大分名物「とり天」ってどんなもの?発祥の店「レストラン東洋軒」に行ってきた!

2019.05.23 更新

鶏肉消費量が全国トップクラスの大分県が誇る名物ご当地グルメ「とり天」。読んで字のごとく、それは鶏肉の天ぷら。とはいえ、店ごとにその味わいはさまざまな奥深~いもの。今回は、別府にある発祥店「レストラン東洋軒」でとり天の魅力に迫ります!

意外や意外!?大分にとり天専門店は存在しない

とり天に専門店はありません。和食、洋食、中華料理店、カフェ、うどん店まで、さまざまなジャンルの店で提供され、大分県民が日常的に食べているソフルフードがとり天です。

前述の通り、店ごとで味わいは異なりますが、鶏肉の天ぷらで、酢醤油かポン酢で味わうのがスタンダードです。鶏はジューシーなモモ肉かさっぱりとしたムネ肉か、下味はニンニク系なのか塩系なのか、衣も黄色系から白系、唐揚げのようなものまで店の個性がでます。さらに、つけだれにはカラシを付けるか否か、なんならつけだれがない店もあります。
▲黄色系の衣をまとったとり天

多種多様に進化しているとり天。その歴史なども気になるところですが、それは後ほど。なにはともあれ、まずはいただきましょう、絶品とり天!
向かったのは、生みの親である別府の「レストラン東洋軒」。
▲JR別府駅から車で7分ほどの場所にある中華料理店「レストラン東洋軒」

先にお伝えしておきますが、「レストラン東洋軒」は平日でも“待ち”は覚悟せねばならない人気店です。週末となれば1~2時間待ちは当たり前。スタッフに伺ったところ、「別府の町全体の観光客が減る6月と10月なら、並ばなくても入れると思います」とのこと。
▲テーブル席から円卓個室まで全100席

創業は1926(大正15)年。現在腕を振るうのは、三代目の宮本博之さんです。
▲三代目の宮本博之さん

ピカピカに磨かれた厨房で、特別にとり天の調理シーンを見せていただきました。

「うちが使うのは、国産鶏のモモ肉。ニンニク、ショウガ、オリジナル醤油、ごま油で下味をつけて、天ぷらの衣をまとわせる」と、惜しげもなくレシピを披露してくれる宮本さん。

さらに、「とり天は鶏の天ぷらだけど、衣に水は加えず、玉子だけを使うのもこだわり」。そうすることで、ふんわりとした食感になるのだそう。
▲玉子のみを使っているため、天ぷら衣は黄金色

下味に使っているという“オリジナル醤油”が気になった筆者。尋ねてみると、「うちのとり天の味の要だね。創業100年を超える地元の醤油屋さんに造ってもらってるの」と差し出された醤油。舐めてみると、あっ、甘い!九州の醤油は基本的に甘めですが、想像の上をいく甘さ。とはいえ、ベタッとした甘さではなく、最後に残るのは濃厚な旨みです。
▲油の温度を見極め、ひとつずつ揚げていく

それにしても油がキレイ!聞けば、「油が汚いのは私がイヤ。結構な頻度で替えるから油代がスゴイよ。たぶん一般的な中華料理店の9~10倍は使うね」と笑う宮本さん。
▲香ばしい香りを放ちながらカラリと揚がったとり天

サクッ、フワッ、ジュワ~!本家とり天はおいしい三重奏

完成しました!「レストラン東洋軒」が誇る「本家とり天定食」1,350円(税込)。
▲サラダ、ライス、スープ、漬物付きの「本家とり天定食」。とり天単品は1,080円(税込)

さっそく味わってみます。サクッとした衣の中からフワッとした鶏肉が現れ、最後に旨みがジュワ~ッ!ニンニクが効いたしっかりとした味付けですが、唐揚げのような“重さ”がなく、いくらでもイケます。鶏の皮はすべて取り除かれているのもポイントのよう。

ごはんにはもちろん、ビールにも合います!
▲つけだれはカラシ付きの自家製かぼす酢醤油。かぼす果汁もさっぱり感をうみだす名脇役

「これも人気だから、食べてみて」と、宮本さんが持ってきてくれたのは「本家柚子とり天」です。昆布の一番ダシにペースト状にした柚子の皮を加えた特製つけだれにモモ肉を一晩漬け込み、通常タイプと同様に黄金色の衣で揚げたもの。

もちろん、素材にこだわる「レストラン東洋軒」。昆布は北海道産、柚子は大分県内でも良質といわれる安心院産といいます。
▲2009年に宮本さんが考案した「柚子とり天」は、通常のとり天より衣の色が淡い

口に運ぶと、う~ん!柚子の香りがふんわり鼻に抜けます。下味にニンニクを使わず、昆布ダシと塩なのでなんとも上品!鶏の旨みがより引き立っています。おいしい!お値段は定食で1,550円、単品で1,350円(いずれも税込)。

