富山市ガラス美術館の入る「TOYAMAキラリ」で、ガラスアートと建築美を堪能してきた!

2019.06.06 更新

地方都市の未来像として、その取組みが世界から注目されている富山市。そんな富山市の中心街に2015年にオープンしたのが、キラキラと美しい建築美が印象的な「TOYAMAキラリ」です。地元富山の木材やガラスをふんだんに使った建物はどこを切り取ってもフォトジェニック!「富山市ガラス美術館」をはじめ、ミュージアムショップやカフェなどが入居する、観光客に人気の「TOYAMAキラリ」をあますところなく満喫してきました!

「ガラスの街 とやま」の集大成として設立された「富山市ガラス美術館」

富山の薬売り」で知られる富山市は、JR東京駅から北陸新幹線で約2時間10分で行ける北陸の中核都市。薬の製造は300年以上前から始まり、富山県の経済を支えてきた産業の一つです。

薬を製造すると必要になるのが、薬瓶。明治・大正期には富山市内で薬を入れるガラス瓶の製造も盛んに行われていました。戦前には富山駅を中心に熔鉱炉を持つガラス工場が10社以上あったといいます。
▲「富山ガラス工房」での様子(写真提供:<公社>とやま観光推進機構)

こうした歴史から、富山市では1985(昭和60)年からガラスの街づくりの取り組みを始め、1991(平成3)年には、「富山ガラス造形研究所」を設立、1994(平成6)年には「富山ガラス工房」を開設しました。そして2015(平成27)年8月、ガラスの街づくりの集大成として「富山市ガラス美術館」を開館したのです。

そのガラス美術館が入る建物が「TOYAMAキラリ」。特徴的な建築デザインから、写真を撮りに訪れる観光客が急増中なんですって!

コンパクトシティ富山市は、近未来の街!?

▲市街地での移動を簡単にする次世代型路面電車LRT(ライトレール)「セントラム」

ガラス美術館へは、JR富山駅からLRT「セントラム」に乗って約10分。
富山市といえば、地方都市の未来像を目指した「コンパクトなまちづくり」で、2012年にはOECD(経済協力開発機構)からコンパクトシティの世界先進モデル都市に選出されました。

スタイリッシュなセントラムが街中を走る姿は、まるで近未来都市のよう!
▲「富山市ガラス美術館」や「富山市立図書館本館」などが入る複合施設「TOYAMAキラリ」

「グランドプラザ前」停留所でセントラムを降り、進行方向に少し歩くと大きくそびえ立つ「TOYAMAキラリ」が目に入ります。中心街にドンとそびえ立つ建物はインパクト大。

外壁にあしらわれているのは、ガラスとアルミ、そして御影石。富山のシンボルである立山連峰をイメージしたというその外観は、光が反射することで常にその表情を変えていました。

カッコいい外観の建物。中はどうなっているのでしょう!

明るく開放的な吹き抜けに圧倒される!

▲入ってすぐの正面には総合受付がある

入り口に入ってまず目に飛び込んでくるのは、この景色……!
細長い杉板が大量に使われたこの建築は日本を代表する建築家・隈研吾(くまけんご)氏が設計を手がけた施設なのです。
この特徴的な細長いルーバー(羽板)には、富山県産の杉を使用。大きなガラス張りの窓からは自然光が射し込み、明るく広々とした印象です。
▲館内の案内図。真ん中が吹き抜けで左側が「富山市ガラス美術館」、右側が「富山市立図書館本館」

富山市ガラス美術館の常設展「グラス・アート・ガーデン」は6階ということで、総合案内で観覧券(常設展:一般・大学生税込200円、高校生以下無料)を購入し、エスカレーターで6階へ向かいましょう。
エスカレーターで2階へ上がると、床も天井もすべて木で統一された美しいフロアが!大きな窓から日の光も射し込んでいます。

美しい空間に目を奪われていると、案内してくださった担当者から「後ろを見てください」と声をかけられました。
振り返って目に入ってきたのが、隈研吾氏がこだわったTOYAMAキラリの真骨頂!
最上階まで斜めに抜けた吹抜けです!実際に見ると写真で見る以上の広さと高さで、思わず「凄い……!」と感嘆してしまいました。
ガラス張りの天井からは柔らかな日の光が射し込み、施設内にあしらわれているガラスや鏡の効果もあって室内は常にキラキラと輝いて見えます。
▲ルーバーは6階までぎっしり。すべての杉板を並べると、約10kmもの長さになる

隈研吾氏は、様々な人が使う複合施設だからこそ、「街のような建物」を意図して設計したそう。温もりのある開放的な空間は、こうした背景があるからなのですね。

2階には天窓まできれいに撮れるフォトスポットが。誰もが写真を撮りたくなるスポットは、晴れていれば光がきれいに建物内に入ります。
▲各フロアの様子も見えるように、エスカレーターも少しずらして作られている

