ガッツリ系の信州名物「山賊焼」!地元民もうなる人気店3選

2019.05.01 更新

「山賊焼」とは長野県松本市・塩尻市を発祥とするご当地グルメ。鶏の一枚肉をニンニクの効いたタレに漬け込み、片栗粉をまぶして揚げたもので、いわゆる一般的な鶏の唐揚げとは一線を画します。現在、地元では数え切れないほど多くの飲食店が提供し、食品スーパーやコンビニでも定番のお惣菜。今回はタイプの異なる人気店3店の山賊焼をご紹介します!

単なる鶏の唐揚げにあらず!インパクト大の「山賊焼」

長野県中心部に位置する松本市・塩尻市の食堂や居酒屋の定番メニュー「山賊焼」。鶏のもも肉や胸肉の一枚肉を、すり下ろしたニンニクやタマネギなどを効かせた醤油ダレに漬け込み、片栗粉をまぶして油で揚げたものです。端的にいうと「巨大な鶏の唐揚げ」(正確には片栗粉を使っているので竜田揚げですね)。

豪快な見た目がインパクト大で、サクサク、ジューシーな食感と食欲をそそるニンニクの香り、しっかりとした味付けが特徴。付け合わせは乱切りのキャベツが一般的で、ごはんのおかずにもお酒のお供にも最適です。
▲添えられたキャベツが口をさっぱりさせてくれ、山賊焼の油っぽさを消してくれます

山賊“焼”とは言うものの、実際の調理法は焼くのではなく“揚げ”。メニュー名の由来は諸説ありますが、塩尻市の居酒屋「山賊」を元祖とする説と、「山賊は物を取り上げる=鶏揚げる」と語呂を合わせたとする説が有名です。地元では古くからご当地グルメとして知られていましたが、B級グルメが各地で話題になった2000年代からPR活動が本格化し、県内外に広く知られるようになりました。
▲山賊焼の発祥は、元祖と名高い塩尻市の居酒屋「山賊」からというのが有力

なお、松本市には「松本山賊焼応援団」、塩尻市には「しおじり山賊焼の会」がありますが、両者は協力関係にあるそうで、「山賊焼」の定義もゆるやかに設けることで地元の食文化を盛り上げているそうです。

山賊焼はここから始まった!元祖の店「山賊」

さて、山賊焼発祥の店として知られる居酒屋「山賊」は、塩尻駅から徒歩約5分。
▲大きな看板が目印
▲店の横には「元祖 山賊焼」の石碑が

看板メニューの山賊焼は、すりおろしたニンニクとタマネギ、醤油、酒、みりんを使った秘伝のタレに鶏のもも肉をしっかりと漬け込み、高温の油で揚げることで外はカリカリ、中はジューシーな仕上がりに。
▲2~3時間しか漬け込まない店もあるそうですが、「山賊」では秘伝のタレに丸1日しっかり漬け込みます。なお、タレにショウガを使う店が多いのですが、「山賊」では使っていません
▲たっぷりの高温の油で揚げるのもポイントのひとつ

サイズは、特大(約400g・1,100円)、大(約350g・1,000円)、中(約290g・900円)、ミニ(約140g・400円)の4種類。何人かでシェアする人もいますが、一人で特大サイズをペロリとたいらげる人も少なくないのだとか。
▲こちらは骨付きで提供される特大サイズ。手のひらをいっぱいに広げても足りないほどの大きさ!通常はカットして提供されますが、希望すればカットなしも可能
▲この肉厚でジューシーな断面を見よ!

ニンニクの香りとインパクトのある見た目が食欲を刺激しまくります。では、いただきます!
▲カットされていてもなかなか持ち上がらないくらいの重厚感!

サクサクの衣に歯が当たった次の瞬間、柔らかい肉から溢れんばかりの熱々ジューシーな肉汁が!思わずうなってしまうほどおいしい!

なお、しっかりした味付けが特徴の山賊焼ですが、「山賊」の味付けは他店に比べると比較的薄味で、塩や醤油を付けて食べることを想定して作られているのだそう。
▲そのままでも十分おいしいのですが、塩をつけると止まらないおいしさ!プラス500円で定食(ごはん・味噌汁・サラダ・お新香付き)にすることもできます

おいしくいただいたところで、山賊焼のルーツを店主の高見さんに伺いました。
▲店を切り盛りする3代目店主・高見孝直(たかみたかなお)さん。「しおじり山賊焼の会」代表も務めます

高見さんによると、考案したのは、初代である高見さんの祖父母だそう。戦前、祖父母は「松本食堂」という店を今とは別の場所で構えており、第二次世界大戦の影響で一時閉店させましたが、昭和33(1958)年頃に再開。山賊焼の正確な誕生の記録などは残っていないそうですが、高見さんが親戚の方などから聞いたところによると「祖父が戦争から帰ってきてから考案したのではないか」とのこと。