その日の気分で選べるのがいいですね。ガッツリいきたいなら通常タイプ、さっぱり味わいたいなら柚子とり天がおすすめです。

うれしいことに、自宅で気軽に本家の味わいが再現できる“持ち帰り用”もあります。油で揚げるだけのお手軽さ。
▲冷凍タイプの「とり天王」500gと「ゆずとり天」400gのセット3,000円(税込)。地方発送可(送料別途)
▲つけだれの「東洋軒かぼす酢醤油」500ml1,188円(右)は、餃子や炒め物などにも使える万能調味料。おつまみ感覚で楽しめる「東洋軒のとり皮天」648円(左)も人気。すべて税込

ちなみに「レストラン東洋軒」は、とり天以外にも麻婆豆腐やフカヒレの姿煮、麺類、点心メニューまで、中華の定番料理が50種以上!とり天とのセットメニューもあります。
▲「麻婆豆腐&とり天セット」1,960円(税込)などのセットメニューに付く杏仁豆腐は密かな人気メニュー

天皇の料理番であった初代の“やさしさ”が生みだしたとり天

とり天のおいしさが分かったところで、その歴史をひもといてみましょう。とり天の生みの親は「レストラン東洋軒」の創業者、宮本四郎氏です。

宮本氏は神戸オリエンタルホテルのシェフ川崎藤太郎氏に師事したあと、東京・三田の東洋軒、帝国ホテル、帝劇「有楽座」、大阪ホテルなど、名だたるレストランで腕を振るいました。なんと天皇の料理番を務めたこともある敏腕シェフです。

お気づきの方もいるかもしれませんが、宮本氏はもともとフレンチシェフ。
▲1894(明治27)年、茨城県で生まれた初代・宮本四郎氏

東京や大阪で腕を振るっていたフレンチのシェフが、なぜ大分県の別府でとり天を?そこには、別府の観光開発に従事し、由布院温泉の礎を築いた実業家・油屋熊八氏が大きく関係しています。
▲JR別府駅前に立つ油屋熊八像。「山は富士、海は瀬戸内、湯は別府」というキャッチフレーズを作ったのもこの方!

1911(明治44)年、油屋熊八氏が別府に「亀の井旅館(現・亀の井ホテル)」を開業する際、宮本氏をくどき落とし、料理長として迎え入れたのです。

1926(大正15)年、宮本氏は別府に自分の店を開きます。なんとこれが大分県初のレストランで、別府を訪れる文化人や著名人もこぞって足を運んだそう。
▲大正時代の「レストラン東洋軒」。モダンな建物!

「レストラン東洋軒」は当初、西洋料理を提供していました。しかし、宮本氏はかつて台湾ホテルに務めていた際、「これからの時代は中華料理だ!」と密かに思っていたそうで、1935(昭和10)年、満を持して台湾からシェフを呼び寄せて中華料理店に鞍替え。
▲1960(昭和35)年の写真。一番手前に写る小さな男の子が現三代目社長とか

当時、唐揚げは既に存在していたそうですが、骨付きが一般的。それだとかぶりつかねばならず、「女性は食べにくかろう。そもそも冷めたら硬くなるのがいかん」と、宮本氏。そこで骨がない鶏のモモ肉を使い、箸でつまみやすく、食べやすいよう細長くカットした現スタイルに。和食の天ぷらをヒントにふんわりとした衣で揚げたのが、とり天の始まりといいます。

当時のメニューを見ると、そこには「炸鶏丸(シャケイオン)」と書かれており、「鶏ノカマボコ天麩羅(テンプラ)」と解説されています。三代目・宮本博之さんいわく、「たぶん正しくは、鶏の片を揚げたものという意味を示す“炸鶏片(ザーケイペン)”。よくみると漢字間違いがいっぱいなんです」。
▲昭和初期のメニュー。とり天は「4番」。値段は90銭

以降、「レストラン東洋軒」で働いたシェフが独立し、自分の店でもとり天を提供するように。昭和20年代には別府市内に広がり、1962(昭和37)年ごろになるとお隣の大分市にも浸透。現在では大分県を代表する郷土料理になっています。

いかがだったでしょうか?別府生まれのとり天。前述した通り、鶏の天ぷらとひと口に言っても店ごとで味わいは異なります。ムネ肉やモモ肉だけでなく、セセリ(首の肉)を使ったり、衣に大葉を加えたりするなど、創作系の店もあります。大分県に行ったらぜひ食べ比べをして、とり天の奥深さを楽しんでみてください。
宮崎由希子

宮崎由希子

福岡在住のフリーライター。九州7県をメインに取材にかけずり回り、年間取材件数はのべ1000件以上。得意分野はグルメと温泉と旅。温泉好きが高じて、おんせん県おおいたが主催する「温泉マイスター」を取得。著書に『おいしい博多出張』(エイチエス出版)。

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