京都の夏の風物詩「京都五山送り火」を楽しむために、知っておきたい5つのこと

2019.07.21 更新

京都の街をぐるりと取り囲む山々に、くっきりと浮かびあがる炎の文字。夏の夜を彩る「京都五山送り火(ござんおくりび)」は、京都のお盆の風情がしみじみと感じられる風物詩です。毎年8月16日に行われる行事を楽しむためのポイントを5つにまとめてご紹介します。

1.起源や歴史は?京都五山の送り火ってどんな行事?

▲京都御苑から見た東山如意ヶ嶽(にょいがたけ)の「大文字(だいもんじ)」

祇園祭とならび、京都の夏を代表する行事「京都五山送り火」。東山如意ヶ嶽の「大文字」をはじめ「妙法(みょうほう)」「船形(ふながた)」「左大文字(ひだりだいもんじ)」「鳥居形(とりいがた)」の文字や形が、松の炎によって夏の夜に照らしだされます。平日でも10万人を超えるほどの人で賑わいをみせ、8月16日の京都の町は人であふれかえります。

京都では毎年8月に精霊(しょうらい/ご先祖さまのこと)迎えの行事が行われます。五山の送り火には、この精霊を再びあの世に送り帰すという意味があるのです。一般的に送り火は盆おわりに行なわれますが、一説によると、中世末戦国に盛んに行われていた大灯籠の風習が形を変え、五山の送り火になったともいわれています。
しかし、五山の送り火の起源についてはいろいろな説があり、はっきりとしたことはわかっていません。五山の中で一番最初に点火される東山如意ヶ嶽の大文字のはじまりについても、平安時代の僧・空海(くうかい)説や室町幕府八代将軍・足利義政(あしかがよしまさ)説、関白・近衛信伊(このえのぶただ)説などさまざまです。
具体的な名称が書物に登場するのは万治元(1658)年が最初ですが、さまざまな言い伝えや資料から、室町時代ぐらいに始まったとするのが一般的となっています。

2.それぞれの文字について詳しく知ろう

▲東山如意ヶ嶽の「大文字」

京都の中心部の東側にある東山如意ヶ嶽の山腹に点火されるのが「大文字」です。五山送り火の中でも最大規模で、標高472mと高いため、遠い場所からも見ることができます。麓にある銀閣寺山門の前では、先祖の供養を願う護摩木(ごまぎ)を受け付けていて、集められた護摩木は山上にある火床(ひどこ)へ上げられ、送り火の松とともに焚き上げられます。
(護摩木受付:銀閣寺門前 8月15日の12:00~19:00、8月16日の6:00~14:00、料金300円 ※なくなり次第終了)
▲松ケ崎(まつがさき)西山(にしやま)と東山(ひがしやま)の「妙法」

続いては京都市営地下鉄・北山駅や松ヶ崎駅近くにある松ケ崎の「妙法」。文字は日蓮宗の題目「南無妙法蓮華経」にちなんでいて、かつて松ケ崎の村民全てが日蓮宗に改宗したことに由来しています。「妙」がある西山は標高133m、「法」がある東山は標高187m。点火順は「大文字」の次で、妙と法は同時に点火されます。
▲西賀茂(にしがも)船山(ふなやま)の「船形」

「船形」が点火される西賀茂船山は標高317m。その形は西方寺(さいほうじ)開祖の慈覚大師円仁(じかくだいしえんにん)が、海上で暴風雨に遭った際に南無阿弥陀仏と唱えたところ、たちどころに嵐がおさまり無事に旅を終えることができた、という故事にちなむものと伝えられています。
▲大北山(おおきたやま)大文字山(だいもんじやま)の「左大文字」

金閣寺からもほど近い大北山大文字山(標高465m)にも、東山如意ヶ嶽と同じ「大」の字に火が灯されます。麓にある法音寺(ほうおんじ)の本堂から、手に松明をもち行列で山を登って点火していくのです。東山如意ヶ嶽の「大文字」と異なり、点火は筆順に行われるため「大」になる前の「ナ」の状態を見ることができます。
▲嵯峨鳥居本(さがとりいもと)曼荼羅山(まんだらやま)の「鳥居形」

