佐賀・武雄市の「御船山楽園」で、自然とテクノロジーが融合した幻想美に圧倒される

2019.07.05 更新

佐賀県武雄市にお殿様が作った壮大な庭園があるのをご存知ですか?その名は「御船山楽園(みふねやまらくえん)」。春の桜に始まり、つつじ、藤、紅葉、雪景色……さらには、プロジェクションマッピングも楽しめ、いつ訪れても信じられないような景色が楽しめる景勝地です。そんな「御船山楽園」の四季折々の絶景をご紹介します。

▲2016年から毎年夏に開催しているチームラボ制作の作品「かみさまがすまう森」。御船山楽園の自然を舞台に、光や映像により新しい姿を生み出している

鍋島茂義公が約3年かけて造った「御船山楽園」とは?

「御船山楽園」の歴史は古く、造られたのは弘化2(1845)年と、170年以上も前。標高210mの御船山の断崖を借景にした15万坪もの池泉回遊式庭園を造ったのは、第28代武雄領主であった鍋島茂義(しげよし)公でした。
▲御船山は、神功(じんぐう)皇后が「三韓征伐」の際、新羅からの帰りに「御船」をつながれたことからその名が付いたといわれています

茂義公は、幕府の御用絵師であった狩野派の絵師をわざわざ京都から呼び寄せ、思い描いた庭園のイメージを細かく伝えて現在でいう設計図を作らせています。鍋島家別邸の庭園として完成し、「萩の尾園」と呼ばれていましたが、明治時代には一般開放され、武雄の人々に親しまれている現在の「御船山楽園」に至ります。
▲こちらが当時の設計図。現在の姿と比べてみるのも面白いですね

とにかく絶景!とSNSで多数アップされている、そんな「御船山楽園」へ実際に行ってきました!

池の周りをぐるりと散策。どこも写真映えする景色ばかり

「御船山楽園」へは、電車の場合、JR武雄温泉駅で降車後タクシーで約5分。車の場合は長崎自動車道・武雄北方IC下車、国道34号線を「大村・嬉野」方面へ5km進むと到着です。

「御船山楽園」は通年、季節ごとの草花が楽しめるため、見ごろに応じた催しがあります。取材日は5月中旬だったので「さかさもみじと皐月」が開催されていました。
▲ここが入り口。右手にある券売所で入場料(大人400円)を支払います

順路に沿って、池の周りを歩いていきます。新緑の瑞々しい時季だったので、爽やかな気分!
▲右手には皐月が!ピンクのほか、真っ赤な皐月もありましたよ

奥に進めばおよそ樹齢300年の大楠が!写真で見ると存在感ありますが、庭園自体のスケールが大きく、またほかにも見ごたえのある場所も多いので実際には森の一部に迷い込んだような感覚。
▲大楠の下にいる筆者に気づきますか?この大楠並びに庭園全体のスケールの大きさがわかると思います。奥にはつつじ谷が!

さらに奥に進めば、つつじ谷や桜を一望できる花見台や五百羅漢(ごひゃくらかん)もあります。五百羅漢は約1300年前に行基(ぎょうき)がこの地を訪れ、羅漢像500体を彫り、洞窟に安置したと伝えられています。
▲五百羅漢の中には、病におかされた行基が平癒の祈願をかけて彫ったとされる三つの仏体があるそう

順路を進むと茶屋も。この茅葺屋根の「萩野尾御茶屋(はぎのおおちゃや)」は、御船山楽園の造園時からあるそう。ということは、築170年以上!!
▲茶屋から見える新緑がまぶしい!

「花まつり」期間中(3月中旬~5月初旬)と「紅葉まつり」期間中(11月上旬~12月上旬)は一般開放され、昼は「粉茶と串団子のセット」、夜は「粉茶とぜんざいのセット」(各500円)を販売、こちらでいただくこともできますよ。
▲「粉茶と串団子のセット」(500円)
▲「粉茶とぜんざいのセット」(500円)