かつて、塩尻駅前には今よりも一杯飲み屋や屋台が多く、戦後の復興のために労働者がたくさん集まっていたそうです。しかし、次第に飲み屋街に陰りが見えていったことから、「何か名物となるメニューを考えよう」と、バクロ(家畜商)もやっていた高見さんの祖父が鶏を買ってきて祖母が味付けを研究し、夫婦で苦心の末に考案したと伝わっています。
▲ちなみに山賊焼という名は、高見さんの祖父が山賊のように強面だったことと、誰も付けないようなメニュー名にしたいという思いから付けられたと伝わるのだとか

こうして生み出された山賊焼のおいしさが評判となって大ヒット。そこで店名も現在の「山賊」になったといわれています。
▲山賊焼をはじめとするメニューはテイクアウトもOK

その後、「山賊焼」という名前を他店でも使うことを許したことにより、松本・塩尻市内で山賊焼が広まり、ご当地グルメとして定着。高見さんは子どもの頃、まさか自分の祖父母が考案したメニューだとは知らなかったのだとか。

なお、「山賊」では、山賊焼以外に、秘伝の甘めのタレで鶏の皮やせせり、砂肝、レバーをじっくり煮込んだ「鶏のもつ煮」(大500円、小310円)や、信州の郷土料理「馬刺し」(1,100円)も有名です。「鶏のもつ煮」はとろけるほど柔らかく、鶏自体の旨みと脂のコクが濃厚ながらショウガとニンニクが効いているのでしつこくなく、これまた絶品!
▲「鶏のもつ煮」もファンが多い一品。ごはんにも酒にも合うこと間違いなし!

居酒屋だけあって夜営業のみですが、味わい深い店内の雰囲気とも合わせて、プライベートで飲みにきたい!と真剣に思うほど。
▲店内は座敷席とテーブル席があります

一人飲みの方から家族連れまで、お酒を飲んだりごはんを食べたりと、さまざまな目的で幅広い客層が訪れる「山賊」。半数近くは県外からの来客というのも、この店の人気の高さを物語っています。

長野県下に広がる唐揚げ旋風!専門店の山賊焼

続いて訪れたのが、長野県内外に9店舗を構え、通称「からセン」の名前で知られる鶏の唐揚げ専門店「からあげセンター」。JR松本駅の駅ビル「MIDORI松本」4階の飲食店街に入っている「松本からあげセンター」は、旅行や出張などでも立ち寄りやすい便利な立地とあって、行列のできる人気店です。
▲昔ながらの風情が漂う木の温もり溢れる店内には、小上がり席と半個室のテーブル席があります

ランチから休みなく夜まで営業しているので、お昼からガッツリ食べたい時や、早い時間帯から飲みたい時などにも最適なスポット。
▲迎えてくれた店長の瀧澤竜之介さん。学生時代から姉妹店でアルバイトをし、2018年から店長に

こだわりは新鮮な国産鶏のみを使用すること。看板メニューの「からあげ」よりもおいしいという人もいるほど評判の「山賊焼」(734円)には胸肉を使っています。それを信州りんごを使用した熟成ダレに一晩じっくりと漬け込んで、高温の油で揚げています。
▲特大のサイズも特徴。店長曰く「これだけのサイズの山賊焼は他店ではあまりありません」とのこと

胸肉と聞くとパサパサしている印象ですが、驚くほどジューシーなのに胸肉特有のさっぱり感も。ニンニクとショウガがたっぷりと効いた味わいはパンチがあり、箸がどんどん進みます。
▲胸肉を使用しているので、丸1枚食べても胃もたれしません

ごはん・味噌汁・小鉢が付いた定食(1,058円)もあり、食べきる自信がない方向けに山賊焼がハーフサイズになった定食(842円)も。残った場合は持ち帰ることもできます。

また、付け合わせのキャベツはおかわり自由で、平日のランチタイム(10~14時)には定食のごはん大盛り無料といった嬉しいサービスも。さらに塩や醤油はもちろん、ソースやレモン汁、マヨネーズ、七味など卓上の調味料が充実しているので、少しずつ味を変えながら飽きることなく食べられます。
▲テイクアウトブースもあります。市内のスタジアムでサッカーの試合がある時は行列ができるそう

一方、テイクアウトに最適なひとくち山賊焼「山賊焼ナゲット」には鶏もも肉を使用。メニューによって部位を使い分けているのも特徴です。
▲「山賊焼ナゲット」は5個270円、10個540円。テイクアウトの場合、5個入りは持ちやすい紙コップで提供されます

鶏の唐揚げ専門店だけあって、山賊焼以外の唐揚げメニューも充実。定番の「からあげ」(518円)は、松本市の老舗醤油蔵「丸正醸造」の特製醤油に信州りんごやニンニク、ショウガを使った熟成ダレに漬け込んだもので、衣は独自の配合の粉を2度付けしています。揚げたての提供にもこだわっており、ジューシー&サクサクの味わいは絶品。
▲1つひとつが大きいのも「からあげ」の特徴。もも肉と胸肉から選べます

