伊根・宮津・舞鶴・京丹後、京都の海は美食と絶景の宝庫<もうひとつの京都をめぐる旅1・海の京都>
名所が集まる京都は観光客でいつも大賑わい。でも、中心部から少し足を延ばすと、ひと味違う魅力あふれるグルメや観光スポットが顔を出します。その魅力を海・森・竹・茶をテーマに、4回シリーズでご紹介。第1回目は、海の幸と風景を堪能できる、府北部の“海の京都”をご紹介します。【PR】

京都と聞いて、海というイメージを持つ方は少ないかもしれません。ですが、府北部の“海の京都”エリアは日本海に面し、カキやぶりなどのおいしくて新鮮な海の幸や、「天橋立」や「伊根の舟屋」などの観光スポットも豊富にあります。
今回は、そんな“海の京都”の中から伊根・宮津・舞鶴・京丹後の4つのエリアについて、その魅力を紐ときます。
1.「日本で一番海に近い暮らし」が垣間見える、舟屋で有名な【伊根の海】

最初にご紹介する「伊根の海」に面する伊根町は、丹後半島に位置し、1階が舟のガレージになっている「舟屋」が海沿いに並ぶ風景で有名です。2005年には、重要伝統的建造物群保存地区に選定されています。
京都市街から車だと京都縦貫自動車道(以下縦貫道)・与謝天橋立ICで降り、約2時間で到着します。
JR京都駅からは天橋立駅へ向かい、そこからバスで1時間ほどで到着します。最短でも3時間ほどかかるので、車の方が便利かもしれません。
舟屋は基本、後ろの道路を挟んで主屋があるのですが、そちらに住む皆さんの多くが漁業関係者。毎朝にぎわう漁港も、ここならではの風景といえます。そこで「伊根漁港」に赴き、活気あふれる水揚げの様子を見学させてもらいました。

朝8時頃漁港に着いてしばらくすると、定置網の操業を終えた漁船が戻ってきました。すぐにホースで魚を吸い上げ、機械である程度の大きさにざっと選別。その後、魚の種類ごとに手で選別していきます。

漁船は夜明けとともに港を出て、20分ほどで漁場に到着。そこで60~90分程度操業して、すぐに帰港します。漁港には様々な魚が次々と揚がり、皆さんの活気に圧倒されっぱなしでした。


伊根には鮮魚店がなく、旅館や地元の人たちにとって漁港は大事な魚の仕入れ先であり、生活に密着した場所。そして、町内の食事処や旅館の魚料理がひときわおいしいのは、ここで毎朝新鮮な魚が手に入るからにほかなりません。
なお、駐車場はないので、車は港近くの「道の駅」の駐車場に駐めて、近道の階段を降りて行くのがオススメです。
伊根漁港
京都府与謝郡伊根町字
見学自由
0772-32-0277(伊根町観光協会)
各家庭で行っている「もんどり漁」は、軒下が海だからこその漁


かごについたロープをたぐりよせて引き上げれば、中にはピチピチの魚が入っていて、それが晩御飯に早変わり!放っておくだけでおいしい魚が勝手に獲れるという、なんとも気軽な漁です。

かごが沈められている海は、驚くほどの透明度。そんな美しい海で育った獲れたての魚を毎日食べられるなんて、うらやましい限り。このもんどり漁は、伊根町観光協会のガイドツアー「舟屋ガイドとめぐる、まるごと伊根体験」(参加料金大人1,800円・税込、5日前までに要予約)に参加すれば見学可能。こうした生活の一端を見られるのも、この町の楽しさの一つです。
また、獲れたての魚を使った料理が自慢の食事処や旅館の中には、現役の漁師が作る「漁師めし」をいただけるところもいくつかあります。

