「面河渓」の絶景を求めて、新緑に包まれるエメラルドグリーンの清流を行くウォーキング

2019.06.10 更新

愛媛県の上浮穴郡(かみうけなぐん)久万高原町(くまこうげんちょう)にある美しい渓谷、「面河渓(おもごけい)」。「仁淀ブルー」として知られる高知県の仁淀川の源流域で、その水の透明度や澄んだエメラルドグリーンは、仁淀川に決して引けを取らない美しさを誇ります。ウォーキングコースを辿り、清流と豊かな緑、芸術のような奇岩が織りなす面河渓の絶景を楽しみましょう。

街の喧騒を離れて、新緑の渓谷「面河渓」へ

上浮穴郡久万高原町は愛媛県の中南部に位置し、道後温泉などがある松山市から車で約50分ほど。面河渓は久万高原町役場からさらに車で50分ほど走ったところにあります。西日本最高峰・石鎚山の南麓で気候は夏でも涼しく爽やか、秋は燃えるような紅葉が一帯を鮮やかに染めます。
今回は木々が生き生きと茂る新緑の季節(5月初旬)に訪れました。
▲面河渓に近づいてくると県道12号に大きな鳥居が
石鎚山を中心とした一帯が国定公園に指定されており、面河渓もこれに含まれます。石鎚山を神体山とする石鎚神社へ向かう道でもあるため、道中に大きな鳥居も登場。それをくぐると面河渓の入り口を示すゲートが出迎えてくれます。
▲ゲートをくぐると面河渓の少し手前に「面河山岳博物館」がある

「面河山岳博物館」は、石鎚山系と久万高原町の自然・人文に関する多数の資料が集められています。まずはこの博物館脇にある案内図で散策ルートをチェック。
面河渓のウォーキングコースは複数あり、代表的なものは「面河本流コース」と「鉄砲石川(てっぽういしかわ)コース」の2つ。今回は見どころ満載の「面河本流コース」(片道約45分)を歩いてみることに。
ちなみにこの面河山岳博物館の地下駐車場の奥から出発する散策路「関門遊歩道」もありますよ。
▲「関門遊歩道」も約600mの短いルートながら、面河渓ならではの美観が楽しめる

五色河原から「面河本流コース」散策スタート!

「面河本流コース」は面河山岳博物館からさらに5分ほど車で進んだあたりからスタート。川にかかるアーチ型の「五色橋」を渡った先に駐車場があります。
▲散策ルートのスタート地点付近の目印ともいえる「五色橋」

「五色橋」を戻って「面河本流コース」へ向かいます。橋から眺める「五色河原(ごしきがわら)」の風景に早くも見入ってしまいます。ちなみに「五色」の名は、水の青、苔の黒、岩の白、藻の緑、紅葉の赤の五色に彩られるところから付いたのだそうです。
▲滑らかな白い岩肌を清流が流れ、太陽の光を受けて輝く「五色河原」

橋の向こうに見える「渓泉亭 面河茶屋」の横の道が「面河本流コース」遊歩道です。このあたりの岩肌は必見ですよ。
▲「渓泉亭 面河茶屋」のすぐ横あたりに見える岩肌
▲その岩壁は「亀腹(かめばら)」と名付けられている

河原にそそり立つ巨岩は、大きな亀の腹のように見えることから「亀腹」と呼ばれます。高さ100m、幅200mにも及ぶ巨大な花崗岩の一枚岩です。
▲河原で遊ぶ人と比べるとその岩の大きさが一目瞭然

河原に降りることができるので、広くて浅い水辺で子供たちが遊ぶ姿も見られます。大人たちも大自然の景色の中でくつろいだり、家族でお弁当を広げたり、思い思いに楽しめる場所です。
川を左に見ながら進むと、緑の中に赤色が映える「鶴ヶ瀬橋」が見えてきました。
橋を渡ればここからは、木々に囲まれた川の左岸の道を進むコースになります。
▲小鳥のさえずりを耳に、木漏れ日を浴びながら歩く
橋を渡って5分も歩けば「蓬莱渓(ほうらいけい)」と書かれた看板が見えてきます。河原へ降りられる石段があったので降りてみることに。
▲白くしぶきをあげる水が、澄んだ青い淵へ流れ落ちる
「蓬莱渓」は、時に小さな滝を作りながら流れる涼やかな風景が大変美しい場所です。水流で角が取れた白い岩の中で、川が一層深みを増し青く見える一方で、少し向こうに視線を向けると、対照的に直線的な模様を刻む褐色の岩肌がそそり立っています。
▲ゴツゴツと直線的に削れ切り立つ岩壁