桜の時季、紅葉の時季の茶屋はまた格別!昼も夜も風流がありますよ。
▲桜まつり時季の夜の茶屋
▲紅葉まつり時季の昼の茶屋

また、花まつりと紅葉まつりの時季の「萩野尾御茶屋」は、22:00以降は「茶屋バー」に変身!こちらは敷地内にある宿泊施設「御船山楽園ホテル」と「御宿 竹林亭」に宿泊している方だけが利用できる贅沢なバー。夜もじっくり楽しみたいなら、宿泊してライトアップを観賞してバーでお酒を味わう……なんて素敵ですね!
▲「茶屋バー」の営業時間は季節によって変動します

ゆっくり回って1時間弱くらいでしょうか。花まつりや紅葉まつりなどの人気の時季は人が多いため、時間に余裕をもって観賞するのがおすすめです。
▲一般開放時期以外でも、縁側に座ったり休憩したりすることができますよ

取材日は「さかさもみじと皐月」(5月初旬~6月初旬)の時季でしたが、他の時季に訪れれば、また違った御船山楽園の姿を楽しむことができ、催しごとに異なった絶景が広がります。ライトアップの有無に応じて営業時間も異なるので、事前にチェックしておくことをおすすめします。

「御船山楽園」は1年を通して見頃の草花が楽しめる様々なイベントが行われています。いつ来ても何かしらのイベントが行われており、四季折々の景色が楽しめる……そんな各イベントと見どころを紹介します!

3月中旬~4月中旬「花まつり―桜」約2,000本の桜が山裾を覆う

15万坪の敷地が緑とピンクに染まる桜の時季。約2,000本もの桜が次々と開花していきます。御船山楽園には「染井吉野(ソメイヨシノ)」「大島桜」「山桜」「八重桜」など多様な種類の桜の木があるので、一度に色んな桜を観賞できるのもポイントですね。
▲水面には水灯籠もあり桜の美しさを際立たせます

さらに特筆すべきはライトアップされた姿!光を受けてピンクの桜が白く輝き、水面に映し出される様子は幽玄的な美しさです。

4月中旬~5月初旬「花まつり―つつじ、大藤、春もみじ」つつじの圧倒的な迫力と多様な花が魅せる春

御船山楽園といえばこれ!といわれる代表的な見どころの一つがつつじ。「久留米」「平戸」という種類のつつじが約20万本!!特に御船山の裾野にすり鉢状に広がる「つつじ谷」は息をのむ華やかさです。
▲下から仰ぎ見る「つつじ谷」。実際に見るとスゴイ迫力ですよ
▲ピンク、赤、白のつつじが幾重にも!

御船山楽園には、前述した通り眼下に花々を眺められる地上約30mの花見台があります。散策路の奥にあるので、ぜひ花見台からのつつじの姿もお楽しみくださいね。
▲花見台から見る「平戸」のつつじ

そして、この時季はつつじだけではありません。「萩野尾御茶屋」枠の藤棚に推定樹齢170年以上の大藤が薄紫のトンネルを作り出します。この時季は生命力にあふれた輝くような若葉も魅力。秋の紅葉になぞらえ、春もみじとも呼ばれるそう。つつじ、大藤、若葉(春もみじ)……一度に楽しめるこの時季は特に多くの人で賑わっています。
▲藤棚に光が差し込み、キラキラ輝いているよう

そして、桜の時季同様に夜のライトアップも楽しめます。桜と違い、つつじは色とりどりで、また違った美しさ。
▲つつじ谷のライトアップ。断崖から裾野にかけて下から光をあてて、つつじを照らし出します
▲色と輪郭を際立たせ、より立体的な風景に

藤棚の夜の姿も、また凛とした印象で格別です。ちょっと高貴な気分になれちゃいますね。
▲ほのかに光る優雅な藤の花
▲春もみじのライトアップ。緑の中から発光しているよう

しっとりとした和風情も素敵。皐月や紫陽花を楽しむ初夏

華やかな「花まつり」が終了し、御船山楽園は夏を迎える準備に。そんな中でも皐月や紫陽花といった季節の花々が見ごろを迎え、訪れる人たちの目を楽しませてくれます。
▲取材時は皐月が見ごろでした!
梅雨の時季でも楽しめるのが紫陽花。園内の散策路沿いに咲く紫陽花には心癒されますよ。

