「一之船入」 京都・高瀬川のほとりで唯一無二の美しき京風創作中華を堪能

2019.07.04 更新

高瀬船(たかせぶね)の船着き場として知られる史跡「一之船入(いちのふないり)」。その名を冠する「一之船入」は、中国最高級調理師の資格を持つ魏 禧之(ぎ よしゆき)シェフが腕を振る京風創作中華の名店です。「医食同源」の思想を取り入れた、目にも美しい京風創作中華を味わえると、観光客のみならず地元の人々からも愛される名店の味をレポートします!

築80年余、元お茶屋を改修した風情溢れる町家で、至福の京風創作中華を味わう

スープや出汁の味を生かし、香辛料や油分を控えた優しい味で、地元京都の人々に愛されている「京風創作中華」。数あるお店の中でもその草分け的存在で、遠方から足しげく通う人も多い人気店が「一之船入」です。ここでしか味わうことのできないオリジナリティあふれる料理とは、一体どんなものでしょうか。
▲史跡「一之船入」には、再現された高瀬舟が展示されている

京都市内と伏見を結ぶ運河として栄えた高瀬川。かつて行き来した高瀬舟が停泊する場であった史跡・一之船入のすぐ裏手に、今回ご紹介する「一之船入」はあります。
一之船入は、かつてお茶屋であったという築約80年の町家を改修し、1996(平成8)年にオープンしました。小説「高瀬舟」で知られる文豪・森鴎外も、この場所で小説を書いたと言われています。
▲2階客室

お店の中に一歩足を踏み入れれば、長く積み重なった京都の歴史を肌で感じることができます。筆者が案内してもらったのは2階の客席。畳にテーブルとイスが置かれた個室になっています。
高瀬川に面した客席からは爽やかな景色を望むことができました。京都市役所からもほど近い場所にありながら、ここは不思議な静けさに包まれています。

医食同源=心にも体にも美味しい料理の数々

▲「福コース」

今回はランチ時に訪れましたが、お昼のメニューは全7品「福コース」 3,500円と「魏コース」6,000円の2種類(いずれも税サ別)。今回は「福コース」を頂くことに。ちなみに夜のコースは6,000円~15,000円(税サ別)の4つのコースから選びます。(15,000円コースは要予約)

京都という土地柄に合わせ、和食の技法やコンセプトを活かした料理は華やかで、お皿が運ばれた瞬間から気分がパッと明るくなるようです。
素材は無農薬の地元野菜を中心に、生産者の「顔の見える」食材を使用。確かな素材を使用し、栄養のバランスも考慮して丁寧に作った料理を味わうことこそが、健康の源。そんな医食同源の思想が込められているのが、魏シェフが作り出す京風創作中華なのです。
というわけで、さっそくお料理を頂いていきましょう!