刺身、焼魚、煮魚、天ぷら、鍋など、色々な料理で魚を味わいつくすことができる「漁師めし」。料理は家庭的で素朴ながら、魚の長所がいかされているものばかりです。


素材が良い分、シンプルな料理で十分そのおいしさを堪能でき、心もお腹も大満足!手に入る魚によってメニューが変わるため、どんな料理を食べられるかは、その日の漁や仕入れ次第というのも楽しみの一つです。そんな「漁師めし」を食べられる旅館や食事処については、伊根町観光協会まで問い合わせを。
伊根町観光協会
京都府与謝郡伊根町字平田491
[営業時間]9:00~17:00
[定休日]年末年始
◯「舟屋ガイドとめぐる、まるごと伊根体験」ガイドツアー
[参加料金]大人1,800円、中学生・高校生1,300円(いずれも税込、小学生以下無料)
[開始時間]10:15~、13:00~(所要時間各60分)
※年末年始は休止
0772-32-0277(伊根町観光協会)
2.日本三景の一つ「天橋立」の絶景を望める【宮津の海】
この細長い独特の地形は、外海の宮津湾へ対馬海流が運んできた砂と、内海の阿蘇海に流れ出る野田川の土砂が、何千年と堆積したものと考えられています。

京都市街から車なら縦貫道を経て、宮津天橋立ICを降り約90分、またはJR京都駅から天橋立駅まで列車や高速バスで約2時間で到着です。
『丹後風土記』には、国生みの神・伊弉諾(イザナギ/男神)が地上にいる伊弉冉(イザナミ/女神)に会うため、天から地上へと降りるのに使っていた「天の浮き橋」が、イザナギの昼寝中に倒れ、それが天橋立となったという神話が残っています。
ちなみに、天橋立はどこから見るかで、まったく違う景色を楽しめます。そして、天橋立に最も近い場所からその眺望を楽しめるのが、「天橋立ビューランド」。モノレールかリフトで展望台まで上れます。

こちらで有名なのが、いわゆる「股のぞき」。天橋立を股からのぞくことで天地が逆さに。すると、龍が天へ舞い上がる様に見えるということで、その眺望が「飛龍観(ひりゅうかん)」と呼ばれるようになったそうです。


100年以上、あまたの日本人が愛でてきた天橋立。北の方角(傘松公園)から見ると「昇龍観」、東の方角から見ると「雪舟観」、西から見ると「一字観」など、呼び名の変わる眺望を制覇するのも楽しそうです。
飛龍観(天橋立ビューランド)
京都府宮津市字文珠437
[営業時間] 2月21日~7月20日、8月21日~10月20日9:00~17:00、7月21日~8月20日8:30~18:00、10月21日~2月20日9:00~16:30
[定休日]不定休
[モノレール・リフト往復料金]大人850円、子供450円(すべて税込)
0772-22-1000
究極の「ぶりしゃぶ」を、その発祥にゆかりの深い「茶六別館」の食事処でいただく

天橋立の景色を堪能したら、ぜひ食べておきたいのが「ぶりしゃぶ」です。宮津市は、日本海で獲れる新鮮なぶりをしゃぶしゃぶで食べる「ぶりしゃぶ」発祥の地としても知られているんです。
その発祥に深くかかわった旅館「茶六別館」の一画にある、「食事処 四季膳 花の」で、本場のぶりしゃぶをいただくことに。
お店へは天橋立から車で約5分、電車なら京都丹後鉄道宮舞・宮豊線で一駅、宮津駅で下車して徒歩10分ほどで到着します。

いざ、ぶりしゃぶに対面!ぶりは刺身でも食べられる新鮮さで、その厚さはわずか2~3mm。皿が透けて見えるほどの薄切りこそ、職人のなせる技です。

皿の半分ほどぶりを食べると、ぶりの旨みが出汁にしみ渡るので、それから野菜を入れるのが、「茶六別館」のご主人・茶谷昌史(ちゃだにまさし)さんのオススメの食べ方だそう。

また、ゆずとすだちの果汁にしょうゆと、地元・飯尾醸造の富士酢プレミアムを少し加えた特製ぽん酢のおいしさも格別。角のとれた酸味が、ぶりの甘みを引き立てます。

この地でぶりしゃぶが誕生したのは昭和53(1978)年11月。宮津・天橋立観光旅館協同組合青年部が、「松葉がに」と並ぶ宮津の名物料理をつくろうと発案したものでした。

