通常の水ナスより3倍大きい「三豊ナス」。じゅわっと広がる味わいに舌鼓

2015.10.01

一般的な千両ナスや水ナスの3~4倍も大きな「三豊(みとよ)ナス」。甘くてジューシー、トロけるような舌触りで病みつきになる美味しさだけれども、香川県外に滅多に出回らない幻のナスです。収穫時期は7~10月。この美味しさの生産現場と、その味を気軽に堪能できる場所をご紹介します!

「なんて立派なナス!」
香川県の三豊で収穫したと、お土産にもらった「三豊ナス」の大きさに驚きました。

JA香川県の三豊地区営農センターに尋ねると「通常の水ナスやナスの代表品種である千両ナスが約100gなのに対し、三豊ナスは約300g~400gほどあります。糖度も高いんですよ」と教えてくれました。

家で煮浸しや揚げ浸しにしても、浅漬けにしても田楽にしても、一口でじゅわっと甘みや旨みが広がります。皮が薄いので皮が付いたまま調理できて料理の見た目も美しい。まさに頬が垂れ落ちそうな味わいです。

希少な三豊ナスを肩肘張らずに楽しむなら、地元居酒屋「楽屋」へ

「三豊ナスを味わってみたい!食べたい!」そう思ったときの確実な手段は一つ。生産地に行くことです。三豊市と隣の観音寺市の直売所やスーパーに並んでいるほか、地元の飲食店の一部で食べることができます。

中でもおすすめしたいのが、観音寺駅から徒歩約5分のところにある「楽屋(がくや)」。わびさびを感じる和風の店舗で気軽に料理を楽しめる居酒屋です。三豊ナスに限らず、近くの漁港の仲卸を自ら担うほど、積極的に地元食材を使っています。

「三豊ナスは地元で生まれ育った僕にとっては慣れ親しんだ食材です。お店で出しても好評ですよ!同業の間でも使いたいという声が高まっています」

そう話すのは「楽屋」店主、日下(くさか)伸彦さん。まだ36歳と若くておしゃれな風貌の店主ながら、10年以上もお店を経営しています。

三豊ナスは地元生産者の手間暇を惜しまない愛情あってこそ実る

取材当日は日下さんのご提案で三豊ナスの生産者の畑集合に。

「三豊ナスで巾着型と丸型ができるのは偶然なんですね」
三豊ナスの生産者であり、三豊ナス研究会・副会長の藤川 節(たかし)さんの話に、日下さんは三豊ナスをじっと見つめながら耳を傾けます。
▲三豊ナスの生産者の藤川 節さん(左)と、「楽屋」店主、日下伸彦さん(右)
「三豊ナス」は、昭和初期に朝鮮半島へ出向いた三豊の農家が、美味しいなすを見つけて、この種を持ち帰ったのが始まりと言われています。ただ、表皮が柔らかくて傷が付きやすいので仕事として育てる人はおらず、家庭菜園で育てる程度だったとか。

出荷が始まったのは最近のこと。2006年に三豊郡の7つの町が合併して「三豊市」が誕生すると、「三豊」という名前がついている「三豊ナス」を地域農業振興の1つとして市の特産品にしようと試みが始まりました。そして2010年5月に「三豊ナス研究会」を32人の生産者が集まって発足。JAの協力のもと出荷を始めました。
「三豊ナスを、一つずつ袋を被せて出荷することにしたんです。すると傷つけることなく、ハリの良い状態を保ちやすくなりました」

そう話す藤川さんは三豊ナス生産3年目の63歳。「退職後は農業をしよう、三豊ナスを育てようと決めていました。地元特産品ですし商品価値が高い。でも、育てているのは何よりおもしろいから!」と、話す藤川さんの表情は生き生きとしています。

「三豊ナスはとにかく手間がかかります。背も高くて葉も大きいので先日の台風の時も大変でした。しかも収穫までも約25日と長いんです。でも手間をかけるほど、経験を積むほどに良い三豊ナスができる」

藤川さんの畑は、1年目は全て枯れてしまい、2年目はそこそこ。そして3年目になってやっと良い出来になったといいます。朝早い方が美味しいから朝5時~6時の間に収穫してすぐに出荷。収穫と同時に整枝もするそう。

「簡単なことのように思えますが、コツを掴めたのは最近のことですよ」そのやりがいを感じさせる表情は、今まで真摯に打ち込んできた姿を映し出していました。

肉厚でジューシー。これまでのナスの美味しさを超える味わいに唸る

普段は居酒屋で料理を提供する日下さんですが、この日は特別に、お店で作った料理を藤川さんの農園まで持ってきてくださいました。この日の三豊ナス料理は3品。「鶏味噌田楽」「冷製麻婆」「ナスのステーキ」です。
▲「鶏味噌田楽(上)」「冷製麻婆(右下)」「ナスのステーキ(左下)」。三豊ナスの旬の時期には、居酒屋「楽屋」でも提供しています
藤川さんご夫妻とお孫さんに味わってもらったところ、鶏味噌田楽は「味噌の甘みとナスの甘みがよく合いますね!また皮付きのまま大きく切って調理されていて、肉厚でみずみずしいという三豊ナスの特徴が活きています。食べ応えがあってこの1品で十分な満足感がある」と喜ばれました。
▲大ぶりの三豊ナスを大きくスライスし、楽屋の特製味噌ダレを塗った「鶏味噌田楽」
また、冷製麻婆は「辛めの味付けでありながら、三豊ナスの甘みがより引き出されていてバランスがいい。とろりとした舌触りも良く、ご飯もお酒もすすみますね」とあっという間に完食。
▲辛味の効いた味付けながら、ナスの甘味も引き立つ「冷製麻婆」。白米にもお酒にも合う食欲を誘う一品
ナスのステーキは「オイルで炒めることで三豊ナスの持ち味がより濃厚になり、玉ねぎとミョウガが合わさって爽やかな後口になります」そう話す隣で、子どもたちがあっという間にぺろりと平らげて満足げ。
▲厚く切った三豊ナスの両面を油で炒めて味わいを濃縮した「ナスのステーキ」。ジューシーな三豊ナスの持ち味と香味野菜のハーモニーが良い
「普段の食事はこんなに食べないんですよ。やっぱりプロの料理ですね」と藤川夫妻は微笑みました。

「三豊ナスの美味しさは食べたらわかる。良さを伝えやすい食材です。お酒を飲む人には、地元の麹と合わせた辛子和えが人気ですよ。すぐ無くなるので仕込みを間に合わせるのにいつも必死ですが(笑)」と日下さんはにっこり。
藤川さんたち生産者が丹精込めて作った三豊ナスを、日下さんが心を込めて調理する。三豊ナスの美味しさに舌鼓を打ちながら、三豊・観音寺の豊かさを感じてみてはいかがでしょうか?
黒島慶子

黒島慶子

醤油とオリーブオイルのソムリエ&Webとグラフィックのデザイナー。小豆島の醤油のまちに生まれ、蔵人たちと共に育つ。20歳のときに体温が伝わる醤油を造る職人に惚れ込み、小豆島を拠点に全国の蔵人を訪ね続けては、さまざまな人やコトを結びつけ続けている。 (編集/株式会社くらしさ)

※本記事の情報は取材時点のものであり、情報の正確性を保証するものではございません。最新の情報は直接取材先へお問い合わせください。
また、本記事に記載されている写真や本文の無断転載・無断使用を禁止いたします。
PAGE TOP