7月中旬~11月上旬。自然と光の壮大なプロジェクションマッピング「チームラボ かみさまがすまう森」

▲池の水面に七色の光が映し出される「小舟と共に踊る鯉によって描かれる水面のドローイング」

そして夏。2016年から開催している催しで、チームラボが制作した作品「かみさまがすまう森」は、いま武雄でも風物詩になりつつあります。50万坪におよぶ御船山楽園の自然を舞台に光や映像により新しい姿を生み出した光の物語です。
▲作品は武雄の歴史や自然を体感できる物語になっています

樹齢300年以上の大楠、名僧行基が掘ったとされる五百羅漢、巨石や洞窟など、庭園内に作りだされた光のアートに、誰もが圧倒されるはず!
▲高さ約5.5m 幅約4.6mの苔生す巨石に、この地域の花々が咲き、そして散っていく映像が。触ると変化する映像に驚き
▲楽園内の廃墟となった湯屋にも映像で命が吹き込まれます
▲園内にある稲荷大明神の巨石にも滝が出現。リアル!!
その他、園内各所で、驚きと感動にあふれた仕掛けがたくさん。まるで御船山楽園の木々や花、池までもが生きているかのような感覚になりますよ。
夏が終わり、初秋になると青々とした木々の色も落ち着き始め、虫の音が楽しめるように。夜は「チームラボ かみさまがすまう森」を開催しているので、昼と夜同時に観賞するのもいいですね。

11月上旬~12月上旬「紅葉まつり」15万坪の庭園が秋色に染まる

▲池の周りの紅葉が色づきます

そして、つつじと並ぶ御船山楽園の見どころ、紅葉の時季を迎えます。

日本経済新聞の「何でもランキング:専門家が選ぶ昼も夜も紅葉を楽しめる庭園 東西10選」(2016年発表)に西日本で2位、全国でも3位にランクインしています。
▲池に映し出される紅葉……風流ですね~

庭園に広がる赤、黄色、橙の紅葉は、見事の一言に尽きます。樹齢170年以上の大モミジやつつじ谷など、15万坪の庭園敷地内のどこをとっても秋の色に染まり、感動の景色をじっと眺めていたくなりますよ。
▲茶屋から眺める紅葉も趣きがあります

そして、紅葉の時季もライトアップが。漆黒の闇に浮かび上がる鮮やかな紅葉は得も言われぬ幻想的な美しさです。
▲くっきりと水に映し出される紅葉
▲名月とともに楽しむ紅葉もオツですね
紅葉の時季が終われば、御船山楽園も冬支度。木々や草花は息をひそめて春を待ちます。そんな冬だからこそ、出合える景色も!
まるで水墨画のような雪景色。また1月下旬から2月上旬にかけて、椿など冬の花も楽しめますよ。
▲白と黒のモノトーンの景色に映える、鮮やかな椿
▲つつじ谷も白い綿帽子を被っています

窓の景色と、滋味あふれるランチ。 「カジシナジーレストラン」で自然を体いっぱいで味わう

御船山楽園の自然をたっぷり観賞した後は、自然を味わってみませんか?体に優しく、何より美味しいランチを提供してくれるのが、御船山楽園の敷地内に2018年10月にオープンしたイタリアンレストラン「kaji synergy restaurant(カジシナジーレストラン)」です。
▲シンプルで洗練されたデザイン。入る前からワクワクします

店内は、木をふんだんに取り入れた造り。窓が大きくとられており、御船山楽園の自然を間近に感じることができます。
▲写真だと少しわかりづらいのですが敢えて椅子が不揃いなんです!写真手前にあるのがクスノキを使用したテーブル台

店内に配された家具は、地元産の木材を使用した特注品。中央に置かれた大きなテーブル台は、旧武雄市役所の敷地内にあったクスノキを使用したもの。廃棄されるところを引き取り、テーブルに加工したのだとか。
▲薄いカーテンで仕切って個室のように利用できる席も

ここは、“地域の相乗効果(シナジー)を目指すレストラン”をコンセプトに建てられた、店主・梶原さんの思いがたっぷり詰まったお店。美味しいのに、形が悪いというだけで食材が廃棄されることに疑問を感じていた梶原さんが、食材を無駄にすることなく美味しい料理を作り提供してくれるのです。
▲イタリアで修行中、食材に対する考え方がイタリアと日本とで全く違うことに驚いたという梶原さん

梶原さんは、食材を作る農家、畜産農家、漁師さんなどの生産者の方々に直接会い、一番美味しいものをキチンと選び、素材の味を引き出した料理へと昇華させます。だからこのレストランは、生産者と私たち消費者、そして地域が一体となる相乗効果(シナジー)を生み出す場なのですね。

そんな梶原さんが手掛けるランチは、味もさることながら見た目にも楽しい内容!