当初はさほど話題にならなかったものの、会席料理の一品として小鍋の「一人ぶりしゃぶ」を提供したところ評判となり、「ぶりしゃぶ」の名も定着。その後、ぽん酢のTVCMで取り上げられたのをきっかけに全国へ知れ渡り、今ではすっかり鍋の定番に!
ぶりしゃぶは11月7日~3月31日の期間限定の料理。ぜひ冬に宮津を訪れて、本場のぶりしゃぶを楽しんでください(要予約。ぶりしゃぶのL.O.は12:30)。
食事処 四季膳花の
京都府宮津市島崎2039-4 茶六別館内
[営業時間] 11:30~14:00(L.O. 13:00)、17:30~21:00(L.O. 19:00)
[定休日]火曜(祝日、正月、お盆などは営業)
0772-22-0206
3.京都の水揚げの9割を誇る【舞鶴の海】で、その恵みを味わう

“海の京都”で3つめにご紹介するのは「舞鶴の海」。京都市街から車なら縦貫道を経て舞鶴若狭自動車道の西舞鶴、または東舞鶴ICで降りて1時間10分ほど、JR京都駅からは西舞鶴、または東舞鶴駅まで約1時間40分で行くことができます。
舞鶴湾は若狭湾南西部にあり、日本海が最も深く入り込んでいるのが特徴。京都で水揚げされる魚の約9割が、ここ舞鶴の魚なのだとか。また、舞鶴は天然の良港だったことから、明治時代に旧海軍の鎮守府が開庁され、昭和29(1954)年に海上自衛隊の地方隊が設置されたことでも知られています。

舞鶴の美味しい海の幸をはじめ、新鮮な旬の素材とこだわりの出汁を使った創作料理をいただけるのが、JR東舞鶴駅から徒歩約15分のところにある「海辺のレストラン海望亭」です。とくに力を入れているのが、舞鶴名産のカキを使った料理なんだそう。


また、こちらのお店は「まいづる海自カレー」プロジェクトに参加し、「ナスと合挽肉のキーマカレー」(税込・880円)を提供しています。2017年度に始動したこのプロジェクトは、毎週金曜日のお昼にカレーを食べる海上自衛隊の習慣にちなみ、各艦隊や部隊、学校で作られているカレーを、市内の飲食店で食べられるというもの。(2019年3月現在、12の店舗で実施中)
こちらの店のカレーは、掃海艇「のとじま」オリジナルのレシピで作られていて、たっぷりの挽肉とナスなどの野菜をふんだんに使った中辛味。隠し味のショウガが効いた、食べやすいカレーです。

海辺のレストラン海望亭
京都府舞鶴市字浜34-3
[営業時間]11:00~15:00、16:00~20:30
[定休日]12月29日~1月3日
0773-64-0890
舞鶴の海の幸と山の幸を、極上料理に昇華させる「京都舞鶴ARIYOSHI」
食材は、当日入手できる最高級のものだけを厳選。その食材のポテンシャルを極限までいかすべく、丁寧に手仕事を施した料理は上品で上質。そんな料理を求め、府内外から食通が足繁く通う店なのです。

店主の有吉功光(のりみつ)さんは舞鶴出身。15歳から大阪の日本料理店で修業を始め、その後飛騨高山の高級料理旅館で長年料理長を務めた、2019年で職人歴35年のベテラン料理人です。
良質な海と山の幸が豊富な舞鶴は、最高の料理をつくれる環境だと再認識し、故郷へ戻り、2014年にこの店をオープン。
魚は朝市や卸業者の元へ出向いて旬の新鮮なものを、野菜は地元の旬のものを中心に、肉はきっちり熟成したものを、それぞれしっかり目利きして仕入れているそうです。


メニューはおまかせコースのみ。料理の仕込みをしているとアイディアが湧き上がり、献立がどんどん変わってしまい、お品書きを何度も書き直すこともあるのだとか。そのため、どんな料理と出合えるかは、お店に行ってからのお楽しみです。
金額は6,000円 、8,000 円 、10,000円 、12,000円 、15,000円 (すべて税抜)のいずれかで、その日の予約を最初に入れた人が希望する金額と時間に合わせて一斉にスタート。そのため、事前に予約が必要です。

一品ずつ絶妙なタイミングで供される料理は、味、香り、温度すべてが最高の状態。見事な職人技につい見とれてしまいそうになりますが、食べどきを逃さずいただくのが礼儀。また、骨董品や高級な塗り物など、器の美しさも料理を引き立てる重要なエレメントになっています。