ついつい各フロアに立ち寄ってみたくなりますが、まずは目的の富山市ガラス美術館の常設展へと向かいます。

世界的巨匠の世界に浸る展示「グラス・アート・ガーデン」

TOYAMAキラリの最上階である6階の常設展「グラス・アート・ガーデン」には、現代ガラスアートの巨匠デイル・チフーリ氏によるインスタレーション(空間芸術)作品が展示されています。

観覧券を受付で見せ、展示スペースへ進むと目の前に現れたのが「シャンデリア」。それぞれ日本の伝統色「深緋(コキヒ)」、「瑠璃色(ルリイロ)」、「鬱金色(ウコンイロ)」がタイトルに付けられています。
▲デイル・チフーリ「シャンデリア」2015年、富山市ガラス美術館所蔵(写真提供:富山市ガラス美術館)

アメリカで作られ、富山市まで持ってきた作品。間近で見ると、ガラスでなくバルーンでできているのではないかと思ってしまうほど繊細な動きが表現されていることが分かります。これをガラスで作ってしまうなんて……!発想の自由さに脱帽してしまいます。

他にも植物を思わせるような「トヤマ・リーズ」や、海の生物や天使を連想させるガラスのパーツが並ぶ「トヤマ・ペルシャン・シーリング」などデイル・チフーリ氏の作品が並びます。
▲デイル・チフーリ「トヤマ・ペルシャン・シーリング」2015年、H45×W575×D217.8cm、富山市ガラス美術館所蔵(写真提供:富山市ガラス美術館)

「トヤマ・ペルシャン・シーリング」は約400個のガラスのパーツが天井一面に敷きつめられています。上から照らされることで、赤や黄、青など色とりどりの光が地面まで伸びています。
「あ、あそこに天使がいるよ」「あれは、クラゲかな?」と、小さなパーツを宝探し感覚で探して楽しい時間を過ごせました。
▲デイル・チフーリ「トヤマ・フロート・ボート」2015年、 H60×W917.5×D657.5cm、富山市ガラス美術館所蔵(写真提供:富山市ガラス美術館)

こちらの作品は「トヤマ・フロート・ボート」。富山市を流れる神通川(じんづうがわ)の漁で使用されていた笹舟と、117個の浮き玉(フロート)が展示されています。

展示をじっくり見ながら、「大小様々な大きさの浮き玉は何を表現しているのだろう?」「浮き玉を乗せて笹舟はどこへ向かうのだろう?」と想像するのも楽しいですね。
▲デイル・チフーリ「トヤマ・ミルフィオリ」2015年、 H280×W940×D580cm、富山市ガラス美術館所蔵(写真提供:富山市ガラス美術館)

最後は、「トヤマ・ミルフィオリ」。「ミルフィオリ」は、イタリア語で“千の花”という意味を指します。

まっすぐに伸びる葦(あし)とクネっと曲がる蓮のような茎と葉。様々な植物らしきガラス作品が配置されています。展示物はグルっと一周して鑑賞。葉の裏側に模様が施されているなど、それぞれのガラスが緻密な設計で作られていることが分かります。

「グラス・アート・ガーデン」では「ガラス作家界の巨匠が富山に来て何を感じて作品を作ったのか」「何を表現したかったのか」なんてことを考えながら、楽しく鑑賞することができました。

ガラス美術館の収蔵品を楽しめる「コレクション展」

続いては4階へ移動し、コレクション展へと向かいます。こちらの展示も常設展の一部なので、最初に購入した観覧券で入場可能です。

取材日(2019年4月22日)に開催されていた展示は「コレクション展 2018-II」。スウェーデン在住の女性作家アン・ヴォルフ氏の作品を中心に、現代ガラスアートを牽引してきた作家のガラス作品約20点を展示しています。コレクション展の室内は撮影禁止ですが、今回は特別に撮影させていただきました。
▲「コレクション展2018-II」(2018年11月12日~2019年6月16日)の展示風景

入り口を入って最初に目につくのが、こちら。アン・ヴォルフ氏が制作した「小さな母親たち」です。
▲アン・ヴォルフ「小さな母親たち」1983年、富山市ガラス美術館所蔵

家事を行い母親として忙しく過ごす一方で、自由を求めたアン・ヴォルフ氏。そうした葛藤からこの作品は生み出されました。作中にいる家事をする女性は、どことなく憂鬱そうな表情に見えます。

アン・ヴォルフ氏は1937年にドイツのリューベックで生まれ、現在はスウェーデンに自身のガラス工房を設立。時代に応じた作品の変化はありますが、根底には常に自身の人生や女性としてのあり方など人間の内面への探求が存在しています。

そのため、この作品でも自身の人生を投影。女性としての生き方の葛藤に悩んでいるように見えます。
▲アン・ヴォルフ「頭」2015年、富山市ガラス美術館所蔵

大きな頭を模した立体作品。後ろは空洞になっていて、人間の内面性を表現しているのだとか。一見粘土のように見える箇所もすべてガラス製。磨き方によって変化をつけたそうです。
▲ルイス・トンプソン「ジークムント・フロイトの夢のアーカイヴ:No.396-405」2009年、富山市ガラス美術館所蔵