遊歩道の自然も楽しみながら、「紅葉河原」「下熊渕」「上熊渕」へ

▲緑に包まれて胸いっぱいに息を吸い込めば、体の中から浄化されるよう
周囲に咲く野の花に足を止めたり、思わず深呼吸したくなるような深い緑を見上げて森林浴気分を味わったりしながら、遊歩道をさらに進みます。
コースの半ばあたりに位置するのが「紅葉河原(もみじがわら)」です。両岸にカエデ類の木々が茂り、秋には文字通り紅葉に彩られる名所の一つです。
新緑を映すような鮮やかなエメラルドグリーンの水は、川底まではっきりと見通せる透明度で豊かに流れます。
▲紅葉に包まれた「紅葉河原」。四季折々の美しさを見せてくれる(写真提供:久万高原町)
また遊歩道を先へ先へ。時折苔むした巨木や仰ぎ見るほどの巨岩に出合い、壮大な自然に圧倒されます。
「下熊渕(しもくまふち)」まで来ました。小瀧のような流れと深いエメラルドグリーンの渕です。
もう川辺近くに降りることはできない深い渓谷で、上から見下ろします。先ほどの緩やかな広い流れと比べても、かなり上流まで来たことがわかります。

「下熊渕」から3分ほど歩くと、今度は「上熊渕(かみくまふち)」です。
こちらも岩の間を白いしぶきを上げて流れ落ちる水と、ものすごい透明度の渕を見下ろすことができます。どんなに絵の具を混ぜてもこの色は出せないだろうと思わせるほどの渕の色。眺めていると吸い込まれてしまいそうです。
▲雄々しく流れる滝に足を止め、耳に入る水音も一緒に楽しむ

霊峰石鎚の“気”を感じながら、終着点の「水呑み獅子」と「虎ヶ滝」へ

コースの終着まであと少し。途中、「石鎚登山口」への方向を示す看板があります。
▲石段を見上げると「石鎚神社」の鳥居が

「石鎚神社頂上社」は遥かかなたという場所ですが、神々しい鳥居の佇まいに思わず石段の下で手を合わせました。ちなみにこちらの登山道は石鎚山の山頂までここから4時間以上も歩く中上級者向けの登山コースです。きちんとした装備と経験が必要なので、くれぐれも気軽に登ろうとしないように…。

ここを過ぎると「熊渕橋(くまふちばし)」が見えてきます。いよいよゴール間近!
▲熊渕橋を渡った先は休憩所になっている
▲小さな滝が続き、岩の間を流れ落ちて行く「水呑み獅子」

熊渕橋から眺める上流は「水呑み獅子」と呼ばれる場所。岩が獅子の頭のような形をしていることからついた名だそうですが、そういわれると岩が獅子のようにも見えてきます。

熊渕橋を渡ったところに注意書きの看板が立てられていました。
ここから先は、「一人の者、子供連れの者、手持ち荷物を持つ者、登山靴を着用しない者、その他装備が十分でない者は通行を禁ず」という内容です。また「雨天のときは如何なる場合も通行を禁ず」とも。
「虎ヶ滝」へ向かう道なのですが、岩や倒れた多くの木々で足元が悪く、足を踏み外せば滝のある渓谷へ落ちてしまうという状況です。十分な装備をしていない場合は、残念ですがここまでで引き返しましょう。
▲奥の方に流れる滝が「虎ヶ滝」。渕の水は神秘的なほどに澄む美しい色

終着点にふさわしい、面河渓の素晴らしさが集まったような「水呑み獅子」と「虎ヶ滝」の景色を堪能して、同じ道を引き返し帰路につきました。
▲秋には紅葉が水にその色を写し、また違った趣を見せる(写真提供:久万高原町)

軽食も喫茶もOK「渓泉亭 面河茶屋」でほっと一息

再び景色を楽しみながら、コースのスタート地点付近の「渓泉亭 面河茶屋」まで戻ってきました。
▲店の軒先でカカシたちが出迎えてくれる「渓泉亭 面河茶屋」

郷土料理のだんご汁やあまご料理などの軽食やこだわりの喫茶メニューが楽しめ、ウォーキングや河原での川遊びの合間にちょっと一服するのにぴったりなお店です。
▲久万高原町の特産品などお土産物も購入できる
▲入り口を入ってすぐのスペースにはカウンター席。窓から巨岩「亀腹」とたくさんの人が集う広い河原が見える