取材日にお願いしたのは、「若楠ポーク薪焼ランチ」(2,700円)。良質なタンパク質やビタミンB1が豊富に含まれている武雄のブランド豚「若楠ポーク」を味わえるメニューです。
▲若楠ポークのグリルをメインに、前菜は魚のグチのフリット、トマトのスープ、トマトのパスタ、デザートのパンナコッタにパンとコーヒーがついて2,700円!

若楠ポークは、桜と松の間伐材を使用した薪で約4時間かけてじっくりと火を入れていくのだそう。
▲見てください、この分厚さ!

この若楠ポーク、2cm弱はあるくらい分厚いんです!なんて贅沢な!そして口に入れるとびっくり。薪の炎で時間をかけて焼き上げた肉は、旨みがしっかり閉じ込められていて、とにかくジューシー。噛むほどにじゅわっと甘い脂と香ばしい肉の旨みが口に広がります。

添えられた野菜も、素材がしっかりと味わえる“生き生きとした野菜”ばかり。これらの野菜は、その時期にその姿で一番美味しいものを提供しているそう。例えば、取材日は咲いてあった花びらをあしらっていましたが、明日咲いていないなら違うものを、自然の形に応じて内容も変える、というふうに。
▲パンをのせた木材(写真左上)も、間伐材を使用したもの。素敵!

他の料理も、目からウロコの美味しさ。トマトのスープは、トマトをそのまま飲んでいるのではないかというくらいダイレクトに味が伝わります。
▲トマトのパスタ。使用しているベーコンも存在感あるしっかりとした味わい
▲デザートのパンナコッタにはマンゴーソースがたっぷりと

「せっかく美味しいのだから、形が悪くても美味しく料理しなくては。それが僕たちの仕事です」と食材について話す梶原さん。御船山楽園という、四季を十分に感じられる場所にあるのだから、今後ももっと自然と地域に寄り添ったレストランにしたいそう。
窓から見える風景と、口で味わう幸せな食事。心も体もちょっと豊かになれるランチタイムを過ごせますよ。ぜひ、御船山楽園を観賞した後はランチもしくはディナーを楽しんでくださいね。
最後には、地域の特産品をお土産にいかがですか。御船山楽園の入園口には「おみやげ処おはじき」もあり、「レモングラス」や「小城(おぎ)羊羹」などの武雄市やその近隣の特産品を販売していますよ。
▲おみやげ処おはじきは、御船山楽園の営業時間に準じて営業
▲お菓子や海苔などの加工品がたくさん

一番人気は、武雄市の老舗和菓子店で作られるお煎餅「夢本陣」。梅としょうがの2つの味が楽しめますよ。しっかり梅としょうがの風味がして美味しいです!
▲「夢本陣」6枚入りは330円

四季折々、異なる表情を見せてくれる御船山楽園。それに加え、昼と夜とでも表情が違うので、本当に訪れるたびに新たな絶景に出合えるはずです。夜の幻想的な景色を愉しむなら、敷地内の宿泊施設を利用するのがおすすめですよ。さらに自然の景色と味も楽しめる素敵なレストランも!日本の美しい四季に会いに、でかけてみてはいかがですか。きっと贅沢な休日になるはずですよ。
※本文に使用した写真の一部は御船山楽園提供
※記事中の価格・料金はすべて税込です
桑野智恵

桑野智恵

フリーの雑誌ディレクター/ライター。福岡生まれ、福岡育ちの博多女。3つの出版社を渡り歩き、雑誌編集歴20年弱。食育アドバイザー、フルーツ&ベジタブルアドバイザー。

※本記事の情報は取材時点のものであり、情報の正確性を保証するものではございません。最新の情報は直接取材先へお問い合わせください。
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