高級感あふれる店内にこだわりの料理と聞くと、つい敷居が高いように感じますが、子供連れのファミリーもウェルカム、という有吉さん。しかも、事前の電話予約の際に、苦手な食材やリクエストなどを細かく聞いてもらえるので、安心して来店できます。


京都舞鶴ARIYOSHI
京都府舞鶴市桃山町4-2ウィズビル2階
[営業時間]18:00~、18:30~、19:00~のいずれか ※終了時間は予約時要相談
※完全予約制(12,000円と15,000円のコースは 3日前まで)
[定休日]不定休
0773-77-5205
4.【京丹後の海】で、従来の概念を覆す「へしこ」との出合いに驚愕

最後にご紹介するのは、丹後半島の西側、「京丹後の海」。
この京丹後の海に面した「地産食堂 味工房ひさみ」でぜひ食べてもらいたいのが「へしこ」です。
こちらのお店へは、京都市街から車で縦貫道を経て、鳥取豊岡宮津自動車道・与謝天橋立ICで降り、約2時間。京都駅からは約2時間半、JR西舞鶴駅で京都丹後鉄道に乗り換えて峰山または網野駅で下車、そこからバスで「間人診療所前」下車が便利です。

福井名物としてよく知られる「へしこ」は、石川県から鳥取県までの日本海沿岸地方で生産され、京丹後でも昔からよく食されていた保存食。さばやいわしなどの青魚を塩漬けした後、米糠に長期間漬け込んで熟成させるため、強い塩気と独特の香りがあり、実は苦手という人も少なくありません。
そんなマイナスイメージを変えたいと改良を重ね、従来とはまったく違う“浅漬け”のへしこを生み出しているのが、「地産食堂 味工房ひさみ」の店長・今出龍(いまでたつる)さんです。

今回は特別に、「へしこの浅漬け 至福」(税別・1枚630円)の一切れを、目の前で炙っていただき、まずは一口。すると、塩気はそれほどきつくなく、身は柔らかくジューシー。脂もしっかり残り、とにかくさばの旨みが凝縮していて、びっくり仰天のおいしさです。
このおいしさを生み出すため、さばは脂ののったものだけを厳選。3回に分けて濃度の違う塩水に漬け込むことで、さばの臭みや余分な脂が抜けてよりおいしくなり、塩分を控えめにすることも可能に。そこから「浅漬け」というネーミングにしたんだそう。

塩に漬けた後は、じっくり米糠に漬け込んで熟成し、旨みが極限まで引き出されたへしこが完成。2010年の発売後、どんどん人気が高まり、2018年には食堂の隣に専用工房「へしこ工房HISAMI」を増設。今では毎日100本以上仕込みをしないと追いつかないというほどの人気商品になっています。

堀川ごぼうは直径がなんと6~9cmと太く、中には空洞があり、収穫まで2年もかかる希少な種類。柔らかくて香りもよく、希少価値が高いことから、主に料亭などで使われています。しっかりアク抜きしたごぼうはえぐみが一切なく、甘さとやわらかさだけが残っています(3月末までの提供)。

すぐ近くの間人漁港で仕入れた地魚や、地元の野菜を使った創作料理はどれも奥深い味わいで、観光の途中にいただくのにもってこい。もちろん、へしこのメニューも色々あり、予約時に申し出があれば釜飯も食べられます。日本海を一望できるロケーションも満喫できますよ。
地産食堂 味工房ひさみ
京都府京丹後市丹後町間人1830
[営業時間] 11:00~14:30(L.O.14:00)、17:00~22:00(L.O.20:30)
[定休日] 水曜、月1回木曜(祝日の場合は営業)
0772-75-0160

~もうひとつの京都をめぐる旅~
<vol.2 森の京都>京都で明智光秀も食べていた!?絶品ジビエや野菜を満喫
<vol.3 竹の里・乙訓とお茶の京都>京都の知られざる竹林と松花堂弁当ゆかりの地
<vol.4 お茶の京都>雉や一休寺納豆も楽しめる京都の茶どころへ

京都府観光推進・ぐるたび編集部
「もうひとつの京都」の魅力を取材し発信します。
また、本記事に記載されている写真や本文の無断転載・無断使用を禁止いたします。
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