一品目は「前菜の盛り合わせ」。
写真左から「クラゲの酢の物」、「蒸し鶏のネギソース」、「大根の実のネギ味噌和え」です。
クラゲの酢の物はクセがなくコリコリとした食感。手前に添えられている梅シロップに漬けられたプチトマトのほどよい甘みと酸味がクラゲの食感と味によく合います。
蒸し鶏は柔らかくしっとりとした鶏ムネ肉に、香ばしいネギの香りがピッタリ。
そして、一見緑の豆に見える大根の実。筆者も初めて頂きました!シャキシャキ食感の実を噛めばほんのり大根の香りがして、焦がしネギと味噌のコクがマッチしています。
どの前菜の味付けも一言でいうと「繊細」。複雑な味が組み合わさってハーモニーを奏でているのが印象的でした。
続いて二品目は「小海老のマヨネーズ和え」。
プリプリの食感の小海老が濃厚なマヨネーズソースに包まれています。エビマヨ自体はベーシックな中華料理ですが、クコの実、ナッツ、レタスの千切りと合わせることで食感にリズムが生まれ、一味違う創作料理になっています。基本を大切にしながらも、クリエイティブを大切にする魏シェフの腕を感じられる一皿です。
続いて三品目は「ヤリイカと季節のお豆のあっさり炒め」。
季節の旬食材の組み合わせで、色合いも美しいですね。ヤリイカは一口で新鮮さがわかるコリコリの食感。春らしい豆の味わいに、ショウガの隠し味が爽やかな風を口の中に吹かせてくれます。
四品目は「活ホタテとアスパラのバルサミコ仕立て トマトと香菜のソース」。
噛むほどに旨みを感じる活ホタテ。アスパラガスのシャキシャキした歯ごたえと合せて絶妙な食感です。バルサミコの上品な甘酸っぱいソースに、香菜の香りがふわりと中華の風味を漂わせます。
五品目は「特製ジャージャー麺」。
濃厚な味わいの肉味噌は、ひき肉・タケノコ・椎茸の食感の違いが楽しく、ほのかに感じる辛味が食欲を刺激して箸を持つ手が止まりません。
冷たい麺とアツアツの肉味噌の温度の違いも美味しさを際立たせています。美味しい料理の数々ですでにお腹も満足気味でしたが、ペロッと食べることができました!
六品目は「干し海老と水菜のスープ」。
大きめの干し海老から出る味わい深いダシが絶品です。干し海老は具としても使われていて、シャキシャキの水菜とよく合います。
最後は「デザート」。
タピオカ(写真左)は、ココナッツミルクの中にタピオカ、きくらげ、ドライフルーツのペーストが入ってトロピカルな味わい。紫芋だんご(写真右)は、柔らかい生地と白いココナッツファインの食感が印象的な一品です。京風創作中華の名の通り、上品でさっぱりした味で〆にピッタリでした。
どの品も、彩り、食感、味わいなど、コントラスト豊かな料理ばかりだなと感じ入りました。この内容・ボリュームで3,500円(税サ別)とは、正直驚きのコストパフォーマンス。大満足なランチタイムでした。

世界を股にかけて活躍する魏シェフにお話しを伺いました!

「初めて包丁を握ったのは、11歳の時ですね」。
と、にこやかに笑う魏シェフは、横浜中華街のご出身。ご両親のお店の手伝いから始まり、様々な中華料理店にて腕を磨いた魏シェフ。その後中国大陸に渡り、中国の国家資格である特級調理師の資格を得ました。横浜や沖縄での活躍を経て、現在の場所で「一之船入」をオープンしました。

開店当初からお店は大人気だったそうですが、地元京都の常連客からの厳しいアドバイスを受け一念発起。京料理や和食の料理法を学び、独自の研究成果を加えて、オリジナルの京風創作中華を作り上げたそうです。
▲ 「中国料理アジアトップシェフ10」殿堂入りのメダル

2005(平成17)年には中国の最高級調理師の資格を授与され、現在は国内や海外でさまざまな料理協会等の会長や理事をつとめています。
▲その他にも国内外で多数の賞を受賞している

魏シェフが大切にしていること、それは“基本とインスピレーション”。
幼き日から何度も繰り返し体にしみ込ませて覚えた技術は、今も進化を続けています。謙虚な心で学び続けることで、様々なアイディアやひらめきが降りてくるんだそう。肩を並べる者がいないほどのシェフとなった今でも、成長を目指すその姿勢に非常に感銘をうけました。
京都の風情を感じられる静かな町家で味わう、唯一無二の京風創作中華。京都を訪れたらぜひ立ち寄って、美味しい料理の数々を堪能してください。
妙加谷 修久

妙加谷 修久

京都市在住の旅行系ライター兼ディレクター。全国各地に足を運び、旨いモノを食べ、温泉に浸かる日々。ここ京都を中心に、知っているようで知らない「日本のイイトコロ」を紹介します。日本酒好きが高じて利き酒師の資格を取得しました。

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