店内奥の飲食スペースには、テーブル席のほか、靴を脱いで畳の上に座れる席もあります。手前のカウンター席も靴を脱いで上がるので、トレッキングシューズを履いた足を解放できて、それだけでもなんだか落ち着きます。窓の外に広がる雄大な自然を目の前にして、気持ちもゆったりとくつろげますよ。
▲ほっこりやさしい甘さの「ぜんざい」(税込400円)

甘いものを食べて体に糖分を補給!ということで「ぜんざい」をいただくことにしました。お餅はこんがりとした焼き目がつき、柔らかく炊き上げられた小豆とからめて食べると、お餅の香ばしさと小豆のふわっとした味わいが調和して口いっぱいに広がります。甘すぎず、さらりとしてとても食べやすいぜんざいです。
▲ご自慢の「オリジナルブレンド珈琲」(3種各税込500円)

ドリンクも本格的なものが並びます。
昭和25(1950)年創業の愛媛県きっての老舗珈琲製造会社「進和珈琲」が、この店のためにブレンドした「オリジナルブレンド珈琲」は「面河渓」「石鎚山」「御来光の滝」の3種類。それぞれ面河渓や石鎚山の自然をイメージしたブレンドで、筆者がいただいた「御来光の滝」は、すっきりと際立つ酸味とほのかな甘みで香り高い素敵な珈琲でした。

そしてもう一つ、ぜひ味わっていただきたいのが「天辺(てっぺん)紅茶」です。
▲地元産の茶葉で作った「天辺紅茶(久万高原町産)」(税込450円)。紅茶を注ぐのは「全国地紅茶サミットinえひめ」で使われた砥部焼きの試飲カップ

久万高原町の中津という地の農家さんが、紅茶好きの奥様のために無農薬で茶葉を育て、摘み取りから選別、発酵まで丹精込めて作った紅茶です。2018年に愛媛県で開催された「全国地紅茶サミットinえひめ」にも出品されました。とがったところのない芳醇さを持ち、日本茶にも通じる深みのある香りと味。特に紅茶好きの方には味わっていただきたい逸品です。

もう一つのウォーキングコース「鉄砲石川コース」も見どころいっぱい

最後に、「紅葉河原」を起点にしたもう一つのウォーキングコース「鉄砲石川コース」についても少しご紹介します。こちらは面河川の支流、鉄砲石川沿いを歩く、片道約1時間15分のコースです。
▲豊かな滝壺と雄々しく流れ落ちる滝が見どころの「櫃(ひつ)の底」(写真提供:久万高原町)

このコースの一番の見どころは「櫃の底」です。
コースをスタートしてまもないところで出合うスポットで、透明度が高く豊かな水を湛えながら底まで見通せる滝壺。そしてそこへ流れ落ちて行く滝の姿はとても美しいものです。名前の「櫃」はそのまま炊いたご飯を保存するお櫃からきているそう。
▲岩肌一面に割れ目が見られる迫力の「兜岩」(写真提供:久万高原町)

奇岩や変わった石などが多く見られるコースとなっていて、「兜岩」「お月岩」など表面の割れ目が直線で象られたアートのように広がる不思議な光景が続きます。面河渓の醍醐味ともいわれている奇岩をたっぷりと楽しめそうですね。
面河渓は本当に何度も深呼吸をしたくなるような清々しい空気に満ちています。木漏れ日を浴び、森林浴気分で歩けば、身も心も浄化されるようです。目に入る自然は、素朴でおおらかなものや雄々しく力強いもの、さらにはアートを感じさせるような自然の神秘など、様々な表情を楽しめます。ぜひ訪れてみてくださいね。

なお遊歩道は歩きやすく整備されてはいますが土の道です。河原に降りてみることもあると思いますので、靴は歩きやすくしっかりとしたトレッキングシューズや登山靴などが良いでしょう。また標高的にも高地ですので、服装は夏でも長袖・長ズボン、温度調整のきく服装で、リュックサックなどに雨具も入れ、山歩きに備えた装備をしていきましょう。雨などで急な増水があるかもしれません。河原では特に川の様子に十分注意して、安全に楽しんでください。
矢野智子

矢野智子

愛媛県在住。愛媛県出身ながら高校卒業後ほとんどの時間を県外で過ごした後、生活の拠点を愛媛に定めた現在、改めて気付く地元の魅力に感動しきり。 人生を豊かにするものは「食」と「読」と信じ、そこに情熱を傾ける日々。

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