また「半熟タレからあげ定食」(1,080円)は、甘辛タレを絡めたジューシーな唐揚げにとろける半熟卵が絡み合い、これまた山賊焼とは違ったおいしさです。
▲「半熟タレからあげ定食」は4本の唐揚げのうち、3本にさっぱりとしつつもプリプリとした食感の胸肉を、1本にジューシーな鶏もも肉を使用。両方の部位が楽しめるのも魅力
▲格安の飲み放題メニュー(60分1,058円)もあったり、居酒屋としての利用客も多いそう。飲み放題はセルフサービスで自由に楽しめます

松本駅前のロータリーには、立ち飲みスタイルの姉妹店「からあげセンター 駅前営業所」もあります。23時まで営業しており、終電まで楽しむサラリーマンの利用が多いそう。時間がなくサッと山賊焼を食べるなら、こちらもおすすめですよ。

子ども連れにもおすすめ!素材にこだわったカフェ仕様の山賊焼

ここまでガッツリ系の山賊焼を紹介してきましたが、最後はおしゃれなカフェメニューの山賊焼をご紹介します。「ごはんカフェ和み」は、素材にこだわったごはんメニューをはじめ、きび砂糖やてんさい糖を使った体にやさしいスイーツなどがそろった子連れに人気のカフェ。こちらでは、山賊焼もひと味違っています。
▲やさしい雰囲気が店構えからも伝わります

衛生管理の行き届いた平飼鶏舎で飼育され、栄養価の高い雑穀飼料で育った長野県のオリジナルブランド鶏「信州福味鶏(ふくみどり)」の柔らかい胸肉を使用。自家製のタレに一晩しっかりと漬け込んで低温でじっくり揚げることで、中はふんわり、外はカラッと仕上がります。
▲「十六穀米と3種のお惣菜プレート」(1,080円)。メインは山賊焼・豆腐ハンバーグ・かにクリームコロッケの3種類から選べ、週替わりの3種類のお惣菜が付きます

「和み」には山賊焼定食もありますが、人気は山賊焼をメイン料理に選べる「十六穀米と3種のお惣菜プレート」です。仕上げにネギ油とブラックペッパーで和えた山賊焼は、コショウがピリリと効いたしっかりした味付けながら、トッピングされたネギによりさっぱりした後味に。ごはんが進むので女性でもペロリと食べられます。
▲山賊焼はオープン当初からの人気メニュー。タレとネギ油の濃厚さも鶏肉のおいしさもしっかり楽しめます
▲お惣菜は1つひとつ丁寧に作られていることを感じさせる、やさしい味わい
▲店頭に立つのは、店主の荒井彰吾さん(左)と妻の由樹子さん(中央)、由樹子さんの妹の堂園都さん(右)の3人

荒井さん夫妻はもともと松本市内のカフェで働いており、2011年に独立。「ホッとひと息ついてここから元気になり、人と人との輪がつながっていくお店を作りたい」との思いでこのカフェをオープンさせました。
当初は由樹子さんが得意とするスイーツを楽しめ、食材にこだわる居酒屋として営業していましたが、独立後半年で長男が誕生したことで、より子ども連れも利用しやすい店に少しずつ変化させていきました。
▲2017年には「子ども連れにやさしいお店」として、木をベースにした温もりが溢れる雰囲気に改修

テーブルに設置できる子ども用の椅子が用意されていたり、月齢ごとの離乳食が充実しているなど、荒井さん夫妻の子育て経験が店内の隅々まで生きています。
▲木製のおもちゃが揃うキッズスペース
▲畳敷きだった小上がりフロアはカーペット敷きの個室にリニューアル。子どもの年齢に合わせた布団や椅子も用意してくれます。2部屋あり、2~3週間先まで予約がいっぱいなほど大人気
▲人気の焼き菓子はアレルギー対策として卵や乳製品不使用

大げさな表現ではなく、取材中も予約の電話がひっきりなしに鳴っているほどの人気店。山賊焼などのしっかりした食事から体にやさしいスイーツまで楽しめ、「こんなお店が近くにあったらいいな」と思える、痒いところに手が届く配慮も至るところに見られるお店でした。
松本市・塩尻市民のソウルフードともいえる山賊焼。見た目は竜田揚げに似ているものの、インパクトのあるボリュームと食欲がわくガツンとしたニンニクの香り、サクサク、ジューシーな食感は実際に食べてみないとわかりません!

実は筆者も前々から大好きだったのですが、今回改めて店ごとのこだわりや違いがわかり、すっかりそのおいしさの虜になりました。根強いファンがいるのも納得。ご飯と一緒にガッツリ食べるのも、お酒のお供に仲間とワイワイ食べるのも、どちらも最高です。お腹を空かせて、松本・塩尻のご当地グルメを味わいに来ませんか。

※記事中の価格表記は全て税込です
島田浩美

島田浩美

編集者/ライター/書店員。長野県出身・在住。信州大学卒業後、2年間の海外放浪生活を送り、帰国後、地元出版社の勤務を経て、同僚デザイナーとともに長野市に「旅とアート」がテーマの書店「ch.books(チャンネルブックス)」をオープン。趣味は山登り、特技はマラソン。体力には自信あり。(編集/株式会社くらしさ)

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