばしさがたまりません!煮穴子の方は、出汁の中でふっくら炊き上げられていて、柔らかくて優しい味わい。寿司の中には細かく刻んだ椎茸の煮付けが入っていて、味にアクセントを添えています。
▲1階の掘りごたつ形式の小上がり席。気の置けない仲間との夕食にぴったり

今回、コースをいただいたのは2階の個室でしたが、1階はカウンター席と掘りごたつ形式の小上がり、3階は宴会場と、店内はかなり大規模です。
▲カワハギやシマアジが泳ぐいけす。カウンター席では、いけすを見ながら食事ができる

いけすを覗くと、べぇすけのほかに、トラフグ、カワハギ、真鯛、シマアジなどが悠々と泳いでいました。その場でさばいてもらえるので、次に来た時はお造りもぜひ食べてみたい!

今回、べぇすけ鍋を堪能して、穴子のすき焼きという食べ方の意外な美味しさに開眼しました。さらに、たたきや一本揚げなど、様々な料理で味わうことで、食感や風味がガラリと変わることにも感動!高松に行ったら、多彩な味わいのべぇすけを食べに、ぜひ天勝を訪れてみてください。
puffin

puffin

東京でのライター生活を経て、現在は縁あって香川県在住。四国のおおらかな魅力と豊かな食文化に触発される日々。取材で出会うモノ・コトの根幹に流れる、人々の思いを伝えたいと願っている。

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