続いては、精神分析学者フロイトの夢分析をモチーフにした、イギリス在住のルイス・トンプソン氏が制作した作品。瓶の中にはそれぞれ違う形の夢が表現されています。「これはどんな夢かな?」と考えながら作品を眺めるのも楽しいですね。
▲奥野美果「光の栖(ひかりのす)」2007年、富山市ガラス美術館所蔵

神奈川県在住で、現在は東京都で制作を行うガラス作家・奥野美果氏。透明な柱の中には白い物体が見えます。

正面から見ると、白いガラスを入れたのかと思いますが、横から見ると一目瞭然!
なんと空洞になっているのです!空洞にすることで丸みのある物体を表現していたのですね。

国内外のガラス作家の作品を収蔵する「富山市ガラス美術館」。今回ご紹介した常設展・コレクション展の他にも、期間限定で企画展も開催。コレクション展は年に2~3回の展示替え、また企画展は年に3~4回ほど行われています。展示は常に変わりますので、詳細はホームページをご確認ください。

ここでしか買えないグッズも多数!ガラス美術館ミュージアムショップ

TOYAMAキラリの2階には、ミュージアムショップとカフェが入っています。ガラス美術館を観覧し終えたあとは、ガラス製のグラスや箸置きから、美術館限定のイメージ商品まで様々なお土産品が揃うミュージアムショップへ向かいましょう。
▲エスカレーターを降りてすぐ左手にあるミュージアムショップ
▲お土産にも自分用にも手頃な「はしおき」

ショップ内では、富山県を中心に活躍している作家さんの作品も販売されています。グラスやお皿、コップなど、ぜひお気に入りのお土産品を見つけてみてください。
▲左から「トートバッグ」税込1,620円、「クリアファイル」各種税込295円~、「手ぬぐい」各種税込1,296円、「マスキングテープ」各種税込250円、「リングメモ」各種税込324円

他にガラス美術館オリジナルグッズも人気。「ガラスの街 とやま」に来た記念として、家族や友人への贈り物としてもおすすめです。

「FUMUROYA CAFÉ」でゆったりと一休み

ミュージアムショップの隣にある「FUMUROYA CAFÉ」では、お麩を取り入れた甘味やランチをいただくことができます。「FUMUROYA CAFÉ」は、石川県金沢市にある加賀麩の老舗店「不室屋」が営む和カフェです。
▲明るく開放的な店内

大きな窓から射し込む光が印象的で、美術館の後にゆったりと過ごすには最適です。
▲「麩あんみつ」税込810円

甘味の人気メニューである「麩あんみつ」は、生麩で作られている白玉麩を使っていて、見た目がとってもかわいい!

さっそく一口いただくと、モチモチとした食感の白玉麩に驚き!こしあんの甘さは控えめで、さっぱりとした果物との相性も抜群です。
▲「ふやき御汁弁当」税込1,566円。左上の料理が治部煮(じぶに)(写真提供:加賀麩 不室屋)

ランチの人気メニューは、「ふやき御汁弁当」。すだれを使って成形した「すだれ麩」は金沢市民にとって身近なお麩。金沢の郷土料理「治部煮」で使われています。
他にも具沢山のお吸いものなどまさにお麩尽くしのお弁当。食を楽しみたい方にはぴったりのお麩料理です。※時期によって内容は異なります。
▲左から「宝の麩 折々」税込616円、「おやつ麩」税込778円

店内ではお麩のお土産品も販売しています。おやつ麩は、さっくりと軽い食感。程よい甘さとやさしい口どけで、食べる手が止まらなくなりますよ。
最初に紹介したようにTOYAMAキラリには、市立図書館も併設されています。こちらも杉板を使用した洗練されたデザインが特徴的です。利用者がうつり込まないように配慮すれば写真撮影も可能です。
▲建築のデザイン性で話題になっている「富山市立図書館本館」

通路も広々としていて開放的な空間!本棚や閲覧席もふんだんに木を使用しているので、温かみのある印象です。こんな図書館が近くにあったら通いたくなっちゃいますね。
「富山市ガラス美術館」でガラスの芸術を味わうのはもちろん、暖かな日の光の中で木の美しさを感じ、贅沢な時間を過ごすことができました。美しい館内は一見の価値あり!富山に行くことがあればぜひ「TOYAMAキラリ」にも足を運んでみてください。
長谷川円香

長谷川円香

ライター。新潟をもっと楽しくするWEBマガジン「にいがたレポ」参加ライター。広告会社にて勤務後、フリーランスに転向。「暮らすような旅」をモットーに地域に住む人・日常も含めて伝えることを目標にしている。 編集:唐澤頼充

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