標高およそ100mの嵯峨鳥居本曼荼羅山に灯る「鳥居形」。京都屈指の観光地である嵯峨野や嵐山からも近いので、当日は多くの観光客で賑わいます。ここの送り火は他とは異なり、親火より火を移した松明を持ち走って各火床に突き立てます。夜の暗い斜面を走るため、特に危険な縦のライン(上下)に点火するのはベテランが担当します。

なお、護摩木の販売は妙法を除く各送り火近辺の寺院などで行っています。詳細はホームページをご確認ください。

3.何時から?どこから?鑑賞のポイント

五山の送り火の点火は、20:00ちょうどから始まります。最初に点火されるのは一番東の「大文字」。続いて20:05に「妙法」、20:10に「船形」、20:15に「左大文字」の順に点火され、20:20に最後の「鳥居形」に火が灯ります。一山につき点灯時間は約30分なので、最初の点火から全ての火が消えるまでは大体50分ほど。
鑑賞する場所を選ぶ際に大事なポイントは、“1つに絞るか、複数をいっぺんに見るか”。複数をいっぺんに見る場合、高さや周辺の建物との関係などから見られる場所が限られます。
五山全てが見えるのは「京都駅ビル空中経路」「京都タワーの展望台」が有名ですが、いずれも事前の予約や別途料金が必要です(年度により内容や料金は異なる)。
▲「船岡山公園」からの眺め

「左大文字」の近くにある船岡山公園は、五山のうち4つを一望できるスポット。当日は人でごったがえすので、早めの時間に出かけて場所を確保するのがおすすめです。
一つの送り火をじっくり見たい場合は、下記を参考にスポットを探してみてください。いずれにしても暗くなる前に場所を確保するのがベターです。

【各送り火のビュースポット】
「大文字」……丸太町大橋~御薗(みその)橋、鴨川の堤防周辺、吉田山展望台
「妙」……北山通、京都ノートルダム女子大学附近、京都市宝ヶ池公園スポーツ広場
「法」……高野川堤防、高野橋北周辺、出雲橋東側
「船形」……北山通北山橋から北西方面、御薗橋
「左大文字」……西大路通西院(さいいん)~金閣寺周辺、平野神社周辺
「鳥居形」……松尾橋、広沢の池、清凉寺

このほか、料亭やホテルなどで夕食をいただいた後、屋上でゆったりと観賞できるプランを開催しているところも。こういったプランに参加して楽しむ方法もありますよ。

4.友人に披露したい「京都五山送り火」の豆知識

▲大文字山の火床 ※火床はもろいため立入は厳禁

場所を確保してから点火まで、かなり時間があいてしまうことも。そんなとき、一緒に鑑賞する友人などに披露したい豆知識をご紹介します。
[豆知識1]
各山によって多少異なりますが、送り火は基本的に樹齢40~50年の赤松(松割木)を井桁に組み上げた火床に点火をします。この火床をいくつも造ることで文字や形を表すのですが、1.3mほどの高さに組み上げられた松の炎は、時に高さ数メートルにもなるそうです。
[豆知識2]
以前は五山以外でも別の文字で送り火が行われていました。江戸後期には「い」「一」の字や、「竹の先に鈴」「蛇」「長刀」といった形がそれぞれ点火されていましたが、現在は途絶えてしまいました。

5.五山の送り火と併せて楽しみたい「灯籠流し」

最後は、五山の送り火にあわせて行われるイベントをご紹介。「嵐山灯籠流し」は、渡月橋のかかる桂川に灯籠を流します。橋のたもとにある「中之島公園」で19:00から行われる法要と同時に順次灯籠を流していきますよ。先祖の霊に感謝の念を送りながら、おごそかに見守る気持ちで鑑賞しましょう。
▲大文字山から眺めた京都の街並み ※送り火当日の入山は禁止

火が消えるとともに京都の夏はゆっくりと終わりに向かい、季節は秋へと移ります。何とも言えない郷愁が胸に訪れ、しみじみと京都らしさを感じることができる「京都五山送り火」。京都好きならば一度は観覧してほしい真夏の行事に、ぜひ足を運んでみてください。
妙加谷 修久

妙加谷 修久

京都市在住の旅行系ライター兼ディレクター。全国各地に足を運び、旨いモノを食べ、温泉に浸かる日々。ここ京都を中心に、知っているようで知らない「日本のイイトコロ」を紹介します。日本酒好きが高じて利き酒師の資格を取得しました。

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